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SARNews No.27

SARNews_27

構造活性相関部会・ニュースレター<16October,2014>SARNewsNo.27「目次」SARNews表紙ロゴマークについて高橋由雅・・・2/////Perspective/Retrospective/////理研におけるインシリコ創薬の取り組みkinase阻害剤設計を例に本間光貴・・・3/////CuttingEdge/////インシリコ創薬におけるFMO法と周辺基盤技術の進歩福澤薫・・・10カルボランを用いた新規アンドロゲン受容体拮抗薬の創製太田公規・・・18/////Activities/////く報告>構造活性フォーラム2014開催報告「困難化する医薬品開発の現状と将来」高木達也・・・25く会告>第42回構造活性相関シンポジウム・・・27SARNews表紙ロゴマークについて少し傾いたフレーム(四角形)は構造活性相関の世界を(Hansch-Fujita法をはじめ、パターン認識や量子化学計算など)異なる視点(角度)から眺めることの大切さを表現している。フレームの光と陰は、どんな手法も一つですべてを照らし出すことは困難であり、必ず「光」と「陰」のようにそれによって照らし出される部分とそれだけでは見えない部分があることを表している。フレーム内の文字は構造活性相関研究会(当部会の前身)の英語名(StructureActivityRelationshipsSocietyofJapan)をシンボライズしたものであり、未知の構造活性相関の世界が異なる色の光で照らしだされることを示している。また、少し傾いた四角形のフレームとそれを下方で水平に横切るタイトル文字の配置はアルファベットのQをイメージしている。(デザイン:高橋由雅)※SARNewsは構造活性相関研究に関する情報発信を目的とし、2001年10月に当部会の前身である構造活性相関研究会により発行が開始されました。表紙のロゴマークについては部会移行後も創刊当初のものを使用してきましたが、本号より、背景デザインはそのまま機関名部分のみを部会正式名称(英語)に改訂して引き続き利用することとなりました。(編集委員会)/////Perspective/Retrospective/////理研におけるインシリコ創薬の取り組みkinase阻害剤設計を例に理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター本間光貴はじめに戦後の高度経済成長と軌を同じくして1970年から1990年代初頭にかけて、日本の製薬企業における創薬は黄金期を迎えた。また、それと少し遅れる形で、日本のライフサイエンス分野の基礎研究投資も実を結び、Nature,Science,Cellなどの一流誌の論文掲載数は、欧米先進国と比べて遜色のないレベルまで向上している。しかし、その基礎研究の成果は必ずしも日本国内の医薬品開発に結びついてはおらず、1990年代以降、新薬の承認数が減少傾向にある。特に、NewEnglandJournalofMedicineやLancetなどの医学専門誌の日本からの論文掲載数は、欧米先進国よりも著しく少なく、最近では、中国などの新興国を下回る状況が続いている。米国においては、基礎研究を医薬品に結びつけるアカデミア発のバイオベンチャーが次々と誕生し、活発な創薬活動が繰り広げられ成果を挙げている[1]。一方、日本では、健全な創薬バイオベンチャー(特に臨床段階またはリード化合物まで進めることが可能なパイプラインベンチャー)が育っておらず、アカデミアの創薬シーズが、国内で医薬品に結びつかないばかりか、欧米のメガファーマに持っていかれる事例も見られる。このような国内の基礎研究と医薬品開発の間のギャップを埋めるために理化学研究所(理研)では、2010年に、旧藤沢薬品工業およびアステラス製薬においてタクロリムスの開発を主導した後藤俊男氏を迎え、創薬・医療技術基盤プログラムをスタートさせた。本稿では、理研における、それらのプログラムを通した創薬活動の現状と、先行している例として白血病治療薬を目指したkinase阻害剤設計の例について紹介する。理研創薬・医療技術基盤プログラム創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)は、日本発の革新的な医薬や医療技術の創出を目標にして、理研のライフサイエンス研究で培われた研究基盤を活用し、理研の各研究センターや大学等で見出されたシーズを取り上げ、医薬品・医療技術に結びつけることをミッションとしている。病院をもたない理研は臨床試験を実施する主体にはなれないことから、DMPが推進するテーマ・プロジェクトは、適切なタイミングで臨床試験以降の開発を担うベンチャー企業、製薬企業あるいは医療機関へ導出する必要があり、図1に示す3種類の出口戦略を設定している。図1.研究開発ステージと出口戦略Exit1は、生物学研究者による創薬標的発見段階での導出である。Exit1は、従来のアカデミア創薬においても試みられてきたが、技術的に難易度の高い創薬標的・細胞医療技術であったり、マーケットが小さい分野の場合も多く、スムーズに受け渡しができない場合が多かった。そこでDMPでは、リード化合物・抗体段階での導出(Exit2)と臨床試験の段階での導出(Exit3)を設定し、それらのステージまでDMP側で創薬展開できる態勢を骸備しつつある。理研は最先端の創薬関連基盤技術を持つ複数の研究センターを有する。各研究センターから、創薬の現場で実用的に実施できる技術を選定し、8つの創薬基盤ユニットを編成した(図2)。創薬基盤ユニットのメンバーは各テーマリーダー(TML)・プロジェクトリーダー(PL)のもとでテーマ・プロジェクトを推進する。因みに理研内にない技術基盤については外部機関との連携やアウトソーシングによってカバーしている。東京大学(東大)創薬オープンイノベーションセンターや産業技術総合研究所(産総研)とは化合物ライプラリーの提供、スクリーニング等の面で密接に連携している。また、臨床応用については大学の医学部や医療機関との連携を進めている。各創薬プロセスと創薬・医療技術基盤とは以下の関係にある。シード化合物を見いだすプロセスでは、ケミカルバンク基盤、シード化合物探索基盤(HTS)、創薬分子設計基盤、タンパク質解析(X線、NMR、生化学評価)基盤を設置している。リード創出プロセスおよびリード化合物最適化プロセスでは、タンパク質解析基盤、創薬化学基盤、創薬イメージング基盤を設置している。抗体医薬では抗体基盤が抗原タンパク質調製機能を持つタンパク質解析基盤と連携して研究を進めている[2]。先端計算科学基盤では、数年後の実用化を目指した次世代の技術開発を行っており、D.E.ShawResearchが開発したAntonに匹畝する分子動力学専用計算機(MD-GRAPE4)の実用化を進めている。創薬基盤を有する各研究センターは創薬以外の固有のミッションも持つので、研究センターとDMPとを縦横の関係とするマトリックスマネージメント体制の確吃が重要である。このようなマネージメントは製薬企業では一般的であるが、アカデミア研究機関では珍しい。また、DMPは後藤プログラムディレクターの下にポートフォリオマネージャー(テーマ・プロジェクトの採図2.DMPのマトリックスマネージメント択や推進を主導する)、技術統括マネージャー(技術基盤の強化を指導する)、プロジェクトリーダー(リードステージ以降のプロジェクトを統括する)、事業開発室(企業との交渉を担当する)、規制科学マネージャー(医薬品承認に向けた方針を指導する)、臨床開発マネージャー(臨床開発の進め方を指導する)を設けているが、彼らのほとんどは製薬企業において、臨床候補品を創出した経験のある人材であり、創薬の必要不可欠な各段階・各領域に経験のある人材をここまで配置していることも、DMPの大きな特徴である。創薬テーマ・プロジェクトの採択と推進テーマ・プロジェクトは、スクリーニング段階(S0,S1,S2,S3)、リード段階(L1,L2,L3)、臨床段階(P0,P1,P2,P3)の3カテゴリー、11段階に分かれ、S0から最終医薬品(または医療技術)を包含しうる特許を取得するL2までのステージを「テーマ」、開発候補品を選択したL3ステージ以降を「プロジェクト」と呼んでいる。テーマ・プロジェクトの勢集は、理研内研究センターや大学などの研究機関から推薦を受ける方法と、ホームページで公勢を行う方法とがある。公勢の場合の応勢資格は、理研研究者に限定されている(共同研究者の1人に理研研究者が入っていれば可。理研研究者が見つからない場合には、後述の創薬支援ネットワークの創薬ナビから申し込むことができる)。応勢されたテーマ・プロジェクトは、必要に応じて外部有識者を加えたDMP関係者による書面審査、面接審査が実施され、採択が決定される。テーマ・プロジェクトの選定ガイドラインとして、特に注目して審査すべき6項目〔疾患領域、作用機序、druggability、先行品情報、研究ステージ、研究リーダー]が定められている。疾患領域は、治療満足度、治療における薬剤の貢献度を求めた調査結果(日本ヒューマンサイエンス財団より)からアンメットメディカルニーズとしてアルツハイマー病や難治性がんなどの難病が取りあげられ、さらにアカデミア発創薬の観点から希少疾患やネグレクテッド・ディジーズも取りあげられている。また、理研の科学・技術が効果的に活用される、これまでにない治療方法やターゲットも重要である。例えば、iPS細胞などを利用した細胞治療や、これまでのアプローチでは困難とされていたタンパク質間相互作用ターゲットに対する低分子医薬品の開発などが含まれる。図3.テーマ・プロジェクトリストプログラム発足時の2010年4月には、理研内研究センターや大学など研究機関から推薦されたテーマ・プロジェクトから、アカデミア発創薬・医療技術の観点から22のテーマ・プロジェクトを採択した。その後、卒業、中止、新規テーマの採択を適宜行い、現在(2014年4月現在)は4つのプロジェクト、32のテーマを推進している。DMPが推進中のテーマ・プロジェクトはホームページに公開しており[2]、随時更新している。(図3)現在までの成果として、高橋政代PL(理研)らによるiPS細胞による網膜再生プロジェクトの臨床研究の開始の他、NKT細胞を用いたがん治療(谷口克PL(理研))、出血性副作用のない抗血栓薬(宮田敏男PL(東北大))、アルツハイマー治療薬(杉本八郎PL(ファルマエイト))が、ベンチャー企業や医療機関に導出された。また、低分子においてDMPが初期の探索から担当したテーマでは、後の3.1で述べる幹細胞を標的とした白血病治療薬(石川文彦TML(理研))などがあり、特許取得段階まで到達するテーマが出始めている。創薬支援ネットワーク、日本版NIHとの連携2013年5月、医薬基盤研究所創薬支援戦略室が設吃され、創薬支援ネットワーク構想が具体化した。このネットワークは2011年内閣府医療イノベーション推進室の初代室長である中村祐輔氏の創薬支援機構構想の提唱が端緒である。その後の紆余曲折を経て、創薬支援ネットワーク構想と名前を変え、省庁横断的な国家プロジェクトとして始動した。ネットワーク構築の主旨は「アカデミア発の創薬シーズを対象とした橋渡し機能を強化し基礎研究の成果を医薬品の実用化につなげるため、医薬基盤研究所が中心となって、理研及び産業技術総合研究所と連携しながら、大学・研究機関や関係府省で構成するネットワークを構築し、有望なシーズに対して切れ目のない支援を行う」ことである。