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SARNews No.5

SARNews_5

構造活性相関部会・ニュースレター<1October2003>SARNewsNo.5「目次」[記事]///QSAR今昔///神戸の片隅のパラメータ研究-logPに教わる分子構造と性質-山上知佐子・・・2///研究紹介///DeNovoDesignによるリード創製の実際と今後の課題本間光貴・・・6Insilicoスクリーニングを活用した新規キマーゼ阻害剤の探索小出友紀・・・10Insilico予測システムの構築中尾和也島津秀史朝尾正昭福島千晶清水良・・・14[報告]・構造活性相関部会設立記念シンポジウム高山千代蔵・・・19・構造活性フォーラム2003清水良・・・20[お知らせ]・第31回構造活性相関シンポジウムプログラム市川紘・・・21-1-SARNewsNo.5(Oct.2003)/////QSAR今昔/////神戸の片隅のパラメータ研究-logPに教わる分子構造と性質-神戸薬科大学山上知佐子私とQSARの出会いは二十数年前、理学部出身の私が当時の神戸女子薬科大学に職を得てから間もなくのことでした。勿論薬にはずぶの素人でしたが、薬学部に身をおくからには何らかのかたちで薬に関係のあるテーマで研究せねばなるまいと思い、大学時代の恩師の一人でもある研究室の先輩に相談したところ何人かの先生を経て、当時京大農学部におられた藤田稔夫先生を紹介していただいたという訳です。今なら、偉い先生にお目にかかる前にはその方の研究業績の内容くらいは調べてから伺うと思うのですが、若いということは強いというか恐ろしいというか、失礼ながら先生のお仕事の内容を余り知らないまま研究室へ乗り込んだように思います。生来人みしりの激しい私ですが、先生の好奇心旺盛なご性格が幸いして、仕事のことからprivateな範疇に至ることまで矢継ぎ早やに色々質問を受け、お陰で話題に事欠くことも無く、初対面にしてはかなり長時間お邪魔したように記憶しています。おそらくその面接にパスしたのでしょう。その日のうちに、ヘテロ化合物のlogPの研究が非常に重要なのでそれをやったらどうかとsuggestionをいただきました。“ではそうします”と即答したのですがそれには訳がありました。私は博士課程で溶媒効果に関する反応機構の研究をしていましたので、水素結合を扱うのは未経験でしたが、PhysicalOrganicChemistryの領域の仕事ならなんとかなるのではないかと甘い幻想を抱いたのです。それに本格的な合成経験のない私には、相手が立体構造の複雑なゴチャゴチャした化合物でないのもその時点では安心材料でした。しかしこの仕事はその後しばらく眠ったままで、新たなQSARの問題と取り組むことになります。当時薬大での私の恩師・高尾楢雄教授が、経緯はよくわかりませんがTryptopholに興味を持っておられて、“これをカルバメートにしたら催眠効果があるのではないか”と言って、サンプル一瓶とTryptopholに関するChemicalAbstractの検索結果をまとめた手書きの資料を下さいました。薬と構造の関係について全く何の知識もなかった私にはありがたい情報で、早速いくつかの誘導体を合成して薬理学研究室にスクリーニングをお願いしたところ、幸いにもマウスを使った研究で抗痙攣作用がみつかり、これをきっかけにBenzylcarbamate誘導体のQSAR研究(私にとっては初めての)に発展させることが出来ました。初めてのassayで学会発表できるQSAR解析に辿り着けたのはまことにラッキーで、そのことがあったからこそ今日までこの仕事が続けられたと思っています。その後の研究では、たとえ合成がうまくいっても活性がなかったり、化合物が溶けなかったりで活性値が得られないこともしばしばあり、またやっと活性値が揃っても適当なパラメータを見つけきらず解析が頓挫した例を色々経験しているので、最初の成功は間違いなく大きな推進力となりました。ところで、Benzylcarbamate誘導体の解析ですが、初めて得たdata(IC50とlogP)を携えて再び藤田先生のご指導を仰ぎに研究室をお訪ねしました。いよいよ解析の開始です。先生はdataをじっと眺めてから、先ず“置換基は上手に選んでいると思うけど、”と一言。何気なく言われたこの一言の意味が最初はよくわかりませんでした。高々20個たらずの化合物を選ぶのですから、性質の違うものを幅広く選んだら使える置換基はおのずと決まってしまいます。後になって自分で納得したことなのですが、でもやはり私は置換基を上手に選んでいたのです。理由はこうです。たぶん先生には申し上げてなかったと思いますが、私は大学院の研究でHammett則を扱っていました。ですから置換基のσの序列は大体頭に入っておりましたし、ベンゼン環に置換基を入れろと言われると、電子吸引性から供与性まで広範囲に置換基を選ぶことは無意識の作業だったのです。-2-SARNewsNo.5(Oct.2003)しかしそういう知識の全くない人が20個置換基を選んだらひょっとしたらとんでもないdatasetになってしまったかもしれません。これが経験というものかと妙に納得しました。無意識の作業になってしまったものは自分ではその値打ちがわからず、未経験の(まだ無意識には扱えない)ことを危なっかしくやっている方が新しいことをやっているような錯覚にとらわれがちですが、この頃になって、自分の獲得した経験(財産)は大切に育てていかないと、と感じています。話がそれましたが、先生はdataからグラフを書いて、logP,σ,H-bondparameter(ダミー変数)が要るだろうと予測され、コンピュータで解析することになりました。当時はまだ研究室の方も大型計算機センターで計算しておられた時代で、データをカードにパンチして読み込ませる訳ですが、私は大型計算機など扱ったこともなく役に立たないので、“そこに座ってて”と言われて慣れた手つきで入力操作をして下さいました。世の中広しといえども先生にオペレータをさせたのは私くらいではないでしょうか。結果は予想通り3つのパラメータで良好な相関式が得られ、logPのparabolaに初めてお目にかかりました。中枢神経系の活性を見ているので至適logPがきれいに見え、その後骨格等を変えてもカルバメートの抗痙攣作用(マウス)では似たようなparabolaの関係が得られて(logPopt=1.7~2.3)、Hansch先生がそれより少し前に出された論文の中で、バルビツール酸系の催眠剤やヒダントイン系の抗痙攣剤では至適logPが2付近であったと報告しておられたことも考え併せるときれいな結果だと感動したものです。もともと中枢神経系の薬物には興味があったので、上に述べた結果の影響も受けてその後しばらく血液脳関門透過性とlogPや活性の関係を調べてみたいという希望を持ち続け、実際に化合物の脳内濃度と血中濃度をLC-Massで測定してみたりもしましたが、実験が大変で多くのdataを取ることができず、この計画は挫折してしまいました。この他にもQSAR解析はいくつか試み、現在進行形のものもありますが、原則的に私の仕事はその後本格的にlogPの研究に移しました。創薬の現場の話を聞いて、活性だけで薬が創れるわけではないという認識が深まるにつれ、大学の小さな規模の所で活性を指標にした研究を続ける意義がわからなくなり、大学でしか出来ない基礎研究で、創薬にも何か役立つ仕事がもし出来ればその方が重要に思えてきたからです。QSAR解析を経験したお陰でパラメータの精度がいかに解析結果を左右するかということも思い知りましたし、また企業の研究者の人達の発表を聞いていて、折角苦労して測定した多様な活性を解析するのに、世間によく出回っている(有名な)Databaseから半ば自動的に取り込んだパラメータを使用しているケースが多い現状を見て(無理からぬことと思いますが)非常に惜しいと思い、それならばパラメータのDatabaseの質を向上させることに貢献しようと考えました。藤田先生にいただいたテーマはさしあたり、ジアジン系の化合物からということでピラジン、ピリミジン、ピリダジンのモノ置換体のサンプル作りにとりかかりました。これらの化合物はほとんどが既知化合物で合成法はわかっているので文献通りに操作するだけなのですが、環をまいて、還元して、保護基を切って等々ひたすら分子量の減る反応が多い上、何で抽出したらいいのと首をかしげるくらい水溶性のものや、濃縮しているうちに無くなってしまう程揮発性のものもあって、logPを測るためだけに多数のサンプルを合成するにはしんどい仕事でした。苦労の甲斐あってdataが揃い、面白いことがわかってきたのですが、そのうちの一番重要と思われる結果を次に紹介します。表に代表的な置換基についてbenzene系のπ(πPh)とpyrazine系のπ(πPR)を掲げてあるが、驚いたことにπPR値はほとんどの場合正になる。ベンゼン誘導体の感覚で親水性基と思いこんでいる置換基がpyrazine環に導入されると疎水基になってしまうということで、このことを知らずに分子設計をしていると、とんでもない方向に構造変換してしまう危険性がある。これは環窒素の電子吸引性効果により、置換基上の電子密度が減少しているためで、実際ピラジンにおいてはアルコキシ基をnon-H-bonderとして扱わねば説明できない現象がいろいろ観察されている(ベンゼンではH-acceptor)。pyrazineのOMeのπ=0.99は表:Benzene(PhX)とPyrazine(PrX)のπ値の比較XPh-XPr-XMe0.560.47Et1.020.95F0.140.55Cl0.710.96OMe-0.020.99OEt0.381.54CN-0.570.25Ac-0.550.46NH2-1.230.21CONH2-1.49-0.24-3-SARNewsNo.5(Oct.2003)benzeneのEtのそれに限りなく近い。つまりOMeの酸素原子はpyrazine環に導入されるとヘテロ原子の効果をほとんど示していない。このことはMO計算をすれば簡単にわかることで、OMeの電子密度は母核のヘテロ原子の影響をしっかり受けている。母核の構造によって置換基の水素結合能が異なるということであれば、それを定量化したい。そこでCOSMO法を用いたMO計算により各置換基の水素結合受容能SHAを定義した。