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SARNews No.32

SARNews_32

構造活性相関部会・ニュースレター<1April,2017>SARNewsNo.32「目次」/////藤田稔夫先生薬学会功労賞ご受賞//////////Perspective/Retrospective/////抗ウイルス性酵素RNaseLとその活性化因子2-5A中川好秋・・・1北出幸夫・・・2/////CuttingEdge/////RNaseLにおける酵素活性化機構解明を目指した構造生物学的研究田中信忠・・・10エネルギー表示法を用いた蛋白質複合体ドッキングモデルの結合性評価竹村和浩、北尾彰朗・・・19/////SARPresentationAward/////2016年度選考結果について・・・26受賞コメント・・・27授賞講演要旨・・・28/////Activities/////<報告>第44回構造活性相関シンポジウム開催報告・・・34<会告>構造活性フォーラム2017「PPI阻害をターゲットとする中分子医薬開発戦略」・・・41第45回構造活性相関シンポジウム・・・43/////藤田稔夫先生が日本薬学会功労賞を受賞されました/////授賞式での藤田先生:薬学会新会頭の奧直人先生(左)と。2017年3月24日仙台写真は薬学会広報部のご厚意による。京都大学名誉教授・藤田稔夫先生はHansch先生(故)とともに、半世紀以上前に、生理活性の変化を薬物の種々の物理化学的性質(電子的性質、疎水的性質、立体的性質)によって定量的に解析するという定量的構造活性相関(QSAR)法を開発し、1962年Nature誌、1964年にアメリカ化学会誌に発表されました。特に1964年の2論文は数多く引用され、lnstituteofScientificInformation(Philadelphia)によって“CitationClassics”に選ばれています。Hansch研究室から帰国された藤田先生は、「構造活性相関懇話会」を1975年に設立され、学術シンポジウム、解析手法などの講習会の定期的開催、出版事業、会誌の発行などの活動を行なわれました。この懇話会が、1995年に「構造活性相関研究会」へと発展し、さらに2002年に本部会(日本薬学会構造活性相関部会)となりました。このたび、部会として日本薬学会功労賞に推薦いたしましたところ、昨年11月に授賞が決定し、去る3月24日に仙台で開催された日本薬学会第137年会で平成29年度功労賞を受賞されました。ご受賞をお祝い申し上げます。また先生の偉大なご業績に敬意を表するとともに長年にわたる本分野へ御貢献にも深く感謝申し上げます。(部会長中川好秋)/////Perspective/Retrospective/////抗ウイルス性酵素RNaseLとその活性化因子2-5A愛知工業大学北出幸夫1.はじめに新型インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)、C型肝炎など様々なウイルス感染症の流行が社会問題となっている。このような病原体からの防御機構として、獲得免疫系と自然免疫系がある。獲得免疫系は、脊椎動物にしか存在しない免疫系であり、主としてT細胞やB細胞が抗原を非自己と認識する抗原特異的な免疫反応であり、この獲得免疫系を利用してワクチンが開発されている。一方、自然免疫系は、非特異的な免疫反応であり先天的な免疫機構である。近年、自然免疫系にウイルス等の病原体を認識する受容体としてToll様受容体(TLR;Toll-likereceptor)とRIG-I様ヘリカーゼ(RLH;RIG-I-likehelicase)が同定され、免疫系を賦活することが判ってきた。自然免疫において重要な役割を担っているのがⅠ型インターフェロン(IFN)である。細胞から分泌されたⅠ型IFNは、細胞表面に発現しているIFN受容体に結合し2-5A合成酵素(OAS;2′,5′-oligoadenylatesynthetase)やプロテインキナーゼ(PKR;proteinkinaseR)の発現を誘導することで、細胞を抗ウイルス状態にする。OASやPKRは、恒常的に低レベルで発現しており、Ⅰ型IFNの誘導に伴い発現レベルが上昇する。さらにOASやPKRは、抗ウイルス応答を引き起こすウイルス性二本鎖RNAに特異的パターン認識受容体(PRR;patternrecognitionreceptor)であることが明らかとなっている。2.2-5AシステムとはOASの発現誘導は、2-5Aシステムといわれる先天性免疫応答につながっている。OASは、二本鎖OOONH2NNHOPOPOPONNNHRNAにより活性化され、活性化されたOASは、ATPから2′,5′-ホスホジエステル結合を有する2′,5′-オリゴアデニル酸(2-5A)(2-5Atrimer(1):OHOH2OHOOHOOPOOHppp5′A2′p5′A2′p5′Aおよび2-5Atetramer(2):ppp5′A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)を合成する(Fig.1)。2-5Aは、不活性型RNaseL(Ribonucleaselatent)と結合し、構造変化を誘導することでRNaseLが二量化し活性型となる。RNaseLの二量体化と活HO(1)n=0:2-5Atrimer(2)n=1:2-5AtetraFig.12-5A(1,2)の構造NNHOOHNH2NN性化には、RNaseLと2-5Aが1:1の割合で結合することが必須である。活性型RNaseLは、ウイルス一本鎖RNAのUpU、UpA配列を主に認識して切断することで、タンパク質の合成を阻害する。2.12-5Aの構造と機能Kerrらによって1978年にインターフェロン処置したマウスL細胞抽出液から2-5Aが発見され、その構造が明らかにされた[1]。通常のオリゴヌクレオチドが3′,5′-ホスホジエステル結合で連結しているのに対し、2-5Aは2′,5′-ホスホジエステル結合で連結した特異な構造を有する。マウスL細胞抽出液を用いた無細胞系において、2-5Aの3量体トリリン酸体(1)、4量体トリリン酸体(2)は、ほぼ同等のタンパク質合成阻害活性を有するが、2量体トリリン酸体(ppp5′A2′p′5A)は約10倍Fig2.2’,5′-オリゴアデニル酸(2-5A)システム活性が低下すると報告されている[1,2]。さらに5′-末端リン酸残基の必要性を検討したところ、5′-トリリン酸体、5′-ジリン酸体は、同等のRNaseL活性化能を示すものの、5′-モノリン酸体では活性化能が10000倍低下した[3,4]。1994年Dongらによって、ヒト遺伝子組換え型RNaseLが作製され、5′-末端がモノリン酸体である2-5A3量体(p5′A2′p5′A2′p5′A)が、対応する5′-トリリン酸体(ppp5′A2′p5′A2′p5′A)と同等のRNaseL活性化能を有することが明らかにされた[5]。しかし、2-5Aコアとよばれる5’-末端のリン酸残基欠損体(A2′p5′A2′p5′A、A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)は、2-5A5′-モノリン酸体(p5′A2′p5′A2′p5′A(5)、pA2′p5′A2′p5′A2′p5′A)と比較して、それぞれ100倍、10倍以上にRNaseL活性化能が低下する[5,6]ことから、RNaseL活性化には5′-末端リン残基が必須であることが示されている。すべての2′,5′-ホスホジエステル結合を3′,5′-ホスホジエステル結合に置き換えた3-5A誘導体(ppp5′A3′p5′A3′p5′A)では、RNaseLとの結合能を示さず、さらに5′-末端から1つ目、2つ目をそれぞれ3′,5′-ホスホジエステル結合に変換した3-5A誘導体(ppp5′A3′p5′A2′p5′A,ppp5′A2′p5′A3′p5′A)では100倍以上RNaseLとの結合能が低下すると報告されている。この結果は、RNaseLが、2′,5′-ホスホジエステル結合を厳密に認識し結合していることを示唆している[7]。2-5Aの塩基部の重要性は、イノシン(I)を導入した各種2-5A誘導体の合成研究から明らかとなっている。5′-末端側から最初のアデノシンをイノシンで置き換えた誘導体(ppp5′I2′p5′A2′p5′A)では、RNaseLとの結合活性が大きHOく変化する。しかし2番目、3番ONNHNNNHONONH2NNHONONH2NN目のアデノシンを置換した2-5AHOOHHOOHOH誘導体(ppp5′A2′p5′I2′p5′A,inosine(I)1-deazaadenosine(c1A)cordycepin(3′-dA)ppp5′A2′p5′A2′p5′I)では、天然型2-5Aと同等の結合能力を有するこFig.3修飾アデノシン誘導体の構造とが判っている。これら3つの2-5A誘導体の中では、ppp5′A2′p5′A2′p5′Iが天然型2-5Aと同等の結合能を有するが、RNaseL活性化能は10000倍減弱する。1番目のアデノシン、特にN-6位アミノ基はRNaseLとの結合に、3番目のアデノシンはRNaseLの活性化に重要である[8,9]ことが示されている(Fig.3,4)。さらに1番目のアデノシンを1-デアザアデノシン(c1A)に変換した2-5A誘導体(p5′(c1A)2′p5′A2′p5′A)でも同様にRNaseL結合能力の低下[10]が確認されている。2-5Aの糖部水酸基の重要性についても報告されている。3′-デオキシアデノシン(3′dA;cordycepin)を用いて、5′-末端側から1番目の糖部3′-水酸基を除去した2-5A誘導体(ppp5′(3′dA)2′p5′A2′p5′A)では、天然型2-5Aとほぼ同等のRNaseL結合能力を有するものの、RNaseLの活性化能は3倍低下する。しかし、2番目の糖部3′-水酸基を除去した誘導体(ppp5′A2′p5′(3′dA)2′p5′A)では、結合能力の低下と500-1000倍の重大なRNaseL活性化能の低下が観察されている[11]。上記結果から、RNaseLの結合には5′-末端のアデニン塩基が不可欠であること、Fig.42-5A(5)の構造活性相関活性化には5′-末端モノリン酸基、3つ以上のアデノシンヌクレオチド、2′,5′-ホスホジエステル結合、5′-末端から2番目のアデノシンの3′-水酸基、5′-末端から3番目のアデニン塩基が重要であることが明らかとなっている(Fig.4)。一方、P.F.Torrenceらにより8-ブロモアデノシン(br8A)を導入した2-5A誘導体が各種合成され、その中で8-ブロモアデノシンが5’-末端から数えて3番目の位置に導入されたpppApAp(br8A)に強いRNaseL活性化能が見出されている。ヌクレオシドを用いた研究で、アデノシン8位にバルキーな置換基を導入するとsyn-配座が優先することはよく知られている。3番目のアデノシンがsyn-配座をとりやすくしたことが活性化の増強に関与しているものと考えられた。そこで、我々は先ず2-5Aの3番目のアデノシanti-formsyn-formンがsyn-配座をとることでRNaseLを活性化しNH2NNNH2NNR=CH3orBrRているかどうか化学的手法を用いて確認することにした。すなわち、様々な置換基をアデノシン8位及び2位に導入して、ヒト遺伝子組換えRNaseLを用いてこれらの活性化能を評価した。HONOHOOHNRNNHOOHOOHその結果、2-5Atrimerモノリン酸体(5:pApApA)の活性化能を基準に比較すると、2位に臭素基を導入したpApA(br2A)(6)では0.17倍、メチル基を導入したpApA(me2A)(7)では0.21倍の活性化能の低下を確認した。2位への置換基の導入はそのアデノシンのanti-配座を優勢にすると考えられるが、いずれの誘導体でも活性化能の減弱が認められた。一方、アデノシン8位に臭素基、メチル基を導入したpApA(br8A)(4)では33倍、pApA(me8A)(3)では3.5倍の活性能の増強を示したことから、syn-配座の安定化が明らかにRNaseLの活性化能を増強することを確認した。しかし、Table1に示すようにメチル基よりバルキーなエチル基、メトキシ基、ブトキシ基を導入した2-5A誘導体(pApA(et8A)(8)、pApA(meO8A)(9)、pApA(buO8A)(10))では、RNaseLとの結合に障害をきたすためか、明らかな活性化能の減弱が認められた。すなわち、酵素との結合に適したサイズを有する臭素やメチル基を8位に置換したアデノシンを3番目に有する2-5A誘導体(3,4)がRNaseLを強く活性化することが判った[12-14]。また、こTable1.2-5A誘導体によるヒト遺伝子組換えRNaseL活性化50れら2-5A誘導体はヌクレアーゼ耐性も示したことから、将来2-5Aの医薬品への展開を考えた場合に優れた化学修飾法になると考えられた。2.22ヒトRNaseLの構造と機能ヒトRNaseLは、741アミノ酸からなる約84kDaのタンパク質であり哺乳類細胞に広く発現している。RNaseLは、N-末端アンキリンリピP-loopmotifsAnkyrinrepeats123456789Ire1phomologyZincfingerKinase-likedomainートドメイン(ANK)、プロテインキナーゼ様ドメイン、C-末端リボヌクレアーゼドメインの3つのドメインからなっている。N-末端アンキリン2-5Abinding2-5AbindingDimerizationLys392NucleaseTrp632Asp661Arg667His672741リピートドメインは、8つの完全な、1つの部分的なアンキリンリピート(R1~R9)からなってい1100200300400500600700Aminoacidnumberる。R7とR8にはグリシン、リジン、スレオニン修飾がある(Fig.6)。我々の研究グループでArg155π-πstackinginteractionsGlu131は、X線結晶構造解析を念頭に大腸菌を用いて発現したヒト遺伝子組換えRNaseLを作成した。saltbridgesαIhelixhydrogenbondsTyr135Gln68その結晶化は困難を極めたが、2004年に昭和大学の田中信忠博士らとの共同研究で、RNaseL(res.159-164)saltbridgesAsn65のN-末端アンキリンリピートドメインと2-5Aとの複合体のX線結晶構造解析(Fig.7)に成功し、ANKと2-5Aの結合様式を明らかにした[12-14]。2-5Aは、ANKの2番目から4番目のLys89waterTrp60アンキリンリピートドメインに結合し、4番目と5番目のドメインの間に挿入されているα-ヘリックス(αI-helix)構造が、2-5Aの5′-末端リン酸基と相互作用している。ANKの60番目のトリプトファン(Trp60)、126番目のフェニルアラニン(Phe126)はπ-πスタッキング相互作用で、89番目のリジン(Lys89)と155番目のアルギニン(Arg155)は静電相互作用で、65番目のアスパラギン(Asn65)、68番目のグルタミン(Gln68)、131番目のグルタミン酸(Glu131)と135番目のチロシン(Tyr135)は水素結合で、2-5Aと相互作用している。特にTrp60とPhe126、Lys89とArg155、Glu131を変異させると、RNaseLの活性化能力を失う。さらに、2-5Aの5′-末端から3番目のアデノシンがsyn-配座をとっていること、7番目から9番目のアンキリンリピートドメインがRNaseLの構造安定性に重要な寄与をすることが示された[15-17]。RNaseLのリボヌクレアーゼドメインはC-末端側にある(Fig6)。その上流にはプロテインキナーゼ様ドメインがあるが、このプロテインキナーゼ様ドメインの392番目のリジンをアルギニンに置換する(K392R)と、RNAの分解活性は減弱する。プロテインキナーゼ様ドメインとATP・ADPとの結合活性が低下すると、RNaseLの二量体形成能が減少するためか、またはタンパク質構造や運動性に影響を与えるため、プロテインキナーゼ様ドメインの点変異がRNaseドメインの触媒活性の低下をもたらすと考えられる。また、632番目のトリプトファン(Trp632)、661番目のアスパラギン酸(Asp661)、667番目のアルギニン(Arg667)と672番目のヒスチジン(His672)は基質RNAの分解に関与し、712番目のチロシン(Tyr712)と716番目のフェニルアラニン(Phe716)は基質RNAの結合と分解に重要であることが明らかとなっている。