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SARNews No.3

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SARNewsNo.3(Oct.2002)SARNewsNo.3構造活性相関部会・ニュースレター<1.October2002>「目次」[記事]///QSAR今昔///興味の尽きない構造活性相関研究高山千代蔵・・・2///研究紹介///昆虫脱皮ホルモン活性化合物のQSAR~ClassicalQSARを中心に~中川好秋・・・5[報告]・「構造活性相関部会」の発足と会員制度のスタート藤原英明・・・10・寺田先生FIP永年薬学研究顕著功績賞受賞藤原英明・・・12[お知らせ]・第30回構造活性相関シンポジウムプログラム・・・13-1-SARNewsNo.3(Oct.2002)/////QSAR今昔/////興味の尽きない構造活性相関研究㈱住化技術情報センター髙山千代蔵大学の2回生と3回生の2年間、ドイツ語専門書講読の授業があった。今から36年前の昭和41年(1966年)4月に始まる2年間である。この授業の担当が、Hansch先生と共同でQSARを創始され、その2年前に京大に戻ってこられていた藤田稔夫先生であった。授業内容そのものは有機化学で構造活性相関とは直接関係なかったが、先生は情熱溢れる授業をされ、大いに惹かれるものがあった。そこで、4回生になって講座を選ぶとき、藤田先生の指導の下に卒論研究をやりたいという希望を持つようになった。幸いにも希望が叶い、4回生の1年間と大学院の5年間の計6年間、「アミンおよび第4級アンモニウム塩のアセチルコリンエステラーゼ阻害機構に関する研究」というテーマで、Hansch-藤田法による構造活性相関研究を行うことになった。構造活性相関との出会いである。種々の脂肪族1~4級アンモニウムイオンのAChE阻害活性を測定し、その阻害定数の解析を行ったわけであるが、その前に、本酵素の陰性部位とアンモニウムイオンの結合を明らかにする上で基礎となる知見を得るために、非酵素反応モデル系としてオクタノール/水二相系におけるアンモニウムイオンとピクリン酸陰イオンとのイオン対形成分配平衡反応を選び、平衡定数の測定と解析を行った。また、アンモニウムイオンの酵素系及び非酵素系平衡反応に寄与する窒素置換基の物理化学的効果のモデルケースとして、脂肪族アミンとCHCl3との水素結合形成反応、I2分子との電荷移動型錯体形成反応における平衡定数及び、遊離アミンのlogP値の測定と解析を行った。脂肪族アミンとCHCl3あるいはI2分子との反応の平衡定数の対数logKを解析する過程で、水素原子も含めた3つの窒素置換基の立体的及び電子的効果が以下に示す相関式(1)の形で定量的に分離されることを見出した。ここで、Σσ*は3つの窒素置換基のTaftの電子的置換基定数σ*の総和である。また、Esc1、Esc2、Esc3はそれぞれ、立体的嵩高さの小さい順に番号付けした窒素置換基R1、R2、R3のHancockの立体効果定数Escである。つまり、Esc1≧Esc2≧Esc3である。logK=ρ*Σσ*+aEsc1+bEsc2+cEsc3+d(1)窒素置換基の立体効果をΣEscの形で一括して取り扱う場合に比べて、相関性が有意に改善された。CHCl3やI2分子以外の種々の孤立電子対受容分子との脂肪族アミンの反応についても相関式(1)の形で置換基効果が表されることが判った。更に、Esc値はエステルの酸加水分解速度定数に基づき超共役効果を考慮して定義されたものであるが、種々のアルキル基及びヘテロ原子で置換された置換基-CR1R2R3のEsc値そのものが、式(2)に示す各成分置換基の値の線形結合の形で分離できることが明らかになった。Esc(-CR1R2R3)=aEsc1+bEsc2+cEsc3+d(2)相関式(1)のような形で置換基の立体効果を定量的に解析できたことは筆者にとって大きな発見であり、それ以後各種の構造活性相関解析を行う際に、パラメーターの数は増え、それに応じて化合物数を増やす必要はあるが、種々に構造変化する複数の置換基を何らかの物理化学的尺度によって分けて取り扱うことを試みるようになった。昭和49年に住友化学に入社し、藤浪曄主任研究員補(当時、後に理事、現住化技術情報センター顧問)の下で新規農業用殺菌剤の探索研究を行うことになった。具体的には、QSAR手法を活用しながら、各種のジカルボキシイミド系化合物(5員環状N-フェニルイミド類、I)のスクリー-2-SARNewsNo.3(Oct.2002)ニング合成研究を進めたのである。住友化学では早い時期から農薬創製研究におけるHansch-藤田法の有用性に着目されており、入社したときには既に、藤浪主任研究員補や鴨下克三研究員(当時、後に理事、現住友化学グループ会社社長)が藤田先生の指導の下に、それぞれ除草剤、殺虫剤のQSAR解析を進めておられた。また、2年前の昭和47年に入社し、後に水田用除草剤bromobutide(スミハーブ)の発明など優れた研究成果を挙げることになる同年輩の(故)桐野修研究員が同じ研究室におられ、Hansch-藤田法の勉強に意欲的であった。彼とは色々とディスカッションをし、彼の勉強にも少しは役に立つことができたと思っている。このような状況下で会社での研究生活をスタートすることができたのは、大いに幸せであった。藤浪博士は、昭和50年に京都で開催された記念ある第1回構造活性相関懇話会シンポジウムにおいて「除草剤における構造活性相関の一例」という演題で講演されている。桐野博士とは、bromobutideなど各種化合物系列についてQSAR解析を共同でやらせてもらった。IABNOONNOXOClClNOOClClCH3CH3procymidoneCOCH2CH(CH3)2isovaledione藤浪博士等により発明されたprocymidone(スミレックス)などジカルボキシイミド系殺菌剤においては、ベンゼン環上の3位及び5位にハロゲン原子を導入した場合、果樹・蔬菜の各種病害に対し高い効力が発揮される。筆者はこの高活性発現に対する3,5-ジハロ置換基の物理化学的意義をHansch-藤田法により明らかにした。その際、イミド環から同じメタ位にあたる3位と5位の2つの置換基をその立体的嵩高さにより区別することがキーポイントとなった。上記の相関式(1)や(2)を導いたときの経験が役に立ったのである。