SHAの値はnon-H-bonderの時は1で、水素結合受容能が高くなるほど大きい値をとる。代表的な例を図に示した。non-H-bonderであるアルキル基のSHAは常に1付近の値をとるが、他の基のSHAは環ヘテロ原子の性質に従って変化している様子が見てとれる。ここでもpyrazineのOMe基はnon-H-bonderとして振る舞うことがよく示されている。簡便性のためHPLCから求めたlogPを用いた例をよく見かけるが、詳細に調べてみるとSHAの大きい置換基は同シリーズの化合物間でもlogPとlogkの直線関係からずれる傾向が強いので要注意である。以上ヘテロ芳香族化合物のlogPの特徴を述べましたが、これらの結果が意外に思えるのはひょっとすると元素記号で構造式を表す(考える)弊害なのでしょうか。OやNに反射的に先入観として持つ性格をあてはめて勝手な思いこみをしているだけで、分子軌道論的な目で構造を見れば初めから結果は見えているのかもしれません。ともあれ今までの経験で感じたことは、実験で解釈が難しいものは計算でもやはり難しいということで、ベンゼン系とヘテロ環系をひとつにまとめて記述する(ヘテロ原子効果の記述)のは至難の業で、この方法が見つかれば色々な問題が一挙に解決できそうに思います。0.51.01.52.02.53.03.5HMeOMeCOOMe2TH2FR2PYPRSeriesPhXSHA図:モノ置換ヘテロ芳香族化合物の置換基水素結合受容能(SHA)の比較、PhX:Benzene,2TH:2-X-Thiophene,2FR:2-X-Furan,2PY:2-X-Pyridine,PR:Pyrazine興味本位でClogPのpyrazine誘導体を検索してみると、2/3位が我々のdataでした。我々の実験値がpublishされた後に、それまで掲載されていた計算値がlogunitで2近く修正されたシリーズもあります。それほど予測が難しいということなのでしょう。誰かの研究のお役にたてていれば幸いですQSAR研究を通じて多くの方と知り合うことができました。EuropeanQSARSymposiumには1988年、Interlakenで開催された第6回Symposiumから参加しました。この時のChairmanが当時ETHにおられたProf.Fauchèreで、昼食の時たまたま隣り合ったのがきっかけで知り合いになりました。日本人のエスプリに好感を持って下さっているような雰囲気の紳士で、その後の学会でも会場で見かける度にわざわざ声をかけに来て下さり、再会のご挨拶代わりのツーショットのコレクションが増えていたのですが、淋しいことにここに掲げた写真が最後となってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。在りし日のFauchère教授と(2000年・レマン湖畔のLausanne大学にて)-4-SARNewsNo.5(Oct.2003)昨年、同級生の案内でSPring-8を見学する機会にめぐまれました。話には聞いていましたが最先端技術を駆使する研究の現場を見て、夢物語が現実になろうとしていることを実感しました。一方では、最近Hansch先生のAllostericinteractionに関する論文をいくつか読みましたが、従来の古典的な方法で、古いdataを再解析して新たな意味付けを与える鮮やかな手法にQSARの奥深さを感じました。新しい方法と伝統的な方法が両々相まってより高度にデザインされた薬を生み出す可能性はますます高まっていくことでしょう。若い研究者の方々のご活躍を期待しております。最後に藤田先生はじめ、今日まで私を支えて下さった多くの方々に深謝いたします。-5-SARNewsNo.5(Oct.2003)/////研究紹介/////DeNovoDesignによるリード創製の実際と今後の課題万有製薬株式会社つくば研究所薬物設計本間光貴1.はじめにヒトゲノムの塩基配列情報とその利用技術の進展によって、疾患の原因となっていると予測される遺伝子・タンパク質が次々と同定され、連日のように報道されている。これらは潜在的な創薬ターゲットとして注目を浴びることが多いが、実際に治療効果を期待できるターゲットであるかどうか検証を行ない、適切なリード化合物を見出すことによって初めて製薬会社における薬剤開発への過程に入る。標的タンパク質に対してある程度の結合親和性を示す低分子リガンドを探索する技術は、薬剤の元となるリード化合物を同定することに加え、このようなゲノム情報由来のターゲット候補のtargetvalidationやproofofconceptを行なうためのbiologicaltoolとなる化合物を迅速に発見することにも大きな力を発揮する。リード化合物の探索はこのように重要性が極めて高いにもかかわらず、創薬ターゲットとなるタンパク質が同定されたのちの薬剤開発の各過程のうち最も成功率が低く、大手の製薬会社においてもこの段階の成功率は25%ほどにすぎないと言われている。[1]近年highthroughputscreening(HTS)がリード探索の段階になくてはならない技術となった。HTSは短時間で多くの化合物のscreeningを行なうことを可能にするが、リード探索そのものの成功率を向上させるためにはscreeningsourceのサイズと多様性を大きくしなければならない。製薬会社の社内化合物は過去に天然物として単離された化合物やプロジェクト内で合成された化合物を集めたものであり、サイズ・多様性ともに充分ではない場合が多い。これらの社内化合物ライブラリーの不足している部分を埋めるために各社は市販化合物群を競うように購入するとともに多様性を考慮したライブラリー構築を行なっているが、このような手段によっても利用できる化合物群の総数はせいぜい106から107個のオーダーであり、1060個以上とも言われる分子量500以下の有機化合物の広大なchemistryspace[2]のごく一部分しか埋められないと考えられる。以上のような背景から今後ゲノム創薬を志向していく上で、社内化合物のHTSだけに頼るのではなく、多様な標的タンパク質に対応可能な別のリード創製手法を選択肢として確保しておくことが重要ではないかと考えられる。2.denovoliganddesignの魅力と問題点標的タンパク質の薬物結合部位に適合すると予測される構造をルールに基づいて部分構造から組み立てるdenovoliganddesignの手法は、化合物データベースの3D検索に比べて新規な構造を含めて様々な可能性が検討されるために既知の化合物の枠を越えて広大なchemistryspaceから自由自在に適切な構造を提示できる可能性があり、ゲノム情報を効率的に創薬へ結び付けるこれからの新規リード骨格探索において重要な役割を演じる潜在能力を秘めている。このような魅力がある反面、denovoliganddesignには(1)denovodesignprogramが提示した構造群は非常に入手しにくいものが多い、(2)提示された構造が実際に期待する程度の活性を持つ確率はあまり高くはないという大きな問題点がある。これらの問題点のために、実際の創薬プロジェクトの現場においてdenovoliganddesignによって新規リード化合物を創製することは非常に困難な作業であった。3.入手容易さに関する情報を提供してdenovodesignを支援するシステムSEEDSそこで我々はdenovodesignを効率的に進めるための1つの方法として、denovodesignprogramによって提示された構造、及びその誘導体(ただし、タンパク質と相互作用するために必須な部分は保持している)のうち、購入あるいは合成によって比較的入手容易なもののリストを作成してリード創製を支援するシステムであるSEEDSを開発した。[3]このSEEDSは図1に示すようにdenovodesignprogramが出力する構造群からタンパク質との相互作用に重要な部分のみを切り出-6-SARNewsNo.5(Oct.2003)し、その”必須構造”に基づいて化合物・反応データベースの検索条件を作成し、購入あるいは合成によって入手しやすい化合物群のリストを作成する。また、このSEEDSには”必須構造”の合成難易度をおおまかに見積もる機能もある。SEEDSExtractanessentialpartofeachoutputstructureMakequeriesforsearchingcompound/reactiondatabasesSearchforderivativesStructureConstructionbyDeNovoDesignProgram(s)OutputStructuresObtainedfromDeNovoDesignProgram(s)EssentialPartsQueriesforSearchingCompound/ReactionDatabasesListofAllCommerciallyAvailable/SyntheticallyAccessibleDerivatives図1denovodesignprogramとSEEDSの働きモデリング研究者と合成化学者はSEEDSから得られる情報を参考にしてdenovodesignprogramが提示した相互作用パターンを保持した誘導体のうち入手容易なものを選択し、まずは購入を試みる。購入された化合物のassay結果を解析して、どの相互作用パターンを持つ”必須構造”がリード化合物の基本骨格(scaffold)として活性を向上させ得るかどうかを判断する。購入品のassayだけで情報が充分に集まらないときには、合成容易な誘導体の合成も試みる。同定されたscaffold群のうち実際にリード化合物に展開するべきscaffoldは誘導体合成の難易度や物性、さらにはその時点でプロジェクトがリード化合物に対して求めている性質を考慮に入れて選択されることになる。4.新規Cdk4阻害剤創製への適用例denovodesignprogramの1つであるLEGEND[4]と我々が開発したSEEDSを組み合わせて新規なCdk4阻害剤のscaffoldの同定を行なった。その過程を図2に示す。