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SARNews No.22

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構造活性相関部会・ニュースレター <1 April, 2012>SARNewsNo.22「目次」/////Perspective/Retrospective/////X線自由電子レーザー・SACLA石川哲也・・・2/////CuttingEdge/////ヒトノイラミニダーゼ−シアル酸誘導体複合体相互作用の非経験的フラグメント分子軌道法計算に基づく相関解析(LERE-QSAR)比多岡清司・・・8United3D:2つのコンセンサス法によるタンパク質予測構造評価プログラム寺師玄記・・・17/////Activities/////<報告>第39回構造活性相関シンポジウム開催報告西谷潔・・・22<会告>構造活性フォーラム2012「GPCR研究の最前線」・・・23第40回構造活性相関シンポジウム・・・24部会役員人事・・・25構造活性相関部会・ニュースレター<1April,2012>SARNewsNo.22(Apr.2012)-2-/////Perspective/Retrospective/////X線自由電子レーザー・SACLA理化学研究所播磨研究所・石川哲也1.はじめに本年3月に世界で2例目のX線自由電子レーザー・SACLAが兵庫県播磨科学公園都市のSPring-8の隣で共用運転を開始した。SACLAはSPring-8AngstromCompactfree-electronLaserの略で、当分の間世界最短波長のX線レーザーとなる。日本薬学会の皆様には、SPring-8はある程度ご利用いただいているものと思量するが、SACLAに関してもこのような形でご紹介する機会を頂けたことを感謝する。ここでは、SACLAの概要と基本性能を紹介した上で、コヒーレントX線による原子分解能イメージングの原理を概説し、医学や薬学と関係しそうなSACLAの応用の可能性について議論したい。光を用いて物を観察する場合、どれだけ細かい物が分解できるかという量(これを解像度あるいは分解能という)は、観察に用いる光の波長の半分程度が限界である[1]。したがって、波長0.数ミクロンの可視光でいくら頑張っても原子や分子を見ることはできない。ところが、可視光の1/1000程度の波長のX線を用いると、0.数ナノメートルの解像度を持ち、分子中の原子の並びが見えてくる。これが、SPring-8などのX線放射光が非常に多くの方に利用されている最大の理由である。SPring-8のようなインコヒーレントな光源では、N個の電子が出す光の強度は、1個の電子が出す強度のN倍になるが、SACLAのようなコヒーレント光源ではN2倍になる。このことから、SACLAのピーク輝度はSPring-8の10億倍となり、一方でパルス幅は1/1000以下となる。すなわち、非常に明るいX線が極短時間出るのがSACLAの特徴であり、波長が短いという特徴をあわせて考えれば、原子・分子の世界の非常に高速で動き回っている現象の一瞬をとらえて観察するための光を提供する装置といって良い。例えばタンパク分子の構造解析の場合SPring-8では、原子レベルの構造を結晶化することで平均として観察していたが、SACLAでは個々の分子を観察することが原理的には可能となる。特に、一瞬を切り取って観察することを考えると、化学反応などに伴う分子のダイナミクスの解析に利用されるものと考えられている。2.SASE型X線自由電子レーザーとしてのSACLAレーザーが1960年に発表されて[2]から長年にわたって、その短波長化に向けての努力が続けられてきた。X線レーザーの可能性が拓けたのは1980年代半ばに、自己増幅自発放射原理(Self-AmplifiedSpontaneousEmission;SASE)[3]が発見されたことによる。線形加速器と長いアンジュレータの組み合わせでのX線自由電子レーザーが建設できる可能性が示された。1990年代半ばに、米国の国立スタンフォード線形加速器センターで、高エネルギー物理研究に利用されてきた2マイル線形加速器を利用してX線自由電子レーザーを建設する計画が策定され、2009年に0.15nmでレーザー発振を観測したLinacCoherentLightSource(LCLS)計画に結実していく[4]。一方で、1990年代後半にはドイツ・ハンブルグのドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)で、超伝導線形加速器を用いた素粒子物理学研究のための電子・陽電子線形衝突器とX自由電子レーザー施設を組み合わせたTESLA計画が策定され、そのX線自由電子レーザー部分が後のヨーロッパX線自由電子レーザー計画(EuroXFEL、2015年完成予定とされている)に繋がっていった[5]。この時期我が国では、ちょうどSPring-8の運転が始まったころで、次世代光源としてのX線自由電子レーザーの話題は殆ど出なかった。しかしSPring-8で長い真空封止型アンジュレータを世界で初めて建設し[6]、また1kmの長尺ビームラインを建設[7]してコヒーレントX線の基礎研究を開始すると、欧米のX線自由電子レーザーに向けての検討会議などでこれらの紹介依頼が多数寄せられるようになった。このような機会に、SPring-8で開発された真空封止型アンSARNewsNo.22(Apr.2012)-3-ジュレータを用いて磁場周期を短縮すると、欧米と比べて格段に小型化されたX線自由電子レーザーが建設可能であると発想したことがSACLAのそもそもの発端である[8]。しかし、小型化するためには、欧米に比べ高品質な電子ビームを用意する必要があり、真空封止型アンジュレータも、SPring-8の標準の半分程度の磁場周期を持つものを開発する必要があった。また、一層の小型化のために、加速勾配が大きい新しい加速管の開発を行うことにした。これらの要素技術を確立しSACLAに備えるための研究開発プログラムが、理研内で2001年度に開始された。要素技術開発は比較的順調に進み、2003年度末ころには、基礎的要素技術に目途がついた。そこで、2004年度に波長0.1ナノメートルをターゲットとする施設の概念設計をおこなった上でレポートを作成し[9]、それに基づいてインターナショナルな評価を実施した。その結果は非常に高い評価を頂いたが、評価委員会からそれまでの電子エネルギー6GeVを8GeVに上げて、SPring-8への入射を可能にすべきとの提言を受け、設計変更を行った。これと並行して、国内の評価委員会なども開かれたが、非常に野心的な計画であるため、いきなり実機建設を始めるのではなく、1/32スケールのプロトタイプ機から始めよということになり、250MeV線形加速器をベースとする極紫外領域自由電子レーザーの建設を行うことになった。これが、現在でも波長60nm領域で多くの方に利用されているSCSS試験加速器[10]であるが、この建設と運転により実機建設に向けての多くの課題が解決され、いよいよ2006年から5年間でのSACLA実機建設に向かうこととなった。2006年は、国の第三期科学技術基本計画が始まった年であり、SACLAはその中で「国家基幹技術」に指定され推進されることになった。完成後には、SPring-8と同様に供用施設として国内外を問わずに利用者に開放することとされた。SPring-8との様々な相乗効果を考慮して、SPring-8に隣接して設置することとなった。直接的な相乗効果の一つは、将来の低エミッタンス電子ビーム入射に備えてSACLA線形加速器からSPring-8蓄積リングへの入射路を整備したことであり、もう一つは、SACLAの光とSPring-8の光を同一試料上に導くために、相互利用実験施設を整備したことである。SACLA完成後のSPring-8サイトの航空写真を図1に示す。図1.SACLA完成後のSPring-8サイトSACLAはXFEL加速器棟に設置された長さ約400mの線形加速器で電子を8GeVまで加速して、XFEL光源棟内の長いアンジュレータに通し、SASE作用によってコヒーレントX線を発生させている。線形加速器の最後端に振り分けマグネットを配置し、5つのFELラインとSPring-8入射ラインに電子ビームを振り分ける(図2)。