このQSAR解析の結果は、昭和53年に大阪で開催された第5回構造活性相関懇話会シンポジウムで発表した。また、昭和60年に京大会館で開かれた構造活性相関懇話会主催の講習会「定量的構造活性相関の基礎と応用」において、具体的に解析を行う場合の手順を解説する例として紹介する機会を与えてもらった。また、QSARを活用してイミダゾリジンジオン類の構造修飾を行い、ナシ黒斑病やリンゴ斑点落葉病などのアルタナリア病害に卓効を示す開発候補化合物isovaledioneを見出すことのできたのも懐かしい思い出である。この候補化合物ではイミダゾリジンジオン環の1位窒素にイソバレロイル基が結合しているが、QSAR解析を行うことにより、このアシル基が抗菌活性にとって最も好ましい置換基の一つであると結論付けられた。殺菌剤の合成研究と並行して、当時千里の住友化学計数センターにおられた(故)吉田元二氏の協力を得てHansch-藤田法により高活性化合物をデザインするためのコンピュータープログラムPREHACを開発することができた。このプログラムの内容については、1982年に南江堂より刊行された構造活性相関懇話会編集の「薬物の構造活性相関II」に詳しく紹介している。また、PREHACプログラムを用いて、ジカルボキシイミド系殺菌剤においてはベンゼン環置換基として3,5-ジハロ置換基が最良であると結論付けることができた。吉田氏には数理統計学・コンピューターケミストリーの専門家として、平成12年に不帰の人となられるまで色々と相談に乗っていただいた。入社後、Hansch-藤田法以外にも、活性の有無や、段階的な数値で表された活性強度と化学構造の相関関係を解析するための手法として、パターン認識法に興味を持つようになった。そのようなとき、豊橋技術科学大学の(故)佐々木愼一先生と、入社以来の恩人で当時住友化学農薬事業部の技術部長(後に専務)だった(故)西澤吉彦博士のお取り計らいで、筆者が佐々木先生の研究室「化学情報学研究室」に“留学する”という大きなチャンスが与えられたのである。昭和56年10月から翌々年の3月までの1年半、研究と教育に充実した日々を送ることができた。この間、昭和57年11月には構造活性相関シンポジウムと情報化学討論会が豊橋技術科学大学で初めて併催された。この併催は両会の相乗的発展を考えられた佐々木先生が発案され、構造活性相関懇話会の代表だった藤田先生と相談されて実現したものである。佐々木研究室総出でお世話をして成功裡に終え-3-SARNewsNo.3(Oct.2002)ることができ、世話役の一人として充実した気分を味わうことができた。住友化学に戻った昭和58年、吉田氏をリーダーとした農医薬の分子設計のためのコンピューターグラフィックスシステムACACSの開発が日本電気との共同の下にスタートし、その開発メンバーに加わった。開発当初、分子のスペースフィルモデルがぎこちないながらもグラフィック画面上で回転するのに一同感激したのを思い出す。このACACSシステムには、Hansch-藤田法を始め、各種のパターン認識の手法、分子軌道法プログラム、分子モデリング機能などが組み込まれた。三次元QSAR解析にも利用できるシステムである。昭和61年、量子化学の専門家である栗田靖之氏が入社され、一緒に研究を行うようになった。分子軌道法計算結果の解釈について、またコンピューターについても色々と教えてもらった。彼はまた、ACACSシステムの機能アップに大いに貢献した。そして、彼とともにピレスロイド系殺虫剤の配座解析・形状比較などの研究をACACSを活用して行ったのである。昭和61年に科学技術庁プロジェクト「化学物質設計等支援のための知識ベースシステムに関する研究(第Ⅰ期)」がスタートした。このプロジェクトで、藤田先生を中心に薬物リード構造展開知識ベースシステム「EMIL」の開発が進められることになった。このシステムの開発には大学・公的研究機関・企業の多くの方が関与されたが、そのメンバーの一人として参加した。藤田先生が発案された本システムは、過去に行われた医農薬の構造展開に関する種々の事例を構造変換パターン規則のデータベースとして参照し、ある生理活性化合物から新しいリード化合物をデザインするためのものである。当該プロジェクトは平成3年に終了したが、その後もEMILの開発は進められている。現在、医薬や農薬の創製研究の場ではコンビナトリアルケミストリーやハイスループットスクリーニングに大きな期待がかけられ、欧米や日本の多くの企業で利用されてきている。これらの技術を活用する上で、各種薬剤についての構造活性相関に関する知見や解析結果が重要な役割を果たすものと考えられる。目的とする生理活性についてQSAR解析結果など適切な構造活性相関情報があれば、その情報に基づいて設計・構築されたライブラリーを用いてアッセイを行った場合、そうでない場合に比べて高活性化合物がより多く得られると期待される。Hansch-藤田法が創始されて40年、筆者が構造活性相関の世界に入って早や35年近く経った。この間、コンピューター技術の進歩とともに三次元QSARなど様々な構造活性相関の方法論が開発され、Hansch-藤田法など初期の頃に開発されたQSARは今や古典的QSARとさえ呼ばれている。コンピューターが手軽に利用でき、種々の計算が簡単にできるようになった今、あらためてコンピューターに頼り過ぎないようにすることの重要性を感じている。コンピューターはあくまでも創造的な研究を支援するための手段である。無理やり構造と活性の関係を求めるようなことにならないように、データを深く吟味することが大切である。そのように心掛けることにより、新しい発見にも繋がると考えられる。それを支援するのがコンピューターである。-4-SARNewsNo.3(Oct.2002)/////研究紹介/////昆虫脱皮ホルモン活性化合物のQSARClassicalQSARを中心に京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻中川好秋1.はじめに筆者は、京都大学の生物調節化学(元農薬化学)研究室にお世話になってから20年余りの間、一貫して昆虫成育制御物質の構造活性相関研究に携わってきた。現在は昆虫脱皮ホルモン(I,20-hydroxyecdysone)のアゴニストとしての作用を示すジベンゾイルヒドラジン系列化合物(II)の定量的構造活性相関(QSAR)を中心とした研究を行っている。この系列の化合物の中には、脱皮ホルモンのアゴニストとして作用するほか、鱗翅目害虫に対して強力な殺虫力を示すものがあり、これまでに置換基のXとYとの組み合わせを異にする4種類の誘導体が殺虫剤として上市され農業用に実用されている。