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SARNews No.18

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SARNewsNo.18構造活性相関部会・ニュースレター<1April,2010>「目次」/////Perspective/Retrospective/////計算科学によるタンパク質間相互作用予測竹田-志鷹真由子・・・2/////CuttingEdge/////実験と連携できるSBDDへ向けて幸瞳、本間光貴・・・7バーチャルスクリーニングを用いた新規脱皮ホルモン受容体リガンドの探索原田俊幸・・・12/////Activities/////<報告>第37回構造活性相関シンポジウム開催報告横山祐作・・・17FifthInternationalSymposiumonComputationalMethodsinToxicologyandPharmacologyIntegratingInternetResources参加報告吉田達貞・・・18<会告>構造活性フォーラム2010「QSARパラダイムの分化と深化」・・・23第38回構造活性相関シンポジウム・・・242010年度構造活性相関部会SARPromotionAward受賞候補者募集・・・25部会役員人事・・・26SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Perspective/Retrospective/////計算科学によるタンパク質間相互作用予測北里大学薬学部竹田-志鷹真由子1.はじめに生体システムは生命現象を司る多種多様な分子の複雑なネットワークから成っており、それらの相互作用情報は疾患の発症メカニズムの解明や創薬の標的タンパク質の同定など創薬研究において大変重要である。近年、プルダウンアッセイあるいは質量分析を応用した方法や酵母ツーハイブリッド法などのハイスループットな実験技術により、どのタンパク質とどのタンパク質が相互作用するのかしないのかというタンパク質間相互作用(Protein-ProteinInteraction;PPI)情報が大量に蓄積してきている。一方で、タンパク質間相互作用を立体構造に基づいて理解する際に不可欠なタンパク質複合体の立体構造情報は、実験そのものの困難さや複合体を形成する相互作用の組合せが膨大であることもあり、残念ながら少ないのが現状である。したがって、タンパク質間相互作用の研究において、コンピュータを用いたタンパク質複合体の立体構造予測は欠かすことのできない重要な手法となっている[1,2]。本稿では、筆者らが開発したタンパク質-タンパク質ドッキング法であるSKE-DOCK[3]およびタンパク質立体構造の評価法であるCIRCLE[3,4]について紹介する。さらに、タンパク質間相互作用予測の国際コンテストであるCAPRI(CriticalAssessmentofPRedictionofInteractions)について紹介し、相互作用予測の現状と展望を述べる。2.タンパク質立体構造の評価コンピュータを用いたタンパク質立体構造予測には、単体タンパク質の立体構造予測とタンパク質複合体の立体構造予測がある。いずれの場合も、コンピュータで予測した立体構造を実際に創薬研究などで用いる場合、信頼性の高い予測構造を構築することが肝要である。単体タンパク質の立体構造予測においては、テンプレート検索やアライメントなどのそれぞれのステップにおいて多数の候補が得られる。現在では立体構造構築技術が自動化・高速化され簡便であることから、多数のテンプレートやアライメントに対して立体構造構築を行った後に、立体構造を評価する関数を用いて候補予測構造に順位付けを行い、スコアの高い予測構造を選び出すという方法が有効である[5]。また、タンパク質複合体の立体構造予測においても、複合体の結合状態を密に精度良く探索することにより多数の複合体の候補構造をサンプリングし、それら候補構造群を立体構造評価により順位付けし、真もしくは真に最も近いと思われるスコアの高い複合体構造を選び出す方法が有効である。したがって、高精度にタンパク質立体構造予測を実行するためには、いずれの場合においても多数の候補構造からベストな構造を抽出できる(立-2-SARNewsNo.18(Apr.2010)体構造を評価できる)評価関数が大変重要な役割を果たすことになり、有力なスコア関数開発に世界の注目が集まっている。タンパク質複合体の立体構造予測(タンパク質-タンパク質ドッキング)における評価関数の代表例は、形の相補性、ファンデルワールスエネルギー、静電ポテンシャル、疎水エネルギー、幾何学的一致度、水素結合、アミノ酸残基ペアポテンシャル、クラスターサイズ、統計スコアなどである。これらの評価関数は単独に使われることはまれであり、多くの場合は組み合わせて用いられる。SKE-DOCK(後述)を例にとるならば、サンプリングで主に用いるのは相補性のスコアであり、最終的な順位付けで用いるのは立体構造評価ソフトウェアであるCIRCLEで算出されたスコアである。CIRCLEは、タンパク質を構成するアミノ酸の側鎖原子の周りの環境がアミノ酸の種類によって特徴を示すことに注目し、それをスコア化したものであり、Eisenbergらが開発したソフトウェアVerify3D[6]の拡張版である。Verify3Dでは環境を「①アミノ酸残基の極性原子との接触度」と「②アミノ酸残基の埋没度」によって6通りに定義し、さらに3種類の「③2次構造」の分類と合わせて合計18通り(6×3=18)で規定しているが、CIRCLEでは精度向上のためにさらに細かく環境を規定している。例えば①と②の環境分類を10000通り(100×100)に増やしたり、③の分類を2次構造中の場所(端、中央など)を考慮することによりさらに細かく分類したりしている。分類を細かくすることによりデータの連続性が損なわれる危険性があるため、ガウシアンフィルターを用いてデータの平滑化を行っている。3.SKE-DOCKの開発SKE-DOCK(http://www.pharm.kitasato-u.ac.jp/bmd/files/SKE_DOCK.html)は、タンパク質-タンパク質ドッキングサーバーであり、大きく分けて(1)Geometricdocking、(2)クラスタリング、(3)CIRCLEを用いた構造の評価、(4)FAMSComplexを用いた側鎖の再構築の4つのステップから成っている。(1)複合体の候補構造を探索するサンプリング方法の網羅性が不十分であるならば、そもそも真のタンパク質複合体の構造に近い候補を得ることは不可能となる。しかし網羅性を重視するあまり、サンプリング方法が非効率的で現在のコンピュータ資源では計算することが不可能なほどあまりにも膨大な計算コストになるならば、たとえ網羅性が高いサンプリング法であったとしても実用には適さない。したがってサンプリング方法には網羅性と効率性の両立が求められる。SKE-DOCKでは、局所的なタンパク質分子の表面を四角錐の5つの座標点(パッチ)で表現し、2分子のパッチ同士のマッチングを高速に行い相補性の高いドッキング構造を検索している。この方法を使用することで、局所的なタンパク質分子の表面で、凸部と凹部がうまく組み合わさったドッキング構造のみを効率的に検索することが可能となっている。当然、分子間での衝突が多い構造は取り除かれる。相補性スコア関数がサンプリン-3-SARNewsNo.18(Apr.2010)グでの目的関数であると同時にフィルタリングとして用いられ、相補性スコアで上位5000個の候補構造が選択され次のステップへ進む。(2)Geometricdockingによって得られた5000個の予測構造を、冗長性を削減するために相互の類似度によるクラスター解析を行う。その結果、各クラスターの代表構造3000~4000個の候補構造に絞られる。(3)CIRCLEを用いて3000~4000個の候補構造を評価し、それらの中から最も安定なドッキング構造10個を選び出す。(4)Geometricdockingにおいては主鎖同士の大きな分子間衝突などがあるドッキング構造は排除されるが、側鎖同士の小さな分子間衝突は許容されている。そこで、それらの分子間衝突を解消するために、(3)で選ばれた上位10個の構造に対して、タンパク質複合体モデリングソフトウェアFAMSComplex[7]を用いてアミノ酸側鎖の再構築(構造精密化)を行い、10個の最終構造を構築する。FAMSComplexは、TemplateBasedModeling(テンプレートベースト・モデリング)の手法を複合体立体構造予測に応用したソフトウェアで、立体構造既知のタンパク質複合体構造(テンプレート)をもとに立体構造未知のタンパク質複合体構造(ターゲット)を予測する全自動モデリングシステムである。4.CAPRI:タンパク質間相互作用予測の国際コンテストタンパク質立体構造予測は国際的に関心の高い分野である。