2-5AとN-末端アンキリンリピートドメインの複合体X線結晶構造解析の結果は、それまで報告されていたRNaseLの活性化や結合に必要な2-5Aの部位に関する知見を裏付けるものであった。さらにRNaseLへの部位特異的変異導入体を用いたアミノ酸の機能解析は、新規なRNaseL活性化剤の創製に向けて重要な知見となる事が期待される。近年、全長RNaseLのX線結晶構造解析に成功したとの報告[18]があったが、この点に関する詳細は田中信忠先生によるCuttingEdgeを参考にして頂きたい。このように2-5AによるRNaseLとの結合・活性化やRNA配列特異的切断などかなりの点がX線結晶構造解析を用いた構造生物学的手法から分かってきたが、今後さらなる詳細な解明と創薬への応用展開が待たれる。3.8-Methyladenosine導入による高機能化:Syn-配座はRNaseLとの結合を強化先に述べたように、2-5AとRNaseLのN-末端複合体ANKとのX線結晶構造解析から、2-5Aの5′-末端から3番のアデノシンはsyn-配座をとっていることが明らかになった[11]。我々が開発した3番目のアデノシンの8位にメチル基やブロモ基を導入した2-5A誘導体では、この3番目のアデノシンが優先的にsyn-配座をとることで、天然型2-5AよりRNaseLのBサイトとの結合活性が増加し、構造変化を強く引き起こすことで、RNaseLに対する活性化能を増強したものと考えられる[12]。天然型2-5Aモノリン酸体(p5′A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)やその誘導NH2NNNH2NNNH2NNNRNH2N体は、ホスホロアミダイト固相合成法にNNHOOOONNOOONNNNOOOOPPPよりDNA/RNA自動合成機を用いて容易に合成できる。種々の2-5A誘導体のRNaseL活性化能を解析した結果、5′-末端リン酸基が欠損した誘導体である2-5Aコア4量体(A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)(11)は、予想通りRNaseL活性化能を全OHOOHOHOOHOHOOHOHOH(11)R=H(12)R=CH3く示さなかった。しかし、予想に反して4番目のアデノシン8位にメチル基を導入した8-メチルアデノシン置換2-5Aコア誘導体(A2′p5′A2′p5′A2′p5′(me8A))(12)は、天然型2-5A(p5′A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)より強いRNaseL活性化能を示した。誘導体12が高いRNaseL活性化能を示すのは、天然型2-5Aとは異なる活性化様式が存在するためと考えたれた。誘導体12では、8位メチル化により2′-末端のアデノシン残基のsyn-配座が優勢になることで、この2′-末端アデノシンがANKとの結合に最も強く寄与するものと考えた。すなわち、2′-末端アデノシンとANKのBサイトとの間で強く相互作用が生じ、さらに5′-末端側のホスホジエステル結合部位がANKのPサイトに結合することで、RNaseL活性化につながる構造変化を引き起こしたものと推察した[19]。この考え方が正しいならば、2’-末端塩基部8位への化学修飾は、ANKに対する2-5A結合部位のシフトを誘起することが示唆された。加えて、5’-末端部位への化学修飾によりヌクレアーゼ耐性の向上も見込まれたことから、天然型2-5Aより安定な2-5A誘導体創製の可能性があるものと考えられた。特に5′-末端の極性が高いリン酸基が欠損してもRNaseL活性化能を有したことは、脂溶性の増大による膜透過性が向上した2-5A誘導体の創製につながる知見である。2-5Aコア体(A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)(11)がRNaseL活性化能を全く示さず、8位メOFNHNH2NNNH2NNNH3CNH2Nチル体(A2′p5′A2′p5′A2′p5′(me8A))(12)H3CNOOOONNOOONNNNOOOOが、天然型2-5Aより高いRNaseL活性化PPP能を示したことから、p5′A2′p5′A2′p5′(me8A)部位の5’-末端に様々な化合物を導入することが可能と考OHOOHOHOOHOHOOHOHOHえられた。そこで、ピリミジン塩基を有するウリジンの導入を検討したところ、U2′p5′A2′p5′A2′p5′(me8A)は強いRNaseL活性化能を示した。一方、その3’,5’-結合異性体であるU3′p5′A2′p5′A2′p5′(me8A)は全く活性化能を示さなかった。この結果は、RNaseLとの結合にp5′A2′p5′A2′p5′(me8A)部分が関与するだけでなく、結合や活性化に直接関与しないと考えられた5’-末端ウリジン残基との結合様式も重要であることが示唆された。そこで、p5′A2′p5′A2′p5′(me8A)部位の5’-末端に抗がん活性を有するdoxifluridineを導入した2’,5’-リン酸結合を有するハイブリッド体(13)を合成した。このハイブリッド体(13)には、doxifluridineの抗がん活性と2-5Aシステムによる生体防御システムの増強による相乗効果が期待される。実際、ハイブリッド体(13)は、p5’A2′p5′A2′p5′A2′p5′A(EC50=12.9nM)よりも約30倍(EC50=0.45nM)もの優れたRNaseL活性化能を示すとともに、HeLa細胞の増殖抑制も示した[20]。HeLa細胞増殖抑制活性は、Doxifluridine単独よりは若干弱いものの、全くHeLa細胞増殖抑制活性を有しない2-5A(p5’A2′p5′A2′p5′A2′p5′A)と比べてはるかに強い抗がん活性を示した。5.おわりに現在siRNAやmiRNAがRNA医薬として注目を浴びているが、2-5Aは生理活性を有する短鎖RNAの先駆けと考えられる。現在、核酸医薬を実現するためにDDS技術の目覚ましい進展があることから、我々の得た知見が近い将来2-5A分子を用いた医薬品の開発に繋がることを期待して本稿を終わりたい。謝辞岐阜大学工学部において共同研究者としてご協力頂きました中西雅之博士(現・松山大学薬学部准教授)並びに喜多村徳昭博士(岐阜大学工学部助教)に心からの謝意を表します。また、北出研究室に所属された諸氏に心から感謝致します。X線結晶構造解析を粘り強く担当して下さいました田中信忠博士(昭和大学薬学部准教授)に深謝致します。本稿の作成にご協力頂きました愛知工業大学の森(中島)礼美特任研究員並びに小縣綾特任研究員にお礼申し上げます。参考文献[1]Kerr,I.M.;Brown,R.E.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75,256-260(1978).[2]Cayley,P.J.,Davies,J.A.,McCullagh,K.G.,Kerr,I.M.Eur.J.Biochem.,143.165-174(1984).[3]Torrence,P.F.Imai,J.Johnston,M.I.Proc.NatlAcad.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、立体構造解析の結果と一致した。2-5A認識機構および2-5Aの構造活性相関の詳細に関しては、原著[14,15]をご参照いただきたい。図5.ANKによる2-5A認識機構(PDBID:1WDY)。3.近年の進展(転)ヒトANKと2-5Aとの複合体の立体構造を2004年に報告して以降、我々はヒト全長RNaseLの結晶を得ることができずにいた。もちろん何もしていなかったわけではなく、中西先生、北出先生らと共にヒト以外の種由来全長RNaseLの結晶化あるいは溶液状態での性状解析に取り組んでいた。当然のことながら、RNaseLに関する研究の先駆者であるClevelandClinic,LernerResearchInstituteのRobertSilverman博士のグループも我々と同様に全長RNaseLの立体構造解析を目指していたようである。新たな展開として、UPR(unfoldedproteinresponse)に必須のキナーゼであるIre1(キナーゼドメインに加えそのC末側にRNaseドメインを有し、RNaseLのC末側と類似のkinase/RNaseというドメイン構成を持つタンパク質)の立体構造解析で顕著な成果[16]を挙げたAlexeiKorennykh博士がPrinceton大学でラボを構え、全長RNaseLの立体構造解析に参入してきた。3.1RNaseLはANKを介して2量体化する2012年10月、上述のKorennykh博士のグループが非常に興味深い論文を発表した[17]。Ire1(kinase/RNase)に関する研究で培ったノウハウを駆使し、まず初めに全長RNaseLおよびANKに関する徹底した機能解析実験を行い、2-5Aの結合によりANK単独でも2量体化することを見出した。しかしこの結果は、筆者らが報告したANK/2-5A複合体はモノマーとして存在するという結晶構造[14](図4)とは一致しない。ANK/2-5A複合体結晶の空間群はP212121で非対称単位中の分子数は1であったことから、結晶中の分子パッキングを考慮しても、筆者らのANK/2-5A複合体による2量体形成はあり得ない。そこで、彼らは2-5A存在下および非存在下においてANKの結晶化、X線構造解析を行った。その結果、2-5AがANKのリピート2~4に結合するという点は我々の結果と一致していたが、彼らのANKは2-5Aの結合により2量体化することが証明された(図6)。我々の構造と彼らの構造の大きな違いは、ANKのリピート9の構造である。我々の構造でディスオーダーしていたリピート9が、彼らの構造では2量体化に関与することが示された(図6)。図6右に示すように、2量体のペアを形成するもう一方の分子のリピート9’(赤)に属するArg310’とTyr312’が2-5Aとの結合に関与し、2量体の安定化に寄与していた。部位特異的置換実験からも、これら残基の2量体化における重要性が示唆された。なお、我々の構造と彼らの構造における2-5Aの結合様式は実験誤差レベルで同等(RMSD=0.32Å)であり、Arg310’との相互作用に起因して2-5Aの2’-末端リボースのパッカリングが異なるだけであった。この論文[17]から、Korennykh博士のグループにおいて全長RNaseLの大量発現系および機能解析実験系が十分確立されていること、なおかつIre1(kinase/RNase)研究に関するノウハウを有する彼らは非常に強力な競争相手であることも思い知らされた。我々同様に彼らも全長RNaseLの立体構造解析に取り組んでいることは明らかであり、「このままでは、全長RNaseLの立体構造解析レースで彼らに負けるのではないか?」という恐れを抱かざるを得ず、次節に記すようにその心配は1年半も経たないうちに現実のものとなってしまった。図6.完全な2量体を形成したANK/2-5A複合体の立体構造(PDBID:4G8L)。一方の分子(R1~R9)に結合した2-5A(マゼンタ)の2’-末端ともう一方の分子のリピート9(赤、R9’)が相互作用することにより2量体を安定化していた。3.2全長RNaseLの立体構造解析ANK/2-5Aの完全な2量体形成の報告[17]から1年半も経たない2014年初頭、ついに全長RNaseLの立体構造が二件報告された[18,19]。一件は、RNaseLに関する研究の先駆者であるSilverman博士のグループによるブタ由来全長RNaseLの立体構造解析であり[18]、もう一件は、Ire1(kinase/RNase)研究に関するノウハウを有するKorennykh博士のグループによるヒト由来全長RNaseLの立体構造解析である[19]。両者の構造はほぼ同等であり、以下、Korennykh博士のグループによるヒト由来全長RNaseLの構造に関し紹介する。図7.全長RNaseLの立体構造(PDBID:4OAV。正面図(左)と上面図(右)。正面図において、図上からN末端アンキリンリピートドメイン(ANK、青~青緑色)、キナーゼ類似ドメインのN-lobe(緑)およびC-lobe(黄緑~黄色)、C末端RNaseドメイン(RNase、オレンジ~赤)。ANKには2-5A類似体、キナーゼ類似ドメインにはATP類似体、RNaseドメインにはRNA断片(p5’U3’p)が結合している。全長RNaseLは、ANK/2-5A複合体[17]の構造から予想された通り、ANK同士がhead-to-tailで2-5Aを介して2量体を形成し、次いでキナーゼドメインがback-to-back(ATP結合部位の反対側)で接触し、C末のRNaseドメインがface-to-face(触媒部位側)で接触していた(図7)。2量体におけるキナーゼドメインとRNaseドメインの位置関係は、Ire1の場合[16]と同等であった。2章で紹介したRNaseLに関し解明すべき4つの謎の中で、(ii)は我々の研究[14]、(iii)はKorennykh博士らの研究[17]により解明されていたが、残された謎である(i)と(iv)に関する答えが、全長RNaseLの結晶構造解析の結果から以下の如く遂に明らかになった。RNaseLは、基質となる一本鎖RNAのウリジン塩基を特異的に認識し、その3’-側隣接ヌクレオチドの3’-末端を切断することが知られている(…-U-p-N-p-//-N-…)[20]。RNA断片との複合体の結晶構造並びに各種生化学実験から、2量体化したRNaseLの一方のサブユニットのRNaseドメインの活性部位においてHis672やPhe647が基質RNAのウリジン塩基を特異的に認識し、もう一方のサブユニットの活性部位でHis672が触媒残基として働き次のヌクレオチドの3’-末端で基質RNAを切断することが明らかとなった(図8)。このことは、RNaseLがウリジン塩基特異的RNase活性を発揮するためには、2量体化が必須であることを明快に示している。従って、(i)なぜ、単量体RNaseLは不活性型なのか、(iv)なぜ、2量体化することで、RNaseLは活性型となるのか、という2つの謎が2-5A存在下における全長RNaseLの立体構造解析により遂に解決されたのである[19]。RNaseL活性化におけるキナーゼ類似ドメインの役割としては、キナーゼ類似ドメインにATPが結合することでキナーゼ類似ドメインとRNaseドメインの位置関係が固定され、2つのRNaseドメインが協同的にRNase活性を発揮できると考えられている[18]。全長RNaseLに関する構造活性相関の詳細に関しては、膨大な実験データが示されている素晴らしい原著論文[18,19]をご参照いただきたい。図8.全長RNaseLのRNaseドメイン(PDBID:4OAVによるウリジン塩基特異的基質認識機構。一方のサブユニットの活性部位で基質RNAのウリジン塩基を認識し、もう一方のサブユニットの活性部位で次のヌクレオチドの3’-末端を切断する(-//-は切断部位を表す)。RNaseドメインには結晶化に用いたRNAの断片(p5’U3’p)が結合している。4.おわりに(結)本稿では、特殊なオリゴヌクレオチドである2-5Aの結合によるRNaseLの活性化というユニークな分子機構解明を目指した構造生物学的研究の展開を紹介した(図9)。RNaseLの活性化機構の全貌を筆者らのグループだけで解明するには至らなかったものの、2-5Aの結合様式の解明によりRNaseLに関する構造生物学的研究の突破口を開いたのは我々であることは紛れもない事実であり、大魚を捕らえられなかった非常に悔しい思いと裏腹にある程度の達成感はある。何故、我々の結晶中において、ANK/2-5A複合体は2量体を形成せずに単量体として存在していたのであろうか?実は、我々の結晶化条件ではANK/2-5A複合体の結晶成長に2週間程要したため、リピート8とリピート9の境界領域に存在するCys293とCys301との間に予期せぬS-S結合が生じてしまっていた。それ故、リピート9が正しい構造をとることができず、ディスオーダーして2量体形成に関与できなかったのである。Korennykh博士らはその問題に気づき、1~3日という比較的短時間で結晶成長する条件下において2量体化したANK/2-5A複合体の構造決定に成功している[17]。図9.2-5AによるRNaseLの活性化機構解明研究の変遷。