本稿においては、筆者らが行ってきたQSAR研究を、虫体レベルでの殺虫活性、組織レベルでのホルモン活性、細胞レベルで検討したホルモン活性および受容体結合性、および受容体遺伝子のクローニングを経て“発現”された受容体に対する結合性に分けて簡単に紹介する。詳細については、引用された原著論文をご覧頂きたい。OHOHOHHOOHOHOHNNHOOXY(I)(II)20221417A環B環2.定量的構造活性相関i)殺虫活性ジベンゾイルヒドラジン誘導体(II)において、YをHに固定し(B環は無置換)、A環上置換基のXを種々変化した化合物Series-A、Xを2-Clに固定し、B環上置換基のYを様々に変化した化合物Series-Bを合成し、ニカメイチュウに対する殺虫活性を測定した。A環およびB環上に単置換を行った場合の殺虫活性に対する置換基効果をHansch-Fujita法により定量的に解析したところ、それぞれ式1および2を導くことができた。1,2)殺虫活性の指標、pLD50は50%致死薬量[LD50(mmol/insect)]の逆対数である。Series-A(X置換基のA環上の効果)pLD50=0.98logP+1.28σIortho–0.48ΔVwmeta–0.89ΔVwpara+3.62(1)n=27,s=0.300,r=0.899,F4,22=23.29Series-B(Y置換基のB環上の効果)pLD50=0.72logP–0.88ΔLortho–0.98ΔVwmeta–0.59ΔLpara+4.93(2)n=30,s=0.254,r=0.912,F4,25=30.91各式のlogPは分子の疎水性を表すパラメーターで、Pは1‐オクタノール・水二相間の分配係数である。LogPは本来の実測値あるいは類似の化合物の実測値からの推測により求められた値で-5-SARNewsNo.3(Oct.2002)ある。またσIはChartonにより定義された置換基の誘起的電子求引性パラメーターである。VwはBondiにより求められた置換基のVanderWaals体積、LはVerloopにより定義されたSTERIMOLパラメーターの1つで置換基の長さの指標である。Δは、H原子についてのそれぞれの値を差し引いた値であることを示し、従ってH原子についてはσI,ΔVw,ΔLのいずれもゼロの値となる。式1および2から、殺虫活性は化合物全体としての疎水性が大きいほど高くなることが示される。またA環側では、オルト位置以外の、またB環側ではいずれの位置においても、異なった種類(長さと体積)で表わされはするが立体効果が関与する。いずれも負の項で表わされ、AおよびB環ともに“大きな”置換基の導入は活性にとって不利であることがわかる。これらの不利な立体効果は置換位置によってその程度が異なり、A環では、メタ位置の方がパラ位置よりも置換基の立体効果が小さいこと、B環においてはパラ位置への置換基の導入がオルトやメタ位置より好ましいことが示唆されている。これらの結果は二置換体における置換基効果にも反映され、A環の3,5-位置がともにメチル基で置換され、B環のパラ位置にエチル基が導入されたtebufenozideの高い殺虫活性を合理的に説明する。即ちこれらの置換基は、分子全体の疎水性を高くする一方で不利な立体効果の影響をできるだけ小さく抑えるように置換されているものと考えられる。同じ鱗翅目の害虫であるシロイチモジヨトウに対する殺虫活性にもよく似た置換基効果が観察された。3,4)Tebufenozideは鱗翅目昆虫に対して高い殺虫活性を示すが、双翅目や鞘翅目昆虫に対してはそれほど高い活性を示さない。筆者らは、鞘翅目害虫であるコロラドハムシに対する殺虫活性における置換基効果を検討したところ、鱗翅目のニカメイチュウとは大きく異なることがわかった。単置換体について解析を試みたところ、A環およびB環上の置換基効果について、それぞれ式3,4が得られた。5,6)Series-A(X置換基のA環上の効果)pLD50=0.20ΔVwortho+0.47ΔB1ortho+3.29πmeta–2.25(πmeta)2–0.86ΔB5para+5.19(3)n=28,s=0.235,r=0.976,F5,22=87.73Series-B(Y置換基のB環上の効果)pLD50=0.89logP+0.40ΔB5ortho+0.44ESmeta+0.44ESpara+1.09HB+2.97(4)n=28,s=0.328,r=0.842,F5,22=10.68式3,4においてB1,B5はやはりVerloopの定義によるSTERIMOLパラメーターで、それぞれ置換基の最小幅、最大幅を表す。ESはTaft-Kutter-Hanschの立体パラメーターで、Hを基準としそれより大きいすべての置換基で負の値をとる。ESはΔB1とは異なった基準で定義されたものであるが、ほぼ置換基の横幅の指標と考えてよい。πmetaはA環上のメタ置換基の疎水性パラメーターで、その自乗項が負の係数をもって有意であることから、πmetaに関しては最適値の存在することがわかる。詳細な定義は省略するがHBはB環のパラ位置に水素結合性置換基が存在する場合に必要とされる変数である。定量的な解析を行うことにより、鱗翅目昆虫に対する式1,2との顕著な相違が客観的に了解される。ii)脱皮ホルモン活性筆者らは、先にニカメイチュウの培養表皮を用いて脱皮ホルモンアゴニストの活性を定量的に求める検定系を確立した。7)この系を用いて各種置換ジベンゾイルヒドラジン誘導体のアゴニスト活性pEC50(EC50:50%有効濃度,M)を求め、殺虫活性pLD50と比較したところ、両者の間に良好な直線関係のあることがわかった。即ちジベンゾイルヒドラジン類に関してはホルモンとしての最適活性濃度EC50と、用量の増加によって殺虫効果を示すに到る量LD50とは対数の尺度でほぼパラレルに変化する。ホルモン活性を測定した化合物に関してQSAR解析を行ったところ、Series-AとB化合物をあわせて式5が得られた。8)Series-AandB(X+Y)pEC50=1.02logP+1.40σIortho(X)–0.52ΔVwmeta(X)–1.08ΔVwpara(X)–0.90ΔVwortho(Y)–1.17ΔVwmeta(Y)–0.77ΔVwpara(Y)+4.06(5)n=37,s=0.339,r=0.900,F7,29=17.68-6-SARNewsNo.3(Oct.2002)式5の各項は、式1および2に含まれている項と良好な対応を示している。