menu

SARNews No.7

SARNews_7

構造活性相関部会・ニュースレター<1October2004>SARNewsNo.7「目次」///Perspective/Retrospective///フラグメント分子軌道法のドラッグデザインへの展開仲西功北浦和夫・・・2///CuttingEdge///Structure-BasedDrugDesignによる新規非ヌクレオシド体アデノシンデアミナーゼ阻害剤の創出研究寺坂忠嗣仲西功・・・6ComparativeMolecularActiveSiteAnalysis(CoMASA)-高速な三次元構造活性相関手法の開発-小谷孝行東浦邦彦・・・10///Activities///<報告>・構造活性フォーラム2004藤井信孝赤松美紀・・・15・6thAustralia/JapanSymposiumonDrugDesign&Development(6DDD),MM2004(AjointconferenceoftheAsia/PacificchapterMolecularGraphicsModelingSociety)大田雅照・・・16<会告>・第32回構造活性相関シンポジウムプログラム田中明人・・・20/////Perspective/Retrospective/////フラグメント分子軌道法のドラッグデザインへの展開仲西功1、北浦和夫1,2(1京都大学大学院薬学研究科、2産業技術総合研究所計算科学)ポストゲノム創薬においては、薬物受容体の3次元構造に基づく論理的な薬物設計(SBDD)は、非常に重要度の高い創薬手法である。SBDDにおける中核となる技術の一つは計算化学であり、ターゲット構造の3次元可視化、蛋白質-リガンド間相互作用の定性・定量的解析、化合物設計などを担っている。なかでもコンピュータ上で医薬品の種となる化合物を探索するinsilicoスクリーニングは、医薬品開発競争が激化している創薬現場では現在最も期待されている技術の一つである。ところが、相互作用の定量的解析(活性予測)において十分な精度が得られないため、計算手法の改善が強く要望されている。この問題が解決されれば、医薬品のシード・リード探索におけるinsilicoスクリーニングの一般化が可能となり、強力な創薬ツールの一つとして定着すると考えられる。しかし従来から用いられている経験的なパラメータに基づく計算手法には限界が見え始めており、新しい蛋白質-リガンド間相互作用解析法の出現が期待されている。分子間相互作用の汎用で信頼性の高い計算法としては、abinitioMO法がある。しかし、この方法は、おおよそ分子のサイズの3乗(Hartree-Fock法の場合)から5乗程度(電子相関理論の場合)に比例して計算時間が増大するため、蛋白質のような巨大分子に適用するのは困難である。最近、フラグメント分子軌道法(FMO)と名付けられた近似法1-3が開発され、巨大分子の非経験的な電子状態計算が現実のものとなった。この方法によると、蛋白質と低分子の相互作用をabinitioqualityで計算できるため、ドラッグデザインのための革新的なツールとなる可能性を持っている。私たちはこの方法を基本にして、蛋白質と低分子の結合親和力を高い精度で予測できる計算法の開発に取り組んでいる。FMO法は、図1に示すように、分子を小さなフラグメントに分割し、フラグメント(モノマーと呼ぶ)とフラグメントペア(ダイマー)について、ほぼ通常のabinitioMO法と同じ計算を行うだけで、分子全体のエネルギーとプロパティが計算できる方法である。例えば、分子の全エネルギーEは、モノマーとダイマーの全エネルギーをそれぞれEIとEIJとすると、次式で求めることができる。E=∑EIJ.(N.2)∑EII>JI図1分子の分割例。点線の囲い内が分子全体を計算する必要がなく、多数の小さな“分子”を一つのフラグメント。計算するだけでよい。これにより、計算時間の分子サイズ依存性は2乗(以下)になる。また、モノマーやダイマーをほぼ独立に計算できるため、超並列計算が容易であるという特徴を持っている。FMO法はすでに実用の段階に到達しており、abinitioMO計算のプログラムABINIT-MP4とGAMESS5に組み込まれて公開されている。これらはともに効率のよい並列計算の仕組みを実装しており、安価なパソコンクラスターで大規模分子の計算が容易に行なえる。GAMESSによる計算時間の具体例を示すと、パソコン(Pentium4,2.8GHz)55台による600原子のポリペプチドの構造最適化計算(HF/3-21Gレベル)が約20日、96台による5,500原子からなる蛋白質複合体のエネルギーと勾配の1点計算(HF/6-31G*レベル)が約22時間であった。分子間相互作用を高い精度で計算するためには、HFレベルでは不十分で、電子相関を考慮した理論を用いることが必要である。FMO法は、密度汎関数理論(DFT)やMler-Plessetの2次摂動論(MP2)でも、高い精度でabinitio計算の結果を再現する6,7。これら電子相関レベルのFMO法は、abinitio法の計算時間に比べて、HFの場合よりも、さらにはるかに高速である。先と同じ5,500原子系で、MP2/6-31G*レベルの1点計算(エネルギーと勾配)は、おおよそ数日で終了した(一部のパソコンの故障で何度か中断したため、正確なタイミングデータがない)。FMO法と64~128台のパソコンクラスターを計算資源として用意すると、現在、次のような蛋白質-リガンド相互作用の計算をルーチン的に行うことができる。1)全系からリガンド分子と結合領域にあるアミノ酸残基を取り出したモデル系(全体で数百から千原子程度)で、リガンド分子と蛋白質の一部の原子(リガンドと水素結合している原子)の構造を最適化する。計算レベルは、FMO-HF/3-21G程度。2)最適化した原子座標を全系に戻して、全系についてFMO法による1点計算を行う。結合エネルギーを計算するために、蛋白質のみとリガンド分子のみの計算もあわせて行う。計算レベルは、FMO-MP2/6-31G*程度。これらの手順で、FK506結合蛋白質(FKBP)とFK506およびいくつかの類似リガンドとの相互作用を計算した8。最適化構造は、FK506の場合、デカルト座標のRMSDが0.44Aで実験構造と一致した。その他のリガンドもRMSDは概ね0.5A以下、最大のものでも0.8Aであった。結合エネルギー(気相)は、FK506の場合で、HF/6-31G*レベルで-33.0kcal/mol、MP2/6-31G*レベルで-101.9kcal/molとなった。電子相関の効果が非常に大きい(68.9kcal/mol)ことが分かる。当然、気相の結合エネルギーの実験値はないので精度を評価できないが、低分子による同レベルの計算の信頼度から判断して、誤差は数kcal/mol程度と考えられる。FMO法は、大規模分子の電子状態計算法であると同時に相互作用の解析法でもある。たとえば、図3の例に示すように、蛋白質の各アミノ酸残基とリガンドとの相互作用エ図2FMOによる蛋白質複合体中のFK506の最適化構造(紫)と実験構造(PDB:1FKF、白)の重ね合わせ。RMSDは0.44A。ネルギーが求まる。これで、結合に重要な役割を担うアミノ酸残基が一目瞭然となる。リガンドについても、解析したい単位でフラグメントに分割しておくと、各部分がどのように結合に寄与しているかを見ることができる。このような解析は、ドラッグデザインのための有用な知見になると考えられる。1050-5-10-15-20-25-30-35図3FK506とFKBPの各アミノ酸残基(横軸に通し番号で示す)との相互作用エネルギー(縦軸:kcal/mol)。気相での結合エネルギーの計算は、結合親和力(水溶液中の結合自由エネルギー)の高精度計算に向けての第一歩である。この計算の信頼性が低ければ、水和効果を評価することさえ困難である。ここで紹介した計算モデルでは、第一歩としても不十分なところがある。相互作用エネルギーを精度よく求めるためには、複合体全体、蛋白質およびリガンドそれぞれについて構造最適化計算をしなければならない。FKBPの場合、蛋白質の構造変化が小さいので、この構造変化を無視しても大きな誤差を生じないが、一般的には蛋白質のinducedfitを考慮することが不可欠である。全系の構造最適化計算を行うためには千台以上のCPUが欲しいが、これは当分の間は非現実的である。すぐにできるアプローチは、量子・古典ハイブリッド法(QM/MM)を用いることである。QM/MMはすでに生体高分子の計算に広く用いられている手法である。MM部分の計算は時間がかからないので、先の構造計算モデルで無視した部分をMM領域として扱うことで、まがりなりにも、全系の構造最適化が可能になる。FMO法のQM/MMは現在開発中であり、これを溶媒効果の計算にも用いる計画である。蛋白質-リガンドの気相中の結合エネルギーが高精度で計算できたとして、次の課題は溶媒効果である。溶媒和自由エネルギーについては、電子状態計算で用いられる連続誘電体モデル(polarizablecontinuummodel;PCM)、簡便なGeneralizedBorn近似(GB)、さらに、分子動力学シミュレーションによる方法などがある。