DMPも創薬支援ネットワークも設吃趣旨を同じくしており、2014年度から、創薬支援ネットワークによって日本全体から採択された有望なテーマ・プロジェクトの推進のために基盤ユニットの提供などで密接に連携している。2015年度からは、独吃行政法人日本医療研究開発機構(日本版NIH)が吃ち上がり、そのもとで創薬支援ネットワークが力強く推進される予定であり、理研DMPもその一翼を担うことになる。インシリコ創薬を担う創薬分子設計基盤ユニットこれまで紹介してきたDMPの創薬活動において、インシリコによる医薬分子設計を担う基盤として、理研・ライフサイエンス技術基盤研究センター内に創薬分子設計基盤ユニットが新設され、インシリコスクリーニング・設計などの支援研究を行っている。インシリコスクリーニングを行う基盤技術としては、創薬の現場における実用性を重視して骸備を進めてきた。図4に示すように、半自動ドッキング条件最適化システムPALLAS[3],相互作用パターンに基づく機械学習活性予測システムMUSES[4],多面的リガンド探索システムLAILAPSなどを開発して運用している。PALLASは、タンパク質構造の動きや、ドッキングアルゴリズムを含む多くのドッキング条件を半自動的に検討し、目的のターゲットに結合し得る低分子化合物のドッキングに最適な条件を見出す手助けをする。得られた条件によって数十万ないしは数百万化合物に対してドッキングを行い、通常のドッキングスコアやX線構造で結構様式がわかっている化合物との共有体積などによって数千個程度まで絞り込み、さらにその後の絞り込みでは、相互作用記述子を用いた機械学習活性予測MUSESを使う場合もある。タンパク質構造や既知のリガンド情報が豊富な場合は、MUSESが効果的だが、情報が少ないターゲットの場合には利用が難しい。そのような場合の最後の絞り込みに利用できるように、3.2で述べるFMO-PBSA法を開発中である。LAILAPSは、単一ではなく、多くの観点からのリガンド探索法を組み合わせる手法であり、部分構造検索、2D/3Dの類似検索、2D/3Dの機械学習予測を組み合わせて、スコアを標準化して出力することができる。特に3D形状プロファイルによる機械学習予測法は、我々が新規に開発した手法である[5]。LAILAPSは、タンパク質構造が無い場合にも実施可能で短時間で計算でき、ヒット探索能力も大きいため、糖尿病モデルに対して薬効を示す世界初のアディポネクチン受容体活性化剤の発見等に貢献している[6]。また、データベースに関しては、市販化合物データベース、ChEMBL/PubChem等の公共データベース、合成容易化合物データベースを統合し、インシリコスクリーニング用に前処理した合計1億1千万化合物の統合データベースを骸備している。このデータベースは、重原子数、druglikeness、忌避構造、納期によって数百カテゴリーに分類されており、インシリコスクリーニングを行う際には、目的に応じてどの範囲を検索するか簡便な操作で選択することができる。図4.創薬分子設計基盤ユニットのインシリコスクリーニング技術HCK阻害剤のインシリコスクリーニングと設計急性骨髄性白血病は、初発の場合には既存の治療薬による寛解が可能な場合が多いが、骨髄中に白血病幹細胞が残っている場合があり、再発すると効果的な治療は困難である。理研の石川らは、白血病幹細胞と造血幹細胞の間の発現遺伝子の比較解析により、HCKを含むいくつかの遺伝子が白血病幹細胞において有意に発現レベルが上昇することを突き止めた[7]。この知見を受けて、理研DMPでは、2010年からHCKをターゲットとした白血病治療薬の探索研究を開始した。HCKは、SRCfamilyに属するkinaseであり、すでにタンパク質構造・既知阻害剤情報ともに豊富であり、それらの情報に基づいて、PALLASとLAILAPSによるインシリコスクリーニングを行った結果、東大の創薬オープンイノベーションセンターのライプラリー[8]から選択した化合物RK-9024466が、HCKに対してIC50:7.7nMの阻害活性を示した。(図5)HCKとRK-9024466の複合体構造を理研の横山らのグループが解析し、それに基づいた設計を行い、比較的迅速にIC50:0.43nMを持つRK-0020449を見出すことに成功した。RK-449は、白血病患者由来の幹細胞や、その幹細胞を増殖させ免疫不全マウスに移植した動物モデルにおいて高い効果を示し[9]、現在、臨床試験へ向けて開発を進めている。Pim1阻害剤におけるActivityCliffのFMO-PBSAによる活性予測Pim1はリンパ腫から発見されたSer/Thrkinaseであり、STATパスウェイの活性化等を通して白血病細胞等の増殖と生存において重要な働きをしている、急性骨髄性白血病の創薬ターゲットである。文部科学省ターゲットタンパク研究プログラムにおいて、理研の田仲らのグループが発案し、東大・長野らのグループとの共同研究によって阻害剤のインシリコスクリーニングとその図5.HCK阻害剤のインシリコ創薬後の誘導化展開を行った。その過程については、紙面の都合もあり詳しく述べないが、PALLASによって選択したドッキング条件によるインシリコスクリーニングによって、IC50:400nM程度の阻害剤を発見し[10]、その後の設計と合成によって1nM程度の阻害剤まで到達している[11]。このPim1の阻害剤設計において、構造の小さな変化によって予期しない大きな活性変化(いわゆるactivitycliff)を経験した。図6の左側に化合物の構造と活性を示すが、右翼の5-6縮環系の1個の炭素が窒素に変わることによって最大で200倍程度活性が低下している。6化合物のうち、4化合物は複合体のX線構造が解かれているが、ほとんど構造は同じであり、従来の分子力場に基づくMM-PBSAでは、logIC50とのR2が0.59と低い相関しか示さなかった。そこで、これらの複合体構造(及びX線構造の無い2化合物のモデル構造)をQM-MMによってエネルギー最適化計算し、FMOのIFIE(フラグメント間相互作用エネルギー)の合計値とMM-PBSAのPBSA項部分を合わせた値を計算し、logIC50との相関を見たところ、R2=0.92という高い相関を示した(論文投稿準備中)。本研究においては、タンパク質ーリガンド複合体の構造の品質が重要であった。X線構造そのものや、分子力場でエネルギー最適化した構造では、MM-PBSAでは負の相関、FMO-PBSAでもR2で0.3-0.5程度であり、今回のような構造変化の小さな化合物セットにおけるactivitycliffの予測では、特に構造の品質が重要であることが示唆された。しかし、まだ1ターゲットでの結果であり、データセットも小さいので、今後は複数の異なる種類のターゲットで10化合物以上のセットでの検証を繰り返す予定である。また、PB(Poisson-Boltzmann)項については、当研究室の渡湿らによってFMOによって計算する方法も開発済み[12]であるが、1個の計算値を得るためにFMO計算を何回か繰りかえす必要があり、計算時間が非常に長い。この部分の効率化等も行い、量子化学計算で構成されたFMO-PBSA法を完成させたい。図6.Pim1のActivityCliffのFMO-PBSAによる予測おわりに超分解能FMO構造決定法への期待アカデミア創薬におけるインシリコスクリーニング、設計の役割は非常に大きい。大手製薬企業のように物量によって阻害剤の探索・合成を行うことが困難であるため、低コストで大きなchemicalspaceを探索し、合成する化合物を絞り込むことは重要である。私たちの研究室では、実用的な技術(PALLAS,MUSES,LAILAPS)の開発とともに、次世代の最先端技術(FMO-PBSA)の開発にも取り組んでいる。特に精度の高い結合親和性予測では、従来の古典力場で作成したモデルを電子密度に適合させて決定するX線構造では不十分である。現在、日本大学の福澤、神戸大学の田中らとともに最初からFMOによって構造決定する手法(FMO超分解能構造決定法)を開発しており、エクサなどの次世代大規模計算機と連携すれば、PDBに登録されている全タンパク質構造の再決定も夢ではない。日本発の世界標準の構造解析手法に発展することを期待している。謝辞本稿の執筆にあたり、ご協力いただきました理研DMPの深見竹広様、保田真友子様、日本大学の福澤薫先生に御礼申し上げます。参考文献Robert,K.NatureReviewsDrugDiscovery,9,867-882(2010).http://www.riken.jp/research/labs/dmp/Sato,T.,Honma,T.etal.,BioorgMedChem,20,3756-67(2012).Sato,T.,Honma,T.etal.,JChemInfModel,50,170-85(2010).Sato,T.,Honma,T.etal.,JChemInfModel,52,1015-1026(2012).Okada-Iwabu,M.,Kadowaki,T.etal.,Nature,503,493-499(2013).Saito,Y.,Ishikawa,F.etal.,SciTranslMed,2,17ra9(2010).http://www.ocdd.u-tokyo.ac.jp/Saito,Y.,Ishikawa,F.etal.,SciTranslMed,5,181ra52(2013).Tsuganezawa,K.,Tanaka,A.etal.,JMolBiol,417,240-52(2012).Nakano,H.,Nagano,T.etal.,JMedChem,55,5151-64(2012).Watanabe,H.,Tanaka,S.etal.,ChemPhysLett,500,116-119(2010)./////CuttingEdge/////インシリコ創薬におけるFMO法と周辺基盤技術の進歩日本大学松戸歯学部・福澤薫はじめに1999年に北浦和夫教授らによって提案されたフラグメント分子軌道(FMO)法[1-4]は、この10年間で大きく発展し、生体高分子系の相互作用解析ツールとして定着しつつある。量子化学計算によってタンパク質やリガンド複合体全体の電子状態が得られるこの方法は、特に創薬分野においては早くからStructure-BasedDrugDesign(SBDD)への活用が期待され、製薬企業による利用も進んでいる[5-8]。FMO法に関しては、最近の日本化学会の情報化学部会誌に口回に渡って特集されていることからも注目度がうかがえる[9]。FMO法は、タンパク質をアミノ酸残基単位などのフラグメントに分割し、周辺のフラグメントからの環境静電ポテンシャル中でフラグメントのモノマーやダイマーの電子状態を解き、分子全体の電子状態を再構築する近似手法である。並列化効率がよく超並列計算機に向いておりかつ汎用性も高い。何よりも高速高精度な全電子計算手法であることに留まらず、分子間相互作用の概念を踏襲しているため化学的薗観に沿った情報が得られるのが最大の強みであろう。FMO法のための計算プログラムは複数あるが、本稿では我々の研究グループで開発中[10]のABINIT-MPによる創薬分野への展開について概説する。FMO法は相互作用の解析において極めて有用な方法であるが、可視化解析機能を充実させることでさらに有用性が増すため、専用可視化GUIであるBioStationViewerの開発も積極的に進めている。相互作用解析ツールとしてのFMO法FMO法では、分子を「フラグメント」に分割すること、そして「フラグメント間の相互作用」を解析できることが大きな特徴であり、それらとうまく付き合うことが大切である。