ただし式5におけるホルモン活性に対する立体効果は、一種類の立体パラメーターVwで関係付けられている。また20-hydroxyecdysoneなどのステロイド型アゴニストはニカメイチュウに対し殺虫活性を示さないが、培養表皮系においては強力なホルモン活性を示す。そこで、ステロイド型アゴニストについても培養表皮系を用いてホルモン活性を測定し9)、ジベンゾイルヒドラジン類と合わせて、脱皮ホルモン活性について定量的構造活性相関解析を行った。20-Hydroxyecdysoneの誘導体で、17位の側鎖の構造が異なった5種のアゴニストと、A環およびB環に種々の置換基が導入された37個のジベンゾイルヒドラジン類の3次元構造を立ち上げCoMFA法を用いて最良の重ね合わせを検討したところB環部分が20-hydroxyecdysoneのアルキル側鎖部分に対応する可能性の高い結果が得られた。それでB環部をアルキル鎖で置き換えたアルキルベンゾイルヒドラジン類を合成し、ホルモン活性を測定したところ、B環部分構造をC5~C7の直鎖あるいは末端に枝分かれを持ったアルキル基で置き換えた誘導体にも高い脱皮ホルモン活性が認められた。11,12)一方A環部をC4~C6のアルキル鎖で置き換えた化合物の活性は極めて低いことがわかった。以上の結果は、受容体との結合においてジベンゾイルヒドラジン類のB環部分が20-Hydroxyecdysoneの17位の側鎖部分に対応している可能の高いことを示唆している。13)また、筆者らの重ね合わせの様式はモデリングによって構築されたエクダイソン受容体とリガンドとの結合様式から予測される重ね合わせに近いものであった。14)iii)培養細胞における脱皮ホルモン受容体との結合活性昆虫の培養細胞を用いると脱皮ホルモン活性とともに(みかけの)受容体結合活性を容易に測定することができる。筆者らは鱗翅目昆虫由来のSf-9細胞と、双翅目昆虫由来のKc細胞への[3H]ponasterone-A(20-hydroxyecdysoneのアゴニスト)の取り込みに対する種々の脱皮ホルモンアゴニストの拮抗効果を検討した。15,16)種々のアゴニストについて、放射能の取り込みに対する濃度応答曲線を描き、その曲線から50%取り込み阻害濃度IC50(M)を求め、その逆対数値pIC50を受容体結合活性の指標とした。ニカメイチュウ培養表皮系で求めたホルモン活性(pEC50)と比較したところ、図2に示すように、科は異なっても同じ鱗翅目であれば受容体結合活性と脱皮ホルモン活性はほほ直線的に対応することがわかった。綱目が異なるハエ、蚊(双翅目昆虫)においては、ステロイド型アゴニストに関しては受容体結合活性と脱皮ホルモン活性との間に直線関係が存在するが、ジベンゾイルヒドラジン類に関しては直線関係は存在しない。pEC50(Chilo)pIC50(Sf-9)5678945678910PoAHalofenozideMethoxyfenozideTebufenozideE20ECyaInoMaARH-5849図2:ニカメイチュウ培養表皮系(Chilo)における脱皮ホルモン活性[pEC50(Chilo)]とSf-9細胞に対する脱皮ホルモン受容体結合活性[pIC50(Sf-9)].PoA:ponasterone-A,20E:20-hydroxy-ecdysone,Cya:cyasterone,MaA:makisterone-A,Ino:Inokosterone,E:ecdysone.(Elsevierから許可を得て転載)-7-SARNewsNo.3(Oct.2002)細胞をそのまま用いて受容体結合活性を評価する場合、Sf-9とKc細胞との間で細胞膜の透過性が異なる可能性があり直線関係が得られないことが考えられた。そこで、細胞を超音波により破砕して調製した標品を用い同様な受容体結合実験を行ったが、Sf-9,Kc細胞をそのまま用いて測定した場合とほぼ一致する結果が得られた。したがって、細胞をそのまま用いても受容体結合活性はほぼ正しく評価され膜透過性の影響は無視できるものと考えられる。17)iv)脱皮ホルモン受容体遺伝子のクローニング通常ステロイドホルモンは核内受容体に結合したのち遺伝子に作用し、様々な生理現象を引き起こす。したがって、ホルモン作用の発現にはホルモン分子が核内に取り込まれ受容体と結合することが必須である。ほ乳類などではステロイド受容体はホモダイマーとして働くが、昆虫の脱皮の場合、受容体はエクダイゾン受容体(EcR)とUSPと名づけられるタンパク質とからなるヘテロダイマーとして機能する。嘗ては、昆虫体から直接ホルモン受容体を単離・精製しようと試みられていたが、存在量が少ないため多くの時間と経費がかかり、そのうえEcRとUSPを分離することも困難であった。ところが、最近の分子生物学の目覚ましい発展により、種々の昆虫のホルモン受容体タンパク質に対応する遺伝子のクローニングと、それに続くinvitroでの受容体タンパク質の大量発現が容易となり、受容体タンパク質の1次構造はもとより結晶構造も明らかになりつつあるのが現状である。そしてすでに鱗翅目、双翅目、直翅目、鞘翅目など種々の昆虫種からEcRとUSPの遺伝子がクローニングされ、発現受容体として機能するヘテロダイマーは核内受容体スーパーファミリーに属すること明らかにされた。一般に核内受容体タンパク質鎖上にはA/B,C,D,E,(F)の各領域が分かれて存在している。CはDNA結合領域、Eはリガンド結合領域である。C領域のタンパク質のアミノ酸配列は昆虫の種全般を通して非常に高いホモロジーをもっているが、E領域に関しては昆虫の綱目間で若干異なることが知られている。そしてこのことがジベンゾイルヒドラジン系殺虫剤が種間で受容体結合活性とホルモン活性の関係を異にすることと、殺虫活性に選択性をもたらしている原因ではないかと考えられている。筆者らのグループでも水口らがニカメイチュウのEcRとUSPのクローニングによる発現に成功し、他の鱗翅目昆虫から得られた受容体と高いホモロジーを示すことを明らかにした。18,19)現在、ニカメイチュウのEcRとUSPをinvitroで発現させ、発現タンパク質を用いて受容体結合実験を行っているところである。近い将来にはこれらのタンパク質を用いて各種脱皮ホルモン類の受容体結合活性を測定し、置換基の効果を詳細に検討する予定である。そして受容体構造とリガンド側の構造活性相関研究から選択性発現の因果関係が分子(下)レベルで解明できるものと期待している。