現状のファーストフェイズでは、5本のFELラインの内の中央のBL3と端のBL1の整備が行われている。今後、利用者の動向を踏まえながら順次BL2,4,5の整備を進めていく予定である。アンジュレータの後方では電子ビームとXFELビームが一緒に走るが、XFEL光源棟の最後部に設置されたビームダンプで電子ビームをアースに落とし、XFELビームだけをXFEL実験研究棟に導入する。実験研究棟内では、コンクリートSARNewsNo.22(Apr.2012)-4-製の光学ハッチ内でビーム整形を行って、実験ホール内の実験ハッチに導いている。また、ビームラインはXFEL実験研究棟の後方壁を貫通してSPring-8のビームとXFELのビームを同一試料に当てる相互利用実験施設に導かれる。図2.SACLA建物配置SACLAでの実験装置配置の基本的な考え方は、「固定されたXFELビームに対して、実験装置を入れ替えて様々な実験手法に対処する」ことであり、実験ハッチをタンデムに配置して、複数個の実験装置を配置している。それぞれの実験装置はビームラインから比較的容易に退避することが可能であり、圧縮空気浮上の移動機構を備えたものも多い。それらを容易に動かすために、実験ハッチ内床面は特殊な平坦化加工が施されている。SACLAのこの考え方は、LCLSでの「装置を固定して光学素子でXFELビームを振る」考え方とは対極をなすものであるが、コヒーレント光源に対しては、かねてから”Noopticsisthebestoptics”と言われてきた。実験研究棟には、実験ハッチがタンデムに4つ配置されている。また、ポンプ・プローブ実験を行うためのフェムト秒レーザー、マイクロメータ集光を行うためのKBミラーが配置されている。3.コヒーレントX線によるイメージング[11]十分に周波数が大きいX線電磁波に対しては、物質内の電子はあたかも自由電子のように振舞うと近似して得られるのがトムソン散乱である。原点にある電子(質量m、電荷e)が、単色平面波のX線を散乱する場合を考える。X線電磁波の波数ベクトルをKo、振動数をω、光速度をc、振幅ベクトルをEoとすると、単色平面波の電場ベクトルE、磁気誘導ベクトルBは次式で表される:E=Eoexp[i(Ko⋅r-ωt)](1)B=Koω×EoexpiKo[(⋅r-ωt)]=kˆc×E(2)ここで、kˆはKo方向の単位ベクトルを表す。この電磁波は、点電荷にローレンツ力を及ぼす。ローレンツ力による変位をxとすると、運動方程式はmx=e(E+x×B)(3)となる。x、xは電荷の加速度、速度である。電荷の速度が光の速度より十分小さい場合には、(3)の第二項は第一項と比較して無視できるので、em≈xE(4)SARNewsNo.22(Apr.2012)-5-となり、原点を始点とする位置ベクトルrの点に、(4)で与えられる加速度を持つ電荷が作る放射場p.c.radEは、()p.c.rad2314oeπεcr××=xrrE(5)で与えられる。ここでεoは真空の誘電率、r=rである。電荷が分布した場合、ある領域に電子が数密度ρ(x)で分布しているものとする。入射X線として、前と同じ単色平面波(1)を考え、波数ベクトルKsの方向に散乱される電磁場を考えると、原点からxにある微小体積要素d3x内の電子数はρ(x)d3xであり、この位置で入射波の位相は原点での位相からiKo・x変化し、散乱波の位相は原点からの散乱波の位相とiKs・x変化するので、ρ(x)d3xからの散乱波への寄与は、(5)のp.c.radEを用いてd.c.p.c.()()3radradd=ρexp−is−o⋅dEExKKxx(6)と表すことができる。従って、全体からの散乱は、分布電荷全体にわたって(6)を積分することにより求めることができ、d.c.p.c.()()3radrad=∫∫∫ρexp−is−o⋅dEExKKxx(7)で表される。この式は、分布電荷からの散乱電場が、原点に置かれた電子からの散乱電場に、電荷数密度のフーリエ変換をかけたものになっていることを示す。これは、初歩的なX線結晶回折の教科書に示されている方法であり、結晶回折の運動学的理論ではこの後ρ(x)に結晶の周期性を導入し、積分を単位格子内の積分(=結晶構造因子)と位相のついた格子和に分解するプロセスを辿り、格子和からラウエ関数を導出してブラッグ反射を導く。しかしながら、(7)式自体は一般的な電荷分布を仮定するので、周期性を持たない物質からのX線散乱でも成り立つ式である。但し、重要な仮定は単色平面波入射であり、入射波がコヒーレントであることを仮定することによって、一つのフーリエ積分で表されるのである。散乱電場を位相も含めて測定することが出来れば、(7)式のd.c.radEが直接計測できるので、それを逆フーリエ変換することによって電荷数密度ρ(x)を求めることができる。これは、構造を決定することと等価であり、空間分解能の理論的下限値は波長であるため、X線を使うと原子レベルでの顕微法となる。しかしながら、現実に測定することができるのは位相が消えてしまった強度であり、真空の透磁率をμoとすると、次式によって与えられる量である。()()222d.c.p.c.3radradooexpooIidεερμμ==∫∫∫−s−o⋅EExKKxx(8)この測定量からは、散乱電磁場の振幅は求まっても、位相は求まらない。従って、先に述べたシナリオでの顕微法を完成させるためには、何らかの方法で位相を回復する必要がある。コヒーレントX線を有限な試料に照射した場合、(8)式で表されるフラウンホーファー回折強度はナイキスト間隔[12]より細かい間隔でサンプリングすることが可能である。この間隔が十分に小さくオーバーサンプリング比が2を超えている場合には、位相情報は強度情報の中に原理的に埋め込まれていると考えることができる[13]。この位相情報は逐次近似法により回復可能であることがGerchbergとSaxtonにより示され[14]、その後Fienupは逐次近似の収束が早い方法としてハイブリッド入出力法(HIO)を開発した[15]。この方法の詳細については紙数の都合で省略すSARNewsNo.22(Apr.2012)-6-るが、原理的には、測定強度から得られる振幅にランダムな位相を付けて逆フーリエ変換を行うと、ランダムな初期位相に対応する電荷数密度ρ(x)が得られる。密度は、負にならないので、負になった点で0に置き換えてフーリエ変換を行うと、最初の振幅とは異なる散乱強度振幅と位相を与える。この振幅を測定強度から得られる振幅に置き換えて逆フーリエ変換を行い、得られた電荷数密度で負となる点で再び0に置き換える。この操作を繰り返した時に収束する場合、収束した位相は測定された電場が持っていた位相と考えることができる。位相回復法によってX線コヒーレント散乱強度から散乱体の実空間分布を再構成するコヒーレントX線散乱顕微法はMiaoたちによって軟X線領域で示され[16]、その後Miaoと我々のグループの協力によって硬X線領域に拡張された[17]。X線では高分解能の実空間再構成が可能であること、不透明な物体の内部構造も再構成可能であること、光学素子作成技術の限界から結像光学系による超高分解能顕微鏡の構築が困難であることから、大きな注目を集め、今後X線自由電子レーザー光源からの強力なコヒーレントX線源を利用することによって大きく発展することが期待されている。4.医学・薬学への応用前節で示した、コヒーレントX線散乱は、タンパク質単分子、タンパク―タンパク複合体、タンパク―低分子複合体などでの原子分解能でのイメージングを原理的に可能とする。しかしながら、X線自由電子レーザーといえども、単一分子や単一複合体を試料としてシングルショットで原子分解能データを取得するのは強度的に困難であるので、非常に多くのショットでのデータを並べ替え、さらに平均化するという作業が必要になる。具体的な実験方法としては、エアロゾルや、水滴包含物として試料をXFELビーム上に送り、コヒーレント散乱強度を記録する方法がLCLSで提案・開発されSACLAでも利用可能となっている。試料は、XFELパルスでたたかれると電子が飛び出し、ある程度の時間後に陽イオンが静電反発力でばらばらになるクーロン爆発を起こしてしまう。電子密度の構造が保たれるのは、照射後数十フェムト秒と見積もられており、出来るだけ短いXFELパルスでデータ収集を行う必要があることが指摘されている[18]。