1000structures382compoundsLEGENDSEEDSandmedicinalchemistsATPbindingpocketoftheCdk4modelDiarylureaclassIC50=36-90μM,5compoundsOHNNArArHNYOHXArXNXNHHArYNNNNXNHHRCyclicureaandthioureaclassIC50=14-350μM,3compounds2-aminopyridineandtriazineclassIC50=36-450μM,2compoundsPteridineclassIC50=16-210μM,2compoundsCyclinD-Cdk4assayinhighconcentrationsupto1000μM図2LEGENDとSEEDSを組み合わせたCdk4阻害剤のscaffold同定の過程活性体のCdk2のX線構造から作成したCdk4modelの薬物結合部位であるATPbindingpocketに-7-SARNewsNo.5(Oct.2003)対してLEGENDを実行し1000個の構造を得た。これらの構造群をSEEDSに流し込み、相互作用パターンを保持し分子量350以下で購入可能な化合物群の中から382個の化合物を合成化学者と協力して選択した。これらの化合物は購入し、Cdk4阻害活性を測定したところ、同一(あるいは類似)の相互作用パターンから派生したと見られる4つのscaffold群が同定された。これらのうち、scaffold部分からATPbindingpocketの残りの部分と相互作用する置換基を導入したライブラリーを容易に構築可能なdiarylureaclassがリード化合物へと展開するためのscaffoldとして選択された。dockingstudyによるscaffold部分の結合様式予測とCdk4のATPbindingpocketの形状・性質を考慮したライブラリーを構築することによってdiarylureaclassのリード化合物(図3の化合物23,IC50(Cdk4)=42nM)に到達することができた。この例では適当なリード化合物を見出せていなかった創薬プロジェクトに対して、SEEDSの利用及び合成化学者との緊密な連携によって非常に効率的に新規なリード化合物を提供することができた。[3]見出されたリード化合物(23)は他のkinaseとのアミノ酸配列の比較によって明らかになったCdk4特異的残基と相互作用を形成する置換基を導入することによって効率的に高活性・高選択的なCdk4阻害剤(27)へと導くことができた。(図3)[5]NNNONONNNOOHNN+H2NNVal96NHLys35OOAsp99OThr102HHHOHN+H+H2NNVal96NHLys35OOAsp99HOThr102HHOHH2327HHClGln98NH2OGln98NH2OHanks’classificationKinase2327no.inCdk4Cdk4selectivity(-fold)9910298CMGCcyclinD-Cdk4(IC50)1.0(42nM)1.0(2.3nM)DTQcyclinD-Cdk61.7aDTQcyclinB-Cdk12.9780DKMcyclinA-Cdk21.9190DKQSer/ThrkinaseAGCPKA>480>430ESGPKC>480>4300DYGPKBα(Akt-1)>240>430EFGCaMKCaMKII>240>430EEGCMGCp38α>240>4300DNTERK1>240>430DKTOPKMEK1>240>430SQGPTKSrc>120a4100SDKLck55a3000SDNFlt-167a480NNYTyrkinaseZAP>240a>4300PKGEGFR>480aCDFFGFR1160a7000NEKPDGFRβ120a1500DNY図3得られたリード化合物(23)とkinase間のアミノ酸配列の違いを利用してCdk4選択性を向上させた化合物(27)5.今後の課題denovodesignによる新規リード化合物創製の成功への鍵はずばり、(1)候補化合物が実際には不活性であるリスクを減らすことと(2)候補化合物を容易に入手・合成することの2点である。これらを実現するためにはもちろんモデリング研究者だけでは不可能であり、合成化学、分子生物学、構造生物学などの各研究者との緊密かつタイムリーな連携が必要となる。(1)に関してモデリング側で打てる改善手段としては新規リガンドに対する結合親和性予測の精度を上げることだが、現時点では残念ながらまだまだ充分なレベルではない。(1)に関してモデリング以外での対策としては、1990年代後半から注目されてきているSARbyNMRを嚆矢としたfragment-basedapproachが挙げられる。NMR,X線、MSなどの実験手段によってリード化合物の一部をなす小さな構造(fragment)が望ましい結合様式で本当にタンパク質に結合するのかを確かめることが可能になってきた。このように確認された部分構造(smallbinder)を使ってリード化合物となるフルサイズの構造を組み立てれば、確認されていない部分構造を使って組み立てた場合に比べて合成候補化合物が実際には不活性であるリスクを大幅に軽減することができると考えられる。また、分子生物学者の協力を仰いで通常では行なわれない高濃度でのassayを行なうこともこのようなsmallbinderの同定には有用である。(2)に関しては、モデリング側だけで解決しようとするとdenovodesignprogramが出力した構造そのものの市販化合物を購入するという手段に偏ってしま-8-SARNewsNo.5(Oct.2003)いがちだが、合成化学者と協力して進めれば今回のSEEDSで提示されるようなdenovodesignprogram出力構造の相互作用パターンを保持した誘導体を購入・合成し、入手したい構造パターンをなるべく漏らさずに入手することが可能となってくると考えられる。図4に筆者が考えるdenovodesignstrategyによる新規リード化合物の創製の理想的な形(scaffold段階でのX線、NMRでの検証は今回の例ではできていない)をまとめてみた。このような共同研究を創薬プロジェクトの状況・要求に対応して臨機応変に進めることは容易なことではないが、製薬企業においてdenovodesignの手法で新規リード化合物の創製を安定して成功させ、さらにリード化合物を1-2個見出すだけではなく薬の開発に相当の貢献をしていくためには必須なことではないかと考えている。(1)evaluationofthechemicalavailability(2)purchaseorsynthesisofderivatives(3)assayinhighconcentrations(4)validationbyX-ray,NMR,MS(1)3D-guidedlibrarydesign(2)synthesisandassayDenovodesignofstructuresfittedtothemostimportantregionofthedrugbindingsiteOutputStructuresObtainedfromDeNovoDesignProgramsNewScaffold(s)(MW150-300)IC50(Kd)=10-1000μMNewLeadCompound(s)(MW300-500)IC50(Kd)=0.1-10μM図4筆者が考えるdenovodesignによるリード創製の理想形以上の内容はJournalofMedicinalChemistry[3,5]及び総説誌MedicinalResearchReviews[6]に掲載済みであり、2003年9月の226thAmericanChemicalSocietyNationalMeeting[7]において招待講演として発表済みですので詳しくはそちらを参照していただければ幸いです。最後に本ニュースレターへの執筆の機会を与えてくださいました編集委員の皆様に深く感謝いたします。参考文献1.Carr,R.;Jhoti,H.DrugDiscov.Today2002,7,522-527.2.Bohacek,R.S.;McMartin,C.;Guida,W.C.Med.Res.Rev.1996,16,3-50.3.Honma,T.;Hayashi,K.;Aoyama,T.;Hashimoto,N.;Machida,T.;Fukasawa,K.;Iwama,T.;Ikeura,C.;Ikuta,M.;Suzuki-Takahashi,I.;Iwasawa,Y.;Hayama,T.;Nishimura,S.;Morishima,H.J.Med.Chem.2001,44,4615-4627.4.Nishibata,Y.;Itai,A.Tetrahedron1991,47,8985-8990.5.Honma,T.;Yoshizumi,T.;Hashimoto,N.;Hayashi,K.;Kawanishi,N.;Fukasawa,K.;Takaki,T.;Ikeura,C.;Ikuta,M.;Suzuki-Takahashi,I.;Hayama,T.;Nishimura,S.;Morishima,H.J.Med.Chem.2001,44,4628-4640.6.Honma,T.Med.Res.Rev.2003,23,606-632.7.Honma,T.;Hayashi,K.;Yoshizumi,T.;Ikeura,C.;Ikuta,M.;Suzuki-Takahashi,I.226thAmericanChemicalSocietyNationalMeeting,NewYork2003,COMP95.-9-SARNewsNo.5(Oct.2003)/////研究紹介/////Insilicoスクリーニングを活用した新規キマーゼ阻害剤の探索トーアエイヨー株式会社東京研究所小出友紀1.はじめにキマーゼ(EC3.4.21.39)はアンジオテンシン-I変換酵素(ACE)よりも高い効率でアンジオテンシンIIを産生するキモトリプシン様セリンプロテアーゼである。1,2キマーゼは主に肥満細胞に存在しており、種々炎症性疾患との関連性が指摘されている。中でもキマーゼはリモデリングによる心筋細胞線維化との関連が注目されている。3筆者らは経口投与可能なキマーゼ阻害剤による慢性炎症性疾患治療剤としての開発を目指した研究を行っている。