水溶液中の結合エネルギーは、蛋白質-リガンドの結合エネルギーと蛋白質およびリガンドの部分脱水和エネルギーの差であり、これらのエネルギーを同程度の精度でバランスよく計算する必要がある。この観点からすると、溶媒分子をあからさまに扱って、さらに、蛋白質やリガンドと溶媒分子の相互作用を量子論で計算しなければならないことになる。このためにも、先に述べたFMO-QM/MMを活用する計画である。溶媒効果は非常に困難な問題であるが、蛋白質-リガンドの結合親和力の高精度計算法を開発するためには、克服しなければならない最重要課題であると考えている。以上、FMO法を中心に、私たちの取り組みの現状と今後の方向を述べた。しかし、FMO法は多くの計算資源を要するため、少数のリガンドに対して精密な解析を行うのには有効であるが、数10万個以上のリガンド分子を扱うinsilicoスクリーニングなどのアフィニティー予測に用いるのは実際的でない。したがって、FMO法のSBDDにおける主な役割は、電子状態計算から得られる知見を提供することにより、QSARをはじめとするさまざまな既成手法の改良や新規手法の開発に役立つことである。また、統計的・動的性質のシミュレーションに分子力場は不可欠であるが、蛋白質と低分子の相互作用ポテンシャルに関しては信頼性の高い汎用な力場がない。アフィニティー予測に使える力場が開発できれば、SBDDにおける貢献は計り知れない。電子状態の計算結果が多数蓄積されれば、力場の改良にも新たな道が開けるものと期待している。最後になりましたが、このたび本誌への執筆の機会を与えてくださいました編集委員の皆様に感謝いたします。参考文献1)K.Kitaura,E.Ikeo,T.Asada,T.NakanoandM.Uebayasi,Chem.Phys.Lett.,313,701-706(1999).2)T.Nakano,T.Kaminuma,T.Sato,K.Fukuzawa,Y.Akiyama,M.Uebayasi,K.Kitaura,Chem.Phys.Lett.,351,475-480(2002).3)D.G.Fedorov,K.Kitaura,J.Chem.Phys.,120,6832-6840(2004).4)T.Nakanoetal.,ANINIT-MP,http://moldb.nihs.go.jp/abinitmp/5)M.W.Schmidtetal.,GAMESS,http://www.msg.ameslab.gov/GAMESS/GAMESS.html6)D.G.Fedorov,K.Kitaura,Chem.Phys.Lett.,389,129-134(2004).7)D.G.Fedorov,K.Kitaura,J.Chem.Phys.,121,2483-2490(2004).8)I.Nakanishietal.,tobesubmitted./////CuttingEdge/////Structure-BasedDrugDesignによる新規非ヌクレオシド体アデノシンデアミナーゼ阻害剤の創出研究藤沢薬品工業株式会社寺坂忠嗣・仲西功*(*現所属:京都大学大学院薬学研究科)1.研究背景と研究方針アデノシンデアミナーゼ(ADA)はプリンヌクレオチドの分解経路に属する酵素の一つであり、アデノシンからイノシンへの非可逆的脱アミノ化を触媒する。また、ADAはヒトのほぼ全ての組織に分布しており、免疫系の維持に重要な役割を果たしている。例えば、遺伝性ADA欠損はリンパ球の分化及び成熟障害により重篤複合免疫不全症となることがよく知られている。これ以外にもAIDS、慢性関節リウマチ、貧血、白血病など多くの疾患でADA異常が見られる。一方、近年、炎症局所でのアデノシン濃度の上昇や産生されるアデノシンの抗炎症・免疫抑制作用も報告されている。更に、活性化リンパ球上に発現しているCD26分子にADAが特異的に結合していることから、ADAが細胞外酵素として炎症部位で産生されるアデノシンを分解し、慢性炎症を引き起こしていると考えられる。従って、ADA阻害剤は炎症部位特異的にアデノシン濃度を変え、かつ副作用の少ない新規抗炎症剤となる可能性がある。これまでに、(+)-EHNAやpentostatinなど多くのADA阻害剤が報告されている(図1)が、それらは皆プリンヌクレオシド又はアルキルアデニン類縁体であるため、経口吸収性や代謝安定性が乏しく、また重篤な毒性を示すなどの問題があった。そのため、ADA阻害剤としてpentostatinが唯一臨床に用いられているが、その使用はヘアリーセル白血病の成人患者への静脈内投与に限られている。そこで、毒性を軽減し、かつ経口活性を有する新規ADA阻害剤の創出を目指し、本研究を行なった。著者らは既存のADA阻害剤の問題点は、ヌクレオシド骨格に由来するものと考え、非ヌクレオシド骨格を有するADA阻害剤の探索を開始した。しかし、一般によく知られているように、ヌクレオシドやペプチド、ステロイドのような天然物骨格を合成非天然物骨格に変換することは困難を伴うデザインである。特に、今回の目標であるヌクレオシド体から非ヌクレオシド体への変換は非常に困難であり、活性、毒性、動態などの問題から、その成功例はほとんどない。そこで、著者らはStructure-BasedDrugDesign(SBDD)により、この困難を克服し、かつ効率的に非ヌクレオシド体ADA阻害剤を創出することを目指した。NH2ONH2OHNH2NNNNNNNHNHNNNNNNNNNNNHOHOHOHOOOHOOOOHOHOHOHOHOHOHAdenosineInosine(+)-EHNAPentostatinDAA図1アデノシン類縁化合物2.リード化合物の創出まず、μMオーダーの活性と合成展開容易な構造を有するリード化合物の創出を目指し、基質タイプ阻害剤1-デアザアデノシン(DAA:図1)とADAとの複合体結晶構造(図2-a)を基に新規阻害剤のデザインを行なった。即ち、強い水素結合などADAとの相互作用に効果的な部位を残すため、DAAの1-デアザアデニン部分はイミダゾール-4-カルボキサミドに、またリボース環5’位の水酸基はヒドロキシメチルに変換した。一方、リボース部分が占めている環境が疎水性であることを考慮し、リボース環はベンジルに変換した化合物1(Ki=54μM)をデザインした(図2-b及び図3)。更に、化合物1のフェニル基が存在する疎水性空間における相互作用及び結合性の改善を目指し、イミダゾール部分とフェニル基の間にフレキシブルなスペーサーの導入を考え、その最適長を計算化学的に予測することで、効率よくμMオーダーの活性と良好な薬物動態を有する非ヌクレオシド体リード化合物2(Ki=5.9μM)(図2-c及び図3)の創出に成功した1。図2DAA(a)、1(b)、2(c)の結合モードDAA/ADA複合体結晶の活性部位表面をメッシュで、リガンド分子をball-and-stickモデルで示す。1と2はシミュレーションによる予測結合モード。分子間水素結合を黄色の実線で示す。(参考文献[1]より許可を得て転載)NH2NNOH5Ki=7.7nMNH2NNOH7図3非ヌクレオシド体ADA阻害剤のデザインプロセス一方、基質と全く異なる構造を有する阻害剤の創出を目指し、上記探索と平行して行った自社化合物ライブラリーのランダムスクリーニングから、細胞毒性を有するものの、μMオーダーの活性を有し、かつアデノシンや既存のADA阻害剤と全く異なるユニークな構造を持つ非ヌクレオシド体リード化合物3(Ki=1.2μM)を見出した。ドッキングスタディにより3のADAとの結合様式の予測を試みたが、相互作用様式から考えて妥当な結合モードを得ることはできなかった。このことから、3の結合により、酵素内のコンフォメーション変化が起きていると考えられたため、3とADAとの複合体結晶構造解析を行なった。その結果、ADAは活性部位周辺のコンフォメーション変化を起こし、基質タイプ阻害剤結合時に比べ活性部位の形状を大きく変え、新たな広い疎水性空間が形成されていることが明らかになった(図4-a,b,c)。化合物3は、これまで未知であったその疎水性空間を用い酵素と結合していた。即ち、3のチアゾールとチオフェン環は狭い平面性の疎水性空間(F1)を、ベンズイミダゾール環はそれに続く比較的広い疎水性空間(F2)をそれぞれ占めていた(図4-b,c)。一方、2は先に示したように、活性部位の構造を変えずとも既知の結合ポケットに結合すると予測していたが、その複合体結晶構造解析の結果、酵素はコンフォメーション変化を起こし、3結合時と同様の疎水性空間(F1、F2)の存在が明らかとなった。このような活性部位の構造変化にもかかわらず、2はこの疎水性空間を結合には全く用いておらず(図4-b,c)、そのフェニル環の配向を除いてドッキングスタディから予測されたものと同様の結合様式を示していた(図4-a,b)。図4ADA活性ポケットにおける阻害剤分子の結合モード活性部位表面をメッシュで示す。タンパク質分子は表示していない。(a)DAA/ADA複合体の結合ポケットで予測した2の結合モード。