3.おわりに本研究は殺虫剤の構造活性相関に関するものである。医薬の研究を行っておられる方にとって農薬はあまり興味の対象ではないかも知れないが、昆虫のキチン合成阻害剤の類縁体の中には抗癌作用を示すもの、神経系に作用する殺虫剤の中にはアルツハイマー病に効果があるものもあると言われている。医薬研究に携わる人は農薬の研究に、農薬関係者は医薬の構造活性相関研究に注意を払うことによって新たな発見が生まれる可能性があるのではないかと考えるのである。本稿で紹介したジベンゾイルヒドラジン類は昆虫のステロイドホルモン活性を示す化合物として作用するもので、医薬としてのステロイド剤の構造活性相関や受容体レベルの研究とも、どこかでオーバーラップするように思う。最後になりましたが、京都大学名誉教授藤田稔夫先生には色々とご指導を賜り心から感謝の意を表します。参考文献1.N.Oikawa,Y.Nakagawa,K.Nishimura,T.UenoandT.Fujita.Pestic.Sci.41,139-148(1994).2.N.Oikawa,Y.Nakagawa,K.Nishimura,T.UenoandT.Fujita.Pestic.Biochem.Physiol.48,135-144(1994).3.G.Smagghe,Y.Nakagawa,B.Carton,A.K.Mourad,T.FujitaandL.Tirry.Arch.InsectBiochem.Physiol.41,42-53(1999).4.Y.Nakagawa,G.Smagghe,L.Tirry,andT.Fujita.PestManag.Sci.58,131-138(2001).5.Y.Nakagawa,G.Smagghe,S.Kugimiya,K.Hattori,T.Ueno,L.TirryandT.Fujita.Pestic.Sci.55,909-918(1999)-8-SARNewsNo.3(Oct.2002)6.Y.Nakagawa,G.Smagghe,M.V.Paemel,L.TirryandT.Fujita.Pest.Manag.Sci.57,858-865(2001).7.N.Oikawa,Y.Nakagawa,Y.Soya,K.Nishimura,N.Kurihara,T.UenoandT.Fujita.Pestic.Biochem.Physiol.47,165-170(1993).8.Y.Nakagawa,Y.Soya,K.Nakai,N.Oikawa,K.Nishimura,T.Ueno,T.FujitaandN.Kurihara.Pestic.Sci.,43,339-345(1995).akagawaetal.,Pestic.Sci.,43,339-345(1995)9.Y.Nakagawa,K.Nishimura,N.Oikawa,N.KuriharaandT.Ueno.Steroids60,401-405(1995).10.Y.Nakagawa,B.Shimizu,N.Oikawa,M.Akamatsu,K.Nishimura,N.Kurihara,T.UenoandT.Fujita.ACSSymp.Ser.,606,288-301(1995)11.Shimizuetal.,Steroids,62,638-642(1997)12.Bun-ichiShimizu,Y.Nakagawa,K.Hattori,K.Nishimura,N.KuriharaandT.Ueno.Steroids,65,117-123(2000)13.Y.Nakagawa,K.Hattori,B.Shimizu,M.Akamatsu,H.MiyagawaandT.Ueno.PesticSci.53,267-277(1998).14.J.-M.Wurtz,B.Guillot,J.Fagart,D.Moras,K.TietjenandM.SchindlerA,ProteinSci.,9,1073-1084(2000)15.Y.Nakagawa,C.MinakuchiandT.Ueno.Steroids,65,537-542(2000)16.Y.Nakagawa,C.Minakuchi,K.TakahashiandT.Ueno.InsectBiochemMolec.Biol.,32,175-180(2002)17.C.Minakuchi,Y.NakagawaandH.Miyagawa.J.PesticideSci.inpress18.C.Minakuchi,Y.Nakagawa,M.Kiuchi,A.Seino,S.TomitaandM.Kamimura.InsectBiochem.Molec.Biol.,inpress19.C.Minakuchi,Y.Nakagawa,M.Kiuchi,A.Seino,S.TomitaandM.Kamimura.InsectBiochem.Molec.Biol.,inpress-9-SARNewsNo.3(Oct.2002)////報告/////「構造活性相関部会」の発足と会員制度のスタート常任世話人代表阪大・医藤原英明かねてより構造活性相関研究会では「学会化・組織化」について議論を重ねていたが、日本薬学会の支援を受けて本年4月1日より構造活性相関部会として発足することとなった。薬学会が「活性化」を進めるなかで部会制度を抜本的に拡充するというちょうど良い機会に恵まれ、これまで医薬化学部会の中で活動して来た構造活性相関研究会が新しい部会として認められたわけである。その意味で、ちょうど機は熟したと言えよう。構造活性相関部会の設立は、本誌No.2で簡単に記したように、6名の常任世話人を中心に発起人55名の連記のもと本年1月末に申請し、4月1日から正式に認められ発足した。薬学会の中で部会として認められたのは、設立申請書に記したように「生(薬)理活性物質の構造活性相関研究は薬学の基盤を為す種々の領域を包含し、それらを統合した形で新薬の構造設計を目指す重要な領域である」との認識からと信ずるが、活動内容は以下のとおりである:「構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に目標を置き、関連する基礎ならびに応用の分野で研究に携わる部会員の研究発表、知識の交換ならびに部会員相互間および国内外関連学協会との連携の場となり、構造活性相関研究に関する学術の進歩普及、医薬・農薬の新薬開発研究基盤の充実強化をはかり、もって薬学会はじめ関連学会および製薬関連産業の発展に寄与する」。