一方、SACLAでの独特の方法として、クライオ電子顕微鏡を同様に氷埋した試料からの散乱イメージングの平均化によって構造解析を行う手法の開発も進められている[19]。これらのイメージング手法は、タンパク単分子やその複合体に留まらず、より大きな細胞小器官やウィルスなどの高分解能イメージングに応用可能であり、XFELの短パルス性の特徴を活かすと、「何かをしている瞬間」の構造イメージを取得することが可能となろう。とはいっても、全く未知の構造を、単分子状態で、XFEL散乱データのみから決定するためには、莫大なデータ量と高いデータ処理能力が必要となり、神戸の「京コンピュータ」との連携を視野に入れざるを得ない。一方で、複合体を作る構成要素タンパク構造が結晶構造解析で決定されているような場合には、結晶構造解析で決まった原子座標を動かすことによって観測されたコヒーレント散乱パターンと合致する座標を見つけるというアルゴリズムによって、比較的容易に構造決定ができると予測されている。同様に、結晶構造解析で原子座標が決まったタンパクを単分子にして構造イメージを作ると、タンパクの動きが見えてくる。タンパクは動きながら働いていることを考えると、タンパクの動きを見ることは非常に重要であり、XFEL利用の大きなターゲットとなるものと考えられる。この考えを更に進めると、複合体のダイナミクス計測にも発展するはずであり、タンパク科学が形を結晶構造解析で決めて、その後計算により機能を推測する段階から、機能を発揮する様子をも観測してしまう段階に移行していくことが考えられる。そうなれば、まさにXFELは「見てきたような話を本当にみてしまう」光となる。タンパクの構造解析に関しては、2010年にLCLSで「ナノ結晶構造解析」が発表されて大きな話題となった[20]。一方向のスタッキングが10程度の小さな結晶でも、ラウエ関数での強度増大は106程度になるので、シングルショットデータである程度の高分解能データ取得が可能であり、このようなナノ結晶からの回折パターンを非常に多く集めることによって、粉末結晶解析と同様な手法での構造解析が可能となる。今まで結晶化が困難だとされてきた膜タンパク等であっても、通常の放射光X線結晶構造解析には小さすぎるがXFELのナノ結晶解析には十分な大きさの結晶ができている場合も多くあると考えられており、今後の展開が期待される。ナノ結晶SARNewsNo.22(Apr.2012)-7-構造解析で原子座標が定まれば、それをもとに単分子にした場合のダイナミクス研究を展開できることは上で述べたとおりである。SACLAではまた単結晶構造解析をシングルショットで行うことで、ダメージフリーの構造データを取得する可能性についての開発が進められている。これは、従来の放射光計測でのあいまいな点をはっきりさせるものであり、XFELと放射光施設の両方を同じ場所に持つ播磨の優位性を今後伸ばしていく実験手法だと思われる。5.おわりにSACLAは2012年3月に供用が開始され、現在まさに新しいサイエンスを開拓している最中である。ここで紹介した実験手法の多くは、SACLA稼働前に検討されたものであり、SPring-8での経験によれば、本物は実際に光を見た後で出来上がる。SARNewsの読者諸賢から、たくさんの「本物を作る人たち」が現れることを期待している。参考文献[1]例えば、BornandWolf,‘PrincipleofOptics’,7thedition,CambridgeUniversityPress,Cambridge,UK(1999).[2]T.H.Maiman,Nature(London)187(1960)493-494.[3]J.B.MurphyandC.Pellegrini,J.Opt.Soc.Am.B2(1985)259-264.[4]https://slacportal.slac.stanford.edu/sites/lcls_public/Pages/Default.aspx[5]http://www.xfel.eu/[6]H.Kitamura,T.Bizen,T.Hara,X.Marechal,T.SeikeandT.Tanaka,Nucl.Instrum.MethodsA467-468(2001)110-113.[7]T.Ishikawa,K.Tamasaku,M.Yabashi,S.Goto,Y.Tanaka,H.Yamazaki,K.Takeshita,H.Kimura,H.Ohashi,T.MatsushitaandT.Ohata,SPIEProceedings4145(2001)1-10.[8]T.IshikawaandH.Kitamura,“Beamlinesforcoherentx-rayapplicationsatSPring-8”,7thInt.Conf.onSynchrotronRadiationInstrumentation(SRI2000),Berlin,Gernmany,Aug.(2000).[9]http://xfel.riken.jp/pdf/SCSSCDR.pdf[10]T.Shintake,H.Tanaka,T.Hara,T.Tanaka,K.Togawa,M.Yabashi,Y.Otake,Y.Asano,T.Bizen,T.Fukui,S.Goto,A.Higashiya,T.Hirono,N.Hosoda,T.Inagaki,S.Inoue,M.Ishii,Y.Kim,H.Kimura,M.Kitamura,T.Kobayashi,H.Maesaka,T.Masuda,S.Matsui,T.Matsushita,X.Marechal,M.Nagasono,H.Ohashi,T.Ohata,T.Ohshima,K.Onoe,K.Shirasawa,T.Takagi,S.Takahashi,M.Takeuchi,K.Tamasaku,R.Tanaka,Y.Tanaka,T.Tanikawa,T.Togashi,S.Wu,A.Yamashita,K.Yanagida,C.Zhang,H.KitamuraandT.Ishikawa,NaturePhotonics2(2008)555-559.[11]石川哲也、応用物理、77(2008)1449-1453.[12]例えば、http://www.sice.jp/handbook/%E8%B6%85%E8%A7%A3%E5%83%8F[13]J.Miao,T.Ishikawa,E.H.AndersonandK.O.Hodgson,Phys.Rev.B67(2003)174104-1-6.[14]R.W.GerchbergandW.O.Saxton,Optik(Stuttgart)35(1972)237-246.[15]J.R.Fienup,J.Opt.Soc.Am.A4(1987)118-123.[16]J.Miao,P.Charalambous,J.KirzandD.Sayre,Nature400(1999)342-344.[17]J.Miao,T.Ishikawa,B.Johnson,E.H.Anderson,B.LaiandK.O.Hodgson,Phys.Rev.Lett.89(2002)088303-1-4.[18]R.Neutze,R.Wouts,D.vanderSpoel,E.WeckertandJ.Hajdu,Nature406(2000)752-757.[19]M.Nakasakoetal.inpreparation.[20]H.N.Chapmanetal.,Nature470(2011)73-77.SARNewsNo.22(Apr.2012)-8-/////CuttingEdge/////ヒトノイラミニダーゼ−シアル酸誘導体複合体相互作用の非経験的フラグメント分子軌道法計算に基づく相関解析(LERE-QSAR)徳島大学大学院薬科学教育部創薬理論化学分野比多岡清司1.はじめにインフルエンザの治療には,Zanamivir(Relenza®),Oseltamivir(Tamiflu®),およびPeramivir(Rapiacta®)(図1)や,Laninamivir(Inavir®)が代表的な抗インフルエンザ剤として広く使用されている.これら阻害剤は,インフルエンザウイルスの感染・増殖サイクルにおいて,子孫ウイルスの遊離を担う酵素であるノイラミニダーゼ(NA,Neuraminidase,EC3.2.1.18)を選択的に阻害する目的で開発された.