(1)筆者らによる成果[14]。(2)Korennykh博士のグループによる成果[17]。(3)Silverman博士のグループによる成果[18]並びにKorennykh博士のグループによる成果[19]。いくつかのウイルスは2-5AシステムによるRNA分解回避用に2’,5’-PDEを持っていることが近年報告されているが[9,10]、それらは活性部位にHis-X-Ser/Thrモチーフを2つ有する2H-phosphodiesterasefamilyに属し、筆者らが創価大学工学部の栗原正先生らと共に2005年に報告したヒト脳由来2’,3’-cyclicnucleotidephosphodiesterase(CNPase)[21]の活性ドメインの構造と全く同等なフォールディングをとっていることは非常に興味深い。我々はRNaseLに関する研究とCNPaseに関する研究を並行して進めていたが、CNPaseと類似の酵素が2-5Aシステムに関与しているとは全く予想もしていなかった。今後、これらの関係に関し再考察したい。タンパク質の結晶構造解析の分野では、リボソームなどの巨大超分子複合体の立体構造解析に続き、ひと昔前までは極めて困難と考えられていたヒトGPCRに代表される膜タンパク質の立体構造解析が続々と成し遂げられている。従って、この分野は最早特別な獲物は既に捕りつくされ激しい競争だけが残っている「レッドオーシャン」であるという印象を受ける方が多いかもしれない。しかし、本稿で紹介したようなマルチドメインタンパク質の多くは何らかの工夫なくしては全長での結晶化が困難であるため、全体構造は未解明なものが数多く残されている。目の付け所次第では、タンパク質の結晶構造解析の分野にも「ブルーオーシャン」がまだまだ残されていると筆者は信じている。謝辞本稿で紹介したヒトRNaseLのN末アンキリンリピートドメインの結晶構造解析は、岐阜大学工学部の北出幸夫先生(現・愛知工業大学工学部教授)、中西雅之先生(現・松山大学薬学部准教授)、後藤芳邦先生(現・帝京平成大学薬学部講師)らとの共同研究により、昭和大学薬学部の中村和郎先生(現・昭和大学薬学部名誉教授)の研究室において、日下部吉男先生(現・帝京大学薬学部講師)との協力により行われたものです。北出先生と中村先生は、開始当初数年間全く成果が得られなかったプロジェクトを打ち切ることなく、中西先生と筆者らによるヒトANK/2-5A複合体の結晶構造解析を見守り、若手研究者を育てて下さいました。お二人の先生方の忍耐強いサポートとご指導に深く感謝いたします。恩師である三井幸雄先生(IFN-βの立体構造解析により、1994年ミルシュタイン賞受賞)はIFN誘導酵素RNaseLに大変興味を持たれ、御存命時にお会いする度、RNaseLの結晶構造解析に難航していた筆者を叱咤激励して下さいました。暖かいご指導に心から感謝いたします。本稿で紹介した筆者らの研究は、科研費奨励研究A、タンパク3000プロジェクト、科研費特定領域、上原記念生命科学財団研究助成金、武田科学振興財団研究奨励金、笹川科学研究助成、科研費萌芽研究などの援助を受けました。参考文献[1]Stark,G.R.,Kerr,I.M.,Williams,B.R.G.,Silverman,R.H.,Schreiber,R.D.Howcellsrespondtointerferons.Annu.Rev.Biochem.,67,227-264(1998).[2]Nagano,Y.,Kojima,Y.Immunizingpropertyofvacciniavirusinactivatedbyultravioletsray.C.R.Seans.Soc.Biol.Fil.,48,1700-1702(1954).[3]Taniguchi,T.,Ohno,S.,Fujii-Kuriyama,Y.,Muramatsu,M.ThenucleotidesequenceofhumanfibroblastinterferoncDNA.Gene,10,11-15(1980).[4]Mantei,N.,Schwarzstein,M.,Streuli,M.,Panem,S.,Nagata,S.,Weissmann,C.ThenucleotidesequenceofaclonedhumanleukocyteinterferoncDNA.Gene,10,1-10(1980).[5]Senda,T.,Shimazu,T.,Matsuda,S.,Kawano,G.,Shimizu,H.,Nakamura,K.T.,Mitsui,Three-dimensionalcrystalstructureofrecombinantmurineinterferon-beta.Y.EMBOJ.,11,3193-3201(1992).[6]Silverman,R.H,Ascientificjourneythroughthe2-5A/RNaseLsystem.CytokineGrowthFactorRev.,18,381–388(2007).[7]Chakrabarti,A.,Jha,B.K.,Silverman,R.H.NewinsightsintotheroleofRNaseLininnateimmunity.J.InterferonCytokineRes.,31,49-57(2011).[8]Kubota,K.,Nakahara,K.,Ohtsuka,T.,Yoshida,S.,Kawaguchi,J.,Fujita,Y.,Ozeki,Y.,Hara,A.,Yoshimura,C.,Furukawa,H.,Haruyama,H.,Ichikawa,K.,Yamashita,M.,Matsuoka,T.,Iijima,Y.Identificationof2′-phosphodiesterase,whichplaysaroleinthe2-5Asystemregulatedbyinterferon.J.Biol.Chem.,279,37832-37841(2004).[9]Zhang,R.,Jha,B.K.,Ogden,K.M.,Dong,B.,Zhao,L.,Elliott,R.,Patton,J.T.,Silverman,R.H.,Weiss,S.R.Homologous2′,5′-phosphodiesterasesfromdisparateRNAvirusesantagonizeantiviralinnateimmunity.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,110,13114-13119(2013).[10]Silverman,R.H.,Weiss,S.R.Viralphosphodiesterasesthatantagonizedouble-strandedRNAsignalingtoRNaseLbydegrading2-5A.J.InterferonCytokineRes.,34,455-463(2014).[11]Dong,B.,Silverman,R.H.Abipartitemodelof2-5A-dependentRNaseL.J.Biol.Chem.,272,22236-22242(1997).[12]Player,M.R.,Torrence,P.F.The2-5Asystem:modulationofviralandcellularprocessesthroughaccelerationofRNAdegradation.Pharmacol.Ther.,78,55-113(1998).[13]Tanaka,N.,Nakanishi,M.,Kusakabe,Y.,Goto,Y.,Kitade,Y.,Nakamura,K.T.CrystallizationoftheN-terminalankyrinrepeatdomainofthe2-5A-dependentendoribonuclease,RNaseL.ProteinPeptideLett.,12,387-389(2005).[14]Tanaka,N.,Nakanishi,M.,Kusakabe,Y.,Goto,Y.,Kitade,Y.,Nakamura,K.T.Structuralbasisforrecognitionof2’,5’-linkedoligoadenylatesbyhumanribonucleaseL.EMBOJ.,23,3929-3938(2004).[15]Nakanishi,M.,Tanaka,N.,Mizutani,Y.,Mochizuki,M.,Ueno,Y.,Nakamura,K.T.,Kitade,Y.Functionalcharacterizationof2′,5′-linkedoligoadenylatebindingdeterminantofhumanRNaseL.J.Biol.Chem.,280,41694-41699(2005).[16]Korennykh,A.V.,Egea,P.F.,Korostelev,A.A.,Finer-Moore,J.,Zhang,C.,Shokat,K.M.,Stroud,R.M.,Walter,P.Theunfoldedproteinresponsesignalsthroughhigh-orderassemblyofIre1.Nature,457,687-693(2009).[17]Han,Y.,Whitney,G.,Donovan,J.,Korennykh,A.Innateimmunemessenger2-5AtethershumanRNaseLintoactivehigh-ordercomplexes.CellRep.,2,902-913(2012).[18]Huang,H.,Zeqiraj,E.,Dong,B.,Jha,B.K.,Duffy,N.M.,Orlicky,S.,Thevakumaran,N.,Talukdar,M.,Pillon,M.C.,Ceccarelli,D.F.,Wan,L.C.,Juang,Y.C.,Mao,D.Y.,Gaughan,C.,Brinton,M.A.,Perelygin,A.A.,Kourinov,I.,Guarné,A.,Silverman,R.H.,Sicheri,F.DimericstructureofpseudokinaseRNaseLboundto2-5Arevealsabasisforinterferon-inducedantiviralactivity.Mol.Cell,53,221-234(2014).[19]Han,Y.,Donovan,J.,Rath,S.,Whitney,G.,Chitrakar,A.,Korennykh,A.StructureofhumanRNaseLrevealsthebasisforregulatedRNAdecayintheIFNresponse.Science,343,1244-1248(2014).[20]Wreschner,D.H.,McCauley,J.W.,Skehel,J.J.,Kerr,I.M.Interferonaction–sequencespecificityoftheppp(A2’p)nA-dependentribonuclease.Nature,289,414-417(1981).[21]Sakamoto,Y.,Tanaka,N.,Ichimiya,T.,Kurihara,T.,Nakamura,K.T.Crystalstructureofthecatalyticfragmentofhumanbrain2′,3′-cyclic-nucleotide3′-phosphodiesterase.J.Mol.Biol.,346,789-800(2005)./////CuttingEdge/////エネルギー表示法を用いた蛋白質複合体ドッキングモデルの結合性評価東京大学分子細胞生物学研究所竹村和浩、北尾彰朗1.はじめに蛋白質は他の蛋白質やリガンドとの相互作用を介し、その分子機能を発現する。そのため、蛋白質複合体の構造および分子間相互作用に関する知見は、蛋白質の機能を理解する上での重要な鍵となる。複合体を形成する相互作用が過渡的である場合など、複合体構造を実験的に決定することが困難である場合は多いため、複合体構造予測の精度向上は計算機の分野に求められる重要な課題の一つである。そのため、複合体構造予測手法の開発は盛んに行われており、複合体構造予測のためのソフトウェアやサーバーが数多く存在している。対象が蛋白質‐蛋白質複合体である場合の複合体構造予測では、一般に剛体ドッキング等を用いた候補構造の生成と、生成した複合体モデルの評価もしくは最適化を行い最終的な候補構造へ絞り込む二つの段階に分けられる。複合体形成時に蛋白質に大きな構造変化を伴わない場合では、正解に近い候補構造の生成方法はある程度確立しているが、候補構造の生成に成功している場合でも絞り込む段階でしばしば間違った構造を選択することがある。一方、複合体形成時に大きな構造変化を伴う場合は、正解に近い構造を含む候補構造を生成することが困難であるのが現状である。このように、現状では候補構造の生成および絞込みそれぞれに改善が必要であり、蛋白質-蛋白質複合体構造予測のコンテストであるCriticalAssessmentofPRedictionofInteractions(CAPRI)[1]においても、モノマーの構造から複合体構造予測を行う”predictor”だけではなく、与えられた複合体モデルの中から最適な構造を選択する”scorer”が存在している。蛋白質の骨格をある程度固定しリガンドをフレキシブルに取り扱うのが一般的である蛋白質-リガンド複合体の構造予測は、上述の蛋白質-蛋白質複合体の複合体構造予測とは状況は少し異なり、リガンドにある程度の柔軟性がある場合でも候補構造の生成を行うことは可能であるが、それでも最終的な予測構造が正確でない場合がしばしば起こる。その原因として、溶媒を露わに取り扱わないでドッキングを行うことや高速計算を可能にする経験的なスコアリング関数を用いていることが考えられる。このように複合体候補構造の正確な評価は蛋白質複合体の構造予測において重要な課題であると言える。最近では、幾つかの蛋白質-蛋白質複合体の構造予測ソフトウェアやサーバーにおいて、基準振動解析を基にして蛋白質の柔軟性を取り込む予測法が実装されている。また、複合体構造予測と複合体界面の水分子の位置を予測する二つのカテゴリーが存在していたCAPRIにおいて、新たに蛋白質-ペプチドを対象とした複合体予測が新たなカテゴリーとして加わったことで、ペプチドの柔軟性を考慮した複合体構造予測が必要となり、蛋白質-蛋白質複合体の構造予測でも分子の柔軟性への対応が強く求められている。更に、CAPRIにおいて複合体構造予測を自動で行うドッキングサーバーが、ある程度の構造変化を伴う複合体の予測に成功するケースがあるなど少しずつ状況は変わりつつあるが、どのような手法で生成した候補構造であっても、最終的な候補構造の正確な評価は予測の鍵である。本稿では、エネルギー表示法により溶媒和自由エネルギーを高精度に評価し、複合体モデル間の結合自由エネルギー差を求め、複合体候補構造からの絞り込み改善を試みた例について紹介する。また、自由エネルギーを用いた評価は利用していないが、アンキリンリピートドメインに関して、ドッキングによる複合体構造予測と高濃度リガンド条件下において分子動力学(MD)シミュレーションを行った例について紹介する。2.手法2.1熱力学サイクルもし生成した複合体候補構造の中に正解に十分近い構造が含まれており、二つの蛋白質がモノマー状態から候補構造を形成するときの結合自由エネルギーが正しく計算できれば、正解に最も近い構造の結合自由エネルギーが最も低くなり、最適な構造を選別することが可能になると期待される。しかしながら、多数の複合体モデルの結合自由エネルギーを高精度かつ高速に溶液中で計算することは困難である。まず、分子Aと分子Bが結合し、複合体Cを形成する過程において、図1のような熱力学サイクルを考える。図中で分子が四角に囲われているのは溶液中にあることを表し、下向きの矢印は溶媒和、右向きの矢印は分子の結合に対応する。このような熱力学サイクルでは、複合体モデルの溶液中の結合自由エネルギーΔGb(s)は以下で与えられる。Gb(s)Gb(v)CAB(1)ΔGb(v)、Δµはそれぞれ真空中における結合自由エネルギー、溶媒和自由エネルギーである。ΔGb(v)は溶質のコンフォメーションエネルギーEとエントロピーSを用いて以下のように表せる。Gb(s)ECTSCC(EATSAEBTSBAB)(2)ここでの重要な点は、式(2)右辺の括弧内の項はモノマーに由来するエネルギーであり、同じモノマーから構成される複合体モデル間の評価を行う場合は複合体モデル間で共通であるため、結合自由エネルギー差を評価するのに計算が不要な点である。