近年、経口可能な優れたキマーゼ阻害剤が報告されるようになったが、4-8筆者らがキマーゼ阻害剤の探索研究を開始した段階では、ジフルオロメチルケトン誘導体などのキマーゼ活性中心Ser195水酸基と共有結合を形成する非可逆的阻害剤は知られていたものの、経口可能なキマーゼ阻害剤は報告されていなかった。当時、筆者らがリード化合物としていたチアゾリジンジオン誘導体1およびチアジアゾール誘導体2は優れたキマーゼ阻害活性を有していたが、血漿中で速やかに分解してしまうために経口活性は認められなかった(図1)。1のナフトイルのカルボニル基は高い親電子性を有しており、キマーゼの活性中心であるSer195水酸基との相互作用を容易にしている。しかし、1の血漿中分解物は2-ナフチルカルボン酸であったことから、高い親電子性が易分解性の原因にもなっていることは明らかであった。キマーゼに対する親和性を維持しつつ、血漿中での安定性を改善する方策としては、例えば、ナフトイルの3位に嵩高い置換基を導入することが考えられるが、このような試みは尽くキマーゼ阻害活性の低下を招き成功しなかった。NOOSOOaIC50=97nMbStability:0%NNSSHNNSOClIC50=308nM12Stability:0%図1自社初期キマーゼ阻害剤構造aサルキマーゼ阻害活性bヒト血漿添加、37℃、1時間後の化合物残存率2.ファーマコファー解析リード化合物としてふさわしい安定なキマーゼ阻害剤を見出すためには、新規Scaffoldの探索が必要と考えられた。そこで筆者は、状況を打開するためCatalyst®(Accerlys,USA)9を用いてキマーゼ阻害剤ファーマコファーモデルを作成し、insilicoスクリーニングによる新規Scaffoldの探索を図った。CatalystはPolingmethod10による全コンフォメーション空間の網羅的解析(Catalyst/ConFirm)11、定量的活性情報を考慮したファーマコファー解析(Catalyst/HypoGen)12もしくは活性リガンドのアラインメント解析(Catalyst/HipHop)13によるファーマコファーモデルの作成およびinsilicoスクリーニングを行うための創薬支援ソフトウェアである。筆者は自社キマーゼ阻害剤の定量的活性情報を活用したファーマコファーモデル(Catalyst/HypoGenhypothesismodel)の作成を行った。HypoGenは最高活性値~最低活性値幅3.5桁以上のトレーニングセットから高活性化合物と低活性化合物の識別が可能なHypothesismodelを作成することが可能である。筆者は化合物1および2の関連誘導体26化合物から成るトレーニングセットおよびそれらのキマーゼ阻害活性値を活用してHypoGenhypothesismodelを作成した(図2)。14Hypothesismodelを構成する4つのFeatureのうち、HBA2.11はキマーゼ活性中心のSer195水酸基との水素結合を表現していると考えられる。またHBA1.11はオキシアニオンホール部位の水素結合、HYDROPHOBIC3.11はキマーゼS1ポケット部位、RINGAROMATIC4.11はS1’ポケット部位-10-SARNewsNo.5(Oct.2003)の疎水性相互作用をそれぞれ表現していると考えられる。ところでCatalyst/HypoGenは1つのトレーニングセットから10個のhypothesismodelを提示する。それらの信頼性はOccam’srezorの仮説評価基準によって“Cost値”に変換され、そのCost値で順位付けされ評価される。また最近ではSpearmanの順位相関係数による評価も報告されている。15筆者は、コスト値以外のHypothesismodel評価として、テストセットとの相関およびGHscoreを指標として用いた。GHscore(Güner-HenryScore)は、予めデータベース中に含まれる活性化合物(A)が明らかになっている場合に、データベース検索によって回収されるヒット化合物(Ht)中の活性化合物含有率(%Y)および活性化合物回収率(%A)の両者を考慮したinsilicoスクリーニング信頼性の評価方法である(図3)。16-18図2キマーゼ阻害剤Hypothesismodelと1の重ね合わせHBA:水素結合受容体およびその投影点、HYDROPHOBIC:疎水基、RINGAROMATIC:芳香環およびその投影点図3ファーマコファーモデルを活用したデータベース検索の解析D:データベース全化合物数、A:活性化合物数、Ht:ヒット化合物数、Ha:ヒット化合物中の活性化合物数、%A:データベースからの活性化合物回収率、%Y:ヒット化合物中の活性化合物含有率、E(Enrichment):活性化合物の濃縮率GHscoreはEnrichment(E)では評価しきれない、%Aまたは%Yのいずれかに偏った検索結果に対しても比較が可能である。筆者が作成したHypothesismodelの目的はinsilicoスクリーニングによる新規キマーゼ阻害剤の探索であったことから、GHscoreはその可否を推し量る上で重要な指標であると考えた。また、GHscoreはトレーニングセットに依存しないので一元的な評価が可能であるという利点も有する。一般にGHscoreにはHTS結果や市販薬データベースWDI(DerwentWorldDrugIndex)等の大規模データベースを対象に用いられているが、筆者は、これまでの自社キマーゼ阻害剤スクリーニング結果からIC50=100nM~30μMの境界域化合物、トレーニングセットおよびテストセットを除いた97化合物(A=8)という小規模なデータベースを構築してGHscore評価に用いた(図4)。キマーゼ阻害剤Hypothesismodel(図2)はCost値、テストセットとの相関およびGHscoreを指標にして選択された。図4自社キマーゼ阻害剤データベースを活用したファーマコファーモデル評価-11-SARNewsNo.5(Oct.2003)3.三次元データベース検索Hypothesismodelを用いてACD(AvailableChemicalDirectory,MDLinformationSystems,Inc.;216,599化合物)データベースを対象としてinsilicoスクリーニングを行った。ヒットした化合物から、Hypothesismodelに対する適合性(Fit値)10%未満の化合物および分子量500以上の化合物を除外した。また、筆者の目的は安定なキマーゼ阻害剤の探索であったことから、一般的に化学的安定性もしくは生化学的安定性に乏しいと考えられる官能基のモデルを作成して、これらをヒット化合物から削除した(図5)。非環状脂肪族ヒドラジン、オキシム、イミン、トリペプチド、イミド、チオエステル等は化学的安定性もしくは生化学的安定性に問題があることが多い。また、C,N,O,S,Cl,Br,I,Na,Mg,KおよびCa原子以外の原子が含まれる化合物はヒット化合物から削除した。ACDデータベースは脱塩を行っていないので、カウンターカチオンは残す必要があった。RNNNRORORORRRRRNRORONOT{C,N,O,S,F,Cl,Br,I,Na,Mg,KorCa}{O,N}{N,O}N{C,N,S}OSRR,,,AcyclicandAliphatic図5不安定官能基モデルの例上記のフィルター条件を加味して最終的に初期ヒット化合物の約70%を削除してから購入化合物を選定し、購入可能であった45化合物を購入し、invitroスクリーニングに供した。45化合物のうち3化合物に1μMでキマーゼ阻害活性が認められた。活性化合物のヒット率は4.9%であった(図6)。SNOClOOOSSO2HNSO2ClHNNNHOClSO2SClaActivity:36.5%Activity:17.8%MaybridgeMWP00965IC50=0.91μM(MonkeyChymase)10.6μM(HumanChymase)Stability:100%MaybridgeKM01221MaybridgeKM06864bStability:6.4%Stability:11.8%図6Insilicoスクリーニングヒット化合物中の活性化合物aサルキマーゼ阻害活性(1μM)bヒト血漿添加、37℃、1時間後の化合物残存率3化合物の中でもMWP00965(Maybridgeplc)は血漿中で安定であり、リード化合物としての展開が可能であった。筆者らはMWP00965の構造最適化を行い、経口投与可能で抗炎症作用を有するTY-51076(IC50=56nM,ヒトキマーゼ)を見出すに至った(図7)。19SSO2HNCO2MeFSO2Meキマーゼ阻害剤のファーマコファーモデルの場合、リガンドの回転可能結合数の少なさもあって比較的容易に真の活性コンフォメーションを射抜くことができたと感じている。また、45化合物程度のスクリーニングで活性化合物を見出すことができたが、筆者の経験から、このサイクルを何回か繰り返すことにより成功率は高まると考えられる。つまり、1回目のinsilicoヒット化合物のinvitroスクリーニング結果を活用し、そのFalsepositivesを識別可能なより優れたファーマコファーモデルが作成できれば2回目のinsilicoヒット化合物から活性化合物が見出せる可能性はさらに高まる。TY-51076IC50=56nM(HumanChymase)図7経口可能自社キマーゼ阻害剤GHscoreは対象データベースの質によって評価が左右される。ヒット化合物の多様性が乏しい場合には真のファーマコファーを抽出することが難しく、また多様なヒットが得られている際には複数の活性部位の存在を疑わせることがある。一方で、insilicoスクリーニングの質はFalsepositivesおよびFalsenegativesを減らすことによって向上することから、GHscoreはinsilicoスクリーニングの質を把握する指標として適している。また定量的な活性値を必要としないことから応用の範囲は広く、様々なソースから情報を収集し対象データベースを充実させることが可能で-12-SARNewsNo.5(Oct.2003)ある。4.結語リード化合物の最適化を図る場合、活性の向上を果たす目的以外に、安定性の向上や分子量の低減が条件として付け加えられるとその難易度は上がる。このような場合には、構造的に異なるリード化合物による再出発が時として最も効率的な展開になりうる。