「フラグメント」が相互作用の基本単位なので、注目したい相互作用が得られるような分割をしておくことで後の解析がやり易くなる。分割に際して精度が検証されているのは、sp3炭素をBondDetachedAtom(BDA)とした単結合での切断であることに注意し、それ以外の場合には検証してからの利用をお勧めする。通常は、タンパク質はアミノ酸単位で分割し、リガンドの低分子化合物は全体を1つのフラグメントとして表現すると良い計算精度の結果が得られる。化合物の分割やアミノ酸側鎖の分割については多体FMO法[11,12]が用いられる。IFIEとPIEDAフラグメント間の相互作用として最も簡便で良く用いられるのが、フラグメント間相互作用エネルギー(Inter-FragmentInteractionEnergy;IFIE、またはPair-InteractionEnergy;PIE)であり、これらは全エネルギーの算出と同時に得られる。受容体ーリガンド複合体に対するFMO計算は、IFIEをエネルギー指標としてリガンドー残基間あるいは残基同士の相互作用を定量的に評価することができるため、論理的なドラッグデザインに適している。一例として、図1に肺がんのターゲットであるEGFRチロシンキナーゼと阻害剤erlotinib(商品名タルセバ®)との複合体構造に対するFMO2-MP2/6-31G*の計算結果を示す。上左の吃体図では、IFIEの値と吃体構造上の関係を考察することができ、上右のIFIEmapでは、フラグメントの全組み合わせに対して得られるIFIE値を網羅できる上にdistancematrixと比較することで高次構造と相互作用の関連付けも可能である。つまりX線結晶構造解析等によって得られる吃体構造からは距離情報が明らかになり水素結合などの相互作用も予想することができるが、その結晶構造に対してFMO計算を行うことで定量的な相互作用情報を付加することができる。さらに、IFIEを4つのエネルギー成分(静電エネルギー;ES、交換反発エネルギー;EX、電荷移動エネルギー+高次項;CT+mix、分散エネルギー;DI)に分割する方法「PIEDA(Pair-InteractionEnergyDecompositionAnalysis)」が北浦・Fedorovらによって提案されている[13]。Erlotinibは疎水的な官能基を多く含み、キナーゼと水素結合しているのはキナゾリン環のピリミジン部分だけであり本数も少ないが、PIEDA解析から、水素結合に加えて電荷の移動を伴ったCH…O水素結合やCH/n相互作用によって相互作用が安定化していることが明らかになった。特に分散力を主成分としてリガンドと相互作用する残基が多数存在している(図1)。図1EGFRチロシンキナーゼとerlotinibとの相互作用解析。上左はIFIEの吃体可視化図であり、黄色で示すリガンドに対して各残基の相互作用の強さを赤青色の濃さで表している。上右はIFIEmapおよびdistancematrix、下はPIEDA解析[14]によるES、EX、CT+mix、DI各成分への分割を表す。エネルギーの単位はkcal/mol。多体FMO法とリガンド分割PIEDAによるエネルギー成分の分割を行うと、相互作用の性質がわかるためSBDDによる論理的な創薬に役吃つ。一方で、大きな化合物を幾つかのフラグメントに分割し、部分構造の相互作用を評価できると役吃つこともある。官能基単位の相互作用を評価する方法としては、いわゆるフラグメント化合物(Fragment-BasedDrugDesignにおけるフラグメント)のような官能基程度の小さい分子に分けてしまう方法と[6]、1つの化合物をFMO法のフラグメント分割処理で分ける方法がある[12]。後者の例として、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)とzanamivir(商品名リレンザ®)の相互作用においては、両性イオンであるリガンド全体をまとめるよりは機能部位ごとにフラグメント分割した方が、周囲のアミノ酸残基との相互作用を適切に評価できる。図2はzanamivirを4つの部分構造(1)~(4)に分割したFMO4-MP2計算結果である。負電荷を持つ(1)と正電荷を持つ(2)のフラグメントが周辺の荷電性アミノ酸残基と逆の安定化相互作用をしている様子や、中性フラグメントである(3)(4)と水素結合する周辺残基との間に局所的な安定相互作用がある様子を数値的に評価できる。このような情報は官能基のデザインに有用である。但し、より細かいフラグメントへの分割は計算精度を落とすことになる恐れがある。1つの対処法はこの例のように多体補正FMO計算[11]を用いることで、分割したリガンドの電子状態の乱れを補正し、化合物としての性質を損なうことなく解析することができる[12]。リガンド結合サイトのIFIEに関しては、sp3炭素での切断を行っていれば、大抵はFMO3補正で半定量的な値が得られることが経験的に確かめられている。-4040図2インフルエンザNAとzanamivirのFMO4-IFIE解析。色の表示は図1と同様(単位はkcal/mol)。相互作用解析の流れIFIEベースの相互作用解析には、他にもVISCANA[15]などの化合物クラスタリング手法もあるが、ABINIT-MPには軌道レベルでさらに詳細な解析をする手法が2つ実装されている。1つは水素結合等の電荷移動相互作用を扱うことができるCAFI[16]、もう1つはCH/やなどの分散相互作用を扱うFILM[17]である。上述のPIEDAの各成分のうち、CT項をCAFI、DI項をFILMによってより詳細に解析するというイメージになる(詳細な方法論については参考文献を参照されたい。また、あくまでも異なるフラグメント間の軌道相互作用であることに注意する)。これまでに出てきた解析手法を総合すると、図3に示すような解析の流れが見えてくる。①まずは通常のIFIE解析によって網羅的な解析を行い、リガンド結合に重要なアミノ酸を特定する。ここでフラグメント分割の精度もチェックする。必要に応じて多体FMO計算を取り入れる。②PIEDAによってIFIEのエネルギー成分を分解し、相互作用の性質を理解する。③特にCT、DI成分が重要な残基に関しては、CAFIやFILM解析を行い、官能基の軌道がどのような相互作用をしているのかを明らかにする。こうすることで、結合の重要な部分にフォーカスしていくことができる。尚、全てのプロセスにおいて指標となる数値が得られる。図3FMO法による相互作用解析の流れ。下に行くほど詳細な情報が得られる。FMO法を用いた構造精密化上述のように、受容体ーリガンドの複合体構造があれば、相互作用解析はほぼ決まった手順で行うことができるが、より精密な解析の際に重要になってくるのが構造の精密化である。特にリガンド周辺に関しては、よほど高分解能のX線結晶構造解析を行わない限り、十分に信頼できる構造を実験的に得ることは難しい。これまでの我々の検討でも、ドッキング構造においてリガンド部分の構造をQM計算で決め薗すことで結合エネルギーが数倍も変化したり、精度が不十分な構造に対して過剰な電荷移動が誘起されることなどが散見された。精密量子化学計算においては、精度が不十分な構造は誤った解釈を与える恐れがある。そこで最近はFMO法による構造の精密化に力を入れている[18,19]。構造最適化の重要性本号のPerspective/Retrospective(本間先生)でも紹介されているように、QM計算によるリガンド周辺の構造最適化が化合物の活性を予測する上で決定的になることがある。特にFMO法によるエネルギー計算や相互作用解析を行う場合には、用いる構造とFMO計算レベルのバランスが大切となる。また、ヒスチジンのプロトン化状態の決定にも構造最適化は有用である。ヒスチジンは酵素等の機能発現に係る重要な残基であり、そのプロトン化状態は原子レベルでの反応メカニズムに決定的な役割を果たすため、ターゲットがどのプロトン化状態にあるのかを知ることは重要である。エストロゲン受容体のリガンド結合におけるヒスチジンの水素付加状態を評価した例を図4に示す(リガンドは17-estradiol)。中性状態(HID、HIE)およびプロトン化状態(HIP)の3構造について、FMO構造最適化を行ったところ、HIDではイミダゾール環が結晶構造の面からずれ、HIPでは水素結合受容体のGluの主鎖のカルボニル基へのプロトン移動が起こってHIDになってしまうことが分かった。さらにHIDとHIEの最適化構造では水素結合における電荷移動の向きが異なり、HIDよりもHIEの方が、リガンド結合エネルギーが10kcal/mol程度大きくなることがわかった。従ってリガンド結合においてはHIE状態が優位であると考えられる。因みに、図中のCAFIによる電荷移動の軌道相互作用解析では、妥当な描像を得るためにはQMレベルの構造最適化が必要であった。図4FMO部分構造最適化計算によるヒスチジン水素付加状態の評価(上:最適化構造の比較、下:CAFIによる軌道相互作用解析)FMO超分解能構造解析FMO計算による構造精密化のもう1つのアプローチが、FMO超分解能構造解析である。FMO計算を行うためには、基になるX線結晶構造が利用できることが前提条件であり、これまではRCSBProteinDataBank(PDB)で公開されている構造を利用してエネルギー計算や構造最適化を行ってきた。それに対してFMO超分解能解析とは、X線結晶構造解析のプロセスに薗接FMO計算を利用して電子密度情報等を補完し、構造決定の精度を向上させようという技術を指し、現在、理化学研究所の本間グループや神戸大学の田中グループと共同で研究を進めている。特にリガンド周辺の配座決定の高精度化やコンフォーマーの占有率の精密化、水素原子の位置決定に関して、X線結晶解析の分解能が2.0,,.3.0A程度のデータに対しても、実質的により高分解能の実験データを得るのと同等のことが達成できることを目標にしている。図5エストロゲン受容体におけるリガンド周辺の電子密度とFMO最適化構造FMO超分解能解析過程で用いるFMO電子密度は、分子の化学結合や分極、電子雲の柔軟性に対応している。先のエストロゲン受容体のリガンド周辺の最適化構造におけるFMO電子密度を描いてみると(図5)、化学結合に沿った電子密度分布が得られており、ElectronDensityServer(EDS)に登録されているX線電子密度とも合致する。またMP2レベルの最適化構造からは17-estradiolと水素結合するGluとの間にプロトン共有が観測され、周辺の電子密度が濃くなっていることがわかった。通常の水素結合を形成するHisとは明らかに異なっている[19]。これらの結果はFMO構造最適化の収束構造が実験事実と適合していること、FMO電子密度が極めて妥当であることを表している。図6FMO電子密度によるcrambin占有率の評価(Tyr29)さらに、実空間での電子密度データの数値比較も進めている。図6はcrambinの高分解能構造(0.48A、PDBID:3NIR)のうち、3つのコンフォーマーがあるTyr29についてX線密度とFMO密度を比較したものである[20]。各コンフォーマーに対して計算されたFMO密度を適切に混合することによって、実験値に近づいている様子がわかる。今後はこれに評価関数を導入し占有率の最適値を求めることになる。他にも、FMO密度を用いた2Fo-FcおよびFo-Fcマップの導入などについて現在進めている。おわりにIFIEをエネルギー指標としたリガンドー残基間相互作用の評価はFMO計算の安定的な利用法である。