1994年より隔年に開催されているCASP(CriticalAssessmentofTechniquesforProteinStructurePrediction;http://predictioncenter.org/)は、単体タンパク質の立体構造予測の精度を検証する国際コンテストであり、今年で9回目(CASP9)になる。その後、タンパク質相互作用情報の重要性の認識が高まる中、タンパク質複合体の立体構造予測の国際コンテストであるCAPRI(http://www.ebi.ac.uk/msd-srv/capri/)が2001年から開始された。CAPRIは、実験により解析されたタンパク質複合体の立体構造(正解構造)を完全に伏せた状態で行うタンパク質間相互作用予測のブラインド・コンテストで、参加者各自のドッキング解析のアルゴリズムが正しく複合体構造を予測することができるかを競うものである。参加グループ数は2001年のコンテスト開始当初のCAPRI1-2では19グループであったが、最近では40を超えるグループが参加するようになってきており、タンパク質間相互作用予測に対する関心が国際的に高まってきていることがうかがえる。CAPRIの開催は不定期であるが、現在ではCAPRI21まで回を重ねている。CAPRIでは通常、ドッキングを行うそれぞれの分子の三次元座標がPDB(ProteinDataBank)フォーマットで参加者に与えられ、参加者は1つのターゲットにつき最大10個までの順位付けした予測構造を提出することができる。分子の三次元座標は、単体の状態で構造解析されたもの(unbound構造)が出題される場合と、複合体を形成している状態(正解構造)からそのまま抜き出されたもの(bound構造)が出題される場合があ-4-SARNewsNo.18(Apr.2010)る。前者の場合はドッキングの際にinducedfitも考慮に入れなくてはならない。現在までのところ、bound構造-unbound構造のドッキングまたはunbound構造同士のドッキングが出題されている。また、1対1の2量体構造の予測に限らず、3量体構造の予測や、ホモダイマー構造の予測なども出題される。最近では、分子の三次元座標ではなくアミノ酸配列が与えられる場合もある。そのような場合は分子の立体構造自体も予測(モデリング)しなければならず、精度の高いモデリング技術とドッキング技術の両方が要求され、タンパク質立体構造予測の総合力が試されることになる。また、ドッキングにおける評価関数の精度を競うscoringと呼ばれる部門も新設された。Scoring部門参加者に対しては、大量の予測ドッキング構造群が与えられ、それらの中から実験構造または実験構造に近い精度の高いドッキング構造を選び出すことが出来るかどうか評価関数の優劣を競う。提出されたドッキング構造の予測精度は、High,Medium,Acceptable,Incorrectの4つの段階で判定される。2007年度以降のターゲット(T29~T42)において、参加グループが提出した全ドッキング構造の中で、High(正しいアミノ酸相互作用の比率が50%以上で、相互作用部位のRootMeanSquareDeviation(RMSD)<1.0Åまたは相対配置のずれが1.0Å未満)の判定を受けたものはT29~T36では1つもない状態であり、非常に高精度なタンパク質ドッキングは難しい課題であった。しかしながらT37以降Highの判定を受けるドッキング構造は増加してきており、ターゲットの難易度にもよるが高精度なタンパク質ドッキングが可能になってきた様子がうかがえる。図1はT40.CAにおいて、筆者らのグループが予測した複合体構造と、実験で解析された複合体構造(正解構造)とを比較したものである。レセプター分子同士で重ね合わせを行った後の、タンパク質リガンド間のRMSDは0.57Åであり、判定はHighであった。図1CAPRI18のT40.CAにおいて、筆者らが予測したドッキング構造と実験構造との重ね合わせ(予測構造:cyanとgreen、実験構造:yellowとmagenta)5.おわりに相互作用部位で大きな構造変化が起こっていないターゲットに関してCAPRIの結果から示されることは、参加グループの半数近くがAcceptable以上の精度で相互作用を予測できているということである。それらのグループは、様々なサンプリング法とスコア-5-SARNewsNo.18(Apr.2010)関数を用いていることから、このようなターゲットでは、その手法に絶対的な優劣はもはや無いと思われる。さらに最近では、Highの精度での予測も可能になってきている。タンパク質間相互作用予測において現在もなお残されている難しい課題は、「タンパク質構造は、周りの環境に応じて柔軟に変化する」ことへの対応である。これはすなわちタンパク質の立体構造は単体で存在するときと、複合体として他のタンパク質と相互作用して存在するときとでは構造が異なるということを意味している。構造の変化の度合いは様々であり、相互作用部位に存在するアミノ酸側鎖部分のパッキングだけが変化するものや、ループ構造部分が変化するもの、ドメイン構造の配置が変化するものまで様々ある。前述したSKE-DOCKを例に挙げると、側鎖の変化やループ構造の若干の変化程度であれば、rigid-bodydocking(構造変化を考慮しないドッキング)でも良好な予測構造が得られることがわかっている。しかし、それ以上の大きな構造変化が相互作用部位で起こる場合には対応ができていないのが現状である。ドッキング解析の精度は今後、構造変化を含めたflexibledockingにいかに対応するかにかかっているといえ、多くの研究グループがすでにその試みを始めている。タンパク質複合体の構造解析の進展により実験データが拡充し、ドッキング手法の改良が進めば、より精度の高いflexibledockingも可能になるものと期待される。謝辞本研究の共同研究者である北里大学薬学部生物分子設計学教室のメンバーならびに関係者の皆様に感謝いたします。参考文献[1]4.タンパク質複合体の立体構造予測:竹田-志鷹真由子、寺師玄記、加納和彦、梅山秀明、遺伝子医学MOOK14,55-59(2009).[2]計算科学によるタンパク質間相互作用解析:竹田-志鷹真由子、寺師玄記、梅山秀明、生体の科学58,338-341(2007).[3]TheSKE-DOCKserverandhumanteamsbasedonacombinedmethodofshapecomplementarityandfreeenergyestimation:TerashiG.,Takeda-ShitakaM.,KanouK.,IwadateM.,TakayaD.andUmeyamaH.,Proteins,69,866-872(2007).[4]fams-ace:Acombinedmethodtoselectthebestmodelafterremodelingallservermodels:TerashiG.,Takeda-ShitakaM.,KanouK.,IwadateM.,TakayaD.,HosoiA.,OhtaK.andUmeyamaH.,Proteins,69(Suppl8),98-107(2007).[5]3.タンパク質立体構造予測1)TemplateBasedModeling:竹田-志鷹真由子、寺師玄記、加納和彦、梅山秀明、遺伝子医学MOOK14,43-48(2009).[6]Assessmentofproteinmodelswiththree-dimensionalprofiles:LüthyR.,BowieJ.U.andEisenbergD.,Nature,356,83-85(1992).[7]FAMSComplex:Afullyautomatedhomologymodelingsystemforproteincomplexstructures:Takeda-ShitakaM.,TerashiG.,ChibaC.,TakayaD.andUmeyamaH.,Med.Chem.,2,191-201(2006).-6-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////CuttingEdge/////実験と連携できるSBDDへ向けて幸瞳、本間光貴独立行政法人理化学研究所生命分子システム基盤研究領域制御分子設計研究チーム1.はじめにタンパク質構造の解析技術やコンピュータの処理能力は、年を追う毎にますます発展・向上している。それに伴い、ターゲットのタンパク質構造とコンピュータを利用した創薬(Structure-BasedDrugDiscovery;SBDD)の成功例も増大しつつある。ドッキングを用いたinsilicoスクリーニングは、ランダムスクリーニングに比べて100~1,000倍も効率よく活性化合物を発見できる、SBDDの代表的な手法である[1]。しかし、実際の創薬現場でのinsilicoスクリーニングはタンパク質構造座標とコンピュータさえあれば、簡単に活性化合物を見つけられるといった生易しいものではない。困難さの要因としては、いくつか考えられるが、第一に、タンパク質の形状変化の影響がある。タンパク質は活性型・不活性型など複数の状態をとったり、リガンド存在下でinducedfitが起こったりするために、利用した1つのタンパク質構造が多様な阻害剤の結合に適している保証はない。2つめに、ドッキング方法の問題がある。一口に「ドッキング」と言っても、様々な手法や設定が可能である。理論的背景を考慮しながら、ターゲットのタンパク質構造に最適な手法・設定を選択しなければ、妥当なドッキングモデルを得ることは難しい。3つめにスコア関数の問題がある。Insilicoスクリーニングでは通常結合エネルギーを予測したスコアで、化合物の優先順位付けを行う。しかし、スコア関数の精度・適用範囲が充分ではないことに加えて、実際に結合様式を目視すると、高いスコアの化合物であっても結合部位の入り口付近に結合している場合もあり、スコアの高低のみによって最終の候補化合物群を選択することは難しいのが現状である。当チームではこの3つの問題点に対して、既知の阻害剤情報やタンパク質構造情報を最大限活用するコンセプトのもと、半自動ドッキング条件検討システムPALLASと相互作用パターン機械学習予測システムMUSESを開発した。本稿では、この2つのシステムの概念と適用例について紹介したい。2.ドッキング条件検討システム:PALLASPALLASの流れについて、図1に示す。まず、検討したいドッキング条件群(タンパク質構造、使用するドッキングソフトウェア、そのソフトウェアの設定項目の組み合わせ)と、比較的少数の検証用化合物セットを用意する。そして、既知活性化合物と囮化合物の判別能が良い、あるいは結晶配座の再現性が良いドッキング条件を見いだすために、全条件に対して、検証用化合物セットと既知X線構造中のリガンドを用いて、アンサンブルドッキングを行う。各ドッキング条件は、ドッキング結果から得られるEnrichmentFactor(EF)、ROCscore(ROCプロットのAUCの理想選択に対する割合)、リガンドのX線配座の再現率(reproducibility;全体のリガンド数に対する、一定値以内のRMSDであったリガンド数の百分率)の3つの指標で評価する。-7-SARNewsNo.18(Apr.2010)図1PALLAS概念図また、複数のドッキング条件の順位の組み合わせも考慮できるようにした。その考え方を図2に示す。横軸の1目盛りが1個の活性化合物を表しており、条件A・Bでドッキングした際の順位を色で示している。条件Aのみでドッキングすると、その条件ではうまくドッキングできない活性化合物は落とされる可能性がある。そこで、条件Bでの結果と照らし合わせ、高い順位の方をその化合物の順位とすると、活性化合物を見逃す可能性を下げられる。あるいは、両方の結果が共に高順位である化合物は、そのタンパク質に結合しやすいと見なせるため、化合物の優先順位づけにも利用できる。図2複数のドッキング条件の組み合わせ-8-SARNewsNo.18(Apr.2010)実際に各種ターゲットを用いてPALLASを検証した結果を図3に示す。検証用化合物セットは、ターゲット毎に既知活性化合物が100化合物、囮化合物が3,600化合物である。ドッキングソフトウェアはOpenEye社のFRED[2]を、スコアはchemgauss3を使用した。検討したタンパク質構造数は、Cdk2:117、thrombin:243、carbonicanhydrase2:218、HIV-1protease:196である。グラフからもわかるように、同じターゲットであっても、タンパク質構造が異なればドッキング性能が大きく変わってくる。また、複数の条件を組み合わせた場合(2conds)は単一の条件(1cond.)に比べて、特にX線中のリガンド配座の再現性(X-rayrepro.)が各ターゲット共に大きく改善した。このように、任意のドッキング条件を1つだけ用いてinsilicoスクリーニングを実施するのは危険であり、ドッキング条件の検討が重要であることがわかる。図3各種ターゲットにおける、ドッキング条件の分離能・再現率の分布-9-SARNewsNo.18(Apr.2010)3.相ӟ互作用パターン機械学習予測システム:MUSESMUSESの流れについて、図4に示す。まず、全ての既知活性化合物と囮化合物のセットをターゲットタンパク質構造にドッキングして、相互作用パターンを計算する。計算方法としては、残基単位での相互作用有無を見るSIFt[3]、PLIF[4]や、当チームで開発した原子ベースのaPLIF、相互作用エネルギーを考慮したaPLIED、リガンドのファーマコファーに注目したpharm-IF[5]などが挙げられる。化合物を2つに分け、学習用セットで相互作用パターンを記述子とした機械学習を行い、活性判別モデルを構築する。作成したモデルは、残りの精度検証用セットで検証し、EFやROCscoreなどの指標から、実際のinsilicoスクリーニングで使用するモデルを決定する。図4MUSES概念図Pim1キナーゼに対して、PALLASと共にMUSESを使用したところ、PALLASにより見いだしたドッキング条件で、GlidescoreだけではEF1が15倍だったものが、MUSESの活性判別モデル(aPLIED-randomforest)により、29倍にまで向上した。この結果から、相互作用パターンを学習した活性判別モデルが、ドッキング結果の絞り込みに有用であることがわかる。また、Pim1や薬剤耐性EGFRなどのターゲットに対して、insilicoスクリーニングにPALLASやMUSESを実際に用いて化合物を選択し、アッセイした結果、ヒット化合物が見つかっている。4.今後の展望創薬の現場では、時間・情報・アッセイできる化合物数が限られているという理由で、HTSではなくinsilicoスクリーニングを実施する場合が増えてきている。この限られたリソースの中で、計算化学者は安定して効率の良いinsilicoスクリーニングを実施できるように工夫しなけれ-10-SARNewsNo.18(Apr.2010)ばならない。端的に言うと、PALLASは面倒なドッキング条件の検討を自動化し、MUSESはターゲットと化合物の結合に重要な相互作用パターンを明らかにする。この2つのツールによって、普段目にする情報の中に隠されている活性化合物への手がかりを見つけ出せる。現在当チームでは、図5のように、実験データを最大限に活用したinsilicoスクリーニングのスキームを確立しつつある。今後もより多くのターゲットに適用できる汎用性のある手法を目指して、検証と改良を重ねていきたい。図5insilicoスクリーニング全体図5.謝辞第37回構造活性相関シンポジウムにおいて、貴重なご意見、ご指導を賜りました多くの先生方に心よりお礼申し上げます。また、本研究内容を本誌に掲載する機会を与えてくださいました諸先生方に深く感謝申し上げます。6.参考文献1.Shoichet,B.K.Nature2004,432,862-865.2.McGann,M.R.;Almond,H.R.;Nicholls,A.;Grant,J.A.;Brown,F.K.Biopolymers2003,68,76-90.3.Deng,Z.;Chuaqui,C.;Singh,J.J.Med.Chem.2004,47,337-344.4.MOE(MolecularOperatingEnvironment),version2009.10;ChemicalComputingGroupInc.:Montreal,Quebec,Canada,2009.5.Sato,T.;Honma,T.;Yokoyama,S.J.Chem.Inf.Model.2010,50,170-185.-11-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////CuttingEdge/////バーチャルスクリーニングを用いた新規脱皮ホルモン受容体リガンドの探索京都大学大学院農学研究科原田俊幸1.はじめに昆虫の成長過程である脱皮、変態を調節する脱皮ホルモンは、エクジステロイドと呼ばれるステロイド型化合物である。昆虫はこれまでに100万種以上の存在が報告されている多様な生物群であるにもかかわらず、そのほとんどが共通してエクジステロイドの一種である20-hydroxyecdysoneを脱皮ホルモンとして用いている(図1)。そのため、この脱皮ホルモンによる調節機構を撹乱する化合物が、安全性が高くさまざまな昆虫に作用する殺虫剤として利用できるものと期待されてきた。1980年代後半に発見されたジベンゾイルヒドラジン類(図1)は、分子レベルにおいて脱皮ホルモンと同様の活性を示す化合物群の一つで、殺虫剤としての実用化に至った化合物であるが、その脱皮ホルモン様作用は主に鱗翅目昆虫に対して特異的であった1。これは20-hydroxyecdysoneがほぼ全ての昆虫種において脱皮ホルモンとして機能しているのに比べ対照的である。この種間選択性の分子的基盤については大きな関心が持たれ、これまで構造活性相関研究をはじめとするさまざまな研究が行われてきた2。