いずれの抗インフルエンザ剤も基質であるシアル酸の遷移状態アナログとして,NAの活性中心に競合的かつ強力に結合し,これを阻害する.一方で,特にOseltamivir服用後の精神・神経症状の有害事象が報告されており,これらNA阻害剤のヒトに対する影響が懸念される.考えられる原因の一つとして,ヒトノイラミニダーゼ(hNEU)への影響が指摘され,抗インフルエンザ剤のhNEUに対する阻害効果の検討が行われている.現在,ヒトにおいては細胞内局在性や基質特異性の異なる4種類のノイラミニダーゼ(hNEU1–4)が同定されており,これらは細胞増殖・分化およびアポトーシスなどの様々な細胞機能に関与している.中でも,細胞質に局在するヒトノイラミニダーゼ2(hNEU2)は,特に筋分化において重要な役割を担っており,動物NAにおいては初めて,またhNEU1–4のうちでは唯一その3次元立体構造が明らかとなっている.hNEU2とインフルエンザウイルスのN1ノイラミニダーゼ(N1-NA)を比べた場合,両者のアミノ酸残基の配列相同性はそれほど高くないものの(identity:∼16%,similarity:∼25%),タンパク質全体の構造的特徴(NAに特有の6枚羽根のβ-propeller構造等)や活性部位のアミノ酸残基については比較的類似している.したがって,NA阻害剤とhNEU2との間の相互作用メカニズムをN1-NAの先行研究[1,2]と対照させて理解することは,高い選択性と副作用の少ない新規NA阻害剤の開発につながると思われる.本研究では,hNEU2と抗インフルエンザ剤を含む一連のシアル酸誘導体との複合体について,非経験的フラグメント分子軌道(abinitioFragmentMolecularOrbital(FMO))法等による分子科学計算ならびにその結果に基づくLinearExpressionbyRepresentativeEnergyterms(LERE)-QSAR解析[3–5]から,複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動を支配する相互作用様式ならびにその変動に対するシアル酸誘導体の各部分構造の寄与を原子および電子レベルで定量的に明らかにすることを目的とした.また,Oseltamivirのヒト(hNEU2)およびインフルエンザウイルス(N1-NA)に対する結合選択性の違いについても,先行研究ならびに詳細な相互作用解析の結果に基づき議論する.図1.代表的な抗インフルエンザ剤.ONHOCH3OOOHOHHONHNH2NH2Zanamivir(Relenza®,1999)GlaxoSmithKlineHOONHOCH3HOONHOCH3ONH3ONHNH2NH2Oseltamivir(Tamiflu®,1999)F.Hoffmann-LaRochePeramivir(Rapiacta®,2010)BioCryst(Shionogi)SARNewsNo.22(Apr.2012)-9-2.化合物セットChavasらにより報告されているシアル酸誘導体のhNEU2に対する阻害活性データ[6]に基づき,本解析では2-deoxy-2,3-didehydro-N-acetyl-neuraminicacid(Neu5Ac2en,DANA)とその誘導体を含む一連のシアル酸誘導体(IEM(Compound1),HEM(2),DEM(3),DANA(4))(図2)および抗インフルエンザ剤(Zanamivir(5),Oseltamivir(6),Peramivir(7))(図1)の合計7化合物(阻害定数Ki(mM):0.88(1),0.74(2),1.4(3),0.14(4),0.017(5),5.0(6),0.33(7))を使用した.本解析における化合物セットは,図1および2に示すようにFragmentsA,C部位の側鎖基の構造のみならず,FragmentB部位の母格構造も異なる多様な化合物で構成される.3.阻害剤とhNEU2の複合体構造のモデリングOseltamivir(Compound6)以外の化合物(Compounds1–5,7)とhNEU2の複合体のX線結晶解析構造は解明されているが,中でもDANA(4)とhNEU2の複合体構造(PDBcode:1VCU,図3a,[7])におけるB鎖は,欠落アミノ酸残基が最小であるため,これを各化合物の複合体の初期構造として使用した.DANA−hNEU2複合体構造におけるDANAとIEM(Compound1,PDBcode:2F11),HEM(2,2F12),DEM(3,2F13),Zanamivir(5,2F0Z),Oseltamivir(6,2HU4)およびPeramivir(7,2F10)の化合物同士の座標の重ね合わせ操作から,DANAの座標をそれぞれの化合物の座標に置き換えることで,各化合物の複合体初期構造を構築した.得られた各複合体構造に対して構造最適化計算を行う際には,特にFragmentA部位との水素結合あるいは静電相互作用に関与するアミノ酸残基(Glu111,Tyr179,Tyr181,Glu218,Gln270)(図3b)については,調和ポテンシャル型の原子位置拘束(10kcal/mol/Å2)を設けることでX線結晶解析構造からの大きな逸脱を防いだ.なぜなら,これらFragmentA部位の近傍に位置する構造領域は,hNEU2のapo構造におけるdisorder領域の一部であり,リガンドの結合に伴い大きく構造変化する領域であるためである[7].また,インフルエンザウイルスのNAの場合と同様に,複数個のhNEU2−リガンド複合体のX線結晶解析構造(PDBcodes:2F11,2F12,2F13,2F25(dimer),2F27(dimer),1VCU(dimer))において,リガンドとhNEU2との間の相互作用を媒介する水分子が確認された.したがって,FragmentC部位(hydroxyl,amino,guanidino基)に依存する特異的な水分子(hydroxyl/amino基:W1,W2;guanidino基:W1)を考慮してそれぞれの複合体構造を構築した.図3.(a)hNEU2−DANA複合体のX線結晶解析構造(PDBcode:1VCU)および(b)その活性部位近傍における相互作用.W1およびW2は水分子を,PocketsA,B,Cは,それぞれFragmentsA,B,Cの近傍のアミノ酸残基を表す.(a)(b)PocketBPocketAPocketCOOOOHNHCH3OOONH2NH2Ile22Arg41NH2NH2Arg21OHTyr334NH2NH2Arg304H2NNH2Arg237NH2OGln270Leu217HOTyr179W2W1HOTyr181Asp46OOGlu218OOGlu111Ile103ONH2SAsn86Met85OOGlu39OHHOOHFragmentCFragmentBFragmentA図2.解析に用いた一連のシアル酸誘導体.FragmentAFragmentCFragmentBR1R2ONHOCH3OO(R1)(R2)CH(OH1)CH(OH2)CH2(OH3)(4,DANA)R2=OHOCH2CH2CH2(OH1)(2,HEM),R1=OCH2CH(CH3)2(1,IEM),OCH2CH(OH1)CH2(OH2)(3,DEM),SARNewsNo.22(Apr.2012)-10-4.LERE-QSAR解析代表的な抗インフルエンザ剤を含む一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成に伴う結合相互作用の全自由エネルギー変化ΔGobs(=2.303RTlogKi,T=310K)は,幾つかの相互作用エネルギー項の和として下式(1a)で表すことができる(エネルギーの加成性).ΔGobs=ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss+ΔGothers(1a)ΔGbindは一連のシアル酸誘導体とhNEU2の結合相互作用エネルギー,ΔGsolは複合体形成に伴う水和自由エネルギー変化,ΔGdissは各シアル酸誘導体のFragmentC部位(hydroxyl,amino,guanidino基)の解離自由エネルギー変化を表す.ΔGothersは上記の3種類の代表自由エネルギー項(representativeenergyterms)以外の相互作用自由エネルギー項の総和を表し,複合体形成前後におけるタンパク質構造の変形に伴う変形エネルギーなどを含むpenaltyenergy項と考えられる.