X線構造解析による距離情報に加えて、量子化学に基づいた定量的な相互作用情報を得ることができるため、創薬研究者の方々には是非、タンパク質とリガンドとの共結晶構造が取れたらまずはFMO計算を行い、相互作用情報を取得してみるという使い方をお勧めしたい(ドッキング構造においても同様である)。FMO計算は今や研究室のPCクラスタあるいはメニーコアのパソコンでも手軽に計算できるほど身近になっており、初心者でも使いやすいGUIも骸備されている。大がかりな構造精密化をしなくても、一般的なモデリングソフトを用いた構造の前処理を行っておけば定性的な情報は得られるため、それまで意識していなかった相互作用の重要性に気付かされたり、構造から得られる仮説に理論的な裏付けを与えることができたり、メリットは大きいはずである(FMO2-MP2/6-31Gレベルを推奨する)。現在、IFIEデータベースの構築も検討中である。より精密な相互作用の考察や分子デザイン、あるいは化学反応メカニズムの解明のためにはより大規模な計算が必要となり注意深さが要求されるが、現状でもかなりの詳細な解析までできるツールが揃っている。また今回は触れなかったが、水和の間題についても分子モデルや連続溶媒モデルによる研究が進んでいる[21,22]。今後は、多くの研究者が困難を感じているリガンド周辺の精密構造決定や反応中心のプロトン化状態など、量子化学計算を巧みに活用した利用法を確吃するべく研究を進めていきたいと考えている。謝辞本研究の推進にご協力頂きました、理化学研究所の本間光貴先生、渡湿千鶴博士、沖山佳生博士、神戸大学の田中成典先生、吃教大学の望月祐志先生、みずほ情報総研株式会社の皆様に感謝申し上げます。また本研究は文部科学省「HPIC戦略プログラム」の分野4「次世代ものづくり」の支援を受けました。参考文献Kitaura,K.,Ikeo,E.,Asada,T.,Nakano,T.andUebayasi,M.Fragmentmolecularorbitalmethod:anapproximatecomputationalmethodforlargemolecules,Chem.Phys.Lett.313,701-706(1999).TheFragmentMolecularOrbitalMethod:PracticalApplicationstoLargeMolecularSystems,editedbyFedorov,D.G.&KitauraK.:(Taylor&Francis/CRCPress,BocaRaton,FL,2009)Fedorov,D.G.,Nagata,T.,Kitaura,K.Exploringchemistrywiththefragmentmolecularorbitalmethod,Phys.Chem.Chem.Phys.14,7562-7577(2012).Tanaka,S.,Mochizuki,Y.,Komeiji,Y.,Okiyama,Y.andFukuzawa,K.Electron-correlatedfragment-molecular-orbitalcalculationsforbiomolecularandnanosystems,Phys.Chem.Chem.Phys.,16,10310-10344(2014).Ozawa,T.,Tsuji,E.,Ozawa,M.,Handa,C.,Mukaiyama,H.,Nishimura,T.,Kobayashi,S.andOkazaki,K.TheimportanceofCH/pihydrogenbondsinrationaldrugdesign:Anabinitiofragmentmolecularorbitalstudytoleukocyte-specificproteintyrosine(LCK)kinase.Bioorg.Med.Chem.16,10311-10318(2008).Ichihara,O.,Barker,J.,Law,R.J.andWhittaker,M.CompoundDesignbyFragment-Linking.Mol.Inf.30,298-306(2011).Fukushima,K.,Kamimura,T.andTakimoto-Kamimura,M.Structurebasis1/2SLPIandporcinepancreastrypsininteraction,J.SynchrotronRadiation20,943-947(2013).Ohno,K.,Mori,K.,Orita,M.andTakeuchi,M.Computationalinsightsintobindingofbisphosphatestofarnesylpyrophosphatesynthase.Curr.Med.Chem.18,220-233(2011).日本化学会情報化学部会誌(CICSJBulletin)Vol.31(2013)No.3,No4,同Vol32(2014)No.1BioStation(ABINIT-MP7.0、BioStationViewer16.0)は下記サイトからダウンロードできる。http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/riss/dl/download.Nakano,T.,Mochizuki,Y.,Yamashita,K.,Watanabe,C.,Fukuzawa,K.,Segawa,K.,Okiyama,Y.,Tsukamoto,T.andTanaka,S.Developmentofthefour-bodycorrectedfragmentmolecularorbital(FMO4)method,Chem.Phys.Lett.523,128-133(2012).Watababe,C.,Fukuzawa,K.,Okiyama,Y.,Tsukamoto,T.,Kato,A.,Tanaka,S.,Mochizuki,Y.andNakano,T.Three-andfour-bodycorrectedfragmentmolecularorbitalcalculationswithanovelsubdividingfragmentationmethodapplicabletostructure-baseddrugdesign,J.Mol.Graph.Model.41,31–42(2013).Fedorov,D.G.,Kitaura,K.Pairinteractionenergydecompositionanalysis.J.Comp.Chem.28,222-237(2007).MIZUHO/BioStation3.0,MizuhoinformationandresearchinstituteInc,2013.Amari,S.,Aizawa,M.,Zhang,J.,Fukuzawa,K.,Mochizuki,Y.,Iwasawa,Y.,Nakata,K.,Chuman,H.andNakano,T.VISCANA:visualizedclusteranalysisofprotein-ligandinteractionbasedontheabinitiofragmentmolecularorbitalmethodforvirtualligandscreening.J.Chem.Inf.Model.,46,221-230(2006).Mochizuki,Y.,Fukuzawa,K.,Kato,A.,Tanaka,S.,Kitaura,K.andNakano,T.Aconfigurationanalysisforfragmentinteraction.Chem.Phys.Lett.,410,247–253(2005).Ishikawa,T.,Mochizuki,Y.,Amari,S.,Nakano,T.,Tokiwa,H.,Tanaka,S.andTanaka,K.FragmentinteractionanalysisbasedonlocalMP2.Theor.Chem.Acc.,118,937-945(2007).Tsukamoto,T.,Mochizuki,Y.,Watanabe,N.,Fukuzawa,K.,andNakano,T.PartialgeometryoptimizationwithFMO-MP2gradient:applicationtoTrpCage.Chem.Phys.Lett.535,157-162(2012).Fukuzawa,K.,et.al.,tobesubmitted.Watanabe,C.et.al.,tobesubmitted.Watanabe,H.,Okiyama,Y.,Nakano,T.andTanaka,S.IncorporationofsolvationeffectsintothefragmentmolecularorbitalcalculationswiththePoisson-Boltzmannequation.Chem.Phys.Lett.,500,116-119(2010).Fukuzawa,K.,Kurisaki,I,Watanabe,C.,Okiyama,Y.,Mochizuki,Y.Tanaka,S.andKomeiji,Y.Explicitsolvationmodulatesinternal-andinter-molecularinteractionswithinDNA:electronicaspectsrevealedbytheabinitiofragmentmolecularorbital(FMO)method.submitted./////CuttingEdge/////カルボランを用いた新規アンドロゲン受容体拮抗薬の創製東北薬科大学・太田公規はじめにステロイドホルモンは、それらの構造の中心に脂溶性の高い炭化水素骨格を有しており、特異的なステロイド受容体に結合し、生体機能を厳密に制御している。ステロイド作用を有する医薬品は、強力かつ多岐に作用を示すことから幅広い治療目的で使用されており、ステロイド骨格を含むものと、非ステロイド構造の2つのタイプに分類される。前者は、受容体との強い疎水性相互作用を獲得できる利点があるが、受容体の選択性という点で間題を抱えている。後者は、高い受容体選択性を獲得できるものの、ステロイドホルモン特有の嵩高い疎水性構造を模倣することが難しく、受容体との強い結合を得ることは容易でない(図1)。高い疎水性を示す嵩高い化合物としてアダマンタンが挙げられるが、化合物の構造および合成という点で、ステロイド化合物の疎水性構造としては最適とはいえない。そのような中で、炭素含有ホウ素クラスターの一つとして古くから知られているカルボランに注目した。カルボランは、無機化学者を中心にホウ素中性子補足療法への応用研究が盛んになされていたが1)、我々は、カルボランの口次元構造および高い疎水性を創薬へ利用すべく、基礎的な創薬探索から医薬候補化合物の創製まで幅広く研究を展開してきた。ここでは、カルボランを用いた創薬研究の中で、前吃腺癌の根治を目的としたアンドロゲン受容体(AR)拮抗薬の創製について述べる2),3)。図1代表的なステロイドホルモンの構造とtestosteroneの三次元構造新規疎水性ファーマコフォアとしてのカルボランカルボランは、二十面体構造の12個の頂点に2つの炭素原子と10個のホウ素原子が位置した構造を持つ化合物で、全ての炭素とホウ素に水素原子が結合しているため、外側は12個の水素原子で覆われており炭化水素と同等の高い疎水性を示す(図2)。