具体的な活動内容としては、「医薬・農薬の構造活性相関に関する方法論の発展を図り、薬物と生体高分子との相互作用の分子機構、生体高分子の構造と機能、薬物の薬効・吸収・代謝・排泄・毒性、更に環境汚染物質の生体・生態系に対する環境毒性および内分泌撹乱活性などの諸課題に関する構造活性相関研究を推進する。併せて、これらの研究を支えるデータベース利用技術や薬物分子情報処理に関する基盤技術における研究の促進を図る」となる(部会申合せより抜粋)。薬学会の中では8つの専門部会(化学系薬学部会、物理系薬学部会、生物系薬学部会、医療薬科学部会、環境・衛生部会、医薬化学部会、構造活性相関部会、薬学研究ビジョン部会)が、それぞれの研究分野から学会の発展に向けて活動するわけであるが、我々の分野は医薬化学部会始め他の専門部会とも関係が深く、さらには薬学会にとどまらず、化学会、農芸化学会等の諸学会とも密接に関係しており、その意味で「醸成部会」に属し、会員を特定学会に限ることなく広く受け入れるよう計画されている。部会の発足を機に、会員制度を抜本的に整備することとなった。これまで、構造活性相関研究会あるいはその前身の懇話会では、いわゆる同志の会として会員名簿を作成せず自由闊達な関係諸氏の活躍のもとに発展して来たと言えよう。しかし、部会として組織化されたのを機に、会員制度を整備し、機能的効率的な部会運営によりさらなる発展を期することとなった。具体的には、「構造活性相関部会申合せ」を作成し、それに沿って会員募集を開始するわけである。「申合せ」の中の部会員関係の項目は以下に抜粋するとおりであるが、一般部会員の方は当面会費は無料であるので、奮って会員登録をお願いする次第である。部会員となると、構造活性相関研究に関する情報が自動的に受けられるなど種々の特典があり、研究室に居ながらにして国の内外の当該分野の動向や発展の状況を知ることができ、これは大きなメリットと言えよう。なお、部会に関する最新情報は部会ホームページ(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)に掲載されているので、そちらも十分活用いただきたい。(部会員の種類)第6条部会員は、一般部会員、学生部会員、法人賛助部会員の3種とする。第7条一般部会員は、構造活性相関について学識・経験または関心のある個人とする。学生部会員は、大学またはこれに準ずる学校に在籍する学生であって、構造活性相関に関心のある個人とする。第8条法人賛助部会員は、構造活性相関に関心があり部会活動に理解のある法人とする。-10-SARNewsNo.3(Oct.2002)第9条部会員はニュースレター(電子版)の発行とその他各種関連事業の案内を自動的に受けるものとする。法人賛助部会員は部会の主催事業に1口当り1名の優先無料参加が出来る他、参加しない場合も講演要旨集などの資料提供を受けるものとする。(部会費)第10条一般部会員及び学生部会員の会費は、当分の間、無料とする。法人賛助部会員の会費は年額1口50,000円とする。(入会)第11条部会に入会しようとする者は、一般部会員および学生部会員にあっては、氏名、所属、連絡先(電子メール宛先を必ず含むこと)、を明記の上、部会宛(常任世話人宛)申し込むこと。法人賛助部会員にあっては、法人名、担当者氏名、担当者所属、連絡先(電子メール宛先を必ず含むこと)、を明記の上、部会宛(常任世話人宛)申し込むこと。会費の納入は部会からの請求書に基づき速やかに行うこととする。以上のように順調に構造活性相関部会としてのスタートをきることが出来たことを、当該分野に関わる者として皆さんと共に喜び合うと共に、これまで諸先生方が我々に注いで下さった御支援と御援助・御努力に心から御礼申し上げたい。特に、最近の10年近くにわたりお世話になった医薬化学部会の諸先生方には、構造活性相関分野への御理解と御支援に深く感謝し、今後とも、機に応じて兄弟部会として研究・学会活動を連携して行い、部会活動の実を上げて行くことを願う次第である。当面は、1つの部会としてシステムの立ち上げと充実した運営のために、課題も多いと思われるが、関係者一同が気持ちを引き締めこれらを乗り越え前進して行く覚悟である。新しく誕生した構造活性相関部会への皆さんの御理解と御支援をお願いすると共に、新しい部会が皆さんの御研究の発展に役立つことを心より期待して稿を終えたい。-11-SARNewsNo.3(Oct.2002)////報告/////寺田先生FIP永年薬学研究顕著功績賞受賞常任世話人代表阪大・医藤原英明本年9月1日、寺田弘先生が国際薬学連合(FIP)教育研究財団の2002年FIP永年薬学研究顕著功績賞を受賞された。授賞式はフランスのニースで9月1日に開催されたFIP第62回年会の開会式において盛大に挙行された。先生はこの3月末徳島大学を停年退官されたばかりである。この機会に、これまでの永年の薬学研究の成果と、先生の個性を生かした数々の二国間シンポジウムに象徴される国際協力推進の功績が認められたものであり、非常に喜ばしい限りである。国内では、9月20日に受賞祝賀会がホテルニューオータニで開催され、約200名が寺田先生御夫妻を囲んで記念すべき受賞をお祝した。祝賀会は、永井恒司FIP元副会長・FIP教育研究財団設立理事の挨拶から始まり、池上四郎日本薬学会会頭および杉山雄一FIPBoardofPharmaceuticalScienceのChairmanの祝辞の後、野口照久テノックス研究所長の音頭により乾杯を行い、会場は歓談に花が咲く場となった。今回の受賞は永年の顕著な功績に対して行われたが、ちょうど本年4月より構造活性相関部会が先生の御尽力により薬学会の中に新しく組織化されたこともあり、部会としても二重の喜びである。先生は、停年御退官後は東京理科大に迎えられ、益々の御活躍が期待されている。日本の西と東から、地球の西と東をつなぐスケールの大きなさらなる飛躍を期待し、受賞記念の報告といたします。9月20日にホテルオークラで開かれた受賞祝賀会のスナップ写真(牧野公子先生より寄贈)左より乾杯の御発声をなされました野口照久先生、受賞されました寺田弘先生と御令室様。-12-SARNewsNo.3(Oct.2002)////お知らせ/////第30回構造活性相関シンポジウム主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会、日本農芸化学会、日本分析化学会、日本農薬学会会期平成14年11月12日(火)・13日(水)[第25回情報化学討論会と併催]会場ホテル日航豊橋[〒441-8061豊橋市藤沢町141]参加登録予約申込締切10月11日(金)必着講演時間特別講演60分、招待講演45分、一般講演15分又は25分(25分講演は講演番号の末尾に*印)。