我々はここで,一般に,骨格が同一である一連の構造類似体(congenericseries)とタンパク質との複合体形成においては,ΔGothersは代表自由エネルギー項の総和(ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss)に線形あるいは正の定数と仮定する(LFEP,LinearFree-EnergyPrinciple,ΔGothers=β(ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss)+const:β<0and/orconst>0)[3–5].本解析では,シアル酸誘導体のFragmentsA,C部位の独立した置換基に応じて,ΔGothers1は(ΔGbind+ΔGsol)に線形:ΔGothers1=β1(ΔGbind+ΔGsol)+const(β1<0and/orconst>0)およびΔGothers2はΔGdissに線形:ΔGothers2=β______2ΔGdiss+const(β2<0and/orconst>0)と仮定した場合,ΔGothersはΔGothers1とΔGothers2の和として表すことができる(ΔGothers=ΔGothers1+ΔGothers2).以上より,次式(1b)が得られる.ΔGobs=(1+β1)(ΔGbind+ΔGsol)+(1+β2)ΔGdiss+const(1b)一般に,阻害剤とタンパク質の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔGobs)は,結合に伴うenthalpic変化項(ΔHobs)のみならず,温度に依存するentropic変化項(−TΔSobs)も加わった自由エネルギーが支配していると考えられるが,本解析のような大規模分子系に対するentropic変化項を分子科学計算・シミュレーションにより定量的に評価することは現状では困難である.一方で,糖化合物とその分解タンパク質の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔGobs)において,entropic変化項(−TΔSobs)とenthalpic変化項(ΔHobs)との間にentropy−enthalpy補償則が良好に成立すること(TΔSobs=αΔHobs+const:α=0.70±0.20)が,多くの等温滴定熱量測定(ITC,IsothermalTitrationCalorimetry)の実験から報告されている[8–11].そのため,本解析における一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成においてもentropy−enthalpy補償則が成立することが期待される.したがって,entropy−enthalpy補償則から式(1b)におけるΔGbindを変形し(ΔGbind=ΔHbind–TΔSbind=(1−α)ΔEbind+const(なお,溶液中では体積と圧力の変化が無視できるためΔHbind=ΔEbindと置き換えた)),またΔGsolを変形することで(ΔGsol=ΔHsol–TΔSsol=(1−α)ΔGsolpol+const(なお,ΔHsolは水和自由エネルギー変化の静電相互作用エネルギー項(ΔGsolpol)とほぼ同等(ΔGsolpol/ΔHsol=0.983)[12,13]であるためΔHsol=ΔGsolpolと置き換えた)),下式(1c)が得られる.ΔGobs=(1+β1)(1−α)(ΔEbind+ΔGsolpol)+(1+β2)ΔGdiss+const(1c)ここで,ΔEbindは静電相互作用エネルギー項(ΔEbindHF)および分散相互作用エネルギー項(Edisp)の和として表される(ΔEbind=ΔEbindHF+Edisp).ΔGsolについては,水和自由エネルギー変化の静電相互作用エネルギー項(ΔGsolpol)に加えて非静電相互作用エネルギー項(ΔGsolnonpol)の寄与もあるが,このエネルギー項はentropic変化項に対応すると考えられ[14–16],上述のentropy−enthalpy補償則の仮定においてenthalpic変化項に線形な項として潜在的に考慮されている.最終的に式(1c)から下式(1d)を導き,これをLERE-QSAR解析における基本式とした.ΔGobs=(1+β1)(1−α)(ΔEbindHF+Edisp+ΔGsolpol)+(1+β2)ΔGdiss+const(1d)基本式(1d)において,(ΔEbindHF+Edisp)およびΔGsolpolは,それぞれFMO法(MP2/6-31G)[17–21]および連続誘電体モデル(GB,generalizedBornモデル;PB,Poisson−Boltzmann方程式)[22,23]を用SARNewsNo.22(Apr.2012)-11-いて算出した.ここで,ΔGsolpolはシアル酸誘導体の結合部位以外のわずかな構造変化に対して敏感であるため,この効果を分子動力学(MD,AMBER)計算より得られるdynamicstrajectoryから統計平均として算出することで考慮した.ΔGdissは各シアル酸誘導体のFragmentC部位(hydroxyl,amino,guanidino基)の解離自由エネルギー変化として,非経験的分子軌道法(HF/6-31+G(d,p))−連続誘電体モデル(SCRF-CPCM,Self-ConsistentReactionField-Conductor-likePolarizableContinuumModel)により評価した.なお,各シアル酸誘導体のFragmentB部位のcarboxyl基(COO−,pKa~2.4)およびFragmentC部位のguanidino基(NHC(=NH2+)NH2,pKa~13)については,至適pH(=5.6)[24]でのhNEU2との複合体形成前後においてほぼ完全に解離していると考えられるため,本解析ではOseltamivir(Compound6)のamino基の解離自由エネルギー変化(NH2+H+→NH3+)のみを評価した.5.阻害剤とhNEU2の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化に対するLERE-QSAR解析母格構造が異なる多様な化合物セットにも拘わらず,一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔGobs)の変動に対して,物理化学的意味づけにつながる統計的に有意なLERE相関式(2)を得ることができた.ΔGobs=(1+β1)(1−α)(ΔEbindHF+Edisp+ΔGsolpol)+(1+β2)ΔGdiss–1.02n=7,r=0.971,s=0.331,F=32.7,(1+β1)(1−α)=0.0600,(1+β2)=0.0829(2)相関式(2)において,実測と計算による全自由エネルギー変化との間には良好な線形関係があることが確認できる.また,式(2)はentropy−enthalpy補償則に基づいており,ITCの実験結果[8–11]からαを0.70とした場合,式(2)の右辺の第1項(ΔEbindHF+Edisp+ΔGsolpol)および第2項ΔGdissの係数におけるβ1,β2の値はともに負の値を示す(β1=−0.800,β2=−0.917).このことは,式(1b)導出において仮定したとおり,式(2)の右辺の第1項および第2項に対してそれぞれ線形なpenaltyenergy項の存在を表している.なお,式(2)におけるΔGsolpolについては,GBモデルに基づき算出した値を用いているが,PB方程式を用いた場合も統計的に有意なLERE相関式(r=0.985)が得られることを確認している.全自由エネルギー変化(ΔGobs)の変動に対する各エネルギー項の寄与を図4に示す.Oseltamivir(Compound6)の解離自由エネルギー変化(ΔGdiss)の値は他と比べてわずかに大きいが,これはFragmentC部位のamino基の結合状態と非結合状態における解離自由エネルギー差を反映している.