ファーマコファーモデルを活用したinsilicoスクリーニングは新規Scaffoldの効率的探索が可能であり、GHscore等を活用した継続的な検討によりリードジェネレーションのみならず、リード最適化にも必要な情報をも提供することができる。現在は本手法を活用して、さらに構造の異なる他社キマーゼ阻害剤の活性識別も可能なHypothesismodelの構築を行っている。最後に本ニュースレターでの発表の機会を与えて下さいました編集委員の先生方に深く感謝致します。参考文献(1)Takai,S.;Shiota,N.;Yamamoto,D.;Okunishi,H.;Miyazaki,M.;LifeSciences1996,58,591-597.(2)Ihara,M.;Urata,H.;Kinoshita,A.;Suzumiya,J.;Sasaguri,M.;Kikuchi,M.;Ideishi,M.;Arakawa,K.;Hypertension1999,33,1399-1405.(3)Matsumoto,T.;Wada,A.;Tsutamoto,T.;Ohnishi,M.;Isono,T.;Kinoshita,M.;Circulation2003,107,2555-2558.(4)Hoshino,F.;Urata,H.;Inoue,Y.;Saito,Y.;Yahiro,E.;Ideishi,M.;Arakawa,K.;Saku,K.;J.Cardiovasc.Pharmacol.2003,41Suppl1,S11-18.(5)Takai,S.;Jin,D.;Sakaguchi,M.;Kirimura,K.;Miyazaki,M.;Jpn.J.Pharmacol.2001,86,124-126.(6)Akahoshi,F.;Ashimori,A.;Sakashita,H.;Yoshimura,T.;Eda,M.;Imada,T.;Nakajima,M.;Mitsutomi,N.;Kuwahara,S.;Ohtsuka,T.;Fukaya,C.;Miyazaki,M.;Nakamura,N.;J.Med.Chem.2001,44,1297-1304.(7)Akahoshi,F.;Ashimori,A.;Sakashita,H.;Yoshimura,T.;Imada,T.;Nakajima,M.;Mitsutomi,N.;Kuwahara,S.;Ohtsuka,T.;Fukaya,C.;Miyazaki,M.;Nakamura,N.;J.Med.Chem.2001,44,1286-1296.(8)Takai,S.;Jin,D.;Nishimoto,M.;Yuda,A.;Sakaguchi,M.;Kamoshita,K.;Ishida,K.;Sukenaga,Y.;Sasaki,S.;Miyazaki,M.;LifeSci.2001,69,1725-1732.(9)Catalyst;Accelrys,SanDiego,CA,USA.See:http://www.accelrys.com/catalyst/index.htmlandhttp://www.accelrys.com/references/rdd_pub.html#catalyst(10)Smellie,A.;Teig,S.L.;Towbin,P.;J.Comp.Chem.1995,16,171-187.(11)Smellie,A.;Kahn,S.D.;Teig,S.;J.Chem.Inf.Comput.Sci.1995,35,285-294.(12)Li,H.;Sutter,J.;Hoffmann,R.HypoGen:Anautomatedsystemforgenerating3Dpredictivepharmacophoremodels.PharmacophorePerception,Development,andUseinDrugDesign;InternationalUniversityLine,2000;pp171-189.(13)Clement,O.;Mehl,A.T.HipHop:PharmacophoresbasedonMultipleCommon-FeatureAlignments.PharmacophorePerception,Development,andUseinDrugDesign;InternationalUniversityLine,2000;pp71-84.(14)Koide,Y.;Tatsui,A.;Hasegawa,T.;Murakami,A.;Satoh,S.;Yamada,H.;Kazayama,S.;Takahashi,A.;Bioorg.Med.Chem.Lett.2003,13,25-29.(15)Ekins,S.;Crumb,W.J.;Sarazan,R.D.;Wikel,J.H.;Wrighton,S.A.;J.Pharmacol.Exp.Ther.2002,301,427-434.(16)Clement,O.O.;Freeman,C.M.;Hartmann,R.W.;Handratta,V.D.;Vasaitis,T.S.;Brodie,A.M.;Njar,V.C.;J.Med.Chem.2003,46,2345-2351.(17)Güner,O.F.;Henry,D.R.Metricforanalyzinghitlistsandpharmacophores.PharmacophorePerception,Development,andUseinDrugDesign;InternationalUniversityLine,2000;pp191-211.(18)Güner,O.F.;Waldman,M.;Hoffmann,R.;Kim,J.-H.Strategiesfordatabaseminingandpharmacophoredevelopment.PharmacophorePerception,Development,andUseinDrugDesign;InternationalUniversityLine,2000;pp213-236.(19)Masaki,H.;Mizuno,Y.;Tatui,A.;Murakami,A.;Koide,Y.;Satoh,S.;Takahashi,A.;Bioorg.Med.Chem.Lett.2003,inpress.-13-SARNewsNo.5(Oct.2003)/////研究紹介/////Insilico予測システムの構築田辺製薬株式会社医薬化学研究所中尾和也、島津秀史、朝尾正昭、福島千晶研究企画部清水良1.はじめに創薬のリード探索段階において、combinatorialchemistry/highthroughputscreening(以下CC/HTSと略す)が利用されることが一般的になってきた。CC/HTS技術のおかげで、大量の構造活性相関情報を比較的短期間に取得することができるようになった。特にCCでは、反応に用いるbuildingblockを選ぶだけで、仮想的には数百万個以上の化合物ライブラリを構築することができる。ただ、あまりに数が多いと、すべての化合物を合成して生理活性を評価するということは、費用と時間の点から現実的ではないし、効率的とは言えない。一方、せっかく見出した開発候補化合物がその後の試験で、好ましくない物性・毒性のために開発中止になってしまうことが問題となっている。1)そのため、研究のリード探索段階から物性面・毒性面で将来問題が起こりそうな化合物は除いておいた方が効率的であると考えられるようになってきた(failearly,failcheaply)。そこで、仮想的に構築された化合物ライブラリから現実に合成する化合物を選抜するために、insilicoで予測される物性・毒性が利用されるようになった。化合物ライブラリの選抜法として、たとえばLipinskiのruleof52)やpolarsurfacearea3)、rotatablebond4)などを利用することがある。Insilicoで予測される物性・毒性はリード化合物からの構造展開時にも参考にすることができる。化合物がデザインされた段階で、その構造だけから評価できるのはinsilicoでの予測しかないからである。これら物性・毒性を予測するソフトは多数存在しているが、メディシナル・ケミスト自身が簡便に利用でき、そして予測結果を一括して閲覧できるソフトはなかったので、我々は自前の予測システムを市販の予測ソフトとweb技術を組み合わせて構築することにした。2.物性予測市販の予測ソフトで予測した物性パラメータを表1に、構築した予測システムを図1に示した。表1予測システムで利用した物性パラメータ————————————————————————————————————————-物性パラメータ予測ソフトWEBsite————————————————————————————————————————-logPClogPhttp://www.daylight.com/pKaACDpKaBatchhttp://www.acdlabs.com/logDClogP+ACDpKaBatchPolarsurfaceareaTPSAhttp://www.molinspiration.com/MolecularrefractivityCMRhttp://www.daylight.com/————————————————————————————————————————-分子量、水素結合供与基/受容基数、Rotatablebondは計算値を用いた。疎水性パラメータlogPの予測ソフトは多数市販されている。フラグメント法、原子団寄与法、分子表面積法、経験的簡易推算法など、予測方法も予測式を導出したデータベースも様々である。5)我々の予測システムでは、logP予測に、最も定評のあるClogPを用いることにした。なぜなら、ClogPはHansch、Leoらが大量に蓄積した精度の良い実測logP値のみを用いて解析し(データ数:7,800、標準偏差:0.40、寄与率:0.94)6)、開発した予測ソフトであり、予測精度が高いからである。-14-SARNewsNo.5(Oct.2003)図1構築した予測システム1)構造入力画面:分子構造をひとつずつ作図して入力する方法、SMILESで入力する方法、複数の分子構造をSDファイルで入力する方法を用意した。2)結果出力画面:複数の分子構造について予測した場合の出力画面。