これに関し、近年X線結晶構造解析により明らかとなった受容体に対する結合様式によれば、20-hydroxyecdysoneとジベンゾイルヒドラジンとは、受容体の結合ポケットを一部しか共有していない。そしてジベンゾイルヒドラジンのみが相互作用するポケットの構造に昆虫種間差があるため、活性の強さに差が生じると推察されている3。本研究では、まずエクジステロイドに関し、分子モデリングと三次元定量的構造活性相関の手法を用い、活性発現において必要とされる構造要因を解析した。そしてこの解析結果に基づき、バーチャルスクリーニングの手法を用いてスペクトルの広い新規脱皮ホルモン受容体リガンドの探索を行った。得られた活性化合物についてはドッキング解析によりその結合様式を検証した。OHOH図1.脱皮ホルモンおよびそのアゴニストOHOHOHROHNONHORARBエクジステロイドR=OH:20-hydroxyecdysoneR=H:ポナステロンAジベンゾイルヒドラジン類-12-SARNewsNo.18(Apr.2010)2.エクジステロイドの構造活性相関4先に述べたように、脱皮ホルモンはほぼ全ての昆虫目において20-hydroxyecdysoneである。またエクジステロイドの構造活性相関も昆虫目の違いによらず変わらないことが、これまでの研究により明らかとなっている5。本研究では、キイロショウジョウバエの脱皮ホルモン受容体に対する結合活性が報告されている19種のエクジステロイドに関して解析を行った。まずはX線結晶構造解析により立体構造が明らかとなっているオオタバコガ脱皮ホルモン受容体を鋳型として、キイロショウジョウバエ受容体のリガンド結合領域の立体構造をホモロジーモデリングの手法により予測した。その際、19種のエクジステロイドそれぞれをリガンドとして順次用いることで、すべてのリガンド-受容体複合体モデルを構築した。得られたモデルにおいてリガンド-受容体間で形成し得る水素結合数を計測し、これをパラメータとして導入しCoMFA法による3D-QSAR解析を行ったところ、予測水素結合数と受容体結合活性の間には正の相関関係が認められた。下記の相関式において、sは標準偏差、rは相関係数、Fは実測値と計算値の変動の分散比で回帰式の有意性、qは予測値・実測値相関係数、Spressは“Leaveoneout法”における標準誤差をそれぞれ表している。pIC50(M)=0.585×[予測水素結合数]+[CoMFA立体効果]+2.734q2=0.536、Spress=1.025、component=1、r2=0.637、s=0.906、F1,13=22.835寄与率:[予測水素結合数]=91%、[CoMFA立体効果]=9%このQSARの結果、エクジステロイドの活性発現においては、リガンド-受容体間で形成される水素結合の数が決定的な要因となっていることが示された(図2)。またその際、水素結合が一つ増えるごとに活性は約3.8倍向上した。一方、各モデルにおいてエクジステロイドの側鎖末端部の疎水性部位周辺には、疎水性のアミノ酸残基(Leu、Ile)が集中しており、リガンド-受容体間での疎水性相互作用の形成が示唆された(図2)。OHHOHOOOHOHArgArgAlaGluThrTyrAsnAsnLeuLeuIleHydrophobicinteractionHydrogenbonds図2.エクジステロイドにおけるリガンド-受容体間相互作用-13-SARNewsNo.18(Apr.2010)3.バーチャルスクリーニングさまざまな昆虫に対して効果のある昆虫成育制御剤を見出すためには、エクジステロイドと同様の結合様式を有する化合物を探し出すことが最も効果的である。ただし、ステロイド型化合物は、合成コストの問題や代謝の影響を受けやすいことから実用化は期待できない。そのため、本研究ではエクジステロイドと類似した立体構造と化学的性質とを有する非ステロイド型の受容体リガンドをバーチャルスクリーニングにより探索することとした。まず市販されている化合物の二次元構造データベースから分子量300~500の約210万化合物を抽出した。OpenEye社製ソフトウェアOMEGAおよびROCSを用い、各化合物の立体構造を網羅的に構築した上で、最も高活性なエクジステロイドであるポナステロンA(図1)に対する立体構造および化学構造の類似度で評価し、上位20,000化合物を選別した。類似度上位の化合物にはステロイド骨格を有するものが多く含まれており、非ステロイド型受容体リガンドの探索には不十分であった。そこでエクジステロイドの構造活性相関により活性発現に重要と考えられたポナステロンAの7つの構造要因(水素結合形成能および疎水性部分構造)に相当する構造の有無を評価するプログラムを独自に作成し、上記20,000化合物についてさらに選別を進めた。この結果、7つの構造要因のうち6つ以上ポナステロンAと共通の構造要因を持つ237種の非ステロイド型化合物に絞込み、その後目視により類似構造を除外して、最終的に24の候補化合物を得た。これら24化合物の脱皮ホルモン受容体に対する結合活性を鱗翅目と鞘翅目の昆虫において評価したところ、3種類の化合物において受容体に対する特異的な結合が認められた(図3)。3化合物の作用強度は、昆虫種間である程度のばらつきはあるものの似通ったものとなっていた。また、最も活性の強かったNo.24のIC50値は10~30μM程度であった(表1)。一方、各活性化合物に関してレポータージーンアッセイを行ったところアゴニスト活性は認められず、ジベンゾイルヒドラジン類を始めとする既存の脱皮ホルモン受容体リガンドとは異なる作用を持つことが明らかとなった。878459050100123456789101112131415161718192021222324728456050100123456789101112131415161718192021222324LepidopteraColeopteraInhibition(%)Inhibition(%)表1.活性化合物の構造およびIC50値2411μM28μM1274μM46μM≒250μM(56%)5115μMNo.CompoundLepidopteraColeopteraNO2OHONNHOHONNNHOSOOOHSNHNONOOH図3.受容体結合試験の結果-14-SARNewsNo.18(Apr.2010)4.活性化合物のドッキング解析バーチャルスクリーニングにより活性が見出された3種類を含む一連の化合物に対して、ドッキング解析を行うことにより受容体に対する結合様式を検討した。市販のドッキングソフトを用いて解析を行う場合、リガンドの配座に関しては十分な解析が行われるものの、受容体側の柔軟性に由来するinducedfitについての解析が不十分となるのが一般的である。そこで本研究では受容体のモデルを構築するにあたり、まずホモロジーモデリングを100回繰り返して100種類の受容体モデルを構築した。乱数を用いたモンテカルロ計算により得られた各モデルの構造はそれぞれわずかに異なり、リガンドとの相互作用により生じる構造変化もこのモデルのいずれかに対応していると考えた。次にリガンド結合部位近傍に位置するアミノ酸に含まれる重原子の座標を、これら100種類の受容体モデルについて総当りに比較し、対応する原子間のずれから平均二乗偏差(RMSD)を算出した。これを指標として類似構造(RMSD≦0.35Å)を除去し、代表的な8種類の受容体モデルを選別した。これら8種類の受容体モデルそれぞれに対して、バーチャルスクリーニングで選抜した24化合物とポナステロンAのドッキング解析を行った。ドッキング解析には分子設計ソフトGoldを使用した。ドッキング解析の結果、ポナステロンA(PonA)は24化合物いずれと比べても高い値を示した。また24化合物を3種類のドッキングスコアの合計値(GoldScore、ChemScore、ASP)でランク付けしたところ、100μM以下の濃度で結合活性を示したNo.12と24は、ポナステロンAと同様の様式で受容体に結合し(図4)、ランキングにおいても2位と4位とかなり上位であった(表2)。現在はこのドッキングモデルに基づき、活性向上を目指した構造展開を進めている。表2.ドッキングスコアNo.スコア13160.2812156.2220155.1524154.9123154.6817144.438141.1122139.835139.0718137.203135.8119134.8216134.526133.989132.8415131.1814128.6910128.141123.052116.8721116.077103.38493.271177.01PonA166.75図4.ドッキングモデル(左:PonA、中央:No.12、右:No.24)-15-SARNewsNo.18(Apr.2010)5.謝辞最後になりましたが、第37回構造活性相関シンポジウムの発表において、貴重なご意見、ご指導を賜りました多くの先生方に心より御礼申し上げます。