(b)3/ADA複合体の活性部位表面での2と3の重ねあわせ。(c)(b)を活性部位入り口側から見た様子。(d)4/ADA複合体の活性部位表面での3と4の重ねあわせ。(e)(d)を活性部位入り口側から見た様子。(f)5/ADA複合体の活性部位表面での5と3の重ねあわせ。(参考文献[2]より許可を得て転載)3.リード化合物のハイブリッド化そこでこれらの構造情報を利用し、より活性な阻害剤の効率的な創出を目指し、二つのリード化合物のハイブリッド化を考えた。前述した様に両阻害剤のADAへの結合様式を比較すると、ADAは同様の構造変化を起こしているにもかかわらず、3は新たに形成された疎水性空間(F1、F2)を用い酵素と結合しているのに対し、2は全く用いていない。更に、3のチオフェン環は2のフェニル環の近傍に位置していることから(図4-b,c)、2のフェニル環からF1及びF2空間に適切な原子団を伸ばすことで、より良好なファンデルワールス力あるいは疎水性相互作用が得られると考えられた。しかし、F1空間と2のフェニル面は直交関係にあっため、2のフェニル基から目的の空間(F1、F2)へ置換基を伸ばすことは困難であると考えられた(図4-c)。一方、2のフェニル面の配向に関しては、複合体結晶構造はドッキングスタディから予測されたものと異なっていたことから、2/ADAの複合体結晶構造から2だけを取り出し、フェニル回転軸周りのコンフォメーション解析を行なったところ、分子単独での最安定コンフォメーションは活性コンフォメーションではなく、活性コンフォメーションからフェニル回転軸周りに90度ねじれた状態であることが明らかとなった。更に、この最安定コンフォメーションを持つ2は酵素表面と接触することなく、活性部位に結合できると予測された。以上の知見を元に、このハイブリッド化を次に示す二段階での実現を試みた。Step1:2のフェニル環をF1空間に向けるStep2:3のチオフェン環やベンズイミダゾール環の占める疎水性空間(F1、F2)を利用する最初の段階では、2のフェニル環を狭い疎水性空間であるF1に向けるデザインを行なった。2/ADAの複合体結晶構造から、このフェニル環は、特にそのオルト位部分が活性部位入り口の壁に近接しており、置換基を入れるスペースはなく、この部分に置換基を有する化合物は活性部位に結合できないと考えられた。しかし、上述の2のフェニル面に関するコンフォメーション解析及びドッキングシミュレーション結果から、このフェニル環のオルト位に嵩高い平面性の原子団を導入することにより、フェニル面を意図的に回転させ、F1空間にうまくフィットさせることができると確信し、2のフェニル環を二環性のナフチル環に変換した4をデザインした。化合物4は2より9倍活性が向上(Ki=680nM)し、また、複合体結晶構造解析によりデザイン仮説通りナフチル環がフェニル環の時より約90度回転してF1空間の方を向き、ADAと相互作用していることを確認した。(図4-d,e)。第二段階として、4に3のベンズイミダゾール部分を導入することにより、F1及びF2疎水性空間の両方を用いることを目指した。合成的な容易さ、F1空間の狭い平面性や化合物のコンフォメーション固定を考え合わせ、効果的にF2部位に分子を伸ばすため、ナフチル環を6-アミドインドール環に変換した。更に、約90度曲がったF1とF2の接合部分の形状を考慮し、インドールアミド基とベンズイミダゾール環の接合部位にフレキシビリティーを与えるため、スペーサーとして二つのメチレン鎖を挿入した2と3のハイブリッド化合物5をデザインし、結合ポケットにフィットすることをドッキングシミュレーションにより確認した。化合物5はKi=7.7nMの活性を示し、リード化合物2に比べおよそ800倍活性が向上した。また、5/ADAの複合体結晶構造解析から、上記デザインの妥当性は証明された(図4-f)。以上のように化合物3の毒性発現部位と考えられるグアニジノ基を化合物2に置き換えるハイブリッド化を、計算化学的知見を有効に取り込むことにより、僅か二回のSBDDサイクルにより達成し(IntentionalLeadHybridization)、nMオーダーの活性を有し、かつ毒性を軽減した化合物5の創出に成功した2。一方、化合物2、3のハイブリッド化の過程で見出した化合物4を基にしたSBDD並びに酸化的代謝を抑えるデザインも行い、化合物5と同等まで活性を向上させると共に、良好な溶解性、経口吸収性、並びにバイオアベイラビリティを有する化合物6及び7を創出した。化合物6は炎症、並びに白血病のinvivoモデルで有効性を示しており、これはADA阻害剤として経口投与で有効性を示した最初の例である3。4.おわりに以上、著者らはSBDDをメインツールとして、高活性かつ経口活性な新規非ヌクレオシド体ADA阻害剤の創出に成功した。本研究で用いたIntentionalLeadHybridizationの概念は、ADA阻害剤のみならず、多くの薬物デザインに適応可能であり、今後の効率的な薬物設計に対し新規な一手法を提供するものと考えている。一方、今後解決しなければならない多くの課題も明らかとなった。計算化学的側面から見ると、1)デザイン化合物のアフィニティー予測精度、2)タンパク質分子の動きの予測、3)リガンド分子の結合モードの正確な予測、などである。これらの課題は、世界中の多くの研究者の努力により、本研究を行なっていた7~8年前に比べるとかなり進歩してきている。しかし、いずれもがまだ満足できるレベルにあるとは言い難い。SBDDによるDrugDiscoveryの更なる効率化を達成するためには、上記の課題の改善が不可欠であると考えている。最後になりましたが、本誌への執筆の機会を与えてくださいました編集委員の皆様に感謝いたします。参考文献[1]T.Terasaka,I.Nakanishi,K.Nakamura,Y.Eikyu,T.Kinoshita,N.Nishio,A.Sato,M.Kuno,N.Seki&K.Sakane,Bioorg.Med.Chem.Lett.2003,13,1115-1118[2]T.Terasaka,T.Kinoshita,M.Kuno&I.Nakanishi,J.Am.Chem.Soc.2004,126,34-35[3]T.Terasaka,H.Okumura,K.Tsuji,T.Kato,I.Nakanishi,T.Kinoshita,Y.Kato,M.Kuno,N.Seki,Y.Naoe,T.Inoue,K.Tanaka,K.Nakamura,J.Med.Chem.2004,47,2728-2731/////CuttingEdge/////ComparativeMolecularActiveSiteAnalysis(CoMASA)-高速な三次元構造活性相関手法の開発-日本臓器製薬株式会社生物活性科学研究所小谷孝行、東浦邦彦1.はじめにCoMFA法[1]は三次元構造活性相関(3DQSAR)の中でも最も一般的に利用される手法である。この手法は計算しようとする分子の周囲に格子点を作成し、格子点と分子との立体的あるいは静電的な相互作用を計算することにより、レセプタータンパクとリガンドとの相互作用解析をしようというものである。計算に用いる相互作用点が非常に多いため、作用点の寄与を計算するためにPLS(partialleastsquares)法が用いられる。また、モデルの質を検証するために通常cross-validatedr2(q2)が用いられる。CoMFA法では立体的な相互作用計算にLennard-Jonesポテンシャルが、静電的な相互作用計算にはCoulombポテンシャルが使われる。このため、①格子点が原子近傍にあるときに特異点が発生し、contourmapが重ね合わせた分子の外部に生成される、②計算しようとする分子を作成した格子(x軸、y軸、z軸)に対してどのような向きに置くかにより、解析結果が異なる、③SGI社製のワークステーションなどが使用され、合成研究者がアイデアを得る目的で簡便に3DQSARを行うことはできないなどの問題があった。今回我々は、CoMFA法、CoMSIA法[2.4]や他の3DQSAR法で用いられる格子点にかえ、分子を代表する点を抽出し、この点と分子との相互作用を計算することにより、使用するメモリを大幅に減らし、計算時間の短縮を実現するとともに、分子を格子点に対してどのように配置するかという従来の3DQSAR手法での問題点を解決できる方法を見出した。2.方法すべてのプログラムはCygwin上のFortranおよびC言語とTcl/Tkを用いて作成した。結果の表示はWeblabViewerLite4.0[5]で行った。2-1.クラスタ解析による分子代表点の作成鋳型分子と計算に用いる他のすべての分子を比較し、鋳型分子上の原子の近傍に原子がないときは新たに代表点を追加する手法が知られている。しかしこの方法では、鋳型分子の選択や読み込む分子の順序により、得られる代表点が異なる。また鋳型分子の選択に研究者の任意性が存在する。このため、CoMASA法ではクラスタ解析を用いて、代表点を作成することとした(図1)。クラスタ解析に用いる閾値は任意に設定できるが今回は0.75Aを用いた。