従って、それぞれの複合体モデルの溶媒和自由エネルギーを高精度で高速に計算することが、結合自由エネルギー差を計算する上で重要となる。図1.複合体形成の熱力学サイクル2.2エネルギー表示法今回紹介する評価手法では、溶媒和自由エネルギーの評価にエネルギー表示法[2-4]を用いる。エネルギー表示法では、自由エネルギー摂動法や熱力学積分法のように数多くの中間状態を必要とせず、始状態と終状態の二状態における溶質、溶媒の相互作用エネルギーの分布関数を用いた汎関数で溶媒和自由エネルギーを近似している。小さな分子に関しては、従来法と同程度の精度を有し、既に蛋白質や脂質[5,6]などの系に応用されている。エネルギー表示法は、EnergyRepresentationMODule(ERMOD)[7]として公開されており、NAMD、AMBER、GROMACS等の汎用MDソフトウェアが生成するトラジェクトリを解析し、溶媒和自由エネルギーを計算することが可能である。この方法で得られる結果は、エネルギー表示法を用いた溶媒和自由エネルギーを複合体モデル評価に用いた応用例だとも言える。溶媒は水なので、始状態と終状態はそれぞれ、水モデルのみからなる純溶媒系と水溶液中に複合体が溶けている溶液系である。具体的な計算手順は以下の通りである。まず始状態のエネルギー分布関数を求めるためには、水モデルのみのMD計算を行っておき、溶質を水モデルのトラジェクトリに挿入して計算する。具体的には、水モデルのトラジェクトリを1,000スナップショット用意し、各スナップショットに対して、異なる位置に溶質を1,000回挿入した。従って、挿入による相互作用の計算は百万回であり、通常のMD計算で言えば2ns程度の計算に相当する。終状態のエネルギー分布関数は、溶液系におけるMD計算を行い、溶質と溶媒の相互作用を解析する。必要な計算のうち、水モデルのMD計算は複合体モデル間に共通で一度だけ行い、溶質の挿入と溶液中のMD計算は独立に計算可能である。複合体の構造を固定したまま計算を行う場合は、終状態に対応する溶液系でのMD計算は1nsで溶媒和自由エネルギーの値が十分に収束している[5]。すなわち、N個の複合体モデルの評価を行いたい場合でも、始状態に対応する挿入による計算も含めわずか数Nns程度の計算量しか必要としない。2.3分子動力学シミュレーション、ドッキング下記の蛋白質-リガンド複合体モデルは、AutoDock[8]、GOLD[9]、MolegroVirtualDock(MVD)[10]を用いて、蛋白質-蛋白質複合体モデルは、ZDOCK[11,12]もしくはRosettaDock[13]を用いて構造の生成を行った。MD計算は全てNAMD[14]を用いて行い、溶媒和自由エネルギーの計算は前述したERMODを用いて行った。3.結果と考察3.1リゾチーム-triNAG複合体への適用例ここでは、蛋白質-リガンド複合体への適用例としてリゾチームとtriNAG(tri-N-acetylglucosamine)が形成する複合体へ適用した例[15]を紹介する。リゾチームには6つのNAG結合するサイト(ABCDEF)が知られているが[16]、結晶構造ではtriNAGはABCに結合している。これに対して、AutoDockで予測した複合体モデルではtriNAGはCDE結合サイトに、GOLD及びMVDを用いて生成した複合体モデルでは、BCDに結合していた(図2)。図2リゾチーム-triNAGのモデルと結晶構造複合体候補構造を基準とした拘束条件下で、真空中と溶液中でMD計算を行い、結合エネルギー差の評価を行った。溶質のエントロピーは並進、回転、内部運動に分離して考え、内部運動に関しては、主成分解析より得られる振動数を基に計算した。表1に示した通り自由エネルギー計算を用いた場合は、結晶構造「SARPresentationAward」は、構造活性相関シンポジウムにおける若手研究者の発表を奨励し、構造活性相関研究の発展を促進するため、2010年度に創設された。当初は応募制として審査対象講演の募集を行った。2012年度からは、正式名称を「構造活性相関シンポジウム優秀発表賞」(英語表記SARPresentationAward)と定めた。<2016年度SARPresentationAwardについて>2016年度は、構造活性相関シンポジウムにおける45歳以下の発表者による全ての一般講演(口頭発表・ポスター発表)を選考対象とすることとした。2016年度SARPresentationAward受賞者:口頭発表:前田巌(東京大学大学院工学系研究科)ポスター発表:吉田智喜(北里大学薬学部)受賞者の選考について:各審査員から提出頂いた審査票(無記名)を集計し、最高点を獲得した発表者に対し、平成28年11月17日に京都大学薬学部で開催された平成28年度第1回幹事会において協議して、口頭発表・ポスター発表よりそれぞれ1名ずつを受賞候補者として選出した。口頭発表の審査は3段階評価の点数方式、ポスター発表の審査は、最大2演題まで選出するという方式で行った。受賞候補者に受賞の諾否を確認した後、正式に受賞者と決定した。授賞式は、第44回構造活性相関シンポジウムの閉会式において行った。後日、受賞者には、賞状と副賞(図書券)を贈呈した。なお、審査にあたっての審査項目は下記の通りである。審査項目:a)講演要旨:講演要旨は発表内容を反映して適切に作成されているか。b)講演資料:スライドは専門領域の異なる参加者にも分りやすく、見易く、かつ発表時間に見合って適切に作成されているか。c)研究のねらい:研究の背景と目的、先行研究との関係、研究の新規性あるいは有用性が明確になっているか。d)論理構成の合理性:研究方法が適切であるか、適切な文献資料、データに基づいて議論が進められているか。考察・結論は妥当か。e)質疑応答:質問等に対し、的確な応答・議論がなされたか。活発な討論がなされたか。2016年度審査員:2016年度常任幹事および幹事(第44回構造活性相関シンポジウム参加者)<受賞者コメント>KO-04氏名前田巌(まえだいわお)所属東京大学大学院工学系研究科演題Visualizationofchemicalspaceandproteinspaceconsideringcompound-proteininteraction.この度は、第44回構造活性相関シンポジウム優秀発表賞を頂きましたこと、心より光栄に存じます。ご評価いただいた先生方、並びに日本薬学会構造活性相関部会の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、本研究を進めるにあたりご指導を賜り、研究、研究外含め様々な場面で支えて頂きました船津公人教授、金子弘昌助教、そして東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻船津研究室の皆様に心より感謝申し上げます。本研究の主題である定量的構造活性相関は、薬学、化学および統計学の融合分野であり、それぞれの立場を理解し、積極的に分野間のコミュニケーションを取ることが求められます。先の口頭発表においては、異なる見地に立つ方々より多くの重要なご意見を頂きました。これらを可能な限り吸収し、今後の研究に組み込んでゆく所存です。発表の場でもご指摘頂いた通り、本研究で取り組む活性空間の包括的なモデリング、及び特定の活性を持つ化学構造の探索は非常に挑戦的な課題です。今回このような栄誉ある形で評価され、有り難く思うと同時に、研究をより発展させ、実用的なものとする志を強くいたしました。今後もご指導のほど、よろしくお願いいたします。KP-07氏名吉田智喜(よしだともき)所属北里大学薬学部演題InteractionanalysesofCDK2withitsinhibitorsbyFMOcalculationandPLSregression.この度は、第44回構造活性相関シンポジウムの優秀発表賞に選んで頂きましたこと、大変光栄に存じます。審査をご担当されました先生方、そして日本薬学会構造活性相関部会の先生方に厚く御礼申し上げます。本研究は、フラグメント分子軌道(FMO)法によって計算されるフラグメント単位のエネルギーを記述子とした新規構造活性相関解析手法の開発研究を目指したものです。FMO法とPLS回帰を組合せた解析手法は、構造とエネルギーによる物理化学的解釈、リガンドの生物学的活性の定量的予測、活性向上に活用すべきアミノ酸残基と相互作用の同定が可能であるため、創薬への応用が期待できます。本発表では、従来用いていたリガンド−アミノ酸残基間のフラグメントペア相互作用エネルギーではなく、構造変化と脱溶媒和の効果を考慮したフラグメント結合エネルギーを記述子として利用することで、得られたPLS回帰モデルの阻害活性の予測性能が向上し、同定された活性向上に活用すべきアミノ酸残基も、より妥当なものとなることを示しました。本研究を進めるにあたってご指導を賜りました広野修一教授ならびに北里大学薬学部創薬物理化学教室の皆様に心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みとして、今後も創薬に役立つ研究に発展できるよう精進を重ねて参りたいと存じます。この度は本当にありがとうございました。KO-04Visualizationofchemicalspaceandproteinspaceconsideringcompound-proteininteraction○IwaoMAEDA,HiromasaKANEKO,KimitoFUNATSU(SchoolofEngineering,TheUniversityofTokyo)1.IntroductionGprotein-coupledreceptors(GPCRs)arethelargestfamilyofmembraneproteinsandmediatemanycellularresponses1.AsGPCRsarerelatedtomanydiseases,theyareoftenfocusedastargetsfordrugdesign.AllGPCRshaveseven-transmembranedomains,inwhichligandbindingsitesexist2.TherelationshipsbetweenproteinsincludingGPCRsandtheirligandsarecalledcompound-proteininteraction(CPI)3.CPIisanimportantconceptfordrugdesign.However,systematicunderstandingofCPIbasedonexperimentsisnearlyimpossiblebecausethenumberofcompoundsistoolarge4toexamineCPIexhaustively,andtherearemanyorphanGPCRsfromwhichnoknowledgecannotbeobtained.Therefore,predictionofCPIusingstatisticalmodelisperformed3,5,6.Instatisticalprediction,apredictionmodelisconstructedwithknownactivitydata.Thenacompound-proteinpairwithunknownactivityisinputandpredictedactivityvalueisoutput.However,therearesomedifficultieswhenthepredictionofCPIisusedindrugdesign.First,sinceapredictionmodelisdifficulttosolveinversely,itishardtoobtainstructuresfromdesirableoutputvalue.Second,indrugdesign,activityagainstmultipleproteinsmustbeconsideredforpreventingsideeffects.ModelingCPIalonedoesnothelpdrugdesign.Inthisstudy,wemakedrugdesignmoreefficientbyvisualizationofbothchemicalspaceandproteinspace.Theactivityprofileinchemicalspaceisobtainedbyvisualizationofchemicalspaceordescriptorspaceofchemicalstructures.Then,efficientsearchofchemicalstructureswillbeachievedbydecidingthetargetpointortheareainchemicalspacebasedonactivityvalue.Furthermore,theactivityprofileofanyproteinsagainstcompoundscanbeobtainedbyvisualizationofproteinspaceordescriptorspaceofproteins.Activityoforphanproteinsalsocanbepredictediftheirdescriptorscanbecalculated.Then,visualizationofproteinspaceenablesdrugdesigntoconsidersideeffects.Visualizationofchemicalspaceandproteinspacewillimprovedrugdesign.However,thereisnomethodforthesimultaneousvisualization.Inthisstudy,wedevelopnewmethodforthevisualizationofbothchemicalspaceandproteinspaceconsideringCPI,andproposeefficientdrugdesign.2.MethodForvisualizationofchemicalspaceandproteinspace,weproposemulti-inputcounterpropagationneuralnetwork(MICPNN),anextensionmethodofself-organizingmap(SOM)andcounterpropagationneuralnetwork(CPNN).WealsodevelopthemethodofconductingdrugdesignusingMICPNN.2.1Self-organizingmapSelf-organizingmap(SOM)7,akindofneuralnetwork,isanunsuperviseddimension-reductionmethodformappinghigh-dimensionaldatatolow-dimensionalmap.OnSOM,sampleswhicharesimilarindescriptorspaceareprojectedtoareaclosetoeachother.2.2CounterpropagationneuralnetworkCounterpropagationneuralnetwork(CPNN)8isasuperviseddimension-reductionmethoddevelopedfromSOM.InCPNN,twomapswhosesizearethesame,calledinputmapandoutputmap,aretrainedsimultaneously.InputmapisthesameasSOM,andoutputmapexpressestheprofileofobjectivevariablesoninputmap.WhenCPNNisusedforactivitymodeling(descriptorsofcompoundsareexplanatoryvariablesandactivityvaluesofcompoundsareobjectivevariables),amapofchemicalspaceandamapofactivityprofileareobtainedatthesametime.2.3Multi-inputcounterpropagationneuralnetworkTheaimofthisresearchisvisualizationofthefeatureofactivityagainstbothchemicalspaceandproteinspace.WeextendCPNNtomulti-inputsandsingle-outputsystem.Theproposedmethodisnamedmulti-inputcounterpropagationneuralnetwork(MICPNN).TheconceptofMICPNNisshowninFig.1.MICPNNhastwoinputmaps,chemicalmapandproteinmap.ChemicalmapandproteinmapareSOMsprojectedfromdescriptorspaceofcompoundsandthatofproteinsrespectively.Activitydataexistsbetweencompoundsandproteins.Afterchemicalmapandproteinmaparetrained,activitymap,correspondingtooutputmapinCPNN,istrained.Activitymaphasfourdimensions.Twodimensionscorrespondtochemicalmapandtheothertwodimensionscorrespondtoproteinmap.InFig.1,axesinactivitymapcorrespondtoaxesinchemicalmapandproteinmapwhosecolorsarethesameasthoseofactivitymap.Chemicalmapandchemicalmap-sideofactivitymapcorrespondinputmapandoutputmapinCPNN,respectively.Proteinmapandproteinmap-sideofactivitymapcorrespondinthesameway.Fig.1ConceptofMICPNNThealgorithmoftrainingactivitymapisshownasfollows:I.Projectacompound-proteinpairtoacoordinateonchemicalmapandacoordinateonproteinmap.II.Combinetwocoordinatesintothecoordinateofactivitymap.III.Updateactivitymaparoundthecoordinatebythecorrespondingactivityvalue.OnestepmeansⅠ,ⅡandⅢforallsamples.Thestepisrepeatedmanytimestoexpressthecharacteristicsofthedataset.ByusingconstructedMICPNNmodel,activityprofileofchemicalspaceagainstanyproteincanbeobtainedasatwo-dimensionalmap.WhendescriptorsofaproteinareinputtoMICPNNmodel,thecoordinateoftheproteinonproteinmapisdecided.Then,proteinmap-sideofactivitymapisassigned,andremainingchemicalmap-sideofactivitymapisobtainedastwo-dimensionalactivityprofileofchemicalspaceagainstinputprotein.Activityprofilecanbeoutputforanyproteinincludingorphanproteinwhosedescriptorsareavailable.Inthesameway,activityprofileofproteinspaceagainstanychemicalstructurecanbeobtained,andwecanexaminewhetherafocusingchemicalstructurehasdesirableactivityornot.2.4ConvergencejudgingWhenweuseSOM,CPNNandMICPNN,thenumberoflearningstepsisimportantparametertoextractthefeaturesofdataappropriately.Toomanylearningstepsoftencauseoverfitting.Inthisstudy,wepreparedatasetforupdatingmaps(trainingpairs),anddatasetforvalidatingmaps(validationpairs).Learningofmaps(chemicalmap,proteinmap,andactivitymap)isstoppedwhenevaluationindexofmapsbecomesextremevalueafter200steps.Accuracyrateandrootmeansquarederror(RMSE)betweenoriginaldataandinverselyprojecteddataareusedasevaluationindexesofchemicalmapandproteinmap,respectively.Accuracyrateispercentageofmatchingdescriptorsbetweenoriginaldataandinverselyprojecteddata.RMSE(rootmeansquarederror)isnormalizederrorbetweenoriginaldataandinverselyprojecteddata.,R2isusedasevaluationindexofactivitymap.R2iscoefficientofdeterminationbetweenactualactivityandestimatedactivity.2.2DrugdesignThewaytosearchchemicalstructureswithdesirableactivitiesusingMICPNNisshownasfollows:A)ConstructMICPNNmodelusingknowncompound-proteinpairs.B)InputdescriptorvaluesofatargetproteintoMICPNNmodel,andobtainactivityprofileofchemicalmap.C)Determinetheselectedcoordinatesofchemicalmapfromtheconditionofactivity.D)ExecuteB)andC)foreachtargetprotein,anddeterminetheobjectivecoordinatesasaproductsetoftheeachselectedcoordinatewhenweconsidertwoormoretargetproteins.E)Obtainchemicaldescriptorsfromobjectivecoordinatesofchemicalmap.F)Searchchemicalstructuresfromchemicaldescriptors,bythescreeningofchemicaldatabaseorchemicalstructuregeneration.3.Results&DiscussionToverifytheeffectivenessoftheproposedmethodweconductedacasestudyofactivitymodelingandchemicalstructuresearch.3.1DatasetWeperformedMICPNNanalysisforGPCRclassAfamily.CPIdatasetwasretrievedfromGPCRSARfariinChEMBLdatabase9,and48926compound-proteinpairswiththeiraffinityvalues(Ki,theinhibitionconstant)including124proteinsand29211compoundsareobtained.20000pairswererandomlychosen,andtheyweresplitinto10000trainingpairsand10000validationpairs.Aschemicaldescriptors,ExtendedConnectivityFingerprint(ECFP)10calculatedbyDragon711wereused.Fingerprintswithmissingvalueswereexcluded.Fingerprintsweredeletedif80percentoftheirvaluesarethesameintrainingcompounds.Oneoftwofingerprintswhosecorrelationcoefficientwasgreaterthan0.8wasexcluded.Then,152fingerprintsremained.TheproteindescriptorswerecalculatedwithProtDCal12.WeusedsequencesonlyinbindingpocketsofproteinsretrievedfromGPCRdb13,14.Thereductionofdescriptorswasperformedinthesamewayaschemicaldescriptors,and49descriptorsremained.pKi(-logKi)wasusedasoutputvalue.3.2ParametersettingsSizeofchemicalmapandthatofproteinmapwere100×100and15×15respectively.Learningratewas0.5.Neighborhoodfunctionwastriangle.Initialweightofchemicalmapandproteinmapweredeterminedbasedontheloadingvectorofprincipalcomponentsanalysis(PCA).3.3ActivitymodelingTheresultofactivitymodelingisshowninTable1andTable2.RMSEinTable2isnormalizederrorbetweenactualactivityandestimatedactivity.AsshowninTable1,mappingaccuracywerehighforbothtrainingpairsandvalidationpairs.MICPNNcouldreducedimensionsofchemicalspaceandproteinspace,preservingmostofinformation.However,inTable2RMSEofvalidationpairswashigherthantrainingpairs.Predictionaccuracyofvalidationpairsdecreasedcomparedtotrainingdata.Sincethesizeofdatasetwassmall,MICPNNmodelcouldnotlearnthecharacteristicsofactivityappropriatelyandoverfitedtrainingpairs.Table1MappingaccuracyofMICPNNmodelChemicalmapProteinmapAccuracyrateRMSETrainingpairs0.97820.1056Validationpairs0.93490.1080Table2PredictionaccuracyofMICPNNmodelR2RMSETrainingpairs0.80160.5681Validationpairs0.41230.98353.4ChemicalstructuresearchWesethistaminereceptorH1(HRH1)15asatargetproteinforchemicalstructuresearch.HRH1belongstoGPCRclassAfamilyandexistsinanorganismsuchassmoothmuscle,vascularendothelialcells,andcentralnervoussystem.HistaminecontractssmoothmusclesviaHRH1,andalargeamountofreleaseofhistaminecausessymptomssuchasabnormalityofairwayfunctionandatopicdermatitis16.HRH1antagonistsareusedfordrugssuchasanti-allergydrugs,bronchodilators,andanti‐nauseadrugs.Furthermore,mostoffirst-generationHRH1antagonistshaveaffinitytomuscarinicacetylcholinereceptors,andcauseanticholinergiceffects17suchasdizzinessanddrymouth18.WesearchedcompoundswhichhavehighactivityvalueagainstHRH1andlowactivityvalueagainstmuscarinicacetylcholinereceptors.Muscarinicacetylcholinereceptorm1(CHRM1)wasselectedasarepresentative.ActivityprofilesonchemicalmapagainstHRH1andCHRM1areshownasheatmapsinFig.2andFig.3.ColorsonheatmapsmeanpKivalue.WesetthethresholdofpKiasgreaterthan8.0againstHRH1andsmallerthan5.0againstCHRM1.Then15coordinatesinchemicalmapwhichmetbothtwoconditionswereobtained.TargetvaluesofECFPwereobtainedfromthecoordinates.Then,compoundswhosefingerprintsmatchedthetargetswerecalculatedfrom131450compoundsinGPCRSARfariwhichwerenotusedinMICPNNmodeling.Examplesoftop10compoundsareshowninFig.4.Fig.2ActivityprofileagainstHRH1.Theblackpoint(3,39)andthewhitepoint(8,50)indicatethecoordinatesofchlorpheniramineandketotifenfumarate,respectively.Fig.3ActivityprofileagainstCHRM1.Theblackpoint(3,39)andthewhitepoint(8,50)indicatethecoordinatesofchlorpheniramineandketotifenfumarate,respectively.Fig.4StructuresofselectedcompoundsForvalidatingthischemicalstructuresearch,twoknownHRH1antagonistswereinputtoMICPNNmodel.Oneantagonistwaschlorpheniramine(seeFig.5),oneofthefirst-generationHRH1antagonistsandknowntohaveaffinitytomuscarinicacetylcholinereceptors19.WhenchlorpheniraminewasinputtoMICPNNmodel,thedestinationcoordinateofchemicalmapwasthepoint(3,39)onchemicalmapsinFig.2andFig.3.ThepredictedpKiare7.87againstHRH1and6.26againstCHRM1.ThismeansthatchlorpheniramineexistsinrelativelyhighactivityareabothagainstHRH1andCHRM1.TheobservedpKiispresentonlyagainstHRH1inGPCRSARfari,andthevalueis8.15,whichissimilartopredictedpKi.Fig.5StructureofchlorpheniramineTheotherantagonistwasketotifenfumarate(seeFig.6),oneofthesecond-generationHRH1antagonists.Thedestinationcoordinateofketotifenfumaratewas(8,50)onchemicalmapsinFig.2andFig.3.ThepredictedpKiare8.09againstHRH1and5.62againstCHRM1.Unlikechlorpheniramine,ketotifenfumarateexistsinhighactivityareaagainstHRH1andinrelativelylowactivityareaagainstCHRM1.TheobservedpKiispresentonlyagainstHRH1inGPCRSARfari,andthevalueis9.46,whichisalsohigherthan8.0aspredictedpKi.Fig.6StructureofketotifenfumarateItwasconfirmedthatcompoundsweremappedtolocationsthatreflectthefeaturesofeachactivity.MICPNNmodelcouldvisualizechemicalspaceconsideringofCPI.4.ConclusionTovisualizebothchemicalspaceandproteinspace,weproposedMICPNNwhichisthemodificationofCPNNtomulti-inputsandsingle-outputsystem.Precisedimensionreductionandactivitymodelingwereachievedthroughourcasestudy.EfficientchemicalstructuresearchcanberealizedsinceMICPNNmodelderiveschemicaldescriptorseasilyfromdesiredactivityconditions.Structuregenerationmethod20canbealsoutilizedtoobtaindesirablechemicalstructuresalthoughchemicalstructuresweresearchedfromcompounddatabaseinthiscasestudy.EffectivedrugdesignwillbeachievedbyusingMICPNN.5.Reference1.Rosenbaum,D.M.,Rasmussen,S.G.F.&Kobilka,B.K.Nature459,356–363(2009).2.Venkatakrishnan,A.J.etal.Nature494,185–194(2013).3.Brown,J.B.,Niijima,S.&Okuno,Y.Mol.Inform.32,906–921(2013).4.Bohacek,R.S.,Mcmartin,C.&Guida,W.C.Med.Res.Rev.16,3–50(1996).5.Tabei,Y.&Yamanishi,Y.BMCSyst.Biol.7,1–13(2013).6.Liu,H.,Sun,J.,Guan,J.,Zheng,J.&Zhou,S.Bioinformatics31,221–229(2015).7.Kohonen,T.Proc.IEEE78,1464–1480(1990).8.Hecht-nielsen,R.Appl.Opt.26,4979–4984(1987).9.Gaulton,A.etal.NucleicAcidsRes.42,1083–1090(2014).10.Rogers,D.&Hahn,M.J.Chem.Inf.Model.50,742–754(2010).11.Srl,K.http://chm.kode-solutions.net(2016).12.Ruiz-Blanco,Y.B.,Paz,W.,Green,J.&Marrero-Ponce,Y.BMCBioinform.16,1–16(2015).13.Fredriksson,R.,Lagerström,M.C.,Lundin,L.-G.&Schiöth,H.B.Mol.Pharmacol.63,1256–1272(2003).14.Isberg,V.etal.NucleicAcidsRes.44,356–364(2015).15.Thurmond,R.L.,Gelfand,E.W.&Dunford,P.J.NatRevDrugDiscov7,41–53(2008).16.Stojković,N.,Cekić,S.,Ristov,M.&Ristić,M.ACTAFac.MEDICAENAISSENSIS32,7–22(2015).17.Church,M.K.etal.AllergyEur.J.AllergyClin.Immunol.65,459–466(2010).18.Rudolph,J.L.,Salow,M.J.,Angelini,M.C.&Mcglinchey,R.E.Arch.Intern.Med.168,508–513(2008).19.Orzechowski,R.F.,Currie,D.S.&Valancius,C.A.Eur.J.Pharmacol.506,257–264(2005).20.Mishima,K.,Kaneko,H.&Funatsu,K.Mol.Inform.33,779–789(2014).KP-07InteractionanalysesofCDK2withitsinhibitorsbyFMOcalculationandPLSregression○TomokiYOSHIDA,ShuichiHIRONO(SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity)1.IntroductionThefragmentmolecularorbital(FMO)method1isafragment-basedapproachtocalculatetheelectronicstructureofhugemolecularsystemsquantummechanically.ThebiggestadvantageoftheFMOmethodindrugdiscoveryisitsabilitytocalculateinteractionenergiesbetweenaligandandeachaminoacidresidueofaprotein-ligandcomplex.Sinceinour3D-QSARapproach,theinteractionenergiesaredirectlyusedasexplanatoryvariablestoconstructPLSregressionmodel,thefinalmodelcannotonlyprotein.AllgeometrieswerepreparedbyenergyminimizationusingMM-GBSAtheory(VSGBsolvationmodelwithOPLS3forcefield)implementedinPrime(Schrödinger,LLC).Theinitial16ligand/CDK2complexstructuresweredownloadedfromthePDBdatabase.2.2PLSregression3Forthe16inhibitors(Fig.2),inhibitionconstantKiareknown.TwoPLSmodelsforpredictingexperimentalpKi(=−log10Ki)werecreated:predictbioactivityofligandsquantitativelybutalsotheimportantresidueswhichshouldbefocusedto[modelA]usesinterILasexplanatoryvariablesanddeveloporsearchpotentligandsfromthePLS[modelB]uses{Ebind,Ebind}asexplanatoryILregressioncoefficients.Recently,thewaytocalculatefragmentbindingenergiesbyincludingdeformationanddesolvationcontributiontotheinteractionenergiesintheframeworkofFMOmethod2.Inthisstudy,weappliedour3D-QSARapproachtoCDK2inhibitorstoextractinformationaboutimportantresidues.Dependingonwhatvaluesareusedasexplanatoryvariables,twoPLSmodelsarecreatedandcompared,oneusingtheinteractionenergiesbetweenaligand(L)andI-thaminoacidfragment,Einter,andtheotherusingthebindingenergiesofI-thaminoacidfragmentandaligand(L){Ebind,variables.Ofthe16inhibitors,3inhibitor{5,10,16}werechosenasthetestsetandtheotherswerechosenasthetrainingsettoconstructthePLSmodels.Forthebothmodels,thenumberofPLScomponentsweredeterminedtobe3,bymaximizingthepredictivepower(R2value)ofthemodelagainstthetestset.Ebind}.2.Method2.1FMOcalculationTheFMOcalculationsof16ligand/CDK2complexstructures(Fig.1)wereperformedatthelevelofFMO2-RHF/D/PCM<1>/STO-3GandtheinteractionFig.1Oneexampleofligand/CDK2complexstructure:inhibitor1/CDK2(PDBID:2XMY)energiesinterILwereobtained.ThetotalenergyofisolatedCDK2proteinandisolated16ligands(Fig.2)werealsocalculatedatthecorrespondingleveloftheoryandthenthebindingenergies{Ebind,Ebind}wereobtainedinaccordancewithILthepaperbyFedorovandKitaura2.Here,theEbindisasumofinterILandtheenergychangeofI-thaminoacidfragmentuponligandbinding.TheEbindistheenergydifferenceofliganduponbinding.ThesumofEbindandEbindisFig.2StructuresofinhibitorsIILthebindingenergybetweentheligandtothe3.Results&DiscussionTheresultofPLSregressionisshowninFig.3.BothmodelsgivegoodpredictionofexperimentalpKi.TheR2valuesforthemodelAandthemodelBare0.90and0.94,respectively.Thereisnobigdifferenceinthepredictivepowerbetweenthetwoapproaches.sidechainorchargedresiduessuchasLys,Arg,Asp,Gluappeartobelowered(Fig.4).Asaresult,contributionsofneutralresiduessuchasHis84arehighlighted.Fig.4PLSregressioncoefficientsFig.3ResultofPLSregressionFig4.showsthePLSregressioncoefficientsfromthetwomodels.InthemodelA,importantresiduesthatcontributetopKiseemtobeGlu81andLys89.InthemodelB,however,theimportantresidueispredictedtobeHis84andcontributionfromliganditselffoundtobenotignorable.Inourcomplexstructures,allinhibitorshaveahydrogenbondbetweenaligandandthemainchaincarbonylgroupofLeu83,whichistreatedasHis84fragmentintheFMOcalculationlikeFig.5.ThisinteractionishighlyconservedformostCDK2inhibitorsandregardedtobenecessaryinteractionasCDK2inhibitors.Thus,theresultthatHis84fragmentisthemostimportantfragmentismorereasonable.ThebindingenergiesofmodelBincludedeformationanddesolvationcontributions.Bytakingintoaccountthosecontributions,importanceoflongerFig.5Interactionofinhibitor14.ConclusionBothmodelsyieldedgoodperformanceinpredictingexperimentalbioactivity,however,thereweredifferencesintheimportantresiduesextracted.Themodelusingthebindingenergiesprovidedmoreacceptableresult:theinteractionwithHis84fragmentcontributeswelltothepotencyofCDK2inhibitors.5.Reference1.Kitauraetal.,Chem.Phys.Lett.312,319-324(1999).2.FedorovandKitaura,J.Phys.Chem.A120,2218-2231(2016).3.Woldetal.,Chemom.Intell.Lab.Sys.58,109-130(2001)./////Activities/////第44回構造活性相関シンポジウム開催報告日時:平成28年11月16日(水)-17日(木)会場:京都大学芝蘭会館(〒606-8315京都市左京区吉田近衛町京都大学医学部構内)主催:日本薬学会構造活性相関部会・農薬デザイン研究会後援:日本化学会,日本農芸化学会,日本分析化学会11月16日(水)-17日(木),紅葉真っ盛りの京都(京都大学芝蘭会館)において,第44回構造活性相関シンポジウムを開催したところ,招待者と実行委員などを含めて約250名の参加をいただきました.