Toxicityの「Alert!」は、毒性データベースにリンクしており、同じ部分構造を持つ化合物の毒性情報が取得できる。-15-SARNewsNo.5(Oct.2003)ある条件下で測定された分配係数の対数値logDについても予測ソフトはいくつか市販されている。化合物が消化管から吸収される比率は消化管のpHによって変動するので、消化管吸収率とlogDとの相関がとられることがある。7)解離基を持つ化合物の場合、あるpH条件下での非解離型分子の存在率を考慮することで、logPとpKaからlogDを推算することができる。我々は、logPおよびpKa予測値を下記の予測式に代入してlogDを推算することとした。中性化合物:logD=logP一塩基酸化合物:logD=logP-log(1+10pH-pKa)二塩基酸化合物:logD=logP-log{1+10pH-pKa1×(1+10pH-pKa2)}一酸塩基化合物:logD=logP-log(1+10pKa-pH)二線塩基化合物:logD=logP-log{1+10pKa1-pH×(1+10pKa2-pH)}実際の化合物では解離基を複数持っていたり、カウンターイオンとイオン対を形成して分配したりすると考えられるので、複雑な構造の場合は予測に頼るのではなく、少数の化合物で実測し、補正を加えることを勧めている。我々の予測システムでは化合物の吸収に関連するパラメータとしてpolarsurfaceareaも採用している。細胞膜を透過する過程で、化合物は親水性領域(水溶液)から疎水性の脂質二重層内へと浸透する。親水性領域から疎水性領域へ移行する時に、化合物に水和している水分子は排除される必要がある。水和している水分子が多ければ、水分子を排除するエネルギーも大きくなり、その結果化合物は細胞膜内へ浸透しにくくなる。化合物に水和している水分子の多少は化合物のpolarsurfaceareaに比例するので、polarsurfaceareaが細胞膜透過・吸収の指標となると考えられる。Polarsurfaceareaの推算にはErtlらが提唱した簡便なtopologicalpolarsurfacearea8)を採用した。Polarsurfaceareaについて吸収との相関解析から閾値が唱えられており、ライブラリ設計時に参考にされている。3)これら以外にpKa、分子量、水素結合供与基/受容基数、molecularrefractivity、rotatablebondを採用することにした。pKaはメディシナル・ケミストが合成時に反応点を予測することに利用したり、生体内での化合物の解離状態を予測したりする時に参考となる。予測システムにはruleof5で取り上げられている分子量、水素結合供与基/受容基数も取り入れた。分子量については消化管吸収における細胞間隙経路との相関が考えられる。9)ただ、この経路からの吸収は化合物の分子サイズあるいは分子の形との相関がより高いのではないかと推測される。Molecularrefractivityは化合物の分子サイズと関連するパラメータであり、我々の予測システムではCMRを用いている。Rotatablebondは末端の一重結合、および二重結合、三重結合、環構造内の結合を除く、重原子間の回転可能な結合の数である。Rotatablebondは化合物の自由度を表すパラメータであり、吸収と関連すると考えられる。化合物には脂質二重層中で安定なコンホメーションがあり、自由度が高いとそのコンホメーションを形成する分子数が減少し、細胞膜を透過する比率が低くなると解釈される。3.毒性予測毒性予測の利用については、化合物ライブラリの選抜(毒性が予測される化合物をライブラリから除くこと)を目的としているのではない。構造から毒性が予測された場合、デザイン段階なら毒性を回避する構造への展開に、合成された化合物なら早期段階での毒性試験実施を促すことに利用することを意図した。市販の毒性予測ソフトは大きく二種類の方法によって予測を行っている。一つは構造毒性相関解析に基づく予測で、もう一つは知識ベースに基づく予測である。10)分子構造から発生させた構造記述子と毒性との相関を統計的手法によって解析し、予測式を構築した構造毒性相関解析に基づく予測ソフトの場合、その予測精度は解析に用いたデータの質と量に依存する。現状では、こちらの手法による予測ソフトの精度は必ずしも高いとは言えない。知識ベースに基づく予測ソフトでは、毒性発現に関与する共通の部分構造と、実際に毒性発現するために満たすべき条件をデータベース化し、データベースに照らし合わせて警告を発する。毒性回避に関してヒントを与え、あるいは毒性試験の早期実施を勧める目的には、後者の知識ベースに基づく予測ソフトの方が参-16-SARNewsNo.5(Oct.2003)考となる。そこで、社内で蓄積されてきた毒性データを収集し、毒性予測への利用を検討した。毒性発現のメカニズムから、構造との相関が考察しやすい変異原性(AMES試験、染色体異常試験など)を解析対象とした。社内データはプロジェクトごとに構造が偏っていたため、多様な構造に応用できる構造毒性相関式を導くことはできなかった。そこで、プロジェクトごとに担当者と毒性発現のメカニズムを考察し、毒性発現に関与すると思われる共通部分構造を抽出した。この共通部分構造をデータベース化し、デザインされた構造にこれら部分構造が含まれた場合、警告を出すシステムとした。毒性発現部分構造にはFDAで報告されている発癌構造も含めた。11)社内毒性データの利点は、ポジティブデータだけでなく、ネガティブデータも取得できる点である。市販データベースの場合、毒性を発現した化合物データのみ蓄積されたものが多い。ポジティブだった構造だけを用いてメカニズムを考察し、毒性発現に関与する部分構造を抽出することは困難である。社内毒性データの場合はネガティブだった構造が含まれているので、両者を比較することで毒性発現と関連する部分構造をより際立たせることができた。我々の予測システムでは、毒性発現部分構造を判定して警告を出すだけでなく、社内毒性データベースにリンクさせ、同部分構造を持つ化合物の実測データ(ポジティブとネガティブの両方)を表示することにした。なぜなら、ポジティブだった構造とネガティブだった構造を比較することで、毒性回避するデザインを考案するヒントとなると考えたからである。現在も、毒性データの蓄積・解析はすすめられ、継続して予測システムに追加されている。4.今後の課題ここで取り上げた予測ソフト以外にも多数の予測ソフトが市販されている。溶解度、沸点、拡散係数などの物性にとどまらず、Caco-2細胞膜透過、Blood-BrainBarrier透過、消化管吸収、経皮吸収、血漿蛋白結合などの予測ソフトも開発されている。12)これらのソフトについてはまだまだ開発途上と思われるが、今後、精度面での向上が計られれば実用可能なものになるだろう。先にも書いたように、これら予測ソフトの精度は解析に用いられたデータの質と量に大きく左右される。実験条件がコントロールされた良質なデータが大量に蓄積されたデータベースを取得することができれば、精度のよい予測ソフトを開発することができる。市販のデータベースに自社のデータを加えて、良質なデータベースを整備することが必要であり、自社のデータを大量に取得するためにはhighthroughput可能な実験系を持つことも必要である。物性・体内動態・毒性を簡便に評価できるhighthroughputscreening系の構築は今後ますます重要になってくるものと思われる。毒性については化合物自体の毒性のみならず、その代謝物の毒性も問題になることから、代謝についての予測も重要となる。代謝部位の予測、代謝物の予測、代謝酵素阻害の予測、代謝酵素誘導の予測など、いろいろな予測が考えられる。市販データベースに自社のデータを追加し、解析することから始めたい。また、代謝酵素については今後構造解析がすすめられること13)が予想されるので、タンパク質-リガンド相互作用情報も取り入れながら、予測精度を向上させることを考えている。創薬のリード探索段階で活性化合物が見出されても、それを効率よくリード化合物へと展開していくことが困難であり、この点が次に解決すべき課題となっている。薬物と市販化合物との物性の比較からdruglikenessが提唱されたように、薬物とその端緒となったリード化合物との比較からleadlikenessが提唱された。14)リード探索に用いる化合物ライブラリの選抜にはleadlikenessの評価が必要であり、その目的にもinsilico予測が利用できると考える。最後に本ニュースレターへの執筆機会を与えて下さいました編集委員の皆様に深く感謝いたします。参考文献1)Kennedy,T.,DrugDiscoveryToday,1997,2,436-444.2)Lipinski,C.A.;Lombardo,F.;Dominy,B.W.;Feeney,P.J.,Adv.DrugDeliveryRev.,1997,23,3-25.3)Palm,K.;Stenberg,P.;Luthman,K.;Autursson,P.,Pharm.Res.,1997,14,568-571.,Clark,D.E.,J.Pharm.Sci.,1999,88,807-814.,Kelder,J.,Grootenhuis,P.D.J.;Bayada,D.M.;Delbressine,L.P.C.;-17-SARNewsNo.5(Oct.2003)Ploemen,J.-P.,Pharm.Res.,1999,16,1514-1519.4)Veber,D.F.;Johnson,S.R.;Cheng,H.-Y.;Smith,B.R.;Ward,K.W.;Kopple,K.D.,J.Med.Chem.,2002,45,2615-2623.5)Mannhold,R.;vandeWaterbeemd,H.,J.Comput.