また、必要に応じて環の中心に擬似原子を追加した後クラスタ解析を行うことにより、代表点を求めることも可能である。2-2.CoMASA法代表点と分子との相互作用はSEAL法[6,7]で用いられているガウス関数あるいは我々が開発した高速な分子重ね合わせ方法[8]を改変した擬似変数を用いる方法の2種類の距離依存性関数と、原子に固有のパラメータの組み合わせで行った。Humancorticosteroid-bindingglobulins(CBG)への結合親和性を指標にCoMASA法への応用を検討した。(1)適切な手法で分子を重ねあわせる(1)(2)重ね合わせて分子から原子を抽出する(2)(3)すべての分子間/擬似原子間距離を計算する最も近い原子あるいは擬似原子を削除し、新たに加重平均で擬似原子を作成する(3)擬似原子を作成最も近い原子削除する原子(4)プロセス3をすべての原子間/擬似原子間距離が閾値以下になるまで繰り返す(4)(1)(2)(3)図1クラスタ解析による代表点の作成例-1)静電的および立体的相互作用計算にSEAL法で使用されている評価関数を用いる方法CoMSIA法と同様にSEAL法で用いられているガウス関数を静電的および立体的相互作用の計算に用いCoMASA法への応用について検討した。代表点kと分子jとの分子類似性指数AF,kは式1で計算される。2.αA=.rikprobekqFkewwj,,,()∑n(iq)(1)i=1ここで、wi,kは原子の物理化学的なパラメータであり、静電的な相互作用計算では電荷を、立体的相互作用計算ではvdW半径を用いる。wprobe,kは代表点上におく仮想的なプローブ原子であり電荷+1、vdW半径1Aである。今回はαとして0.3を用いている。例-2)静電的および立体的相互作用計算に擬似変数を用いる方法高速な分子重ね合わせ法では静電的相互作用が含まれていない。そこで、静電的相互作用を計算するために新たな擬似変数を導入した。これはトポロジカルインデックスの一種であり、精度を大幅に減少させることなく、相互作用計算に必要な時間の短縮が期待できる。我々は代表点と原子との距離に応じて変化する3種類のカテゴリーを用いた。すなわち、距離に関する閾値thとしてクラスタ解析に用いた閾値と同じ0.75Aを使用し、式2から式4に従い相互作用を計算した。各代表点kと分子jとの相互作用は擬似変数Iを用いて式2のように表される。kkkI(j)=Iel(j)+Ist(j)(2)静電的および立体的な相互作用を示す擬似変数(Iel、Ist)は、代表点kと、分子j上の代表点kに最も近い原子iとの距離rkを計算し、式3および式4に従い計算される。.q(k)ifrk.th.Iel,k=.q(k).k2ifthth1(type(a))=>親水性|chr(a)|疎水性その他=>中性(5)表1FLEXS法の疎水性パラメータtype(a)th1th2H0.10.06C,N,O,F,B0.20.1P,Cl,Br,I,S∞0.1例-4)擬似変数とFLEXS法の疎水パラメータを使用する方法距離依存性関数として例-2で用いた擬似変数を用い、FLEXS法の疎水性パラメータを当てはめた。例-5)例-1と例-3を組み合わせた方法例-1と例-3はともに距離依存性関数としてSEAL法と同じガウス関数を用いている。そこで静電的、立体的および疎水的な相互作用を含めた計算を行うために、例-1と例-3の方法を組み合わせたものを用いた。例-6)例-2と例-4を組み合わせた方法例-2と例-4はともに距離依存性関数として擬似変数を用いている。そこで静電的、立体的および疎水的な相互作用を含めた計算を行うために、例-2と例-4の方法を組み合わせたものを用いた。2-3.PLS計算PLS計算はBush、NachbarによるSAMPLS[10]を用いて行った。PLS計算に先立ち、静電的相互作用、立体的相互作用、および疎水的相互作用はそれぞれでスケーリング(block-scaling)[11]を行った。3.結果と考察CBGへのバインディングアフィニティのCoMASA法への応用結果を表2に示す。また、静電相互作用、立体的相互作用について例-6で行った結果を図2、3に示す。距離依存関数としてSEALと同様のガウス型(例-1、3、5)あるいは擬似変数(例-2、4、6)を用いた場合、ともにCoMFA法やCoMSIA法とほぼ同等の精度の解析結果を得ることができた。特に、擬似変数を用いた場合にはCoMFA法やCoMSIA法を上回るr2、q2が得られた。表2種々の手法における3DQSAR解析の結果.CoMFACoMSIA例-1例-2例-3例-4例-5例-62q2r0.6620.7190.6620.7630.5280.9150.7980.9820.7540.9210.7430.9380.6540.9310.7900.980コンポーネント数24444344寄与率静電相互作用—0.5350.7570.500——0.5950.403立体相互作用—0.0860.2430.500——0.2020.377疎水性相互作用—0.378——1.0001.0000.2030.220相互作用点の数7200929292929292CoMASA法はCoMFA法やCoMSIA法と比較し、次のような特徴を持つことが明らかとなった。①分子骨格上に活性に寄与する部分を表示できるため、解析結果を官能基の性質等に直接反映させることが可能となり、より理解しやすくなる。②格子に対してどの向きに配置するかにより解析結果が異ならない。このため、cross-validatedr2-guidedregionselection(q2-GRS)[12]などの処理を行う必要がない。③相互作用点が格段に少なくなるため、必要なメモリ領域を削減できるとともに、計算時間を短縮でき、通常のPCでの使用が可能となる。PentiumIII600MHz、256MBメモリーを搭載したWindowsNT4.0Workstation上で動作確認を行っている。CoMASA法は特に、合成研究者が誘導体化のアイデアを得るための3DQSAR解析手法として応用が期待できる。以上の内容はJournalofMedicinalChemistry[13]に掲載済みであり、詳しくはそちらを参照していただければ幸いです。最後に、本ニュースレターへの執筆の機会を与えて下さいました編集委員の皆様に深く感謝いたします。図2静電的相互作用の図負電荷が活性を増強させる領域(赤色)および正電荷が活性を増強させる領域(青色)(各カラムのSTDEV×COEFFの絶対値が0.015以上の領域)図3立体的相互作用の図立体的に活性を増強させる領域(緑色)および活性を減弱させる領域(黄色)(各カラムのSTDEV×COEFFの絶対値が0.015以上の領域)参考文献1)CramerIII,R.D.;Patterson,D.E.;Bunce,J.D.ComparativeMolecularFieldAnalysis(CoMFA).1.EffectofShapeonBindingofSteroidstoCarrierProteins.J.Am.Chem.Soc.1988,110,5959.5967.2)Klebe,G.;Abraham,U.;Mietzner,T.MolecularSimilarityIndicesinaComparativeAnalysis(CoMSIA)ofDrugMoleculestoCorrelateandPredictTheirBiologicalActivity.J.Med.Chem.1994,37,4130.4146.3)Klebe,G.ComparativeMolecularSimilarityIndicesAnalysis:CoMSIA.Perspect.DrugDiscov.Design1998,12/13/14,87.104.4)Klebe,G.;Abraham,U.ComparativeMolecularSimilarityIndexAnalysis(CoMSIA)toStudyHydrogen-BondingPropertiesandtoScoreCombinatorialLibraries.J.Comput.AidedMol.Des.1999,13,1.10.5)WebLabViewerLite4.0,AccelrysInc.,SanDiego,CA.6)Kearsley,S.K.;Smith,G.M.AnAlternativeMethodfortheAlignmentofMolecularStructures:MaximizingElectrostaticandStericOverlap.TetrahedronComput.Method.1990,3,615.633.7)Klebe,G.;Mietzner,T.;Weber,F.DifferentApproachesTowardanAutomaticStructuralAlignmentofDrugMolecules:ApplicationstoSterolMimics,ThrombinandThermolysinInhibitors.J.Comput.AidedMol.Des.1994.8.751.778.8)Kotani,T.;Higashiura,K.RapidEvaluationofMolecularShapeSimilarityIndexUsingPairwiseCalculationoftheNearestAtomicDistances.J.Chem.Inf.Comput.Sci.2002,42,58.63.9)Lemmen,C.;Lengauer,T.;Klebe,G.FLEXS:AMethodforFastFlexibleLigandSuperposition.J.Med.Chem.1998,41,4502.4520.10)Bush,B.L.;Nachbar,R.B.,Jr.Sample-DistancePartialLeastSquares:PLSOptimizedforManyVariables,withApplicationtoCoMFA.J.Comput.AidedMol.Des.1993,7,587.619.11)Nilsson,J.MultiwayCalibrationin3DQSAR.ApplicationstoDopamineReceptorLigands.URLathttp://www.ub.rug.nl/eldoc/dis/science/j.nilsson.12)Cho,S.J.;Tropsha,A.Cross-ValidatedR2-GuidedRegionSelectionforComparativeMolecularFieldAnalysis:aSimpleMethodtoAchieveConsistentResults.J.Med.Chem.1995,38,1060.1066.13)Kotani,T.;Higashiura,K.ComparativeMolecularActiveSiteAnalysis(CoMASA).1.AnApproachtoRapidEvaluationof3DQSAR.J.Med.Chem.2004,47,2732.2742./////Activities/////「構造活性フォーラム2004」報告京都大学大学院薬学研究科藤井信孝京都大学大学院農学研究科赤松美紀構造活性相関講習会から通算6回目、構造活性フォーラムと名称を変更してから2回目の構造活性フォーラム2004が、6月25日(金)に京大会館で開催されました。今回は、「創薬科学におけるADME予測-基礎から応用まで-」をテーマとして、近年話題となっております創薬科学における薬物動態特性(吸収・分布・代謝・排泄)の予測に焦点を絞りました。その基礎となる分配係数の予測からトランスポーター、代謝にいたるまでの演題を、各分野で最前線の研究を行っておられる6名の先生方に専門家以外の研究者にも分かり易く解説頂きました。一般104名、学生2名、常任幹事14名の参加者があり、会場が狭く感じられるほどの盛況でした。講演後の総合討論では、invitroデータからinvivoデータを予測するための方法論、ADME予測の現状などについて、自由な雰囲気の中で建設的な議論が活発に交わされました。貴重な研究結果をご発表頂いた講師の諸先生、ご多忙の中参加頂いた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。次回は大阪大学医学研究科藤原英明教授の御世話で大阪にて開催される予定です。開催日時:平成16年6月25日(金)開催場所:京大会館101号室プログラム:1)「分配係数から細胞透過性を予測できるか?」(京大院農・赤松美紀)2)「低分子化合物のlogPの測定と予測-水素結合性基の扱い方と問題点-」(神戸薬大・山上知佐子)3)「分配係数logPの物理化学的解釈とその応用」(徳島大薬・中馬寛)4)「生体異物と生体内脂質を輸送するABC蛋白質ファミリー」(京大院農・植田和光)5)「トランスポーターと非線形局所動態解析(inloci)における最近の進歩」(京大院薬・山岡清)6)特別講演「創薬科学のためのKEGG」(京大化研・金久實)7)総合討論/////Activities/////6thAustralia/JapanSymposiumonDrugDesign&Development(6DDD)およびMM2004(AjointconferenceoftheAsia/PacificchapterMolecularGraphicsModelingSociety)に参加して中外製薬(株)化学研究第一部大田雅照2004年6月27日から30日、オーストラリアのシドニーで6thAustralia/JapanSymposiumonDrugDesign&Development(6DDD)が、また、6DDDに引き続き6月30日から7月3日に分子グラフィックスおよびコンピュータ支援によるドラッグデザインの学会MM2004(AjointconferenceoftheAsia/PacificchapterMolecularGraphicsModelingSociety(MGMS))が開催されました。筆者はその両方に参加する機会を得ましたので、その報告をさせていただきます。6DDDは日本薬学会医薬品化学部会がオーストラリアと日本両国のDrugdesign&Developmentを進展させる目的で2年ごとにオーストラリアと共同開催(両国で交互に開催)している学会です。今回で6回目の開催ですが、筆者は初めての参加となります。演題数はPlenarylectureが5題、Invitedlectureが2題、oralが30題、posterが24題でした(プログラムについてはhttp://www.pco.com.au/6ddd/で参照できます)。参加者は88名で日本からは28名(大学21名、企業7名)の参加でした。6DDDのプログラムの特徴として、IntellectualProperty(知的財産・特許)に関する演題が3題あったこと、Smallandmediumenterprisesと題するオーストラリアの中小ヴェンチャー企業からの発表が8題あったことなどがあげられます。オーストラリア側としては、本シンポジウムをオーストラリアヴェンチャー企業の日本企業への売り込みの場としても使いたいと考えているようでした。MM2004はアジア/環太平洋地区を対象としたMGMSの国際学会です。演題数はPlenarylectureが9題、Invitedlectureが13題、oralが15題、posterが50題と充実しており、内容も、タンパク質の立体構造、立体構造に基づく薬物設計、分子グラフィックス、量子化学計算など多岐にわたっていました(プログラムについてはhttp://www.pco.com.au/mm2004/で参照できます)。参加者は107名で日本からは1名(企業1名:筆者のみの参加)の参加でした。6DDDはMM2004と半日間の併催になっていて、そこではPlenarylecture2題、Invitedlecture2題の講演が行われ、筆者の講演も半日併催のinvitedlectureの一つとして行われました。6DDDでは、日本からは富岡先生(京都大学・薬)がAFMC(AsianFederationforMedicinalChemistry)Lectureとしてご講演されました。口頭発表としては、杉本先生(京都大学・薬)、今野先生(京都大学・薬)、赤松先生(京都大学・農)、藤井先生(京都大学・薬)、野水先生(東京薬科大学・薬)、林先生(京都薬科大学)、中島先生(富山県立大学・工)、小出先生(新潟薬科大学・薬)がご発表なされました。ポスターでは、藤原先生(大阪大学・医)、浜田先生(京都薬科大学)、村上先生(大阪大学・薬)、仲西先生(京都大学・薬)、加藤先生(豊橋技科大学)などがご発表なされました。以下には6DDDでのオーストラリアからのいくつかの演題の内容を紹介します。選択した演題とその内容の紹介が企業研究者の視点からとなっていますことはご容赦ください。Frommacromolecularproteinstosmallorganicmolecules:Areductionistapproachtodrugdiscovery,MarkSmythe(ProtagonistPtyLtd.)Smallandmediumenterprisesのセッションでの発表です。タンパク質-タンパク質相互作用(protein-proteininteraction)は、生物学的な役割は明確になっていて薬剤ターゲットとしてvalidateされたものが多いのですが、その相互作用をうまく調節する低分子化合物を得ることが非常に難しく、低分子薬剤の開発が難しいターゲットとしても認識されています。Protagonist社はこのターゲットに特化し、より低分子に近いリード化合物を創製することをめざしている会社です。彼らが化合物として用いている骨格はdisulfide-richpeptidesで、コンフォメーション的にrigidであること、より低分子に近い分子量であること、良好なPKprofileをもつことなどが特徴です。Protagonist社ではProtein-Proteininteractionの立体構造情報から相互作用に重要なアミノ酸残基を同定し、その相互作用をmimicするようなdisulfide-richpeptidesをdatabaseから選択してくるという戦略をとっています。