また本研究内容を公表する機会を与えてくださいました日本薬学会構造活性相関部会に深く感謝申し上げます。6.参考文献1.Wing,K.D.(1988)."RH5849,anonsteroidalecdysoneagonist:effectsonaDrosophilacellline."Science241(4864):467-469.2.Wheelock,C.E.etal.(2006)."High-throughputscreeningofecdysoneagonistsusingareportergeneassayfollowedby3-DQSARanalysisofthemoltinghormonalactivity."BioorgMedChem14(4):1143-59.3.Billas,I.M.etal.(2003)."Structuraladaptabilityintheligand-bindingpocketoftheecdysonehormonereceptor."Nature426(6962):91-6.4.Harada,T.etal.(2009)."Evaluationofhydrogenbondsofecdysteroidsintheligand-receptorinteractionsusingaproteinmodelingsystem."BioorgMedChem17(16):5868-73.5.Ogura,T.etal.(2005)."Molecularcloning,expressionanalysisandfunctionalconfirmationofecdysonereceptorandultraspiraclefromtheColoradopotatobeetleLeptinotarsadecemlineata."FebsJ272(16):4114-28.-16-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////第37回構造活性相関シンポジウム開催報告第37回構造活性相関シンポジウム実行委員長横山祐作東京都港区にある北里大学白金キャンパスにおいて、第37回構造活性相関シンポジウム(会場:薬学部コンベンションホール、2009年11月12日(木)~11月13日(金)、主催:日本薬学会構造活性相関部会、共催:日本化学会、日本農芸化学会、日本分析化学会、日本農薬学会)が開催されました。本年は、昨年に引き続き本シンポジウムの単独開催となりましたが、特別講演1件、招待講演2件、口頭発表18件、ポスター発表36件と例年に匹敵する件数になりました。参加者も208名(特別講演、招待講演、招待者含む)に達し、盛会のうちに終えることができました。主催頂きました、日本薬学会構造活性相関部会はじめ、共催頂きました各学会に感謝致しますと同時に、ご講演頂きました先生方にお礼申し上げます。また、開催資金のご援助を頂きました、日本薬学会並びに東邦大学に感謝致します。これもひとえに、参加頂きました皆様と、副実行委員長の竹田-志鷹真由子先生(北里大学薬学部)はじめとした実行委員の皆様、並びに日本薬学会構造活性相関部会幹事の先生方、更には、事務一般処理を引き受けて頂きました匠屋さんのご助力、ご支援の賜と存じます。中でも会場となった北里大学の梅山研究室、広野研究室の先生方、大学院生には、開催当日の運営に関して、一方ならぬご協力を賜りました。紙面を借りますこと失礼とは存じますが、ご参加頂きました皆様、ご助力、ご支援頂きました先生方、広告展示を行って頂きました企業、団体の皆様に、深くお礼申し上げます。新しい生理活性物質(シード化合物)を見出すことが構造活性相関研究の第一歩である事は、異論がないと思われます。特別講演(1題)、招待講演(2題)とも、シード化合物を見出す実験をベースにした研究に焦点を当てたものでした。長野哲雄先生(東京大学薬学部)に“ユニークな光化学原理に基づくバイオイメージングプローブの開発研究、大学発の創薬研究の新たな動き”と題して特別講演をして頂きました。シード化合物を効率的に探し出すためには、生命現象の解析が必須です。そのための有効な手法としてバイオイメージングが近年注目を浴びています。バイオイメージングプローブ開発の方法論、分子設計、合成、さらには生体への応用について講演して頂きました。また、同時に東京大学生物機能制御ライブラリー機構についての紹介もして頂きました。長野先生には、全く別のテーマに関する講演を同時にして頂くという無理なお願いをしたのですが、快くお引き受け頂きました。この場をお借りして、深くお礼申し上げます。矢守隆夫先生(癌研究会)と夏苅英昭先生(帝京大学薬学部)のお二方に招待講演をして頂きました。矢守先生は、“新規物質の分子標的予測システムの開発と抗がん剤創製への応用”と題されて、増殖阻害プロファイル(フィンガープリント)によるスクリーニングシステムを用いた抗がん剤の開発と臨床研究へ向けた橋渡し研究について講演されました。また、夏苅先生には、“医薬品に秘められたキラリティー”と題して、見過ごされがちな軸不斉キラリティーが医薬品の生理活性にどのような影響を与えるか、合成化学者の観点から講演して頂きました。いずれの講演も、構造活性相関の関連領域として医薬化学領域の研究ではありましたが、多くの参加者が大変興味を持たれ、講演終了後も演者を囲んで熱心な質疑応答をされている風景を見かけました。また、口頭発表、ポスター発表とも大変な熱気で、今後の部会発展に対する強い予感を感じました。次回の構造活性相関シンポジウムは、徳島大学の中馬寛先生のお世話で、10月30(土)~10月31日(日)に、徳島大学工学部講義棟で開催される予定です。皆様のご参加によって活発な討論会になりますよう、どうか宜しくお願い申し上げます。-17-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////「FifthInternationalSymposiumonComputationalMethodsinToxicologyandPharmacologyIntegratingInternetResources(CMTPI2009)」参加報告徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部吉田達貞2009年7月4日から8日までの5日間に渡り、Ankara大学のEsinAki先生、IsmailYalcin先生の主催によりイスタンブール(トルコ)において上記シンポジウムが開催されました。この度筆者はSARPromotionAwardという大変栄誉ある賞を賜り、本シンポジウムに参加する機会を得ましたので以下に報告させていただきます。本シンポジウムにはヨーロッパを中心に29カ国、91名の参加があり、日本からは5名が参加しました。今回のシンポジウム初日には、Hansch-Fujita法によるQSAR(QuantitativeStructure-ActivityRelationship)解析の創始者藤田稔夫先生の誕生80周年記念を祝し、長年に渡ってQSARの発展に寄与してこられた藤田先生が表彰を受けられました。会期中はplenarylectureを含む招待講演(15演題)、口頭発表(20演題)、ポスター発表(45演題)が行われ、終日活発な討論が交わされました。シンポジウムの特徴としては、コンピュータを利用した情報・計算化学、オミックス、バイオインフォマティクスによる創薬研究や毒性予測に関するテーマを主題に、基礎研究からより実践的なアプリケーションの開発に至るまで実に多彩な発表が行われました。特に、ハンガリーのDormán博士らの研究内容は筆者にとって印象深く、大規模なグリッドコンピューティングシステムを活用することにより20万もの化合物の中から抗がん薬候補をわずか一ヶ月たらずでバーチャルスクリーニングするという実用事例を紹介し、非常に迫力あるものでした。また、会場となったイスタンブールはアジアとヨーロッパ圏にまたがる都市であり、歴史ある教会やモスクなどの美しい建造物が数多く保存されている町並みに目を奪われました。筆者は“ComparativeQSARAnalysisofaSeriesofBenzeneSulfonamideInhibitorsUsingAbInitioFragmentMOCalculationofTheirComplexStructureswithCarbonicAnhydrase”の演題でポスター発表を行いましたので、以下にその概要について紹介させていただきます。1.はじめに炭酸脱水酵素(CA,CarbonicAnhydrase)は亜鉛含有のタンパク質であり、酸・塩基平衡、pH調整、二酸化炭素の輸送などの種々の生体反応に関与する。これまでに炭酸脱水酵素の阻害剤について、多数のQSAR解析も報告されている。緑内障やてんかんの治療薬として現在臨床使用されている炭酸脱水酵素阻害剤はスルホンアミド構造を共通に有しており、X線結晶解析による炭酸脱水酵素との複合体構造からは3つのHis残基とともに阻害剤のスルホンアミド部位が第4の配位子として活性部位の亜鉛に配位することが明らかとなっている(次頁・図1a)。