分散相互作用エネルギー(Edisp)の寄与は小さく,実際にこのエネルギー項を除外した場合においても,LERE式が良好に成立することから,静電相互作用エネルギー項(ΔEbindHFおよびΔGsolpol)の寄与が,ΔGobsの変動に対して支配的であることが示唆される.一方で,ΔEbindHFとΔGsolpolとの間には良好な逆相関関係(ΔEbindHF=−1.11ΔGsolpol−9.10:n=7,r=−0.971)が成立しているが,ΔEbindHFの寄与がΔGsolpolの寄与よりも相対的に大きいことから,静電相互作用エネルギー項の中でも特にΔEbindHFの寄与が支配的となる.したがって,一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動に対して,両分子間における静電相互作用(ΔEbindHF)が支配的な役割を果たしていると結論づけられる.図4.阻害剤とhNEU2の複合体形成に伴う各エネルギー項(ΔEbindHF,Edisp,ΔGsolpol,ΔGdiss,ΔGobs,ΔGcalc)の変動.−1515−10−51050Compounds1234567ΔEbindHFEdispΔGsolpolΔGdissΔGobsΔGcalcSARNewsNo.22(Apr.2012)-12-6.阻害剤の各部分構造の全自由エネルギー変化に対する寄与FMO法では,リガンドとタンパク質の結合相互作用エネルギー(ΔEbind)に加え,その計算過程においてタンパク質をアミノ酸残基単位にフラグメント分割するため,リガンドと各アミノ酸残基との間の相互作用エネルギー(IFIE,Inter-FragmentInteractionEnergy)を定量的に解析することができる.本節では,通常のFMO法におけるタンパク質側のフラグメント分割に加えて,阻害剤であるシアル酸誘導体を図2で示す位置において3つのフラグメント(FragmentsA,B,C)に分割し,全静電相互作用エネルギー(ΔEbindHF)に対する各フラグメントの寄与およびそれらの全自由エネルギー変化(ΔGobs)に対する寄与を定量的に明らかにする.ΔEbindHFはシアル酸誘導体とhNEU2の各アミノ酸残基との間の静電相互作用エネルギー(IFIEHF)の総和(ΣIFIEHF)にほぼ対応し(ΔEbindHF=0.823ΣIFIEHF+23.6:n=7,r=0.996),シアル酸誘導体を3つのフラグメントに分割した場合においても,3つのフラグメントとhNEU2の各アミノ酸残基との間のIFIEHFの総和(ΣΣIFIEHF(FragmentX),X=A,B,C)とΔEbindHFとの間の良好な相関関係(ΔEbindHF=0.877ΣΣIFIEHF(FragmentX)+33.8:n=7,r=0.993)が存在することから,各フラグメントの寄与についての定量的な議論が可能となる.図5には,ΔEbindHFとΔGobsとの間の相関およびΔEbindHFの変動に対する寄与(割合)を各フラグメントについて示しているが,相関が最大であるのはFragmentA,一方で,変動に対する寄与が最大であるのはFragmentCであることが確認できる.最大の相関を示したシアル酸誘導体のFragmentAとその近傍に位置するhNEU2のPocketAのアミノ酸残基との間のIFIEHF値を図6aに示す.FragmentA部位にhydroxyl基を有していないCompounds1,6,7においては,大きな相互作用エネルギーは確認されないが,FragmentA部位にhydroxyl基を有する化合物の中で,glycerol基を有するCompounds4,5はGlu111やGlu218との間の水素結合による安定化相互作用エネルギーが確認される(図3b,6a).特に,Glu111との間の水素結合による大きな安定化相互作用エネルギーは,FragmentAが担う全安定化相互作用エネルギーの中で最大である.したがって,一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動に対して,特にFragmentAとその近傍のPocketAとの間の水素結合が最も支配的な役割を果たしていると結論づけられる.また,一連のシアル酸誘導体の中でDANA(Compound4)やZanamivir(Compound5)が高い阻害活性値を示すのは,これらがFragmentA部位に有するglycerol基におけるhydroxyl基が,Glu111のようなPocketAのアミノ酸残基との間で,効果的かつ強力な水素結合を形成できることに起因している.一方で,最大の変動を示したFragmentCとその近傍のPocketCのアミノ酸残基との間のIFIEHF値を図6bに示図5.阻害剤とhNEU2の相互作用における各部分構造の寄与(FragmentX:X=A,B,C).FragmentXABCCorrelation(r2)1.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.01009080706050403020100ContributiontothetotalvarianceofΔEbindHF(%)Correlation(r2)ContributiontothetotalvarianceofΔEbindHF(%)図6.(a)FragmentAとPocketA(hNEU2)および(b)FragmentCとPocketC(hNEU2)との間の静電相互作用エネルギー.(b)(a)−50−40−30−20−10010IFIEHF(kcal/mol)AminoacidresiduesinPocketAofhNEU2Glu111Tyr179Tyr181Leu217Glu218Gln270Compound2Compound4Compound3Compound1Compound6Compound7Compound5−120−100−80−406080IFIEHF(kcal/mol)4020−200−60AminoacidresiduesinPocketCofhNEU2Glu39Arg41Lys44Lys45Asp46Glu47Asn86SARNewsNo.22(Apr.2012)-13-す.FragmentC部位に中性のhydroxyl基を有するCompounds1–4においては,大きな相互作用エネルギーは確認されないが,正に荷電したamino/guanidino基を有するCompounds5–7はGlu39やAsp46との間の水素結合による大きな安定化相互作用エネルギー,Arg41との間では静電反発相互作用による大きな不安定化相互作用エネルギーが確認される(図3b,6b).概して,amino/guanidino基の方がhydroxyl基と比べて結合に有効に働いている.したがって,FragmentCが最大の変動を示すのは,DANAを含むシアル酸誘導体(Compounds1–4)が有する中性のhydroxyl基と抗インフルエンザ剤(Compounds5–7)が共通に持つ正に荷電したamino/guanidino基の相互作用の差に起因すると考えられる.7.Oseltamivirのヒトおよびインフルエンザウイルスに対する結合選択性の違い現在,臨床において最も使用されている代表的な抗インフルエンザ剤であるOseltamivir(Tamiflu®)(図1)は,インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害する目的で開発されていることから,ヒトノイラミニダーゼに対する阻害効果は小さいことが期待される.実際,Oseltamivirのヒト(hNEU2)に対する阻害効果は,インフルエンザウイルス(N1-NA)に対するそれと比べた場合,有意に小さいことが報告されている(hNEU2:Ki=5000(nM)[6];N1-NA:IC50=0.45(nM)[25]).本節では,Oseltamivirのヒト(hNEU2)およびインフルエンザウイルス(N1-NA)に対する結合選択性の違いを,N1-NAの先行研究[1,2]ならびに相互作用解析から定量的に明らかにする.先行研究においても,LERE-QSAR式(1d)に基づき,Oseltamivirを含む一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔGobs)の変動に対して,物理化学的意味づけにつながる統計的に有意なLERE相関式(3)を得ている.