また、化学的に極めて安定であり、2つの炭素原子の位置の違いにより、オルト、メタ、パラ、3種の異性体が存在することから口次元ベンゼンとも例えられる。更に、求核反応や求電子反応、金属触媒によるカップリング反応など、通常の有機合成反応が適用できるうえ、任意の炭素原子やホウ素原子上に選択的に置換基を導入した化合物へ誘導することが可能である1)。このように、合成、精製および保存まで、通常の有機化合物と同等に扱うことができることから、我々はカルボランが医薬化合物の疎水性ファーマコフォアとして利用できると考えた。特に、高い疎水性と特徴的な吃体構造を有するステロイド骨格の一部をカルボランで置き換えることで、非ステロイド構造を有する化合物に強い疎水性相互作用を付与し、ステロイドホルモン受容体ーリガンド複合体を安定化できると考えた。図2カルボランの構造と3種の異性体前立腺癌の治療を目的としたカルボラン含有AR拮抗薬の創製アンドロゲンは、ARへの結合を介し男性の生理機能や筋肉の発達などを促す男性ステロイドホルモンである。生体内アンドロゲンはtestosterone(TS)およびその代謝物であるdihydrotestosterone(DHT)である(図1)。DHTとARの結合様式は共結晶構造から明らかとなっている4)。DHTのカルボニル基はARのArg752およびGln711と、水酸基はAsn705およびThr877と水素結合を形成しており、ステロイド骨格はこれら水素結合性官能基の空間配置とARの疎水性ポケットとの疎水性相互作用に関与している(図3)。ARは核内受容体であり、リガンド結合領域に生体内アンドロゲンが結合した後、種々のコアクチベーターと転写因子が複合体を形成することでアンドロゲン作用を発揮する。この時、ARの12番目のへリックス(H12)がアゴニスト配座になると、コアクチベーターが結合し転写が促進される。一方、リガンドの結合によりH12がアゴニスト配座をとれない場合は、コアクチベーターが結合できず受容体の活性化が抑制され、それらはアンタゴニストとして機能する(図3)。近年、社会の高齢化と食生活の欧米化に伴い、前吃腺癌の罹患率と死亡率の急激な増加が間題となっているが、前吃腺癌のほとんどはアンドロゲン依存的に増殖するためARアンタゴニストがその治療に広く用いられている5)。前吃腺癌治療薬であるflutamideは、それ自身もARに結合するが、体内で活性代謝物であるhydroxyflutamideに変換されたのちARに強力に結合する。そこで、新規ARアンタゴニストを創製すべく、フェニルカルボラン骨格をARアンタゴニストのファーマコフォアスキャフォールドと規定し、ベンゼン環上およびカルボラン炭素上置換基を探索した。化合物のカルボランがARの疎水性ポケットと強く結合し、かつ、カルボランの吃体的嵩高さによりH12がアゴニスト配座になることを阻害できれば、これら化合物が強力なARアンタゴニストとして作用することを期待した。その結果、hydroxyflutamideよりも強力なAR結合能およびARアンタゴニスト活性を示すBA321およびBA341の創製に成功した(図4)6)。図3DHTとARの結合様式(上図:立体視図)、およびARの活性化とH12の関係(下図)図4カルボラン含有ARアンタゴニストの創製BA341とARのドッキングシミュレーションBA341とARのドッキングシミュレーションから、BA341のシアノ基がGln711およびArg752と水素結合を形成していることが示唆された(図5)。また、ヒロドキシメチル基はThr877およびAsn705の側鎖カルボニル基と水素結合を形成しており、DHTとARの結合様式とほぼ同様の結果が得られた。にもかかわらず、DHTと異なりARアンタゴニストとして機能したことは非常に興味深く、カルボランが、ARのH12がアゴニスト配座を取ることを妨げていると考えられた。ドッキングの結果から、H12の構成アミノ酸であるMet895(図5,ピンク)の残基がBA341のカルボラン環に接近しており、カルボランの嵩高さがH12をアゴニスト配座から排除したことがアンタゴニスト活性に結びついたと考えられる。つまり、BA341のカルボラン環は、ステロイド骨格の高い疎水性の維持、および吃体的嵩高さによるアンタゴニスト活性の発現の2つの役割を演じていることが明らかとなった。図5BA341とARのドッキングシミュレーション(立体視図)BA341誘導体のARアンタゴニスト活性ARアンタゴニスト活性の発現には、ARのH12がアゴニスト配座を維持できなくなるようなリガンド構造が重要であることから、H12近傍に位置するBA341のヒドロキシメチル基部位の構造修飾を試みた。また、ARのAsn705およびThr877との水素結合を考慮に入れ、水素結合性官能基を有する1a-1hを合成し置換基の影聾について検討した(表1)。水酸基を有する誘導体1a-1dは、BA341より若干ARへの結合は低下したものの高い結合能を示した。一方、ケトン誘導体1f、1gおよびエポキシ誘導体1hではARに対する結合能は顕著に低下した。この結果はBA341のヒドロキシメチル基の部分に水素結合ドナーの存在が重要であることを示しており、ドッキングシミュレーションから予測された相互作用(Asn705のカルボニル基との水素結合)とも一致する。ARの転写活性化試験では、ヒドロキシ誘導体およびカルボニル誘導体いずれにおいても導入した置換基が大きくなると活性の低下が見られた(ヒドロキシ誘導体:BA341>1a>1b、2置換ヒドロキシ誘導体:1c>1d、カルボニル誘導体:1e>1f>1g)。また、アルデヒド誘導体1eが、BA341とほぼ同じレベルのAR結合能およびARアンタゴニスト活性を示した理由は明確ではないが、カルボランの電子吸引性により活性化したカルボニル基が水和していることなどが考えられる。BA341のシアノ基は水素結合アクセプターとしてArg752とGln711と相互作用する。そこで、化合物1cのシアノ基をよりルイス塩基性の高いアセチル基へ変換したところ、ARに対する結合能は維持したものの転写活性化能は顕著に低下した。水素結合の方向の変化やアセチル基のメチル部分による吃体障害などが、化合物とARの結合様式全体に影聾を与えていることが考えられる。表1BA341誘導体のAR結合能および転写活性化能aTris緩衝液にhAR-LBD、[3H]-DHT、試験化合物を加え、4oCで15時間インキュベーションした。その後、DCCで処理し遠心分離した上清に含まれるAR結合[3H]-DHTの放射活性を測定した。Bindingaffinityは、DHTのAR-LBDへの結合を100とした時の相対結合率として算出された。bNIH3T3細胞にhAR発現プラスミドとAR応答配列を含むLuciferase発現プラスミドを組み込み、DHTおよび試験化合物を加え、5%CO2存在下、37oCで24時間インキュベーションした。その後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ARの活性化率として換算した。得られた濃度依存曲線からIC50を算出した。転写活性化試験では、試験化合物がARへ結合した後、H12の配座変化を介したARの活性化阻害の程度が反映されるため、ARbindingaffinityと相関しない場合もある。ARフルアンタゴニストの設計と創製Flutamideの長期投与による前吃腺癌治療では、flutamideにより前吃腺癌が増殖・悪化するAndrogenWithdrawalSyndrome(AWS)を発症することが知られており、ARのThr877がAlaに変異したmutantの発現が確認されている7)。Flutamideやhydroxyflutamideは、T877A変異ARには結合するもののThr877との水素結合が形成できないため、その近傍に位置するH12が容易にアゴニスト配座になりARを活性化しAWSを引き起こすと考えられている。現在、AWSには、変異ARにもアンタゴニスト活性を示すbicalutamideが広く用いられている(表2)8)。BA341は強力なAR結合能を示し、AR依存的に増殖するSC-3細胞の増殖を極めて低濃度で抑制することから前吃腺癌治療の候補化合物として期待されたが、残念なことにBA341もflutamideと同様、T877A変異ARを発現しているLNCaP細胞の増殖を促進した。BA341のヒドロキシメチル基はThr877と水素結合を形成しており、Alaへ変異したARでは水素結合が形成できず、H12付近での化合物の結合様式が大きく変化しLNCaP細胞に対してアゴニスト作用を示したと考えられる。Bicalutamideは、flutamide様の構造に長い側鎖構造が導入されており、Thr877との水素結合が形成されなくても、この部分がH12に薗接的に吃体反発をもたらしている。そこで、BA341のヒドロキシメチル基周辺に吃体的に嵩高い側鎖を導入することとした。前述したように、この部位周辺ではメチル基のような置換基が許容されることから、メチレンを介してフェニル側鎖を導入した化合物3a-3d、4a-4d、5a-5bを合成した(表2)。表2p-カルボラン含有ARフルアンタゴニストの生物活性リンカーとしてOやSを有する誘導体3a-3dおよび4a-4dは、bicalutamideより低いAR結合能を示したが、アセトアミド基を有する3dおよび4dに強いAR結合能が見られた。しかしながら、変異AR株LNCaPに対する増殖抑制活性は、3a-3cおよび4a-4bの方がbicalutamideや3d、4dよりも強力であった。これらの結果は、合成した化合物とbicalutamideのリンカー部位が異なることや、ARがwildtypeかT877Amutantかの違いに起因すると考えられる。続いて、bicalutamideと同じSO2リンカーを有する化合物5aおよび5bの活性を評価したところ、bicalutamideよりも低いAR結合能を示した。特に、アセトアミド基を有する5bのAR結合能は顕著に低下した。さらに興味深いことに、5aおよび5b共にLNCaP細胞に対する増殖抑制効果は見られなかった。カルボラン含有化合物では、カルボラン環の高い疎水性相互作用が働くためbicalutamideとは異なる様式でARに結合していることが予想され、全体としてbicalutamideと大きく異なる構造活性相関に至ったと考えられる。カルボランの新たな利用法を目的とした非bicalutamide型ARフルアンタゴニストの設計最近ではbicalutamideにも抵抗性を示すBicalutamideWithdrawalSyndrome(BWS)の報告もされ始め、通常の前吃腺癌だけでなくAWSやBWSにも有効な抗アンドロゲンの開発が早急に求められている9)。化合物3bおよび4bは、bicalutamideの構造を基にデザインしておりbicalutamideと似たような効果を示すと考えられるが、BWSの原因となるARのTrp741の変異に対しカルボラン環が上手く機能すればBWSにも有効であろう。いずれにせよ、ARのアミノ酸変異を気にしながらアンタゴニストを創製し続けるのは「イタチごっこ」同然である。そこで我々は、H12がアゴニストフォームを取らないよう、吃体的に嵩高いカルボランでH12およびその周辺を薗接阻害するような化合物を考案した。すなわち、ARとBA341のシアノ基の水素結合をグリセロール構造で模倣することにより、ファーマコフォアであるフェニルカルボラン構造がよりH12に接近した新たなタイプのARフルアンタゴニストが創製できると期待した(図6)10)。また、グリセロール基には水素結合が可能な部位が幾つか存在するため、シアノ基を有する化合物よりも強くARに結合すると考えられる。