詳細は下記ホームページをご覧下さい。第1日(11月12日)座長赤松美紀(10:00~10:40)K01分配係数logPの非経験的予測(2):水素結合のlogPへの影響(徳島大薬・神戸薬大・エミルプロジェクト)○森充史・田中秀治・山上知佐子・藤田稔夫・中馬寛K02*溶媒和モデルSM5.4で計算するLogPのAricept-Acetylcholinesterase結合系のQSAR解析への実際的応用((有)分子研)○藤田忠男座長加藤博明(10:40~11:35)K03*ニューラルネットワークの情報処理におけるデータ欠損の取り扱い(星薬大)〇市川紘K04ニューラルネットワークへの複数のQSAR因果関係の教示(星薬大)〇市川紘・坂田健座長常盤広明(11:35~12:05)K05Hebbian学習型ニューラルネットワーク法を用いた非線形主成分分析法の改良と薬学関連分野への応用(大阪大院薬・大阪大薬・大阪大遺伝情報実験セ)田中優子・岡本晃典・松本朋子・黒川顕・安永照雄・○高木達也K06超高速分子計算を用いる生体関連分子の活性・機能予測システム(3)-HIV-プロテアーゼ阻害剤の解析への応用(富士総研・産総研・豊橋技科大・筑波大電子情報・九大院システム情報科学・徳島大薬)○馮誠・稲垣祐一郎・西川武志・長嶋雲兵・後藤仁志・朴泰祐・佐藤三久・村上和彰・中馬寛座長寺田弘(13:30~14:30)PL1[特別講演Ⅰ]わが国の製薬産業と医薬品情報の現状(日本医薬情報センター)松本和男<ポスターセッション>(14:45~16:45)座長(17:00~18:00)PL2[特別講演Ⅱ]Computer-AssistedApplicationsandInformationNeedsforthePracticingChemist(エルランゲン・ニュルンベルグ大学)Prof.JohannGasteiger第2日(11月13日)座長久保寺英夫(9:00~9:40)K07*疎水性ポテンシャルを利用したタンパク分子上のリガンド化合物結合サイトの同定(北里大薬)○山乙教之・広野修一K08Dihydropyrazine類のDNA鎖切断能と構造との相関について(宮崎医大医・熊本大薬・東京医歯大生材研・福岡大薬・都老人研)○山口忠敏・原野一誠・伊藤茂・鹿志毛信広・松本茂信座長藤原巌(9:40~10:20)K09*修飾プロリンによるminiANPのコンフォメーション解析(サントリー生有研)○菅瀬謙治・堀川学・石黒正路K102D-fingerprintを用いた代謝安定性の定量的構造物性相関(ファイザー製薬中央研)○内山守・服部一成・嶋田薫座長黒木保久(10:35~11:15)K11*薬理活性およびADMETを同時評価するインテグレーテッド高速/仮想インシリコスクリーニング(Ⅱ):NTP発癌性データ(富士通九州システム・富士通)北島正人・CiloyMartin-13-SARNewsNo.3(Oct.2002)Jose・○湯田浩太郎K12NonTerminalVertexGraph(NTG)を利用した薬物の構造特徴解析(豊橋技科大)○大野貴生・高橋由雅座長藤田稔夫(11:15~12:00)K13[招待講演]リボゾームRNA遺伝子のコピー数の増減はどのようにして起こるか?―薬剤耐性機構の理解とタンパク質過剰生産系の開発を目指して―(岡崎国立共同研究機構・基生研)堀内嵩座長阿部英次(13:10~13:55)K14[招待講演]DNA-分子の操作と計測(豊橋技科大)水野彰座長高木達也(13:55~15:00)K15*カスケードモデルによるリード化合物特徴のマイニング(関西学院大)○岡田孝・山川眞透K16*AGMによる立体構造と生理活性の相関解析(大阪大産業科学研・日本IBM)○西村芳男・鷲尾隆・吉田哲也・元田浩・猪口明博K17TFSを利用した薬物活性クラス分類とデータマイニング(豊橋技科大)○藤島悟志・横江恭子・高橋由雅<ポスターセッション>11月12日(14:45~16:45)KP01三置換・四置換アルケン型ジペプチドイソスターの合成と環状RGDペプチドへの応用(京大院薬)○大石真也・新居田歩・鎌野高恵・玉村啓和・大高章・藤井信孝KP02ヒト特異的細胞溶解毒素インターメディリシンの構造と機能の解析(名大院生命農学・徳島大工・徳島文理大)○大倉一人・大和美紀・伊藤亘・龍田季代子・宅見信哉・尾崎名奈・津下英明・勝沼信彦・高麗寛紀・長宗秀明KP032D-fingerprintを用いた血液脳間の薬物濃度比の定量的構造物性相関解析(ファイザー製薬中央研)○服部一成・内山守KP04ベンゼン環に種々の置換基を有する2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾリン類の合成と,ナミハダニに対する殺卵活性の定量的構造活性相関(八洲化学・京大院農)○鈴木純二・戸田和哉・石田達也・丹治功男・中川好秋・宮川恒KP05PesticidePersistenceinenvironment–DataCollectedandPredicted(豊橋技科大)○AlikhanidiSokratis・高橋由雅KP06水銀(II)化学種のシステインとの相互作用に関する理論的研究(茨城大理)○森聖治・須藤和徳・岸高義KP07オリゴエチレングリコール脂質による糖鎖密度の制御とレクチンによる糖鎖認識への影響(野口研)○佐藤玲子・鈴木一充・戸澗一孔KP08野生型および変異型cytochromeP4502C19への(S)-mephenytoinのドッキングに関する理論的研究(富山化学・北里大薬)○小田彰史・山乙教之・広野修一KP09ヒト血清アルブミン-タモキシフェン複合体モデルの構築と相互作用解析(北里大薬)○松下泰雄・道券孝子・広野修一KP10リガンド認識仮説に基づくGPCR構造モデルデータベース(ファルマデザイン・サントリー生有研)吉川寧・○米田照代・古谷利夫・石黒正路KP11多変量化学データ可視化ツールMolSpaceの開発:化学構造の多様性評価(豊橋技科大)○横江恭子・高橋由雅KP12ファジィクラスタリングと化学構造クラスタリングへの応用(豊橋技科大)○谷井久美・高橋由雅KP13置換基データベースの構築とドラッグデザインの試み(石原産業中央研)○赤木俊夫KP14生物学的等価体の自動抽出とルールベースの構築(石原産業中央研)○赤木俊夫KP15溶媒効果を考慮したリガンドコンフォメーションのエネルギー評価(北里大薬・富山化学)○中込泉・小田彰史・山乙教之・広野修一KP16OrganicAnionTransporter3(OAT3)に対するリガンド化合物の結合配座解析(北里大薬)○村上聖・広野修一KP17液晶NMR法によるキラル液晶中における光学活性トリアゾール系化合物の立体構造と配向-14-SARNewsNo.3(Oct.2002)の決定(大阪大医・神戸薬大)○木村敦臣・杉浦真喜子・藤原英明KP18単体および蛋白質複合体中における低分子化合物構造の比較(農業生物資源研)○前田美紀KP19タンパク質構造データマイニングのための三次元モチーフ辞書の構築(豊橋技科大)○宮田博之・近松信一・加藤博明・高橋由雅・阿部英次KP20加成性分子特性推算システムMOPETの開発:ユーザインタフェースの改良(豊橋技科大・日化協)○河原敏宏・花井荘輔・小沼和彦・高橋由雅KP21COMPASSアルゴリズムに基づく薬物分子の三次元構造類似性解析(豊橋技科大)○加藤博明・高橋由雅・阿部英次KP22疎視化された電荷分布を用いた蛋白質-リガンドドッキングと結合定数予測(ファルマデザイン)○高橋理・米田照代・古谷利夫KP23環境ホルモン;エストロジェン様化合物の構造活性相関に関する理論的研究III(立教大理・国立衛研・産総研)○山岸賢司・原田隆範・常盤広明・中野達也・長嶋雲兵KP24ニューラルネットワーク法によるエポキシ化合物の変異原性の予測(産業医学総研)○猿渡雄彦KP25有機化合物の匂いと構造の相関に関する研究(豊橋技科大)○岡崎龍也・加藤博明・阿部英次参加登録費(予約):一般8,000円、学生3,000円(当日):一般9,000円、学生4,000円(情報化学討論会と共通)懇親会:11月12日(火)18時30分より、ホテル日航豊橋にて。会費(予約):一般6,000円、学生4,000円(当日):一般8,000円、学生6,000円(情報化学討論会と合同)連絡先:〒441-8580豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1豊橋技術科学大学知識情報工学系高橋由雅Tel:0532-44-6878,Fax:0532-44-6873Email:qsar30@mis.tutkie.tut.ac.jpホームページ:http://www.mis.tutkie.tut.ac.jp/qsar30/-15-SARNewsNo.3(Oct.2002)-16-構造活性相関部会の沿革と趣旨本部会は構造活性相関懇話会として、1975年5月京都において第1回シンポジウムを開いたのが始まりである。1975年度は2回のシンポジウムを開催し、以降1978年までは依頼講演4~5件、半日の簡素な形式であった。1980年より一般講演を募集し、年1回の構造活性相関シンポジウムが関係諸学会の共催の下で開かれるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。1994年より構造活性相関懇話会の名称を同研究会と改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果たしてきた。今年4月からは、日本薬学会の支援を受けて構造活性相関部会として新しく組織化され、関連諸学会とも密接な連携を保ちつつ構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動することとなった。1975年当時、関係する領域における科学技術のめざましい発展にともなって、医農薬を含む生理活性物質の構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が国内外に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、海外諸国における研究の紹介、および国内における研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立された。以来、懇話会として構造活性相関シンポジウムの実行支援のほか、南江堂より、化学の領域増刊122号:薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作研究への指針)、および同増刊136号:同第二集(ドラッグデザインと作用機作研究の実際)をそれぞれ1979年と1982年に編集、出版するとともに、構造活性相関講習会を開催するなど設立の趣旨に応じた活動を進めている。本部会の沿革と趣旨および最近の動向などの詳細は、(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)ホームページを参照願いたい。編集後記SARNewsは構造活性相関研究会の情報誌として昨年10月に創刊し、今回で第三号を迎えました。今年4月に日本薬学会新部会発足に伴い、本誌も構造活性相関部会のニュースレターとして再スタートを切りました。9月には前代表幹事の寺田弘先生が国際薬学連合(FIP)教育研究財団の2002年度FIP永年薬学研究顕著功績賞を受賞されました。御多忙中にも関わらず原稿執筆を快くお引き受け頂きました諸先生方には厚くお礼申し上げます。「QSAR今昔」では高山千代蔵先生(住友化学)に学生時代から現在に至るまでの農薬の構造活性相関にまつわるエピソードを語って頂きました。我々を元気付けると共に奮い立たせてくれる内容であります。「研究紹介」では、中川好秋先生(京大農)から昆虫脱皮ホルモン活性化合物のQSARについて紹介して頂きました。定量的構造活性相関の成功事例として興味深い内容であります。最後に部会長の藤原英明先生(阪大医)より構造活性相関部会の発足に際してという記事も寄稿して頂きました。11月には豊橋市で高橋由雅先生を実行委員長として第30回構造活性相関シンポジウムが開催されます。今年も多くの研究者と熱いディスカッションが行われるものと楽しみにしております。末筆ながら、今後益々の本誌への皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。編集委員長SARNewsNo.3平成14年10月1日発行:構造活性相関部会(常任世話人代表:藤原英明)SARNews編集委員会(委員長)黒木保久藤原英明石黒正路高橋由雅藤原巌*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。