ΔGobs=(1+β1)(1−α)(ΔEbindHF+Edisp+ΔGsolpol)+(1+β2)ΔGdiss+30.0n=8,r=0.929,s=0.915,F=15.8,(1+β1)(1−α)=0.517,(1+β2)=0.589(3)さらに,シアル酸誘導体を3つのフラグメントに分割した詳細な相互作用解析の結果,複合体形成に伴うΔGobsの変動は,両分子間において特にFragmentAとPocketAとの間の分散相互作用などに対応する局所的な相互作用によって支配されることを定量的に明らかにしている[1,2].一方で,hNEU2とN1-NAの活性部位近傍のアミノ酸残基を比べた場合,基質であるシアル酸の結合に関与するargininetriadなどのPocketBのアミノ酸残基は両者において高度に保存されているが,PocketsA,Cのアミノ酸残基は異なっていることが確認できる(図7).相互作用エネルギーの観点においては,正に荷電したamino基を有するFragmentCとPocketCとの間の静電相互作用エネルギーの方が,alkoxy基を有するFragmentAとPocketAとの間の分散相互作用エネルギーに比べて,OseltamivirのhNEU2およびN1-NAに対する結合選択性を担う要因になると考えられる.(a)(b)図7.(a)Oseltamivir−hNEU2複合体および(b)Oseltamivir−N1-NA複合体の活性部位近傍における相互作用.W1およびW2は水分子を,PocketsA,B,Cは,それぞれFragmentsA,B,Cの近傍のアミノ酸残基を表す.OOONH3NHCH3OOONH2NH2Ile22Arg41NH2NH2Arg21OHTyr334NH2NH2Arg304H2NNH2Arg237NH2OGln270Leu217HOTyr179W2W1HOTyr181Asp46OOGlu218OOGlu111Ile103ONH2SAsn86Met85OOGlu39PocketBPocketAPocketCFragmentCFragmentBFragmentAOOONH3NHCH3OOOOONH2NH2Glu119Arg156NH2NH2Arg118OHTyr406NH2NH2Arg371Tyr347OHH2NNH2Arg292NH2OAsn294OOGlu276H2NH2NArg224H2NH2NArg152NW2W1Ile222HOSer246Trp178OAsp151OOOOGlu277Glu227Leu134PocketBPocketAPocketCFragmentCFragmentBFragmentASARNewsNo.22(Apr.2012)-14-先行研究ならびに前節と同様にOseltamivirを3つのフラグメントに分割し,各部分構造のhNEU2に対する静電相互作用エネルギー(ΣIFIEHF(FragmentA)=−1.8,ΣIFIEHF(FragmentB)=−104.1,ΣIFIEHF(FragmentC)=−118.6kcal/mol)と,N1-NAに対するそれ(ΣIFIEHF(FragmentA)=−9.3,ΣIFIEHF(FragmentB)=−112.7,ΣIFIEHF(FragmentC)=−157.1kcal/mol)を比べた場合,FragmentsA,Bが担う静電相互作用エネルギーに大きな差は確認されないが,FragmentCが担う静電相互作用エネルギーにおいて大きな差が確認される.図8には,FragmentCとその近傍のPocketCのアミノ酸残基との間のIFIEHF値を示す.FragmentCのhNEU2およびN1-NAに対する共通した相互作用として,(hNEU2:Asp46;N1-NA:Asp151)との間の水素結合による大きな安定化相互作用エネルギー,(hNEU2:Arg41;N1-NA:Arg156)との間の静電反発相互作用による大きな不安定化相互作用エネルギーが確認できるが(図7,8),これら共通した相互作用はOseltamivirの両者に対する結合選択性を担う要因ではないと考えられる.一方で,(hNEU2:Ile22,Glu39,Asn86;N1-NA:Glu119,Leu134,Glu227)との間には,両者において相互作用エネルギー差が確認される.正に荷電したamino基(FragmentC)とN1-NAの酸性アミノ酸残基(Glu119,Glu227)との間の静電相互作用エネルギーは,対応するhNEU2の中性アミノ残基(Ile22,Asn86)との間のそれと比べてより安定化に寄与している.一方で,hNEU2の酸性残基(Glu39)においては,対応するN1-NAの中性残基(Leu134)との間では確認されない静電相互作用エネルギーによる安定化が確認されるが,その安定化の程度は上述のN1-NAの酸性残基(Glu119,Glu227)との安定化ほどではない.これらhNEU2に特異なアミノ酸残基は,その他のヒトノイラミニダーゼ(hNEU1,3,4)においてもおおよそ保存されていることから,上記と同様な相互作用様式がhNEU1,3,4においても存在すると考えられる.したがって,FragmentCとその近傍のPocketCのアミノ酸残基との間の静電相互作用エネルギーの違いが,Oseltamivirがヒト(hNEU2)よりもインフルエンザウイルス(N1-NA)に対して強い結合選択性を示す主な要因であると結論づけられる.近年,特にOseltamivir服用後の精神・神経症状の有害事象が報告されており,懸念される原因の一つとして,ヒトノイラミニダーゼ(hNEU)への影響が指摘されているが,Oseltamivirがインフルエンザウイルス(N1-NA)に対して強い結合選択性を示すという上記の解析結果からは,この可能性については解釈し難い.一方で,Liら[26]はアジア人に多いhNEU2の遺伝的多型(Arg41Gln変異体hNEU2)においては,Oseltamivirの阻害効果が野生型hNEU2に比べて増大することを見出している.このことは,Oseltamivirの正に荷電したamino基とArg41との間の静電反発相互作用による大きな不安定化相互作用エネルギーが(図8),Glnへの変異によって消失するとの解釈から理解可能である.しかしながら,hNEU2は骨格筋にのみ発現するという報告[27]もあり,OseltamivirによるhNEU2の阻害が精神・神経症状などの中枢性の有害事象に関与しているとは考えにくい.したがって,Oseltamivir服用後の有害事象については,既知のhNEUへの影響よりも,中枢性の症状を生じた患者における未知のhNEUの存在の有無についての検証やインフルエンザ自体に伴い発現する症状の一つとして捉えるなどの検討が必要であると考える.8.まとめ本研究では,ヒトのhNEU2と抗インフルエンザ剤を含む一連のシアル酸誘導体との複合体について,FMO法等の分子科学計算ならびにその結果に基づくLERE-QSAR解析を行った.その結果,一連のシアル酸誘導体とhNEU2の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動は,FragmentAとPocketAとの間の水素結合ないしは静電相互作用によって支配されていること,また,抗インフルエンザ剤が共通に持つ正に荷電したFragmentCは,hNEU2のPocketCとの間の相互作用においても,結合に有効に働いていることを定量的に明らかにした.さらに,OseltamivirのhNEU2およびN1-NAに対する相互作用において,特にamino基を有するFragmentCとその近傍図8.FragmentC(Oseltamivir)とPocketC(hNEU2,N1-NA)との間の静電相互作用エネルギー.Ile22Arg41Asp46Glu39Met85Asn86Glu119Arg156Asp151Leu134Trp178Glu227Oseltamivir−hNEU2Oseltamivir−N1-NAAminoacidresiduesinPocketC−120−100−80−60−40−20020406080IFIEHF(kcal/mol)hNEU2N1-NASARNewsNo.22(Apr.2012)-15-に位置するPocketCのアミノ酸残基との間の静電相互作用エネルギーの違いがOseltamivirの結合選択性に大きく寄与していることを明らかにした.9.