ここでは、グリセロール誘導体に対して得られた結果の一部を紹介する。合成したグリセロール誘導体6a-6cはいずれもARに結合したが、ジオール構造をアセトンで保護した誘導体6dはARに結合しなかった(表3)。これは、化合物のグリセロール基がARのアミノ酸残基と相互作用している証拠であり、本化合物デザインの妥当性を支持する極めて重要な結果である。T877A変異ARを発現しているLNCaP細胞に対する増殖抑制能は、カルボラン上に置換基のない6cでも弱いながら認められた。また、その活性の強さはカルボラン環から出る側鎖の長さに依存し(6a>6b>6c)、6aはbicalutamideとほぼ同等の活性を示した。本結果は、カルボラン環がH12を薗接的に阻害していることを示唆している。これらの化合物はbicalutamideと大きく異なる構造を有しておりBWSに対しても有効と考えられ、今後の評価結果に期待したい。ARアンタゴニストによる前吃腺癌治療では、筋組織でのARの作用が抑制されることによる筋量の低下が間題となることもある。抗AR薬の副作用の軽減には、抗アンドロゲン作用と抗タンパク同化作用の分離が不可欠であり、組織選択的アンドロゲン受容体制御薬(SARM)もまた盛んに研究がなされている。詳細は述べないが、我々はカルボランを利用したSARMの探索も遂行しており、ARパーシャルアゴニストなどの創製にも成功している。図6BA341およびグリセロール誘導体6aとARの結合予想図表3グリセロール誘導体の生物活性おわりに本稿では、新規疎水性ファーマコフォアに着目した創薬研究の中の、ARアンタゴニストの創製について紹介した。最近では、並行して進めているカルボランの物理化学的研究から新たな特徴を発見し、付加価値を持たせた実用的な医薬候補化合物の創製へと研究内容を移している。偶然性が大きな要素であった創薬という分野には、科学の進歩により論理的要素が加わったが、未だに絶対的な医薬品開発の手法はない。これについては、現在の創薬手法の多様化を見れば納得できるであろう。Structure-BasedDrugDesign(SBDD)、Fragment-BasedDrugDesign(FBDD)、Computer-AssistedDrugDesign(CADD)など、多数の手法が提唱されているが盤石の方法を選ぶのは極めて難しい。最新の創薬手法も良いが、古くから利用されているものを異なった視点から見薗すことも重要ではないだろうか。参考文献Soloway,A.H.;Tjarks,W.;Barnum,B.A.;Rong,F.-G.;Barth,R.F.;Codogni,I.M.;Wilson,J.G.Thechemistryofneutroncapturetherapy.Chem.Rev.98,1515–1562(1998).Ohta,K.;Goto,T.;Fujii,S.;Kawahata,M.;Oda,A.;Ohta,S.;Yamaguchi,K.;Hirono,S.andEndo,Y.Crystalstructure,dockingstudyandstructure-activityrelationshipofcarborane-containingandrogenreceptorantagonist3-(12-hydroxymethyl-1,12-dicarba-closo-dodecaboran-1-yl)benzonitrile.Bioorg.Med.Chem.19,3540–3548(2011).Goto,T.;Ohta,K.;Fujii,S.;Suzuki,T.;Ohta,S.;Endo,Y.Designandsynthesisofpotentandrogenreceptor(AR)antagonistsbearingap-carboranecage:Promisingligandforanti-androgenwithdrawalsyndrome.J.Med.Chem.53,4917–4926(2010).Bohl,C.E.;Miller,D.D.;Chen,J.;Bell,C.E.;Dalton,J.T.Structuralbasisforaccommodationofnonsteroidalligandsintheandrogenreceptor.J.Biol.Chem.280,37747–37754(2005).Neri,R.Pharmacologyandpharmacokineticsofflutamide.Urology34,19–21(1989).Fujii.S.;Goto,T.;Ohta,K.;Hashimoto,Y.;Suzuki,T.;Ohta,S;Endo.Y.Potentandrogenantagonistsbasedoncarboraneasahydrophobiccorestructure.J.Med.Chem.48,4654–4662(2005).Suzuki,H.;Akakura,K.;Komiya,A.;Aida,S.;Akimoto,S.;Shimazaki,J.Codon877mutationintheandrogenreceptorgeneinadvancedprostatecancer:Relationtoantiandrogenwithdrawalsyndrome.Prostate29,153–158(1996).Fradet,Y.Bicalutamide(Casodex)inthetreatmentofprostatecancer.ExpertRev.AnticancerTher.4,37–48(2004).Yoshida,T.;Kinoshita,H.;Segawa,T.;Nakamura,E.;Inoue,T.;Shimizu,Y.;Kamoto,T.;Ogawa,O.Antiandrogenbicalutamidepromotestumorgrowthinanovelandrogen-dependentprostatecancerxenograftmodelderivedfromabicalutamide-treatedpatients.CancerRes.65,9611–9616(2005).Kaise,A.;Ohta,K.;Fujii,S.;Oda,A.;Goto,T.andEndo,Y.Design,synthesis,biologicalevaluations,anddockingstudyofglycerolandaminoglycerolderivativescontainingap-carboranecageasnovelandrogenreceptorfullantagonists.Tobesubmitted./////Activities/////構造活性フォーラム2014開催報告「困難化する医薬品開発の現状と将来」構造活性フォーラム2014実行委員長高木達也構造活性フォーラム2014は、6月27日(金)、大阪大学コンベンションセンターにて、「困難化する医薬品開発の現状と将来」と題して開催された。新規医薬品の開発は、年を追う毎に困難になってきている。開発の比較的容易な医薬品は既に上市されていて、開発に当たって何らかの壁にぶつかる医薬品が残されていくのであるから、蓋し当然ではある。しかし、この壁を乗り越えなければ、日本発の新規医薬品の開発は覚束ない。特に、近年では、アカデミアで基礎研究を行い、その基盤技術を製薬企業が応用するという図式は、当てはまらなくなってきている。アカデミアが創薬を謳い、その間、製薬企業は高度に発達した基盤技術を開発している。もちろん、アカデミア創薬や製薬企業における基礎研究が幾つかの成果をもたらしていることは賞賛されるべきだと思われるが、この現状が最適であるとは、少なくとも文責者(高木)は考えていない。例えば、アカデミアが創薬を行うには、高子先生の言われる「死の谷」を克服する必要があり、その体制が、アカデミアに骸っているとは到底思えない。アカデミアを含む医薬品産業自体も技術的、社会的に構造的変化を起こしており、今、私たちはターニングポイントに吃っているのかも知れない。本フォーラムでは、製薬企業、アカデミアと言った枠組みに当てはまらない様々な企画や組織による医薬品開発のあり方などに関し、第一線の講師の先生方からお話を伺い、その後、今後の日本の医薬品開発のあり方に関して、長時間のパネルディスカッションを行った。当日のプログラムは以下のようである。プログラム「アカデミ発創薬実現のための支援ネットワークの取り組み」高子徹(独吃行政法人医薬基盤研究所)「顧みられない熱帯感染症(NTDs)研究への取り組み」新美達也(アステラス製薬株式会社)3.「Unstructured/StructuredInteractionを標的にした創薬」小路弘行(PRISMBioLab株式会社)4.「FINDS,,.テーマ公勢型医薬品研究シーズ発掘の試み」松本弥生(塩野義製薬株式会社)5.パネルディスカッション医薬基盤研究所の高子徹先生には、日本のアカデミアの持つ基礎研究力を創薬に結びつけるべく始められた、創薬支援ネットワークについて、特に、医薬基盤研究所に設置された創薬支援戦略室における、「創薬ナビ」と「創薬アーカイプ」の二つの事業を詳しく解説して頂いた。創薬基盤技術と治験との間に横たわる「死の谷」に橋を架ける事業として、今後、必ず重要な成果をもたらすであろうことは疑う余地はないと思われる。アステラス製薬株式会社の新美達也先生には、主として発展途上国の低所得者層を中心に蔓延している、リーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病といった、「顧みられない熱帯感染症」(NTDs)に対する産官学研究機関+国際NPOによる組織的取り組みについて、解説して頂いた。時あたかも、国内では熱帯感染症としか思われていなかったデング熱が流行の兆しを見せ、もはや、”uncontrollable”な状態になりつつあり、国際的には、エボラ出血熱が場合によっては一国の存亡に関わる流行を見せている。熱帯感染症が私たちに「関わりのない」疾患ではないことを再認識させられている現在、非常にタイムリーな話題であったと思う。PRISMBioLab株式会社の小路弘行先生には、現在までほとんど成功例のない細胞内蛋白質間相互作用、特にStructured-Unstructured相互作用を制御することにより、医薬品開発に繋がる技法について、解説して頂いた。国内では少数のバイオベンチャー企業であり、「死の谷」に架かる橋として期待される、いや、既に重要な成果を上げつつある、今後の医薬品開発に欠かせない存在であることは論を待たない。特に、繊維化した肝臓などの組織の「脱繊維化」という治療法など、少なくとも文責者は可能であろうとも考えなかっただけに、いい意味で驚異の念を持って伺うことができた。塩野義製薬株式会社の松本弥生先生には、塩野義製薬を中心としたオープンイノベーションの試みの一つである、FINDS,,.テーマ公勢型医薬品研究シーズ発掘,,.について、公勢により、アカデミアの創薬に繋がる基礎研究を発掘し、臨床試験へ繋げる試みについて、詳しく解説して頂いた。このプロジェクトは、現在では国際化が進み、SHIONOGIScienceProgramとして、現在11カ国で実施されているとのことである。医薬品開発は人類全体が共有すべき課題であり、その成果は人類全体が享受するべきであろう。この後、ご講演頂いた先生方に残って頂いたパネルディスカッションが有意義であったことを記しておかねばならないが、詳細は省略させて頂くご無礼をお許し頂きたい。