彼らの発表によれば3つのcytokinetargetsについて、9種類のdisulfide-richpeptides骨格を用いた400化合物を合成・スクリーニングすることにより、nMオーダーでreceptorに結合し、良好なPKprofileをもつ活性化合物を得たとのことです。DesignofinhibitorsoftheKITreceptortyrosinekinase,RenateGriffith(Univ.Newcastle)演者らは抗癌剤のターゲットの一つであるKITのwildtypeとAsp816Valmutantについてhomologymodelingを行いました。Asp816はc-terminalkinaselobeのactivationloopに位置し、このmutationによりconstitutivelyactiveになることが知られています。KITの活性化状態および不活性化状態のモデルから、不活性化状態の場合activationloopはATP結合部位の近くに位置し、活性化状態の場合はATP結合部位から遠く離れた位置に移動することが示唆されました。また、モデルから、Asp816はATP結合部位付近のアミノ酸との水素結合によりactivationloopを不活性化状態の位置で安定化させていること、およびAsp816Valのmutationにより水素結合がなくなりactivationloopが活性化状態で安定化することが示唆され、Asp816ValのmutationによりKITがconstitutivelyactiveになる理由をうまく説明することができました。現在、このモデルに基づいてkinaseinhibitorlibrary化合物をスクリーニングし、いくつかの有望なc-kit阻害剤を見出しているそうです。Canaseriesofroutinestepsontheroadtodrugdevelopmentconstituteaninvention?,MichaelJCaine(Partner,DaviesCollisonCave)特許に関する演題です。特許性があるかどうかは、新規性と進歩性の両方が必要ですが、新規性については各国間で解釈の差がほとんどないのに比べ、進歩性の解釈には各国の差がかなりあるそうです。オーストラリアにおける最近のオメプラゾール製剤化特許の判決において、ヨーロッパタイプの進歩性・自明性の判断が採択されなかったことから、オーストラリアにおける進歩性の判断基準はUS、日本などと近い立場であることが明らかになったということです。筆者も、いままで国際特許をだすときに各国への出願をどうするかについて、なんとなく判断してきましたが、これからは各国の特許事情をもう少し考慮して判断すべきだと感じました。Molecularvisualization,theallroundtoolformarketing,teaching,andcommunication,AnnelieseAppleton(AccelrysAustralia)本NewsLetterをお読みの方は既にご存知かもしれませんが、Powerpoint上で低分子やタンパク質の立体構造を3次元で表示し、回転、移動、いろいろな種類の表示(分子表面の描画など)をプレゼンテーション中に自由に実行できるソフトウェアについての紹介です。とても便利そうで、プレゼンテーションで使うとおそらく盛り上がるであろうと思えるソフトウェアです(有償)。6DDDとMM2004の共催のsessionは6月30日の午後に開催されました。PlenarylectureではAccelrys社(USA)のDr.DavidEdwardがSARSvirusのゲノム情報からbioinformatictoolを使って創薬ターゲット(SARSpolypeptide1a(cysteinprotease),RNAdependentRNApolymeraseなど)を同定し、それらの立体構造をモデリングするという講演がありました。もう一つのPlenarylectureとして日本からは西村先生(島津製作所)が、武田薬品工業在籍時の創薬(CCR5阻害剤)、orphanGPCRのligand探索(Metastin)、島津における田中先生とのMALDI-TOFMSなどについて話されました。InvitedLectureでは、Prof.W.BretChurch(UniversityofSydney)が“Towardsstructure-baseddrugdesignfornon-standardproteins”という演題で、non-standardproteins(multimericproteins,disorderedproteins,membraneassociatedproteinsなど)のモデリングについて講演されました。日本からは、筆者が“LeadGenerationofNovelAndrogenPureAntagonistsUsingChemogenomicalApproach”という題名でつたない講演をしました。以下にはMM2004で発表された、いくつかの演題の内容を簡単に紹介します。筆者が製薬会社勤務であることから量子化学、材料科学関連の発表が含まれていませんがご容赦ください。Predictionandfunctionalcharacterizationofdisordersregionsinproteins,DavidJones(UniversityCollegeLondon,UK)タンパク質はαヘリックスやβシートなど固い2次構造をもっていますが、そのような固い2次構造をもたない領域(disordersregion)も存在することが知られています。演者らは機械的学習法(machinelearning)によりdisordersregionをアミノ酸1次シーケンスから予測する方法を開発し、種々のタンパク質に適用しました。そして、長いdisordersregionをもつと予想されるタンパク質を同定し、そのdisordersregionがどのような機能をもっているかを調べました。Disordersregionの多くは、ligand、タンパク質、DNAなどとの結合部位や、domainlinkerなどでした。また、disordersregionは核内において転写や信号伝達に関連するタンパク質に多く存在するという興味ある知見を得ました。Theeffectofhydrationinstructure-baseddrugdesignandligand-proteinmodeling,RicardoL.Mancera(Denovopharmaceuticals,UK)Structure-BasedDrugDesignやdockingの局面では、タンパク質に強く結合した水分子(以下、結晶水と表記)を無視あるいは除去して考えている場合が多いと思います。演者らはタンパク質にゆるやかに結合しており置き換わることが容易な水分子と結晶水とを区別する方法を多変量ロジスティック回帰分析(multivariatelogisticregressionanalysis)をもちいて開発しました。さらに、bacterialneuraminidaseに対して結晶水を置いた場合と置かない場合とでdenovodesignsoftwareであるSkelgenを適用し、発生するリガンド分子に差があるかどうかを検討しました。結晶水を置かない場合は、既存の阻害剤あるいはそれに類似した構造は発生しませんでした。しかし、結晶水を置くことにより構造的に多様なリガンド(候補)分子が発生するようになりました。また、演者はligand-baseのpharmacophoremodelを構築した際にも、結晶水の位置にpharmacophorepointが現れてくることをthymidinekinaseやpoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)を例として示し、タンパク質とリガンドとの相互作用だけでなく、リガンドと水分子の相互作用も重要であることを強調していました。Novelhighaffinityp38kinaseinhibitorsbyvirtualscreeningwithGLIDE,JeremyR.Greenwood(SchrdingerInc.,USA)DockingsoftwareGLIDEを用いたvirtualscreeningに関する講演です。MAPkinasep38に対して、14venderより購入可能な100万化合物に“Drug-like”filter(分子量が150以上650以下、logPが6.5以下、logS(溶解度)が-7以上など(QikPropというソフトウェアで推算する))をかけ50万化合物とし、GLIDEでvirtualscreeningを実施しました。Dockingの良し悪しの判定にはSPおよびXPという二つのscoreを用いました。SPは力場エネルギーとChemscoreに基づいた経験的scoreの和として表されるscoreです。XPはkeybindingmotifとうまく相互作用しているときにはさらに加点されるscoreです。