本研究では、炭酸脱水酵素と一連のベンゼンスルホンアミド(BSA,Benzenesulfonamide)誘導体の複合体について、フラグメント分子軌道法等による分子科学計算の詳細解析の結果からその作用メカニズムを原子・電子レベルで理解することを目的とした。-18-SARNewsNo.18(Apr.2010)2.解析データおよび複合体構造のモデリング(a)Kakeyaらのウシ炭酸脱水酵素(bCA,bovineCA)に対する阻害活性データ[1]を基に、ベンゼン環上のパラおよびメタ位に置換基を有する16種類のBSA誘導体(図1b)を解析対象とした。Kakeyaらの阻害活性データはbCAIとbCAIIの混在下で測定されたものである。しかしながら、bCAIのX線結晶構造が未知であることやbCAIとbCAIIのアミノ酸配列間に高い類似性(84%)が存在することから、bCAIIのX線結晶構造(PDBcode:1V9I)に基づき、各BSAとbCAIIの複合体構造を分子動力学法ならびにQM/MM(QuantumMechanical/MolecularMechanical)法計算を用いて構築した。なお、NMR等による実験報告[2−4]に基づき、複合体構造中におけるBSAのスルホンアミド部位は解離型(SO2NH–)とした。ZnInhibitor(b)OSNH23.複合体形成に伴った全自由エネルギー変化の線形式BSAとbCAIIの複合体形成に伴った全自由エネルギー変化ΔG(=2.303RTlogKi,T=288K)は、自由エネルギーの加成性に基づき式(1a)により表すことができる。ΔG=ΔGbind+ΔGsol+ΔGdis+ΔGothers(1a)ここで、ΔGbindはBSAとbCAIIの結合相互作用エネルギー、ΔGsolは複合体形成に伴う水和自由エネルギー変化、ΔGdisは遊離型BSAのスルホンアミド部位に関する解離エネルギーを表す。ΔGothersは右辺第1~第3項に含まれないその他の自由エネルギー変化を表し、複合体形成前後のタンパク質構造の変形に伴う不安定化エネルギーなどを含むと考えられる。一連の構造類似化合物とタンパク質の複合体形成に関し、ΔGothersは“penaltyenergy”項として正の定数、もしくは残りの項(ΔGbind+ΔGsol+ΔGdis)に比例する(ΔGothers=β(ΔGbind+ΔGsol+ΔGdis)+constant;β<0)と考えられることから、式(1a)は式(1b)の形で表現できる。ΔG=(1+β)(ΔGbind+ΔGsol+ΔGdis)+constant(1b)式(1b)の右辺における各ΔG項は、エンタルピー(ΔH)ならびにエントロピー(TΔS)両方の寄与を含むが、タンパク質のような大規模分子のエントロピー変化を分子科学理論・計算化学的手法により評価することは現状困難である。一方、Scottら[5]はヒトCAIIと一連の置換型BSAの会合について、等温滴定熱測定(ITC,IsothermalTitrationCalorimeter)に基づく実験からエンタルピー・エントロピー補償則の関係(TΔS=αΔH+constant;n=20,r=0.91,α=0.65±0.15)を報告しており、同様の経験則は式(1b)中の各ΔG成分に対しても成立することが期待される。また、全自由エネルギー変化ΔGに対し、水和自由エネルギー変化と解離エネルギーの和(ΔGsol+ΔGdis)が線形関係にあると仮定した場合、エンタルピー・エントロピー補償則の関係から結合相互作用エネルギー(ΔGbind)は下式(1c)で表される。ΔGbind=(1–αbind)ΔHbind+constant(1c)最終的に式(1b),(1c)から式(1d)が導かれ(溶液中ではΔHbind=ΔEbind)、これを解析のための基本式とした。ΔG=(1+β)[(1−αbind)ΔEbind+ΔGsol+ΔGdis]+constant(1d)上式において、αbindはScottらの報告に基づき0.65とした。ΔEbind[=E(complex)−E(bCAII)−図1.(a)CA−阻害剤複合体のX線結晶構造.(b)解析に用いたBSA誘導体.XO-19-SARNewsNo.18(Apr.2010)E(BSA−)],ΔGsol[=Gsol(complex)−Gsol(bCAII)−Gsol(BSA−)]は構築したBSA−bCAII複合体構造に基づき、それぞれ非経験的フラグメント分子軌道(FMO,FragmentMolecularOrbital)法[6](MP2,HF/6-31G)およびGB/SA(GeneralizedBorn/SurfaceArea)モデル[7]を用いて算出した。ΔGdisは遊離型BSAのスルホンアミド部位の解離エネルギーとして、非経験的分子軌道法(B3LYP/6-31+G(d,p))-連続溶媒和モデル[Self-ConsistentReactionField(SCRF)-CPCM(Conductor-likePolarizableContinuumModel)]を用いて評価した。4.全自由エネルギー変化に対する相関解析基本式(1d)に基づく相関解析の結果を表1に示す[8]。まず、相関式(2)よりBSAとbCAIIの複合体形成に伴った全自由エネルギー変化ΔGと水和自由エネルギーと解離エネルギーの和(ΔGsol+ΔGdis)との間には良好な線形関係が存在しており(r=0.958)、前節の基本式導出における仮定の妥当性を確認できた。次に、全自由エネルギー変化を説明可能な統計的に有意な相関式(3)を得ることができた。式(3)における右辺[(1−αbind)ΔEbind+ΔGsol+ΔGdis]の係数の値は0.202であることから、対応する式(1d)中のβの値は−0.798(β<0)と見積もられる。このことは式(1a)におけるΔGothersが全自由エネルギー変化に対して実際に“penaltyenergy”項として寄与していることを示している。-15-10-5051015Energy(kcal/mol)ΔGsol+ΔGdis相関式(4)から、bCAIIとBSAの結合相互作用エネルギー(ΔEbind)と水和・解離エネルギーの和(ΔGsol+ΔGdis)との間にはほぼ完全な逆相関(r=0.990)が成立していることがわかる。すなわち、式(2),(5)からも確認可能なように、ΔGに対してΔEbindとΔGsol+ΔGdisは互いに逆の相関を持つ。さらに、ΔGの変動量に対する両者の寄与を比較した場合(図2)、水和・解離エネルギーの和(ΔGsol+ΔGdis)の寄与が結合相互作用エネルギー(ΔEbind)の寄与よりも相対的に大きいことが示唆される。なお、各BSAのΔGdisは実測のpKaと良好に相関する(r=0.972)ことも確認している。ΔEbindΔGobsΔGcalc(Eq.3)(1−αbind)ΔEbind(αbind=0.65)4-CH3NH4-NH24-CH3O4-CH33-CH3H4-Cl4-Br3-Cl4-CH3CO4-CN3-NO24-NO23,4-di-ClNO2,4-ClF3,4-NO23-3-CCompounds図2.ΔGの変動に対する結合相互作用エネルギーおよび水和・解離エネルギーの寄与(ΔEbind,ΔGsol+ΔGdisは無置換のBSA(X=H)を基準とした場合の相対エネルギー値を表す)表1.自由エネルギー変化に関する相関式5ΔGΔEbind−0.185(±0.0288)−28.5(±3.26)0.9650.2211884ΔEbindΔGsol+ΔGdis−0.795(±0.0638)−115(±0.373)0.9900.6107153bΔG(1–αbind)ΔEbind+ΔGsol+ΔGdis0.202(±0.0378)0.908(±1.61)0.9510.2611312ΔGΔGsol+ΔGdis0.147(±0.0252)−7.23(±0.147)0.9580.241157Eq.No.YXaaconstantarsFY=aX+constant(n=16)a.()内の数値は95%信頼区間を表す.b.αbind=0.65.5.FMO計算によるBSA–bCAII複合体の結合相互作用解析BSAとbCAIIの複合体形成に伴った全自由エネルギー変化に対し、水和・解離エネルギーが支配的役割を果たしていることを前節で示したが、両分子間の結合相互作用を詳細に解析するこ-20-SARNewsNo.18(Apr.2010)とは、その作用メカニズムを原子・電子レベルで理解する上で重要となる。FMO計算では、タンパク質とリガンドの結合相互作用エネルギー(ΔEbind)計算に加え、計算過程においてタンパク質をアミノ酸残基単位でフラグメント分割することにより、各アミノ酸残基とリガンドとの相互作用エネルギー(IFIE,Inter-FragmentInteractionEnergy)を定量的に解析することが可能である。