-AidedMol.Design,2001,15,337-354.6)Leo,A.J.,Chem.Rev.,1993,93,1281-1306.7)Kramer,S.D.,Pharm.Sci.Tech.Today,1999,2,373-380.8)Ertl,P.;Rohde,B.;Selzer,P.,J.Med.Chem.,2000,43,3714-3717.9)Lennernas,H.,Pharm.Res.,1995,12,1573-1582.10)Greene,N.,Adv.DrugDeliveryRev.,2002,54,417-431.Wolfgang,G.H.I.;Johnson,D.E.,Toxocology,2002,173,67-74.11)http://www.fda.gov/cvm/guidance/G3pt3g.html12)http://www.f2.dion.ne.jp/~ccsnews/13)HumancytochromeP4502C9の結晶構造がProteinDataBank(http://www.rcsb.org/pdb/)に登録されている。(PDBID:1OG2,1OG5)14)Rishton,G.M.,DrugDiscoveryToday,2003,8,86-96.-18-SARNewsNo.5(Oct.2003)////報告/////「日本薬学会構造活性相関部会設立記念シンポジウム」報告㈱住化技術情報センター髙山千代蔵構造活性相関懇話会(1994年より、構造活性相関研究会と改称)を前身とする構造活性相関部会が日本薬学会の中に発足したのを記念したシンポジウムが2003年6月19日(木)の午後、星薬科大学の市川紘先生(部会常任幹事)のお世話で同大学本館第二ホールにて開催されました。梅雨時で蒸し暑い中、当日登録分を含め、参加登録者が163名と大いに盛況なものとなりました。本シンポジウムでは先ず、部会常任世話人代表の藤原英明先生(大阪大学大学院医学系研究科)の開会の挨拶の後、日本薬学会会頭の木村榮一先生(広島大学名誉教授)と日本化学会情報化学部会長の細矢治夫先生(お茶の水女子大学名誉教授)より温かい祝辞を頂きました。メインの講演の部では質疑応答時間を含め50分の講演が4つありました。最初の講演は展望講演で、部会常任世話人の(財)サントリー生物有機科学研究所・石黒正路先生が「ポストゲノム時代への構造活性相関研究の貢献」と言う演題の下、今後の構造活性相関研究を展望されました。残りの3つは招待講演で、大阪大学蛋白質研究所・中村春木先生が「バイオグリッドとinsilicodrugscreening」、山之内製薬創薬研究本部・藤田茂雄先生が「バーチャルスクリーニングによる創薬リード化合物探索」、京都大学大学院薬学研究科・藤井信孝先生(部会常任幹事)が「創薬化学~ゲノミクス、プロテオミクスを礎にして~」と言う演題で、各先生の最近の研究成果を紹介され、併せて、今後の創薬研究の方向性についても言及されました。上記講演に引き続き、今後の部会の発展の契機とするために設けられた「提言と部会への期待」セッションがありました。部会常任世話人の東京理科大学薬学部・寺田弘先生が座長をされ、テノックス研究所・野口照久先生、日本薬学会常務理事の米国研究製薬工業協会・小林利彦先生、京都大学名誉教授・藤田稔夫先生(部会顧問)より、それぞれ「インテグレイト創薬科学のパラダイムからSBDDへの提言」、「AllianceAwards」、「構造活性相関研究に対する一つの希望」と言う演題にその思いが込められた提言と部会に寄せる期待を熱く語って頂きました。シンポジウム後の懇親会でも活発な意見交換が行われました。1975年に構造活性相関懇話会が発足して以来実質的に四半世紀以上の歴史を持った本部会の更なる飛躍に向けての、正しく記念すべきシンポジウムであったと確信しています。小林先生より提言のありました“AllianceAwards/共同研究優秀賞”の創設「夜空の星を線でつなげば美しい星座となるように、構造活性相関も他の研究と結びついて大成してほしい」という意味が込められています。-19-SARNewsNo.5(Oct.2003)////報告/////「構造活性フォーラム2003」報告田辺製薬(株)清水良構造活性相関講習会は通算5回目となる今回から構造活性フォーラムと名前を変え、構造活性相関部会設立記念シンポジウムに引き続いて、6月20日に星薬科大学で開催されました。現在、放射光利用による蛋白結晶解析の急速な進展と、virtualscreeningの計算速度と精度の向上が相まって、創薬研究においてstructure-baseddrugdesign(SBDD)が実用段階に入っています。同時に、蛋白質と低分子の親和性を高い精度とスループットで測定する手法・機器も開発され、蛋白質-低分子相互作用の解析に基づく研究アプローチが創薬の現場で急速に広がっています。そこで今年度は「AffinityBasedScreening」をテーマとして、計算と実験の両面での最新のトピックスについて、6名の先生方に専門家以外の研究者にも分かり易く解説頂きました。総勢152名の参加者があり、展示会も併催するなどたいへんな盛況でした。講演後の活発な質疑応答の中では、virtualscreeningに対して理論的裏づけを深めるべきという意見がアカデミックの立場からあり、企業研究者からは実用上の有用性を重視する意見が出るなど、自由な雰囲気の中で建設的な議論が活発に交わされました。貴重な研究結果をご発表頂いた講師の諸先生、ご多忙の中参加頂いた皆様、そして会場運営でお世話になった高橋典子先生(星薬科大学)にこの場を借りて御礼申し上げます。開催日時:平成15年6月20日(金)開催場所:星薬科大学本館第二ホールプログラム:1)PCクラスタを用いたVirtualScreening戦略DockingStudyと3Dデータベース検索(住商エレクトロニクス・緑川淳)2)Grid-basedLigandDockingによるVirtualScreeningとLinearResponse法を用いたLeadOptimization(インフォコム・島田裕三)3)医薬分子設計研究所におけるドッキング研究の展開第一部ドッキング法の歴史と展望(医薬分子設計研究所・富岡伸夫)第二部自動フレキシブルドッキングの最先端(医薬分子設計研究所・水谷実穂)4)質量分析法を用いたタンパク質とリガンドとの相互作用解析(サントリー生物有機科学研究所・益田勝吉)5)ReverseTargeting技術を用いた治療標的蛋白質探索(アフェニックス・嶋秀明)6)総合討論実行委員:藤原巌(委員長・大日本製薬)、市川紘(星薬科大学)、高木達也(阪大院薬)、清水良-20-SARNewsNo.5(Oct.2003)////お知らせ/////第31回構造活性相関シンポジウム主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会,日本農芸化学会,日本分析化学会,日本農薬学会会期平成15年11月18日(火)~19日(水)(第26回情報化学討論会と併催)会場星薬科大学(〒142-8501東京都品川区荏原2-4-41)参加登録予約申込締切10月10日(金)必着講演時間特別講演60分,一般講演15分又は25分(25分講演は講演番号の末尾に*印)詳細は下記ホームページをご覧下さい。第1日(11月18日)座長藤原巌(9:50-10:55)K01*アセチルコリンエステレース阻害に対するラセミ化アリセプトのS-Enantiomerの不活性(分子研究所)○藤田忠男K02非経験的分子ダイナミクスを用いた向精神薬のコンフォーマー探索(NTT物性科学基礎研,ATR適応コミュニケーション研)○寺前裕之,大田原一成K03*COSMO-RS法による医薬品の溶解性の予測:単一溶媒ならびに混合溶媒系の検討(菱化システム,東海大医)○池田博隆,千葉貢治,狩野敦,平山令明座長高橋典子(11:00-12:00)PL1[特別講演I]構造と機能からみた器官形成と形づくり(東大院総合文化)浅島誠<ポスターセッションI>(13:30-15:30)座長(15:30-16:30)PL2[特別講演II]ゲノム情報から細胞内化学反応ネットワークを再構築する-バイオインフォマティクスから化学分析まで-(京大院農)西岡孝明座長藤井信孝(16:30-17:10)K04*HIV-1proteaseとinhibitorの相互作用に関する理論的研究(富士通,リバースプロテオミクス研,東海大医)○鮫島圭一郎,堀内健,平山令明K05植物4-HPPDの三次元構造モデリングと阻害剤分子設計への応用(相模中研,東ソー東京研)○柿谷均,平井憲次座長中山章(17:25-18:05)K06植物ホルモンブラシノステロイドの側鎖部分の構造と活性(京大院農)○山本修資,植薄信也,渡辺文太,大槻純子,赤松美紀,中川好秋,宮川恒K07*昆虫脱皮ホルモンアゴニストのInvitro活性評価系の確立と構造活性相関解析(京大院農)○中川好秋,小倉岳彦,水口智江可,岸川英敏,高橋かおる,宮川恒第2日(11月19日)座長高橋由雅(9:00-10:05)K08*インテグレーテッドインシリコスクリーニング(IV):ヒトP450予測モデルの構築と考察(連続変数モデル)(富士通,富士通九州システムエンジニアリング)○湯田浩太郎,CiloyMartinJose,北島正人K09市販医薬品に基づくdrug-likenessモデル(菱化システム,東海大医)後藤純一,○平山令明K10*SARNavigatorandHTSDataAnalysis(Discoverysoftware,TriposInc.)