ポスターとネームカードには紅葉の金閣寺,要旨の色も紅葉に近いものにしました.構造活性相関シンポジウムでは,医薬・農薬を対象にしていますが,どちらかというと医薬研究に関する発表が中心で,参加者の大半も医薬関連企業からであります.今回は,構造活性相関シンポジウムにおいて農薬の分子設計に関する話題を増やすこと,農薬開発研究においても,医薬研究で盛んに用いられている最先端の技術を取り入れてもらうことを目的として,第31回農薬デザイン研究会との合同開催にいたしました.農薬デザイン研究会も毎年開催されていて,ほぼ同じ頃に開催しております.昨年第30回を京都で開催いたしました.これまでは農薬デザイン研究会は,合成研究に関する発表が中心でありました.今回は第31回で,新たな一歩を踏み出すということで,薬学分野での分子設計に触れてもらい,農薬開発にも積極的に取り入れてもらうことを目的のひとつとしました.逆に,合成に関する研究発表がすくなくなってきた構造活性相関シンポジウムに農薬デザイン研究会側から合成研究の話題を提供してもらうことにしました.農薬デザイン研究会では,その都度スローガンを掲げているが,今回は『天然物化学と構造活性相関・・分子設計の今』ということになりました.Billas博士の基調講演ポスター発表特別講演を含めて,9名の先生をご招待し,講演を賜りました.基調講演としては結晶構造解析の分野で世界をリードしているフランス・ストラスブルグの研究所IGBMCのIsabelleBillas博士に,核内受容体の結晶構造解析に関する話題提供をお願いしました.招待講演には,バイオインフォマティックス,コンピューター支援の薬物設計,薬物動態,天然物合成,分子動力学手法を用いた薬物-受容体相互作用解析など,様々な分野から国内の7名の著名な先生方に講演をお願いしました.さらに,構造活性相関シンポジウムを立ち上げられた京都大学名誉教授藤田稔夫先生が米寿を迎えられたことから,それを記念する英語でのセッションを設けました.第44回を京都で開催することができ,44という数字が米寿(88歳)のちょうど半分であったのは何かの巡り合わせかもしれません.そのセッションでは,オーストリアのウイーン大学のThierryLanger教授に講演をお願いしました.QSARの誕生から最近のドラッグデザインの手法までお話し頂きました.そのあと,藤田先生の構造活性相関研究に対する貢献に感謝するため,簡単な祝賀イベントを行い,藤田先生からも英語による謝辞を頂戴しました.一般講演としては口頭発表6件,ポスター発表48件(農薬デザイン研究会側のポスター20件)の申し込みがありました.今回のシンポジウムの特徴としては,国内のシンポジウムであるにも関わらず,講演要旨を英語で作成していただきました.また,ポスターとスライドもできる限り英語で作成していただくようにお願いしました.おそらく,本シンポジウムでははじめてのことであったと思いますが,ランチョンセミナーを両日に亘って開催しました.さらに,初日の夕方には,農薬デザイン研究会との合同懇親会を行いましたところ,約150名ものの参加があり,賑やかな懇親会となりました.懇親会(藤田先生音頭で乾杯)講演会場の様子次年度の構造活性相関シンポジウムは日本大学の飯島洋先生のお世話により平成29年11月29日‐30日に茨城県県南生涯学習センター(土浦)にて開催される予定です。詳細についてはHPなどでお知らせします。皆様のご参加、ご講演、ご討論により活発なシンポジウムとなりますよう、よろしくお願い致します。以下にシンポジウムの概要と講演演題と発表者(基調1題,特別1題、招待7題、一般口頭6題およびポスター28題)を掲載します。基調講演Astructuralviewofallostericcontroloftranscriptionbysteroidnuclearreceptors○IsabelleM.L.BILLAS,BrunoP.KLAHOLZ,DinoMORAS(IGBMC,CentreNationaldelaRechercheScientifique(CNRS),UMR7104,InstitutNationaldelaSantéetdelaRechercheMédicale(INSERM)U964,UniversitédeStrasbourg,Illkirch,67404,France)特別講演Computer-aidedmoleculardesign:FromQSARtopharmacophore-basedligandprofiling○ThierryLANGER(DepartmentofPharmaceuticalChemistry,UniversityofVienna,Althanstrasse14,1090Vienna,Austria)招待講演Supercomputerandbigdatadrivendrugdiscovery○YasushiOkuno(GraduateschoolofMedicine,KyotoUniversity)Computer-aideddrugdesignsoftwaremyPrestoforrationalstructure-guideddrugdevelopment○YoshifumiFUKUNISHI(NationalInstituteofAdvancedIndustrialScienceandTechnology&TechnologyResearchAssociationforNext-GenerationNaturalProductsChemistry)DevelopmentofanewQSARanalysismethodtostudydrug-druginteractionsofhumanABCtransporters:Applicationtodrugdiscoveryandcancertherapy○ToshihisaISHIKAWA1,2,HikaruSAITO1,HiroyukiHIRANO1(1TokyoInstituteofTechnology,2NGOPersonalizedMedicine&Healthcare)Totalsynthesisofhatchstimulatingagentsofcystnematodes○KeijiTANINO(FacultyofScience,HokkaidoUniversity)Synthesisofazadirachtin,aninsectantifeedant○NaokiMORI,HidenoriWATANABE(GraduateSchoolofAgriculturalandLifeSciences,TheUniversityofTokyo)Protein–ligandinteractionsstudiedbymolecularsimulations○TohruTERADA,YoshitakaMORIWAKI,TatsukiNEGAMI,KentaroSHIMIZU(GraduateSchoolofAgriculturalandLifeSciences,TheUniversityofTokyo)Proteindynamicsinvestigatedbyacombinationofmoleculardynamicssimulationsandsmall-anglex-rayscatteringexperiments○MitsunoriIKEGUCHI(GraduateSchoolofMedicalLifeScience,YokohamaCityUniversity)口頭発表Analysisoftheligand-receptorbindingforvariousmoltinghormoneagonistsusingmoleculardynamics○ShinriHoroiwa,MasahiroMiyashita,YoshiakiNakagawaandHisashiMiyagawa(GraduateSchoolofAgriculture,KyotoUniversity)Stereospecificinhibitionofnitricoxideproductioninmacrophagecellsbyflavanonols:Synthesisandthestructure-activityrelationship2○Wen-JunJIANG,TomokoTAKAMIYA,SusumuKITANAKA,HiroshiIIJIMA(SchoolofPharmacy,NihonUniversity)Anautomateddenovoliganddesignframeworkutilizingopensourcesoftware○RyukiKUDO,TomokoADACHI,HiroyukiYAMASAKI,YoshihikoNISHIBATA(SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity)Visualizationofchemicalspaceandproteinspaceconsideringcompound-proteininteraction○IwaoMAEDA,HiromasaKANEKO,KimitoFUNATSU(SchoolofEngineering,TheUniversityofTokyo)StructuresimilaritysearchusingthehierarchyofitsNTGs○TetsuoKATSURAGI,YoshimasaTAKAHASHI(DepartmentofComputerScienceandEngineering,ToyohashiUniversityofTechnology)Constructingpredictionmodelsofadversedrugreactionsusingmachinelearning○HiroakiMORIUCHI1,Yu-ShiTIAN2,HirotomoMORIWAKI1,SatoshiAOKI3,NobukiTAKAYAMA3,NorihitoKAWASHITA1,4,TakayukiHIBI2,TatsuyaTAKAGI1,4(1GraduateSchoolofPharmaceuticalSciences,OsakaUniversity,2GraduateSchoolofInformationScienceandTechnology,OsakaUniversity,3GraduateSchoolofScience,KobeUniversity,4ResearchInstituteforMicrobialDiseases,OsakaUniversity)ポスター発表Aquestfornovelchymaseinhibitorsby3Dpharmacophore-basedvirtualscreening○Shin-ichiroOZAWA,ShoichiISHIDA,MahoHABUKA,ShuichiHIRONO(SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity)Energy-basedanalysisandpredictionofpeptide-HLAinteractions○DaisukeKURODA,HiroakiGOUDA(DepartmentofAnalyticalandPhysicalChemistry,ShowaUniversitySchoolofPharmacy)Estimationsofselectivitiesofopioidagonistsusingthree3D-QSARmodelsbasedoneachalignmentofmoleculesdockedinto,,and-opioidreceptors○NoriyukiYAMAOTSU,ShuichiHIRONO(SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity)Acomputationalstudyofwater-assistedcyclizationmechanismofglutamateresidue○TomokiNAKAYOSHI1,ShuichiFUKUYOSHI1,OhgiTAKAHASHI2,AkifumiODA3,4(1DivisionofPharmaceuticalSciences,GraduateSchoolofMedical,PharmaceuticalandHealthSciences,KanazawaUniversity,FacultyofPharmaceuticalSciences,2TohokuMedicalandPharmaceuticalUniversity,3FacultyofPharmacy,MeijoUniversity,4InstituteforProteinresearch,OsakaUniversity)Threedimensionalstructuresofprimitiveproteinsgeneratedintheracemicaminoacidpool○AkifumiODA1,2,3,ShuichiFUKUYOSHI3,EijiKURIMOTO1(1FacultyofPharmacy,MeijoUniversity,2InstituteforProteinResearch,OsakaUniversity,3FacultyofPharmacy,InstituteofMedical,PharmaceuticalandHealthSciences,KanazawaUniversity)EvaluationofdockingprogramforcytochromeP450:acaseofMycobacteriumCYP121○MikiH.MAEDA(AdvancedAnalysisCenter,NationalAgricultureandFoodResearchOrganization)InteractionanalysesofCDK2withitsinhibitorsbyFMOcalculationandPLSregression○TomokiYOSHIDA,ShuichiHIRONO(SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity)Analysesofprotein–ligandinteractionofBACE1anditsligandsusingfragmentmolecularorbitalmethod○YujiHASHIMOTO1,NorihitoKAWASHITA1,2,HirotomoMORIWAKI1,Yu-ShiTIAN3,TatsuyaTAKAGI1,2(1GraduateSchoolofPharmaceuticalScience,2ResearchInstituteforMicrobialDiseases,3GraduateSchoolofInformationScienceandTechnology,OsakaUniversity)InsilicoanalysesofinteractionsbetweenhexosaminidaseAanditshighpotentligands◯IzumiNAKAGOME1,AtsushiKATO2,NoriyukiYAMAOTSU1,IsaoADACHI2,ShuichiHIRONO1(1KitasatoUniversity,SchoolofPharmacy,2DepartmentofHospitalPharmacy,UniversityofToyama)Developmentoftheprotein3Dfragmentanalysissystemfocusedonligandbindingloopregions○AkihiroHIRAMA,HiroakiKATO(ToyohashiUniversityofTechnology)Predictionofdetailedenzymefunctionsandidentificationofspecificitydeterminingresiduesbyrandomforestusinginformationaboutactivesitesandenzyme-ligandcomplexstructures○ChiokoNAGAO1,NozomiNAGANO2,KenjiMIZUGUCHI1(1NationalInstitutesofBiomedicalInnovation,HealthandNutrition,2NationalInstituteofAdvancedIndustrialScienceandTechnology)Predictionof3Dprotein-ligandinteractionsinenzymaticreactions○YoichiMURAKAMI1,4,SatoshiOMORI1,KengoKINOSHITA1,2,3(1GraduateSchoolofInformationSciences,TohokuUniversity,2InstituteofDevelopment,AgingandCancer,TohokuUniversity,3ThokuMedicalMegabankOrganization,4CenterforDrugDesignResearch,NationalInstitutesofBiomedicalInnovation,HealthandNutrition)Developmentofthequickfederatedsubstructuresearch(QFSS)methodforhugecompounddatabasebasedontheindexingofnovelsubstructurefingerprints…59○SeiichiKOBAYASHI,KinyaTODA,RyoichiKATAOKA,JunichiGOTO(RyokaSystemsInc.)Developmentofthecommonfragmentsetextractionsystemforcompound-proteinrelationshipstudies○YoshiyukiSATO,HiroakiKATO(ToyohashiUniversityofTechnology)Predictionofproteincomplexstructuresandinterfacialwaterpositionsbytemplate-basedmodelinginCAPRIround34○YasuomiKIYOTA,YudaiYAMAMOTO,MayukoTAKEDA-SHITAKA(Schoolofpharmacy,KitasatoUniversity)Synthesisoffluorinatedisoxazolinesand5-alkoxyisoxazolinesforabiologicalactivityevaluation○KazuyukiSATO,1GrahamSANDFORD,2NikoYANADA,1AtsushiTARUI,1AkiraANDO,1MasaakiOMOTE1(1FacultyofPharmaceuticalSciences,SetsunanUniversity,2DepartmentofChemistry,DurhamUniversity)AnalysisforassemblingmechanismofcoiledcoildomainsinyeastcargoreceptorEmp46p/47pandmodificationofpH-dependenceforthecomplexformation○KoichiKATO1,TakahisaFURUHASHI1,Eiji,KURIMOTO1,AkifumiODA1,2(1Facultyofpharmacy,MeijoUniversity,2Instituteforproteinresearch,OsakaUniversity)What’stheDifferencebetweenlysozymeand-lactalbumininstructureandfunction?Fromtheviewpointofmolecularevolution○ToshiakiTAURA,NaotoFUKUOKA,○TomoyaNOBUNAGA(FacultyofInformationScienceandTechnology,UniversityofAichiPrefecture)Evaluationofthestructuralfeaturesbetweenestrogenreceptoralphaandbetausingmoleculardynamicssimulations○KenichiroFUJII1,ShuichiFUKUYOSHI1,NoriyukiYAMAOTSU2,ShuichiHIRONO2,AkifumiODA3,4(1DivisionofPharmaceuticalSciences,GraduatedSchoolofMedical,PharmaceuticalandHealthSciences,KanazawaUniversity,2SchoolofPharmacy,KitasatoUniversity,3FacultyofPharmacy,MeijoUniversity,4InstituteforProteinResearch,OsakaUniversity4)Presumptionofamyloid-βaggregationmechanismbasedonthestructure-activityrelationshipsforaggregationinhibitionanddockingstudies○RihoTAGUCHI,TomohitoTAKAHASHI,SuguruKOSAKA,KiyotakaTOKURAKU,KojiUWAI(MuroranInstituteofTechnology)AcutetochronictoxicitypredictionmodelsforDaphniamagnaundertheQSAARFramework○AyakoFURUHAMA,TakehikoI.HAYASHI,NorihisaTATARAZAKO(CentreforHealthandEnvironmentalRiskResearch,NationalInstituteforEnvironmentalStudies)WhichP450:PredictingwhichcytochromeP450isoformsareinvolvedinthemetabolismofaxenobiotic○SumieTAJIMA2,MarinaTAKAHASHI2,JonathanTYZACK1,NicholasFOSTER1,PeterHUNT1,MatthewSEGALL1(1OptibriumLtd,2HulinksInc.)FishtoxicitypredictionofchemicalsusingTFS-PLSmethodinconjunctionwithActiveQSARmodeling○RyotaKIKUCHI,TetsuoKATSURAGI,YoshimasaTAKAHASHI(DepartmentofComputerScienceandEngineering,ToyohashiUniversityofTechnology)Fishtoxicitypredictionofchemicalsusingatomicfragmentmethod:refinementofthefragmentsandimprovementofthepredictionmodel○DaiFURUKAWA,TetsuoKATSURAGI,YoshimasaTAKAHASHI(ToyohashiUniversityofTechnology)RelationshipbetweenstructureandcellularuptakeofpVECpeptidesinplantcells○MayuHAYASHI,YurieHASHINO,MasahiroMIYASHITAandHisashiMIYAGAWA(GraduateSchoolofAgriculture,KyotoUniversity)Crystalstructureanalysisandinvestigationofthealternativematerialsoflonggu(FossiliaOssisMastodi)inherbalmedicineprescription○YuKUROZUMI,JunjiYAMAKAWA,KazukiOGURI,KyokoTAKAHASHI,MasayaKAWASE(OkayamaUniv.,OsakaUniv.,NagahamaBio-tecUniv.)Computationalstudyofisomerizationreactionrouteoftheasparticacid○ShuichiFUKUYOSHI1,TomokiNAKAYOSHI1,OhgiTAKAHASHI2,AkifumiODA3,4(1InstituteofMedical,PharmaceuticalandHealthSciences,KanazawaUniversity.2TohokuMedicalandPharmaceuticalUniversity.3FacultyofPharmacyMeijoUniversity.4InstituteforProteinResearch,OsakaUniversity)Eigenvectorofmolecularmatrixandatomicanvironmentofmolecule○KouheiMURAKAMI,TetsuoKATSURAGI,YoshimasaTAKAHASHI(ToyohashiUniversityoftechnology)/////Activities/////<会告>構造活性フォーラム2017「PPI阻害をターゲットとする中分子医薬開発戦略」主催:日本薬学会構造活性相関部会協賛:日本化学会、日本農芸化学会(申請中)会期:2017年6月16日(金)会場:日本薬学会長井記念館B2階長井記念ホール(〒150-0002東京都渋谷区渋谷2-12-15)フォーラム2017ホームページ:http://www.qsarj.org/forum2017/index.html開催趣旨:近年のオミックス研究の進展により、従来の単一創薬標的に対する創薬アプローチに加えて、生体内の機能発現に関与する多くの蛋白質間相互作用(PPI)を創薬の標的と捉える流れが加速している。PPIの界面は多くの場合、平坦で疎水的な環境にあり、低分子の阻害剤を見つけるのが困難な場合が多い。そこで中分子サイズ(分子量500以上)のdruggableなPPI阻害剤の探索に関心が集まっている。本フォーラムでは、相互作用界面の解析に欠かせない構造生物学や物理化学解析によるペプチドやアプタマーなどを含めた中分子の医薬品開発の戦略を議論したい。本フォーラムが、創薬研究に携わる研究者にとって自身の専門領域を超えたところでの種々の手法を取り込んだ学融研究が実りある成果に繋がることを期待するとともに、何がしかの研究のヒントになれば幸いである。プログラム:開催の挨拶古谷利夫(実行委員長、ペプチドリーム株式会社)講演1.「核酸アプタマーの構造解析と創薬への利用」中村義一(東京大学名誉教授・株式会社リボミック代表取締役社長)講演2.「“ゆらぐα-ヘリックス”を標的とした創薬」小田上剛直(株式会社PRISMBioLab研究開発部長)講演3.「物理化学解析を基盤とした蛋白質間相互作用阻害剤の開発」津本浩平(東京大学大学院工学系研究科教授)講演4.「特殊ペプチドがもつPPI中分子創薬に向けたポテンシャル」後藤佑樹(東京大学大学院理学系研究科准教授)講演5.「UndruggableからDruggableへ」舛屋圭一(ペプチドリーム株式会社取締役COO)パネルディスカッション「PPIを指向した中分子創薬の課題と展望」講演者全員、司会:古谷利夫(ペプチドリーム株式会社)参加登録および申込締切日:当日参加受付はありません。5月26日(金)までに、フォーラムホームページから事前参加登録をお願いいたします。参加登録後、5月31日(水)までに銀行口座振り込みをお願いいたします。参加費:(薬学会会員・非会員ともに)一般5,000円、学生無料懇親会:17時20分から、日本薬学会長井記念館B2階長井記念ホール前ロビー懇親会費:(薬学会会員・非会員とも)一般4,000円、学生1,000円問合先:構造活性フォーラム2017古谷利夫(実行委員長)〒153-8904東京都目黒区駒場4-6-1東京大学駒場リサーチキャンパスKOL棟M2階ペプチドリーム株式会社内Tel:03-6407-8481Fax:03-6407-8482E-mail:forum2017@qsarj.org/////Activities/////<会告>第45回構造活性相関シンポジウム主催:日本薬学会構造活性相関部会会期:2017年11月29日(水)—2017年11月30日(木)会場:茨城県県南生涯学習センターJR常磐線土浦駅徒歩1分〒300-0036茨城県土浦市大和町9-1ウララビル5階http://www.kennan.gakusyu.ibk.ed.jp/日程:11月29日(水)特別講演,記念講演,招待講演、ポスター発表(2分間の事前口頭発表あり),懇親会11月30日(木)招待講演,口頭発表、プレゼンテーションアワード授与式特別講演:11月29日(水)保木邦仁先生(東京電気通信大学)ゲーム評価関数の機械学習薬学会功労賞受賞記念講演:11月29日(水)藤田稔夫先生(京都大学名誉教授)SAR-omics—PolypharmacologyからProtein-baseddesignへの経験的アプローチ招待講演:11月29日(水)杉田有治先生(理化学研究所)大規模分子動力学による生命科学と創薬応用11月30日(木)黒川洵子先生(静岡県立大学薬学部)ヒトiPS細胞技術とinsilico技術を用いた薬物誘発性不整脈の予測白井宏樹先生(アステラス製薬株式会社)insilicomethodsforantibodydevelopability中谷昌央先生(株式会社ケイ・アイ研究所)水稲用除草剤ピリミスルファンに関する研究発表登録•参加申込など:発表申込締切日:8月18日(金)講演要旨締切日:9月29日(金)参加申込締切日:11月10日(金)参加登録費:[一般]8,000円、[学生]2,000円懇親会参加費:[一般]7,000円、[学生]3,000円問い合わせ先:〒274-8555千葉県船橋市習志野台7-7-1日本大学薬学部生体機能化学研究室内第45回構造活性相関シンポジウム実行委員会実行委員長飯島洋e-mail:sar2017@qsarj.orgURL:http://www.qsarj.org/45sympo/index.html部会役員人事2017(平成29)年度常任世話人2017/4/1現在部会長中川好秋(京都大院農学研究科)副部会長岡島伸之((株)CACクロア)副部会長本間光貴(理化学研究所)会計幹事前田美紀(農業•食品産業技術総合研究機構)庶務幹事竹田–志鷹真由子(北里大学薬学部)広報幹事広野修一(北里大学薬学部)SARNews編集長飯島洋(日本大学薬学部)ホームページ委員長高木達也(大阪大院薬学研究科)構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第32号をお届けいたします。Perspective/Retrospectiveでは生理活性核酸オリゴマーの研究を愛知工業大学の北出幸夫先生にご寄稿いただきました。ウイルス感染治療や予防を目標に、核酸誘導体を使いこなして、生体内の酵素(RNaseL)の活性化を目論むユニークな着眼です。CuttingEdgeでは昭和大学薬学部の田中信忠先生にRNaseLの構造研究をご紹介いただきました。アンキリンリピート構造がウイルス感染時の核酸(2,5-A)のセンサーとなることを証明できた一方、惜しくも全長の構造解析で先を越されたことなど、研究競争最前線を戦われたご経験も伝わって参りました。東京大学分子細胞生物学研究所の竹村和浩先生、北尾彰朗先生には、標的分子とリガンドの結合を評価するエネルギー表示法という手法について解説していただきました。本手法によりアンキリンリピートの機能について実験的に解析が難しい現象を計算科学的に裏付けておられます。ご多忙の中、快くご執筆下さいました先生方に深く感謝申し上げます。(編集委員会)SARNewsNo.32平成29年4月1日発行:日本薬学会構造活性相関部会長中川好秋SARNews編集委員会(委員長)飯島洋、小田晃司、河合健太郎、清田泰臣、田上宇乃、幸瞳*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。