本解析系では、亜鉛ならびにそれに配位するHis93,His95,His118,BSA(図3)を一つのフラグメントとして取り扱い[8]、それ以外に関してはアミノ酸残基単位でフラグメント分割を行った。OSONNHHNHNNNZn2+His118His95His93XBSAOH2NOOGlu105His63Pro200Glu68Gln91Thr197Thr198OOGlu116NNHNONOOHNNHNHHNOArg244HOHHHNOLeu196O-H図3.BSAとbCAIIの活性部位近傍における相互作用BSAとbCAIIとのFMO-IFIEによる相互作用解析の結果を図4に示す。前節の相関式(3)におけるΔEbindはBSAとbCAII中のアミノ酸残基間のIFIEの総和にほぼ対応し[9,10]、実際に両者の間には良好な相関(r=0.990)が存在した。スルホンアミド部位に負電荷を持つBSAと活性部位近傍の解離性側鎖を持つアミノ酸残基(Arg,Lys,Asp,Glu)との間には強い静電相互作用が確認され(図4a)、特に正電荷を持つZnblcok(亜鉛ならびにそれに配位するHis93,His95,His118を含む)との間に他と比べ大きな安定化相互作用が得られていることがわかる。IFIE(197)および図4.(a)FMO計算による無置換のBSA(X=H)とbCAII中のアミノ酸残基間のIFIE(HF/6-31G).(b)分散力の寄与(電子相関エネルギー).(c)16化合物のIFIEの分散値(HF/6-31G).FMO-fragmentnumberPositivelychargedFMO-fragmentNegativelychargedFMO-fragment1204060801001201401601802002202402570246860〜〜〜〜〜〜〜〜-10-8-6-4-20246810806040200-20-40-60-220Variance(kcal2/mol2)ΔIFIE(MP2-HF)(kcal/mol)IFIE(HF)(kcal/mol)196197198244Znblock(-215.6)11610568196197Znblock244198686391105116200Znblock(59.7)(c)(b)(a)6391-21-SARNewsNo.18(Apr.2010)IFIE(198)の安定化エネルギーは、BSAのスルホンアミド部位とThr197およびThr198との水素結合ないし静電相互作用によるものである(図3)。分子間に働く分散力を評価可能な電子相関エネルギーを取り入れた解析結果(図4b)から、これらのThr残基やBSAに近接するLeu196およびZnblockとの間には分散力による安定化作用が働いていることがわかるが、一連の構造類似化合物を取り扱った現在の解析系では、その効果は結合相互作用エネルギー(ΔEbind)に比例する、あるいはほぼ一定であると考えられる。図4cにはIFIEが1.0kcal2/mol2以上の分散値[Σ(IFIE(i)–)2/n,Σは16個のBSA−bCAII複合体についての和,<>は平均を表す]を持つアミノ酸残基(His63,Glu68,Gln91,Glu105,Glu116,Pro200,Arg244,Znblock)を示しており、BSAとこれらの活性部位近傍残基との相互作用がΔEbindの変動の支配要因であることが示唆される。なかでも、Znblockとの相互作用エネルギーは最大の分散値を示し、IFIE(Znblock)の変動とΔEbindの変動の間にも良好な相関(r=0.942)を確認できた。6.古典QSAR式におけるHammettσの解釈Kakeya[1]およびHanschら[11]は、一連の置換型BSAの阻害活性(log(1/Ki))に対してHammettσが統計的に有意となるQSAR式を報告しており、これらの式ではσの係数の符号はいずれも正である。本解析系では、全自由エネルギー変化ΔG(=−2.303RTlog(1/Ki))に対してσは負の相関を持つことが予想される。実際、ΔGとσとの間には負の相関(r=−0.939)が確認され、電子吸引性置換基を持つBSAがbCAIIとの複合体形成全過程の安定化に有利であると解釈される。同様に、水和・解離エネルギーの和(ΔGsol+ΔGdis)とσとの間にも負の相関(r=−0.971)が確認された。一方で、結合相互作用エネルギー(ΔEbind)はσに対して正の相関(r=0.969)を示した。これは複合体中において電子供与性置換基を持つBSAが負電荷を帯びたスルホンアミド部位と亜鉛の静電相互作用を増強させることによりΔEbindの安定化に有利となるためと考えられる。以上の結果は、前述のGB/SA,SCRF,FMO計算の結果に対応し、ΔGの変動に対して水和・解離エネルギーの寄与が結合相互作用エネルギーの寄与を上回っていることを支持している。7.まとめ本研究では、一連のBSAとbCAIIの複合体形成に伴った全自由エネルギー変化をGB/SA,FMO計算等の分子科学計算と自由エネルギーの線形則に基づくQSAR解析の統合的アプローチにより統計的に説明することができた。また、本解析手法では従来のQSAR解析からは得ることが困難である複合体形成に伴う水和・解離エネルギーや結合相互作用エネルギーの寄与を原子および電子レベルで定量的に示し、従来のQSAR解析結果の物理化学的意味をより明確に把握することが可能であった。以上の解析結果は、JournalofChemicalInformationandModeling[8]において詳述している。参考文献[1]Kakeya,N.;Aoki,M.;Kamada,A.;Yata,N.Chem.Pharm.Bull.1969,17,1010−1018.[2]Lindskog,S.;Thorslund,A.Eur.J.Biochem.1968,3,453−460.[3]Kanamori,K.;Roberts,J.D.Biochemistry1983,153,553−558.[4]Blackburn,G.M.;Mann,B.E.;Taylor,B.F.;Worrall,A.F.Eur.J.Biochem.1985,153,553−558.[5]Scott,A.D.;Phillips,C.;Alex,A.;Flocco,M.;Bent,A.;Randall,A.;O’Brien,R.;Damian,L.;Jones,L.H.Chem.Med.Chem.2009,4,1985−1989.[6]Fedrov,D.G.;Kitaura,K.J.Comp.Chem.2007,28,222−237.[7]Massova,I.;Kollman,P.A.Perspect.DrugDiscovery2000,18,113−135.[8]Yoshida,T.;Munei,Y.;Hitaoka,S.;Chuman,H.J.Chem.Inf.Model.inpress.[9]Yoshida,T.;Yamagishi,K.;Chuman,H.QSARComb.Sci.2008,27,694−703.[10]Yoshida,T.;Fujita,T.;Chuman,H.Curr.Comput.-AidedDrugDes.2009,5,38−55.[11]Hansch,C.ILFarmaco2003,58,625−629.末筆となりますが、本研究をSARPromotionAwardにご選出いただき、シンポジウムへの参加をご支援下さいました日本薬学会構造活性相関部会、研究のご指導を賜りました中馬寛先生をはじめとする先生方および共同研究者の皆様に深謝申し上げます。-22-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////〈会告〉構造活性フォーラム2010「QSARパラダイムの分化と深化」定量的構造活性相関(QSAR)は医薬・農薬のデザインおよび作用機構、特に分子レベルにおける作用機構の解明にとって重要な役割をになっている。QSARは今から約半世紀前にHansch、Fujitaによって提唱されたもので、ドラッグディスカバリーにも貢献して来た。その後、コンピューターの進歩につれて、3D、4D、5D-QSARといった手法も開発されてきているが、Hansch-Fujita法はclassicQSARとして、今でも広く用いられている。しかし、一方で、QSARのもつ物理化学的な意味を無視し、単なる統計処理だけに終わっている例も多々見受けられる。本フォーラムでは、創薬成功例の紹介とともにQSARの半世紀を振り返り、QSARで用いられるパラメーターの正しい理解を喚起する。また、QSARの統計的有意性とメカニズムの妥当性についても考える。さらには、酵素や受容体といったタンパク質とリガンド分子との間の相互作用の解析について解説する。