演者らはSPで上位1000の化合物を選択し、さらにそれらについてXPを計算し、その後タンパク質と化合物の複合体構造を構造最適化し、その結果を目視により検討することにより70化合物を選択しました。このうち構造的に新規な45化合物の購入依頼をおこない、35化合物を入手しました。入手した35化合物について10μMの濃度で阻害実験をおこなったところ11化合物が50%以上の阻害を示し、IC50は0.84~9.83μMでした。これらの結果からvirtualscreeningのヒット率は30%以上(11/35)となりました。Towards“universal”structure-activitymodelingdescriptors,D.A.Winkler(CISROMolecularScience,Australia)QSARや構造多様性の検討の際に「化学構造」をあらわす構造記述子(descriptor、構造パラメータ)の数は非常に多くありますが、これらの多くはそこに含まれている情報量が少なく、他の構造記述子との相関も高いものも多くあります。演者らはそのような観点から、より効率的で、より情報量に富んだ「普遍的な」構造記述子を導き出そうとしています。演者らは、「普遍的な」記述子として、(1)原子をvertex、原子間結合をedgeで表したmoleculargraphの隣接行列(adjacencymatrix)を固有値に分解したeigenvaluedescriptor、(2)量子化学計算によってもとめた波動関数をフーリエ変換することにより得られるmomentum-space関数から導き出されたmomentum-spacedescriptorなどについて検討しました。(1)のeigenvaluedescriptorは2Dtopologicaldescriptorの一種であると考えられます。Eigenvectordescriptorは化合物ライブラリーの多様性の解析などに頻繁に使用されていますが、QSAR解析においても有用であり、他の種類の記述子には含まれていないような情報を持っていることが演者らにより明らかになりました。(2)のmomentum-spacedescriptorは電子分布をmomentum-spaceに変換することにより、その原点が一意に定まり、分子の特性や反応性をあらわす領域が原点近傍にくるという利点を有しています。演者らはこのmomentum-spacedescriptorについて詳細な情報を得るため、High-ResolutionElectronMomentumSpectroscopyから得られる軌道像と密度汎関数法(DensityFunctionalTheory:DFT)による計算値と組み合わせることにより分子内のbondingmechanismをmomentum-spaceで解析しました。また、DFTとelectronegativityequalizationmethod(EEM)とeigenvaluedescriptorの関係についても検討しました。演者の提唱する構造記述子には含まれる情報量が多いなどの利点もありますが、その物理化学的な意味が直感的にはわかりにくいことから、デザインとして次に何をつくるかという視点でQSAR式を使おうとする場合はmedicinalchemistには使いにくいものかもしれないのでQSARの専門家がこれを補う必要があるのではと感じました。SPINIFEX.Clusteringcompoundsbasedonmaximumoverlappingsetcalculations,NeilR.Taylor(DesertScientificSoftwarePtyLtd)HTSのヒット化合物など構造的に多様な化合物をその化学構造に基づいて適切に構造分類するソフトウェアで、MedicinalChemistが目で見て分類するのと同じように分類できるものは現状ではほとんどないと言ってもいいかもしれません。演者らは、グラフ理論をベースに2Dおよび3Dのsimilaritymetricsを検討し、多様な化合物を適切に分類するソフトウェアを開発しました。ClusteringmethodはJarvis-Patrick法を使っています。Linuxcluster上でparallelに実行可能とのことです。筆者は今回が初めてのシドニーであり、初めてのオーストラリアでしたが、両学会(6DDD&MM2004)を大いにenjoyすることができました。英語圏ということもあり、やはり、町の看板、案内、レストランのメニューなどが英語で書かれていると(ドイツ語やフランス語あるいはその他の言語で書かれているのに比べて)安心して行動することができます。シドニーの町は、建物などは英国っぽい(ちなみに、町や通りの名前や言葉(英語)のしゃべり方も英国風です。かつては大英帝国に属していたので当然といえば当然ですが)のですが、例えばシドニー空港近くにはヤシの木があるなど、風景的にはアメリカ西海岸と英国のキメラ都市という感じもしました。食事の面ではシーフードがお勧めですが、日本からの観光客が多いことからか日本食レストランも数多くあり、日本食がないと駄目というかたでも問題ないかと思います。筆者の泊まったホテルの隣には日本人の経営するラーメン屋(!)がなんと2軒もならんでいて、滞在中はラーメン、チャーハン、野菜炒め定食などを日本にいるときよりも高い頻度で(統計解析をするまでもありません)食べていました。また、6DDDではオーストラリアの高名な先生方だけでなく、参加された日本の高名な先生方とも親しくお話をすることができ、大変に勉強になりました。次々回のAustralia/JapanSymposiumonDrugDesign&Development(8DDD)の際は(もちろん、その前には次回の日本開催の学会(7DDD)も)参加してみてはいかがでしょうか。学会そのものもAfter5も両方楽しめるのではと思います。本稿は大変つたない文章ですが、両学会の内容、雰囲気などが少しでも伝われば幸いです。両学会でお世話になりました諸先生がたに感謝しつつペンを置かせていただきます。/////Activities/////<会告>第32回構造活性相関シンポジウム主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会、日本農芸化学会、日本分析化学会、日本農薬学会会期平成16年11月30日(火)・12月1日(水)(第27回情報化学討論会と併催)会場つくば国際会議場(つくば市竹園2-20-3)参加登録予約申込締切10月29日(金)必着講演時間特別講演60分、一般講演15分又は25分(25分講演は講演番号の末尾に*印)。詳細は下記ホームページをご覧下さい。第1日(11月30日)座長藤原巌(9:50-10:45)K01*リバスティグミンの(R),(S)-エナンチオマ-のコンホメ-ションの類似性とAChEとの結合様式の分子軌道計算による研究(分子研)○藤田忠男K02アフィニティ樹脂における非特異的タンパク吸着に関する構造活性相関研究およびその抑制方法の開拓(大日本製薬、リバースプロテオミクス研)○山崎晃、田中明人K03EGFRおよびv-Srcチロシンキナーゼ阻害を指向したベンズアミド・ベンズアミジン誘導体の合成と構造活性相関(学習院大、国立感染症研)○中村浩之、浅野亨、吉川智裕、山本浩嗣、上原至雅座長高橋由雅(10:45-11:25)K04*記述子サンプリング法を用いた能動学習法に基づく創薬スクリーニング(日本電気、田辺製薬)○藤原由希子、山下慶子、襲田勉、麻生川稔、土肥俊、朝尾正昭、島津秀史、中尾和也、福島千晶、清水良K05B3LYP計算が示唆する昆虫フェロモンEldanolideのEAG活性と配座分布の関係(鳥取大)○早瀬修一、伊藤敏幸座長細矢治夫(13:30-14:30)JS[特別講演I]データマイニング-その発展と今後-(阪大・産研)鷲尾隆座長広野修一(14:45-15:50)K06*denovoリガンド設計法LEGENDによる創薬の可能性(医薬分子設計研)○水谷実穂、志谷和紀、市瀬多鶴子、板井昭子K07*タンパク質の誘導適合を考慮したリガンド探索システムの開発(北里大)○渡辺佳晃、竹田-志鷹真由子、荒井亮一、岩館満雄、小松克一郎、加納和彦、高谷大輔、梅山秀明K08古典的QSAR解析と分子シミュレーションとのリンク-パパインとその基質との相互作用解析-(徳島大)○ZsoltLepp、中馬寛座長梅山秀明(16:05-16:45)K09医薬品-標的分子ドッキング・シミュレーションの評価(東海大、菱化システム)○平山令明、片岡良一、後藤純一K10*計算化学手法を用いた新規キチナーゼ阻害剤のドラックデザイン(北里大)○合田浩明、酒匂佑介、広野修一座長田中明人(17:00-18:00)KS[特別講演II]siRNAやmiRNAに基づく創薬(東大、産総研)多比良和誠第2日(12月1日)座長中馬寛(9:00-10:05)K11*FUGUEを用いたAstAとAstBの触媒機構の予測(Cambridge大、山之内製薬)白井宏樹、○水口賢司K12既存薬剤に関するプロテオーム規模でのinsilico親和性フィンガープリンティング(理化研、横浜市立大、アクセルリス、NTTデータ)○佐藤一朗、HongweiHuang、黒須雅隆、松尾洋K13WindowsデスクトップPCを用いたグリッドコンピューティングによるバーチャルスクリーニングのシステム構築及び運用実績報告(NTTデータ、アクセルリス)○黒須雅隆、HongweiHuang、盛崇座長清水良(10:20-11:00)K14*薬理活性/ADME/毒性/物性を統合する「インテグレーテッド」概念の導入と適用事例(富士通、富士通九州)○湯田浩太郎、JoseMartinCiloy、北島正人K15α1-酸性糖蛋白質分子上における薬物結合部位のトポロジー解析(熊本大、北里大)○西弘二、香月正明、肱岡基樹、チュアン・トゥアン・ギャム、中山仁、山乙教之、広野修一、小田切優樹座長赤松美紀(11:00-11:30)K16疎水性評価を目的とした逆相高速液体クロマトグラフィーの構造-保持値の定量的相関解析(徳島大)○.