○JohnH.Begemann座長広野修一(10:20-11:15)K11*ファーマコフォア生成のための配座発生手法の検討(住商エレクトロニクス)○木村敏郎,緑川淳K12ドーパミン受容体リガンドの構造的特徴について(武田薬品,関西学院大理工)○上口尚美,山川真透,新妻弘崇,岡田孝-21-SARNewsNo.5(Oct.2003)K13能動学習法を用いた創薬スクリーニング(日本電気,田辺製薬)○麻生川稔,襲田勉,藤原由希子,山下慶子,土肥俊,朝尾正昭,櫛山恵実,中尾和也,黒田正孝,和田一輝,大軽貴典,福島千晶,清水良座長高木達也(11:30-12:35)K14*リガンドを含むタンパク質複合体の全自動モデリング法(FAMSLigand&Complex)の開発(北里大薬)○竹田-志鷹真由子,田中宏和,高谷大輔,千葉千恵子,渡辺佳晃,寺師玄記,岩舘満雄,梅山秀明K15*ニコチン性受容体におけるネオニコチノイド結合部位のホモロジーモデリングによる予測(近畿大農,京大院農,Univ.Oxford)○下村勝,横田麻衣子,松田一彦,赤松美紀,DavidBSattelle,駒井功一郎K16分子モデリングおよび分子動力学シミュレーションに基づくヒト血清アルブミン-薬物の相互作用解析(北里大薬)○岩田率,松下泰雄,山乙教之,広野修一<ポスターセッションII>(13:30-15:30)座長赤松美紀(15:30-16:00)K17チトクロームP45014αデメチラーゼ(CYP51)の三次元モデリングとアゾール系殺菌剤メトコナゾールの構造活性相関(呉羽化学,徳島大薬)○菊池真美,須藤敬一,伊藤篤史,熊沢智,中馬寛K18化審法新規化学物質の生物濃縮性予測(製品評価技術基盤機構,阪大院薬)○櫻谷祐企,笠井健二,野口良行,西原力座長田中明人(16:00-16:40)K19*薬物の構造と人工膜透過性との関係-Caco-2細胞透過性予測への応用(京大院農,田辺製薬)○赤松美紀,阿野理恵子,中尾和也,清水良K20薬物の母乳移行性の定量的構造活性相関解析-ClinicalQSARの試み-(徳島大院薬,徳島大薬)○藤原崇,日比野有紀,木原勝,山内あい子,中馬寛<ポスターセッションI>11月18日(13:30-15:30)KP01ハードネス理論を用いた神経伝達物質に基づく脳の電子構造について(昭和薬大)○小林茂樹,寺尾佑紀KP02取り消しKP03リソソーム病に関与するCathepsinAとその阻害剤間の相互作用様式の解析(徳島大,京都薬大)○吉田達貞,佐藤百合恵,林良雄,伊藤孝司,中馬寛KP04ヒト血清アルブミン-弱塩基性薬物複合体のモデリングと相互作用解析(北里大薬)◯松下泰雄,岩田率,山乙教之,広野修一KP05レクチンの立体構造から見た平面上の糖鎖認識(野口研)○佐藤玲子,戸澗一孔KP06Ames試験結果のLipinskiルールによる考察と予測モデルの構築(産医研,富士通,日本バイオアッセイ研究センター)○猿渡雄彦,中西良文,湯田浩太郎,松島泰次郎KP07環境ホルモン;エストロジェン様化合物の構造活性相関に関する理論的研究IV(立教大理,産総研)○山岸賢司,原田隆範,常盤広明,長嶋雲兵KP08SFCundecapeptide領域の構造:機能獲得実験によるコレステロール結合部位の解析(名大院生命農学,徳島大工,徳島文理大健康科学研)○大倉一人,伊藤亘,犬伏晃子,松居麻知子,高麗寛紀,津下英明,勝沼信彦,長宗秀明KP093DMET:生体内分子の立体構造データベース(生物研)○前田美紀KP10インテグレーテッドインシリコスクリーニング(V):ヒトP450予測モデルの構築と考察(クラスモデル)(富士通,富士通九州システムエンジニアリング)○湯田浩太郎,CiloyMartinJose,北島正人KP11ジベンゾイルヒドラジン類のシロイチモジヨトウ,ニカメイチュウ,コロラドハムシに対する殺虫活性の多次元QSAR(GhentUniv.,京大院農,RheoGeneL.L.C)○GuySmagghe,YoshiakiNakagawa,RobertE.HormannKP12脂肪細胞分化誘導に関するQSAR解析(遠隔医療研)○岩田奈緒,高橋哲,小林柾樹-22-SARNewsNo.5(Oct.2003)KP13DrugMLとグリッド創薬(富士総研,徳島大薬)○浜田道昭,稲垣祐一郎,中馬寛KP14分子重ね合わせに基づく活性化合物解析システムの開発(医薬分子設計研)○野中はるみ,富岡伸夫,板井昭子KP15HIV-プロテアーゼ(I)と阻害剤複合体の分子軌道法による解析(徳島大,豊橋技科大,産総研)○中馬寛,吉田達貞,村上良真,中山尚史,後藤仁志,稲富雄一,長嶋雲兵KP16市販医薬品中に見られるpharmacomodules(東海大医,菱化システム)○荒井智子,堀尾晃平,後藤純一,平山令明KP17ベンゼン環を主要骨格として含む化合物のdrug-likeness(東海大医,菱化システム)○堀尾晃平,荒井智子,後藤純一,平山令明<ポスターセッションII>11月19日(13:30-15:30)KP18グリシン縮約表現を用いたタンパク質三次元モチーフ解析(豊橋技科大)○近松信一,加藤博明,高橋由雅,阿部英次KP19標的蛋白質のInducedFitを考慮したリガンドドッキング(1):ブラウン動力学法を用いた鍵穴サンプリング(北里大薬)○山乙教之,広野修一KP20分配係数logPの非経験的予測(4):ペプチドへの適用(徳島大,神戸薬大,京大院農,エミルプロジェクト)○森充史,山上知佐子,赤松美紀,藤田稔夫,田中秀治,中馬寛KP21ニューラルネットワーク法による新規logP推算式の構築(ベストシステムズ,立教大理,産総研)○田島澄恵,山岸賢司,原口誠,長嶋雲兵KP22キチナーゼ-argifin複合体の分子動力学シミュレーション(北里大薬)○合田浩明,広野修一KP23高次元アルゴリズムに基づくオリゴペプチドのコンフォメ-ション解析II(立教大理,産総研,NTT物性基礎研)○家入寛子,常盤広明,長嶋雲兵,寺前裕之KP24動的コンフォメーション変化を考慮した抗HIV薬のQSAR解析(立教大理,NTT物性基礎研,徳島大薬)○川和田美里,山岸賢司,寺前裕之,中馬寛,常盤広明KP25「μ≒μ’」の帰無仮説を検定する新規計算機集約型手法(阪大院薬,阪大薬,阪大遺伝情報実験センター,阪大微研)○岡本晃典,東真樹子,横田雅彦,黒川顕,安永照雄,高木達也KP26半経験的分子軌道法によるビタミンDレセプター-カルシフェロールアナログ相互作用の解析(リバースプロテオミクス研,東海大医)○堀内健,平山令明KP27SupportVectorMachineを用いた薬物活性クラス分類(豊橋技科大)○錦織克美,藤島悟志,高橋由雅KP28SOMフィルターを用いたQSARモデリング(豊橋技科大)○秋元紗恵,佐々木英史,高橋由雅KP29生体高分子に対する新規の半経験的分子軌道法LocalSCF法の適用(富士通)○鮫島圭一郎KP30配座集団のフィルタリングによる結合コンフォメーションの効率的探索法(北里大薬,富山化学)○中込泉,山乙教之,小田彰史,広野修一参加登録費(予約):一般6,000円,学生2,000円(当日):一般8,000円,学生3,000円(情報化学討論会と共通)懇親会:11月18日(火)18時30分より,星薬科大学内「ステラ」にて.会費(予約):一般6,000円,学生3,000円(当日):一般7,000円,学生4,000円(情報化学討論会と合同)連絡先:〒142-8501星薬科大学衛生化学教室高橋典子Tel:03-5498-5950,Fax:03-5498-5950Email:qsar31@hoshi.ac.jpホームページ:http://polaris.hoshi.ac.jp/qsar31/-23-SARNewsNo.5(Oct.2003)構造活性相関部会の沿革と趣旨本部会は構造活性相関懇話会として、1975年5月京都において第1回シンポジウムを開いたのが始まりである。1975年度は2回のシンポジウムを開催し、以降1978年までは依頼講演4~5件、半日の簡素な形式であった。1980年より一般講演を募集し、年1回の構造活性相関シンポジウムが関係諸学会の共催の下で開かれるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。1994年より構造活性相関懇話会の名称を同研究会と改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果たしてきた。2002年4月からは、日本薬学会の支援を受けて構造活性相関部会として新しく組織化され、関連諸学会とも密接な連携を保ちつつ構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動することとなった。1975年当時、関係する領域における科学技術のめざましい発展にともなって、医農薬を含む生理活性物質の構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が国内外に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、海外諸国における研究の紹介、および国内における研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立された。以来、懇話会として構造活性相関シンポジウムの実行支援のほか、南江堂より、化学の領域増刊122号:薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作研究への指針)、および同増刊136号:同第二集(ドラッグデザインと作用機作研究の実際)をそれぞれ1979年と1982年に編集、出版するとともに、構造活性相関講習会を開催するなど設立の趣旨に応じた活動を進めている。本部会の沿革と趣旨および最近の動向などの詳細は、(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)ホームページを参照願いたい。編集後記SARNewsは構造活性相関研究会の情報機関誌として一昨年10月に創刊し、本号で2年目を迎えました。ご多忙の中、原稿執筆をお引き受け頂きました先生方には心からお礼申し上げます。今年はライト兄弟が初フライトに成功して丁度100年目にあたるということで、彼らの故郷Daytonでも盛大な記念事業が行なわれておりました。一方で本誌報告欄にありますように、構造活性相関部会で準備を進めて参りました「日本薬学会構造活性相関部会設立記念シンポジウム」と「構造活性フォーラム2003」が6月に併催され、参加登録者は163名と大いに盛況なものとなりました。今後益々の構造活性相関の飛躍を期待させる記念事業ではなかったでしょうか。(構造活性フォーラムは今年から「構造活性相関講習会」を改めまして発足の運びとなりました。)11月には市川紘先生並びに高橋典子先生を実行委員長として、第31回構造活性相関シンポジウムが星薬科大学で開催されます。皆様奮って御参画下さいますよう宜しくお願いします。編集委員一同、引き続き本誌の充実に努めて行きたいと考えております。皆様のご意見をお聞かせ頂けると幸いです。あわせて今後ともご協力・ご支援をお願いする次第です。(編集委員会)SARNewsNo.5平成15年10月1日発行:構造活性相関部会(常任世話人代表:藤原英明)SARNews編集委員会(委員長)黒木保久石黒正路高橋由雅藤原巌中川好秋*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。-24-__