おわりに本稿ならびに前稿[1]では,ノイラニミダーゼ(ヒト:hNEU2,インフルエンザウイルス:N1-NA)と一連のシアル酸誘導体との複合体について,分子科学計算に基づくLERE-QSAR解析の結果について示した.両解析ともに,構築したLERE-QSAR式(2)および(3)に基づき,一連のシアル酸誘導体とノイラニミダーゼの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動を支配する相互作用様式を原子および電子レベルで定量的に明らかにすることができた.相関式(2)および(3)において,entropy−enthalpy補償則におけるαの値がほぼ等しいとした場合(α=0.70±0.20),両者におけるβ1,β2,constの値は異なる(式(2):β1(2)=−0.800,β2(2)=−0.917,const(2)=–1.02;式(3):β1(3)=0.723,β2(3)=−0.411,const(3)=30.0).相関式(2)におけるβ1(2),β2(2),const(2)のそれぞれの値は,式(3)のそれらよりも小さいが(β1(2)<β1(3),β2(2)<β2(3),const(2)<構造活性フォーラム2012「GPCR研究の最前線」Gタンパク質結合型受容体(GPCR)は最大の受容体ファミリーを形成し、医薬品標的として広く注目され、また味覚や嗅覚の受容体研究も進められており、広い分野の研究が進められている。さらに、機能的な構造解析に向けた結晶構造解析による受容体の構造変化とリガンドの認識様式などが解明されつつあるなど、より合理的なリガンド(医薬品など)のデザインにも応用される研究が進んでいる。本フォーラムでは、GPCR研究分野における第一線の研究者を招いて講演していただき、GPCR研究の最前線を体系的に理解し、分子設計·医薬品化学における応用について討論する。主催:日本薬学会構造活性相関部会協賛:日本薬学会、日本化学会、日本農芸化学会、日本分析化学会、日本農薬学会、近畿化学協会日時:平成24年6月22日(金)10:00–17:00会場:コープイン京都[〒604-8113京都市中京区柳馬場蛸薬師上ル井筒屋町411フリーダイヤル:0120-79-6600、Tel:075-256-6600、Fax:075-251-0120E-mail:coopinn-k@univcoop.or.jphttp://rcpt.kyoto-bauc.or.jp/coop-inn/kyoto/]交通:JR「京都」駅→地下鉄烏丸線→「四条」駅下車、(13番出口から)徒歩5分JR「京都」駅より市バスA-2のりば(5番系統に乗車)「四条高倉」駅下車、徒歩10分JR「京都」駅よりタクシーで10分阪急電車「烏丸」駅(13番出口から)徒歩5分京阪電車「三条」駅(三条通西へ、京都YMCAを左折)徒歩16分講演:1.多様なGPCRの機能と構造石黒正路(新潟薬大)2.GPCRをターゲットにした「構造に指南された創薬」を目指すための三つの戦略小林拓也(京大)3.GPCRモデリングとインシリコスクリーニング広川貴次(産総研)4.味覚受容体における味物質認識機構三坂巧(東大)5.オーファンGPCR研究に基づく創薬ターゲット探索森正明(武田薬品)申込み締切り:定員(140名)になり次第締切り参加費:一般4,000円、学生無料参加申込み方法:構造活性相関部会ホームページからお願いします振替口座:三井住友銀行店番号007、口座番号7180812構造活性フォーラム2012実行委員会委員長石黒正路問合せ先:〒956-8603新潟市秋葉区東島265-1新潟薬科大学構造活性フォーラム実行委員会田宮実Tel:0250-25-5000、Fax:0250-25-5021、E-mail:sarforum2@nupals.ac.jpSARNewsNo.22(Apr.2012)-24-/////Activities/////〈会告〉第40回構造活性相関シンポジウム主催:日本薬学会構造活性相関部会共催:日本化学会、日本農芸化学会、日本分析化学会、日本農薬学会会期:2012年11月29日(木)~2012年11月30日(金)会場:岡崎市図書館交流プラザ・りぶら(〒444-0059愛知県岡崎市康生通西4-71http://www.libra.okazaki.aichi.jp/)討論主題:1.生理活性物質の活性評価・医農薬への応用2.QSARの基本パラメータ・基本手法・情報数理的アプローチ3.QSARと吸収・分布・代謝・毒性・環境毒性4.コンビナトリアルケミストリーと創薬5.バイオインフォマティクス6.分子情報処理(データベースを含む)・データ予測発表形式:口頭およびポスター(優秀な発表にはSARPresentationAwardを授与)発表申込:6月1日(金)~8月3日(金)締切必着(1)演題、(2)発表者氏名と所属、(3)連絡先(住所、Tel、Fax、E-mail)、(4)200字程度の概略、(5)口頭・ポスターの別、(6)上記討論主題番号を明記の上、WebサイトまたはE-mailでお申し込みください。詳細は、ホームページ上の発表申込要領をご覧ください。講演要旨:9月28日(金)締切必着執筆要領はホームページに掲載します。参加登録予約申込:11月9日(金)締切詳細は、ホームページ上の参加登録予約申込要領をご覧ください。参加登録費:[一般]予約8,000円、当日9,000円[学生]予約2,000円、当日3,000円※要旨集前送希望の場合は、郵送料1,000円を別途申し受けます。※費用振込み後、参加取り消しによる返金には応じられません。懇親会:11月29日(木)19:00頃[一般]予約7,000円、当日8,000円[学生]予約3,000円、当日4,000円詳細は、部会ホームページ(下記)をご参照ください。問合せ・申込先:〒441-8580愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1豊橋技術科学大学情報・知能工学系分子生命情報学研究室第40回構造活性相関シンポジウム実行委員会加藤博明TEL:0532-44-6879FAX:0532-44-6873E-mail:sar40@mbi.cs.tut.ac.jphttp://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/SARNewsNo.22(Apr.2012)-25-/////Activities/////部会役員人事平成24年度から、部会長および副部会長(アカデミア)が交代することとなりました。部会長:高橋由雅(豊橋技術科学大学大学院工学研究科)副部会長(アカデミア):高木達也(大阪大学大学院薬学研究科)副部会長(企業):清水良(田辺三菱製薬)(継続)構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第22号をお届けいたします。今回、Perspective/Retrospectiveでは、石川哲也先生(理化学研究所)に、X線自由電子レーザーSACLAについての解説と、医学・薬学への応用についての展望についてご寄稿いただきました。結晶構造解析への適用だけでなく、単分子のイメージングまでも可能ということで、SACLAの利用により、今後様々な分野での研究の進展がたいへん期待されます。CuttingEdgeでは、比多岡清司先生(徳島大学)に、abinitioFMOとLERE-QSARによるノイラミニダーゼと阻害剤の相互作用解析についてご紹介いただき、また、寺師玄記先生(北里大学)に、タンパク質予測構造のコンセンサス法による評価についてご紹介いただきました。分野はそれぞれ異なりますが、どちらも独自の新規手法として、その有用性が示され、またこれからの発展・応用が期待されます。お忙しい中ご執筆いただきました先生方に、心よりお礼申し上げます。このSARNewsが今後とも構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを、編集委員一同願っております。(編集委員会)SARNewsNo.22平成24年4月1日発行:日本薬学会構造活性相関部会長高橋由雅SARNews編集委員会(委員長)粕谷敦福島千晶飯島洋竹田-志鷹真由子久保寺英夫*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。__