向莉、田中秀治、中馬寛K17薬物の胎盤通過性と母乳移行性のQSAR解析-ClinicalQSAR(2)(徳島大)○日比野有紀、藤原崇、小林進一、木原勝、坂本久美子、山内あい子、中馬寛<ポスターセッション>(13:30-15:30)KP01ビス型第四アンモニウム塩系化合物の構造と制菌・細胞毒性(名古屋大、徳島大)○大倉一人、助野晃子、長宗秀明、前田拓也、高麗寛紀KP02分子動力学シミュレーションによるヒト血清アルブミンークロミフェン/ワルファリン複合体の相互作用解析(北里大)◯松下泰雄、岩田率、山乙教之、広野修一KP03HIV-1proteaseとcyclicurea系化合物の相互作用解析とQSAR(徳島大)○吉田達貞、小田木郷、中馬寛KP04Induced-fitを考慮した蛋白質-リガンド複合体の構造構築(北里大)○加倉井隆一、山乙教之、合田浩明、広野修一KP05マルチステージ・ドッキングシミュレーション…高速Poisson-Boltzmannソルバーと再スコアリング法(日本電気、日本化薬)○島田次郎、福西広晃、鷲尾巧、徳島大介、倉持浩KP06タンパク質上のリガンド結合サイトの同定:ブラウン動力学計算から得られるタンパク質の揺らぎ情報の活用(北里大)○山乙教之、鈴木賢志、広野修一KP07分子重ね合わせに基づくバーチャルスクリーニング(医薬分子設計研)○野中はるみ、富岡伸夫、板井昭子KP08SPEED98掲載化合物およびその関連化合物のアンドロゲン受容体に対する活性と3次元構造活性相関(名城大、京都大)○田村廣人、石本洋一、赤松美紀KP09PPARα-リガンド複合体の構造構築と三次元定量的構造活性相関解析(北里大)○中込泉、山乙教之、広野修一KP10感作性分散染料の構造活性相関の計算及びアレルギー性接触皮膚炎への適用(製品評価技術基盤機構、名古屋大)○佐々木和実、阪井麻里、杉浦真理子KP11糖脂質アナログの構造とゲル形成能(野口研、埼玉工業大)○唐沢知博、川上宏子、佐藤玲子、戸澗一孔KP12ダイオキシン毒性の人工レセプターによる認識(京都工芸繊維大、東北大)○細矢憲、渡部悦幸、池上亨、田中信男、久保拓也、彼谷邦光KP13CYP2Bおよび3Aとアゾール系化合物との結合相互作用の解析(徳島大)○糸川大祐、村上良真、山内あい子、中馬寛KP14環境ホルモン;エストロジェン様化合物の構造活性相関に関する理論的研究VI(立教大、産総研)○山岸賢司、常盤広明、長嶋雲兵KP15HERG阻害作用に関する構造活性相関解析(日本新薬)○吉田勝己、丹羽朋子KP16化審法試験データを用いた生物濃縮性予測モデルの作成(製品評価技術基盤機構、大阪大)笠井健二、○櫻谷祐企、山田隼、野口良行、西原力KP17分子軌道法計算によるニトロベンズアントロン類の構造変異原性相関(東邦大)○小野里磨優、大島茂KP18タンパク質三次元モチーフ辞書管理システムの開発(豊橋技術科学大)○内村尚弘、加藤博明、高橋由雅、阿部英次KP19Non-terminalvertexgraph(NTG)を利用した薬物構造データマイニングツールの開発(豊橋技術科学大)○青木寛人、高橋由雅KP20「特異性スコア」とフラグメントに基づくバーチャルスクリーニング(ファルマデザイン)○高橋理、古谷利夫KP21索引層の導入によるSOMの学習高速化と薬物構造類似性マッピングへの応用(豊橋技術科学大)○佐々木英史、高橋由雅KP22Grid技術とXMLデータベースを用いた創薬プラットフォームの構築とその応用(富士総合研、徳島大)○浜田道昭、稲垣祐一郎、中馬寛参加登録費:[一般]予約8000円、当日9000円[学生]予約3000円、当日4000円本シンポジウムの参加登録者は情報化学討論会にも参加できます(含要旨集)懇親会(情報化学討論会と合同):11月30日(火)18:30-場所:同会議場内多目的ホール[一般]予約6000円、当日8000円[学生]予約3000円、当日4000円連絡先:〒292-08181千葉県木更津市かずさ鎌足2-6-7(株)リバース・プロテオミクス研究所田中明人Tel:0438-52-3990,Fax:0438-52-3986Email:qsar32@reprori.jpホームページ:http://www.slis.tsukuba.ac.jp/qsar32/構造活性相関部会の沿革と趣旨本部会は構造活性相関懇話会として、1975年5月京都において第1回シンポジウムを開いたのが始まりである。1975年度は2回のシンポジウムを開催し、以降1978年までは依頼講演4~5件、半日の簡素な形式であった。1980年より一般講演を募集し、年1回の構造活性相関シンポジウムが関係諸学会の共催の下で開かれるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。1994年より構造活性相関懇話会の名称を同研究会と改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果たしてきた。2002年4月からは、日本薬学会の支援を受けて構造活性相関部会として新しく組織化され、関連諸学会とも密接な連携を保ちつつ構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動することとなった。1975年当時、関係する領域における科学技術のめざましい発展にともなって、医農薬を含む生理活性物質の構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が国内外に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、海外諸国における研究の紹介、および国内における研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立された。以来、懇話会として構造活性相関シンポジウムの実行支援のほか、南江堂より、化学の領域増刊122号:薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作研究への指針)、および同増刊136号:同第二集(ドラッグデザインと作用機作研究の実際)をそれぞれ1979年と1982年に編集、出版するとともに、構造活性相関講習会を開催するなど設立の趣旨に応じた活動を進めている。本部会の沿革と趣旨および最近の動向などの詳細は、(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)ホームページを参照願いたい。編集後記SARNewsの第7号をお届けいたします。本号から少し構成を見直し、未来への展望を指向した総説的な「Perspective/Retrospective」、最新の研究事例紹介の「CuttingEdge」、構造活性相関部会の主催行事や関連分野の活動を紹介する「Activities」の三本立てになりました。「Perspective/Retrospective」は京都大学大学院薬学研究科に新たに開設された医薬品理論設計学講座における、タンパク質-リガンド相互作用の高精度な解析に向けたフラグメント分子軌道法の応用についての展望をお示し頂きました。「CuttingEdge」では、我が国の製薬企業における最新事例を、新規化合物の創製と新規方法論の開発についてご紹介頂きました。「Activities」では本部会行事のご報告・会告とともに、海外での関連シンポジウムの最新動向もご報告頂いています。きたる11月30日~12月1日には、第32回構造活性相関シンポジウムがつくば国際会議場で第27回情報化学討論会と併催の形で開催されます。部会員の皆様のご参加をどうぞよろしくお願いいたします。編集委員一同、引き続き本誌の充実に努めて行きたいと考えております。皆様のご意見をお聞かせ頂けると幸いです。あわせて今後ともご協力・ご支援をお願いする次第です。(編集委員会)SARNewsNo.7平成16年10月1日発行:構造活性相関部会(常任世話人代表:藤原英明)SARNews編集委員会(委員長)清水良石黒正路黒木保久高橋由雅福島千晶藤原巌山上知佐子*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。