主催:日本薬学会構造活性相関部会協賛:日本薬学会医薬化学部会、日本薬学会生物系薬学部会、日本化学会、日本農芸化学会、有機合成化学協会、日本分析化学会、日本農薬学会、近畿化学協会日時:平成22年6月18日(金)10:00—17:00会場:コープイン京都[〒604-8113京都市中京区柳馬場蛸薬師上ル井筒屋町411、フリーダイヤル:0120-79-6600、Tel:075-256-6600、Fax:075-251-0120、E-mail:coopinn-k@univcoop.or.jp]http://hawk2.kyoto-bauc.or.jp/coop-inn/kyoto/交通:JR「京都駅」→地下鉄烏丸線→「四条」下車、(13番出口から)徒歩5分JR京都駅より市バスA-2のりば(5番系統に乗車)「四条高倉」で下車、徒歩10分JR京都駅よりタクシーで10分阪急電車「烏丸」駅(13番出口から)徒歩5分京阪電車「三条」駅(三条通西へ、京都YMCAを左折)徒歩16分講演:1.Hansch−Fujita法の半世紀-生物理化学的意義と創薬企業化成功例藤田稔夫(京都大学名誉教授)2.QSAR—統計的有意性とメカニズムの妥当性清水良(田辺三菱製薬)3.等級活性データーの取り扱いと3D−QSAR大軽貴典(田辺三菱製薬)4.Hansch-Fujita法の分子論的解釈と分子科学計算を用いたenzymaticQSAR中馬寛(徳島大学)5.分子シミュレーションと構造活性相関仲西功(近畿大学)申込み締切り:定員(70名)になり次第締切り参加費:一般4,000円、学生無料参加申込み方法:構造活性相関部会ホームページからお願いしますゆうちょ銀行:振替口座(00990-1-143291)構造活性フォーラム2010実行委員会ゆうちょ銀行普通預金口座:構造活性フォーラム2010実行委員会14420-25767961(手数料なし)(他行から振り込む場合の口座番号は448-2576796ですが、手数料が必要)問合せ先:〒606-8502京都市左京区北白川追分町京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻内構造活性フォーラム実行委員会中川好秋Tel:075-753-6117、Fax:075-753-6123、E-mail:naka@kais.kyoto-u.ac.jp-23-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////〈会告〉第38回構造活性相関シンポジウム実行委員長:徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部中馬寛ホームページ:http://www.event-convention.com/sar2010/※第33回情報化学討論会と併催予定会期2010年10月30日(土)~2010年10月31日(日)会場徳島大学工学部共通講義棟(5-6F)(徳島市南常三島町2-1)http://www.tokushima-u.ac.jp/article/0012080.html主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会、日本分析化学会、日本農芸化学会、日本農薬学会討論主題①生理活性物質の活性評価・医農薬への応用②QSARの基本パラメータ・基本手法・情報数理的アプローチ③QSARと吸収・分布・代謝・毒性・環境毒性④コンビナトリアルケミストリーと創薬⑤バイオインフォマティクス⑥分子情報処理(データベースを含む)・データ予測特別講演および招待講演決まり次第ホームページ上に掲載一般講演口頭発表およびポスター(詳細は決まり次第ホームページ上に掲載)発表申込WebサイトまたはE-mailでお申し込みください。①演題、②発表者氏名と所属、③連絡先(住所、電話、Fax、E-mail)、④200字程度の概略、⑤口頭、ポスターの別、⑥上記討論主題番号詳細は、ホームページ内の発表申込要領をご覧ください。発表申込6月1日(火)~7月9日(金)締切必着講演要旨9月10日(金)締切必着詳細は、ホームページ上の講演要旨執筆要領をご参照ください。参加登録予約申込10月13日(水)締切詳細は、ホームページ上の参加登録予約申込要領をご参照ください。参加費[一般]予約8,000円、当日9,000円[学生]予約2,000円、当日3,000円※本参加費により併催の第33回情報化学討論会にも参加可能です。※要旨集前送の場合は郵送料1,000円を別途申し受けます。※費用振込み後、参加取り消しによる返金には応じられません。懇親会10月30日(土)19:00頃【問合せ・申込み先】〒105-0014東京都港区芝3-17-15クリエート三田207第38回構造活性相関シンポジウム事務局担当:加用Tel:(03)3798-5240Fax:(03)3798-5251E-mail:sar2010@event-convention.com-24-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////2010年度構造活性相関部会SARPromotionAward受賞候補者募集日本薬学会構造活性相関部会では、構造活性相関研究の発展を目的として、以下の趣旨に従い、2005年度よりSARPromotionAwardを設けております。2010年度は以下のように構造活性相関部会員より受賞候補者を募集いたします。趣旨1.構造活性相関研究に関し、国外の学会で発表を行う部会員に旅費を補助することにより、国内の構造活性相関研究に関する成果を海外に積極的に発信する。2.国外の学会における最新の研究情況を国内の部会員に伝達し、部会員の研究に新展開の契機を与える。募集要項:主として2010年4月~2011年3月の国外学会および部会の指定学会で発表を行う者。受賞者数:2名程度。応募要領:指導教員、部署の長など応募者の研究を評価できる者の推薦書を添えて下記事項を部会庶務幹事へ提出する。候補者氏名・所属・略歴参加予定学会名・開催期日・開催場所・演題(口頭発表、ポスター発表のいずれかを明記)・発表者名・要旨(日本語の要約。参考資料として学会へ提出する英語要旨を添付。)推薦理由授賞金:開催場所に応じて1名当たり10~20万円とする。応募期限:2010年6月11日。ただし、受賞者数が2名に満たないときは2次募集を行う。(詳細については部会ホームページをご覧下さい。)受賞者の義務1.帰国後、研究発表内容の要約および学会参加報告を部会ニュースレターに掲載する。2.構造活性相関シンポジウムで研究内容の口頭発表を行う。3.受賞者が他機関から同一趣旨の補助を受ける場合にはいずれかを辞退するものとする。連絡先部会庶務幹事:加藤博明豊橋技術科学大学情報・知能工学系E-maildsas-office@pharm.or.jp部会ホームページ:http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/jindex.html-25-SARNewsNo.18(Apr.2010)/////Activities/////部会役員人事平成22年度から、部会長、副部会長、庶務幹事、SARNews編集委員が交代することとなりました。部会長:赤松美紀(京都大学大学院農学研究科)副部会長:藤原巌(大日本住友製薬)庶務幹事:加藤博明(豊橋技術科学大学知識情報工学系)SARNews編集委員:飯島洋(日本大学薬学部)構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1994年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年一回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年二回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第18号をお届けいたします。ご執筆いただきました諸先生方に心よりお礼申し上げます。Perspective/Retrospectiveでは、蛋白質間相互作用(PPI)立体構造予測の発展に関する解説を竹田-志鷹真由子先生(北里大学)にお願いしました。創薬における主要標的のひとつであるにも拘らず、PPIの三次元的な解明は一般に困難であるため、その精確な予測はhotspot同定等に貴重な示唆を与えるものと考えられます。CuttingEdgeでは、幸瞳先生・本間光貴先生(理化学研究所)に、独自SBDDsystemであるPALLAS、MUSESについて、また、原田俊幸先生(京都大学)には、virtualscreeningを用いた新規脱皮hormone受容体ligandsの探索について、ご紹介いただきました。いずれもinsilico手法の適切な活用の有効性を改めて認識させるものでした。このSARNewsが、構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを編集委員一同願っております。(編集委員会)SARNewsNo.18平成22年4月1日発行:日本薬学会構造活性相関部会長赤松美紀SARNews編集委員会(委員長)久保寺英夫藤原巌福島千晶粕谷敦飯島洋*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。-26-__