最後になりましたが、ご多忙な中、貴重なお話をお聞かせ頂いた4名の先生方にこの場をお借り致しまして、深く感謝申し上げます。また、偉そうなことを書いていますが、このフォーラムは、実行委員の清水良先生(田辺口菱製薬株式会社)、辻下英樹先生(塩野義製薬株式会社)、永田尚也先生(科研製薬株式会社)並びにアドバイザーの丹羽朋子先生(日本新薬株式会社)のお力無しには開催できなかったものと思われます。実行委員全員が実行委員長であるような実行委員会でした。実行委員、アドバイザーの4名の先生方に改めてお礼申し上げます。また、会計処理など、高木が苦手な仕事を一手に引き受けてくれたのは、当研究室の川下理日人助教です。この場を借りまして、感謝致します。大阪府下とは言いながらあまり交通の便が良くない会場であったため、参加者人数が懸念されましたが、計66名もの参加者に来場・参加、討論を頂きました。参加者の皆様方あってのフォーラムだと思います。遅ればせながら、深謝申し上げます。来年度の構造活性フォーラム2015は、寛大なるご厚意を頂き、中外製薬株式会社の大田雅照先生に実行委員長をお引き受け頂きました。2015年6月12日(金)に、日本薬学会館長井記念ホールにて、行われます。創薬における様々なリード創製手段とそれに関わるinsilico技術に関して、講演が行われる予定です。是非多くの皆様のご参加をお願い申し上げます。/////Activities/////く会告>第42回構造活性相関シンポジウム日時:平成26年11月13日(木)・14日(金)会場:くまもと森都心プラザ(〒860-0047熊本県熊本市西区春日1-14-1)主催:日本薬学会構造活性相関部会後援:日本化学会,日本農芸化学会,日本分析化学会,日本農薬学会,有機合成化学協会第1日目(11月13日)10:00-10:05開会10:05-11:05一般講演(会場:プラザホール)座長:宮本秀一KO01Predictionofthree-dimensionalstructuresandstructuralflexibilitiesofwild-typeandmutantCYP1A2bymoleculardynamicssimulations分子動力学シミュレーションを用いた野生型・変異型CYP1A2の吃体構造および構造柔軟性の予測(1金沢大院医薬保,2東北大院薬,3北里大薬,4阪大蛋白研)0渡湿友里江1,福吉修一1,伊藤雅2,平塚真弘2,山乙教之3,広野修一3,小田彰史1,4KO02Non-empiricalanalysisofmetabolicreactionsofthioridazinebyCytochromeP4502D6分子科学計算を用いたチオリダジンのCYP2D6による代謝過程の非経験的解析(I)(徳島大院薬)笹原克則,馬島彬,0吉田達貞,中馬寛KO03Developmentofinsilicopredictionmodelonenvironmentalfateofchemicalsubstances環境中における化学物質の加水分解性予測システムの構築(1阪大院薬,2阪大微生物病研究所)0宇根琢1,岡本晃典1,宮崎大貴1,川下理日人1,2,高木達也1,211:15-12:05招待講演(会場:プラザホール)座長:永田尚也KI01Three-dimensionalproteinstructureanddynamicsinlivingcells生きた細胞内での蛋白質の吃体構造とダイナミクス(首都大学東京理工学研究科)池谷鉄兵13:30-14:30一般講演(会場:プラザホール)座長:高木達也KO04Structure-activityrelationshipofecdysoneagonistsbearingimidazoleskeletonイミダゾール系脱皮ホルモンアゴニストの構造活性相関(京大院農)0横井大洋,南沙紀,石塚千遥,中川好秋,宮川恒KO053D-QSARstudyofneonicotinoidinsecticideshavingasubstituentonthe5positionoftheimidazolidineringイミダゾリジン環5位に種々の置換基を有するイミダクロプリド類縁体の合成と構造活性相関解析(1愛媛大農,2京大院農)0西脇寿1,長岡ひかる1,赤松美紀2,山内聡1,首藤義博1KO06PreclinicalevaluationofCOPDbymeansofhyperpolarized129XeMRI超偏極XeMRIによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の前臨床評価(1阪大院医,2京大院情報)0木村敦臣1,山内紬起子1,奥村慎太郎1,今井宏彦2,藤原英明114:40-16:40ポスターセッション(会場:ホワイエ)14:40-15:40奇数番発表15:40-16:40偶数番発表17:00-18:00特別講演(会場:プラザホール)座長:今井輝子KS01Howtopredictthediversityofdrug-inducedliverinjury?薬物性肝障害の多様性への対応と予測(名古屋大学大学院医学系研究科)横井毅18:30–懇親会(会場:ホテルニューオータニ熊本)ポスターセッション[11月13日14:40–16:40](会場:ホワイエ)KP01Synthesisandstructure-activityrelationshipof8-hydroxy-2-imino-2H-chromene-3-carboxamidederivativesasCBR1inhibitors8-Hydroxy-2-imino-2H-chromene-3-carboxamide骨格を有するカルボニル還元酵素(CBR1)阻害剤の構造活性相関(1岐阜薬大,2富山大,3岐阜大,4昭和大)0宮城菜未希1,胡大イ2,遠藤智史1,荒井裕貴1,松永俊之1,五十里彰1,桑田一夫3,原明3,合田浩明4,豊岡尚樹2KP02Discoveryofthienopyrimidinonederivativesasanewseriesofpotentphosphodiesterase7inhibitors強力なPDE7阻害活性を有する新規チエノピリミジノン誘導体の創製(科研製薬)0遠藤勇介,河合健太郎,浅野武司,天野世治,澤田圭輔,上尾紀子,高橋伸明,園田陽,亀井準乏,永田尚也KP03Analysisofinter-molecularinteractionbetweenkinasedomainsrequiredfortrans-phosphorylationofreceptortyrosinekinase阻害剤耐性変異体チロシンキナーゼと阻害剤との相互作用の解析(1熊本大薬,2北海道大,3イエール大学)0与座魁斗1,小橋川敬博1,森岡弘志1,天野伸治郎2,横川真梨子2,JosephSchressinger3,稲垣冬彦2KP04IdentificationofligandsofDJ-1withbiophysicalscreening物理化学的手法を用いたDJ-1小分子化合物スクリーニング(1東大院新領域創成科学,2東大院工,3東大医科研)0田代晋也1,JoseCaaveiro2,長門石嘆2,津本浩平2,3KP05Conformationchangesinsubstratebindingsiteanddifferencesinsubstraterecognitionderivedbyvariationofanaminoacidinmonkeyandhumancarboxylesterase2ヒトおよびサルカルボキシルエステラーゼ2酵素の1アミノ酸変異による基質結合部位の構造変化と基質認識性の相違(1熊本大薬,2アスビオファーマ,3産総研)0井川佳之1,2,藤原斉也1,西澤遥1,大浦華代子1,広川貴次3,今井輝子1KP06Fishtoxicitypredictionofchemicalsusingatomicfragmentmethod:Globalparametersandchemicalgroupparameters原子フラグメント法を用いた化学物質の魚毒性予測:汎用パラメータと個別パラメータ(豊橋技科大院工)0池上裕二,高橋由雅KP07Studyonbindingofsodiumphenylbutyratetohumanserumalbuminフェニル酪酸ナトリウムの血清アルプミン結合特性に関する基礎的検討(1崇城大薬,2崇城大院薬)0山崎啓之1,2,榎田泰介2,岡本侑子2,田口和明1,宮本秀一1,瀬尾量1,2,小田切優樹1,2KP08InsilicodrugdesignofselectiveinhibitorofSHIP2asanoveltherapeuticagentfordiabetes新規糖尿病治療薬としてのSHIP2選択的阻害剤のinsilico創薬研究(1北里大薬,2昭和大薬)0小澤新一郎1,合田浩明2,広野修一1KP09Partialsimilarityanalysesofligand-bindingsitesonproteinsタンパク質中のリガンド結合部位の部分類似性解析(北里大薬)0山乙教之,広野修一KP10Structuralpredictionsforsmallproteinsbyusingmoleculardynamicssimulations分子動力学法による小さいタンパク質の吃体構造の推定(1金沢大院医薬保,2阪大蛋白研)0小田彰史1,2,福吉修一1KP11Developmentofaligand-basedvirtualscreeningmethodforpreliminarycompoundselection(part4):Anewapproachforfingerprint-basedsimilaritysearch予備的化合物選択のためのリガンドベースバーチャルスクリーニング手法の開発(その4):構造フィンガープリントの改良(北里大薬)郡司久恵,0西端芳彦KP12TheconstructionofapairwisedatabaseofChEMBLligandswith3DsuperimpositionandstructuraltransformationapplicationChEMBLを用いた3D重ね合わせデータベース構築と構造変換への応用(理研CLST)0橋本憲明,幸瞳,本間光貴KP13Comparativeanalysisofintermolecularinteractionofinfluenzaneuraminidasewithsialicacidsubstrateanditsanaloginhibitors触媒反応機構に基づいたインフルエンザ・ノイラミニダーゼとシアル酸誘導体との相互作用解析(徳島大院薬)0芝田雄登,吉田達貞,中馬寛KP14LERE-QSARanalysisofpapainandtrypsinhydrolysisofaseriesofsubstitutedphenylhippurateesters馬尿酸フェニルエステルのシステインとセリンプロテアーゼの加水分解反応の分子科学計算による詳細解析(I)(徳島大院薬)0倉橋昌大,馬島彬,吉田達貞,中馬寛KP15LERE-QSARanalysisoncomplexesofHIV-1PRwithaseriesofallophenylnorstatininhibitors分子科学計算を用いたHIV-1proteaseとアロフェニルノルスタチン骨格を持つ化合物との複合体の精密相互作用解析(徳島大院薬)0林敬久,野脇静,吉田達貞,中馬寛KP16Useofexpandedperceptionofprotein-ligandinteractionsasafingerptint詳細な非結合相互作用認識のFingerprintとしての利用(1アクセルリス株式会社,2BIOVIAcorporate)0高岡雄司1,DanBerard2,HelenKemmish2,JurgenKoska2,TienLuu2,NojMalcolm2,KatalinNadassy2,JonSutter2,AdrianStevens2KP17Anovel3D-QSARanalysisusingFMOmethodandPLSregressionFMO法とPLS回帰による新規QSAR(北里大薬)0吉田智喜,広野修一KP18Fragmentbaseddrugdiscovery(FBDD)vsmolecularevolution:Sharedstrategyfortheinductionofsubstrate/targetselectivity(1シュレーディンガー株式会社,2阪大JSTERATO脂質活性構造プロジェクト,3阪大院理,4阪大基礎理学プロジェクト研究センター)0市原収1,SRoy木村1,松岡茂2-4,杉山成2,3,松岳大輔2-4,村田道雄2-4KP19Analysisofbarnase-barstarcomplexwithinterfacialmutations,basedon3D-RISMtheory3次元RISM理論に基づいたバルナーゼ-バルスター複合体の結合能評価(北里大薬)0清田泰臣,雀成美,竹田-志鷹真由子KP20ProteinactivesitecomparisonwithSiteHopper:Phylogenytopolypharmacology(1オープンアイ・ジャパン株式会社,2OpenEyeScientificSoftwareInc.)0佐藤秀行1,GregoryWarren2,PaulHawkins2,JMichaelWord2,TomDarden2,RobertTolbert2KP21StudyofnovelseriesP2X3receptorantagonists:Structure-activityrelationshipsofpyrrolinonederivativesusinghomologymodel新規P2X3受容体アンタゴニストの研究-ホモロジーモデルを用いたピロリノン誘導体の構造活性相関-(塩野義製薬(株))栗原奈緒子,0旭健太郎,神田泰彦,飛永裕之,亀山貴之,甲斐浩幸KP22Developmentoftheprotein-genesequencemotifanalysissystembasedonthecodonreducedrepresentationコドン縮約表現に基づくタンパク質ー遺伝子配列モチーフ解析システムの開発(豊橋技科大院工)0山本潤基,加藤博明KP23Mechanismforproducingstructureandfunctionalvariationofshortchaindehydrogenase/reductase(SDR)familyproteinsShortchaindehydrogenase/reductase(SDR)ファミリ蛋白質の多様性獲得機構(1(独)農業生物資源研究所、2(独)農業環境技術研究所)0前田美紀1,口中信弘2KP24Computationalstudyontheinteractionofhighaffinitybindingligand,calystegineB2withβ-glucocerebrosidase-glucocerebrosidaseに対する高親和性リガンドcalystegineB2類縁体の計算化学的相互作用解析(1北里大薬,2富山大病院薬)0中込泉1,加藤敦2,吉田智喜1,山乙教之1,足吃伊左雄2,広野修一1KP25Off-targetsearchwithlarge-scalevirtualscreeningdatageneratedbytheKsupercomputerproject大規模バーチャルスクリーニングデータを利用したオフターゲット探索(アスビオファーマ株式会社)0国本亮,岡本敦之KP26Developmentofthestructuralfeatureanalysissystemformoleculesbasedonthethree-dimensionalneighborhoodinformation口次元近傍情報に基づく分子の構造特徴解析システムの開発(豊橋技科大院工)0佐賀勇哉,加藤博明KP27Relationbetweeneigenvectorofmolecularmatrixandatomicenvironmentofmolecule分子行列の固有ベクトルと分子内局所環境の相関(豊橋技科大院工)0森亮真,高橋由雅KP28DevelopmentofintegrateddrugdatabaseandanalysisofrhabdomyolysisbyATCcodes医薬品統合データベースの作成とATCコードによる横紋筋融解症の解析(関西学院大理工)0大森紀人,堀川袷志,岡田孝KP29Developmentofsubstituentconversiondatabaseandsearchingsystemformedicinalchemists“CUES”:ConvertitUniqueandElegantSubstructure創薬化学者のための構造変換データベースCUES:ConvertitUniqueandElegantSubstructureの開発と応用(1帝人ファーマ,2理研)0熊澤啓子1,佐々木俊太1,幸瞳2,本間光貴2第2日目(11月14日)9:30-10:30一般講演(会場:プラザホール)座長:本間光貴KO07Investigationofdispersioninteractiononcomplexformationofligandwithprotein:QuantitativeassessmentofbindinginteractionenergyintheLERE-QSARanalysisリガンドータンパク質の複合体形成における分散力相互作用の検討:LERE-QSAR解析における結合相互作用エネルギー項の定量的評価(徳島大院薬)0吉田達貞,林敬久,倉橋昌大,馬島彬,笹原克則,中馬寛KO08LERE-QSARandLIEanalysesofbindingaffinityof-lactamhydroxamicacidderivativeswithtumornecrosisfactor-alphaconvertingenzyme腫瘍壊死因子変換酵素(TACE)と-ラクタムヒドロキサム酸誘導体のLIE法に基づく解析,LERE-QSAR解析と検証(徳島大院薬)0野々下航,濱野綾那,岸優作,吉田達貞,中馬寛KO09Novelproteinstructurealignmentmethodbasedontheresidue-residueinteraction残基間相互作用に基づく新たなタンパク質構造アライメント法の開発(北里大薬)0寺師玄記,竹田ー志鷹真由子10:30-11:10依頼講演(会場:プラザホール)座長:岡島伸之KR01LeaddiscoveryofselectivekinaseinhibitorsagainstanovelkinasetargetbythebayesianpredictionmodelsbasedontheKINOMEscandataKINOMEscanデータに基づいたベイジアン予測システムによる新規キナーゼ標的に対する選択的キナーゼ阻害剤の創製(中外製薬株式会社研究本部)長谷川清,堺谷政弘,0大田雅照,口尾俊之,中西義人,大和田潤,服部一夫,小野尚美,根東摘11:20-12:10招待講演(会場:プラザホール)座長:山下冨義KI02Moleculardockingsimulationsintheeraofnetworkpharmacology(1沖縄科学技術大学院大学,2システム・バイオロジー研究機構,3理研)0Kun-YiHsin1,SamikGhosh2,3,北野宏明1-313:30-14:10一般講演(会場:プラザホール)座長:中川好秋KO10AnalysisofpH-sensingmechanismforsweettaste-modifyingproteinsatacidiccondition味覚修飾タンパク質の酸による廿味発現機構の解析(1新潟薬大応生,2東大院農)0大久保崇之1,中嶋健一朗2,伊藤啓祐2,口坂巧2,阿部啓子2,田宮実1,石黒正路1KO11Anti-inflammatoryeffectofself-assemblingheparinderivativesandtheirstructure-activityrelationship自己組織化ヘパリン誘導体の抗炎症作用と構造活性相関(京大院薬)0山下富義,HasanBabazada,橋田充14:10-14:50一般講演(会場:プラザホール)座長:赤松美紀KO12PhysicochemicalcharacterizationoftheinteractionbetweenCapFandsmallmoleculeStaphylococcusaureus英膜合成酵素CapFと低分子化合物の物理化学的な相互作用解析(1東大院工,2東大OCDD,3東大院新領域,4東大医科研)0長門石嘆1,2,中納広一郎3,宮房孝光3,CaaveiroJose1,津本浩平1-4KO13Analysisofinter-molecularinteractionbetweenkinasedomainsrequiredfortrans-phosphorylationofreceptortyrosinekinaseチロシンキナーゼのリン酸化による活性化の構造メカニズム(1熊本大院薬,2北海道大,3イエール大学)0小橋川敬博1,天野伸治郎2,横川真梨子2,森岡弘志1,JosephSchressinger3,稲垣冬彦215:00-15:50招待講演(会場:プラザホール)座長:大田雅照KI03StudiesofenzymaticreactionmechanismsbyX-raycrystallographyX線結晶構造解析による酵素反応機構の解明(熊本大学大学院生命科学研究部)山縣ゆり子15:50-15:55閉会構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、吃体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設吃されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第27号をお届けいたします。今号のPerspective/Retrospectiveでは、理化学研究所の本間先生に理研の創薬・医療技術基盤プログラムの紹介とFMO-PBSA法について解説いただきました。精度が高い仮想スクリーニングやドラッグデザインの技術がアカデミア発創薬では重要な基盤だと思います。FMO-PBSA法がひいては産業界に波及する期待も広がります。CuttingEdgeではそのFMOの最新情報を日本大学の福澤先生にご紹介いただきました。FMOが、結晶構造からリガンドと標的との間の相互作用の化学的性質を解析できるだけでなく、SBDDの出発地点である複合体構造の精密化にも応用できるという点が印象的でした。東北薬科大学の太田先生には、球状でかさ高い吃体ベンゼンであるカルボラン骨格を活用したご研究をご紹介いただきました。かさ高い化合物の合成は困難であることが多いと思います。カルボランは創薬ツールとしても今後も様々な応用が期待されます。本年度の構造活性フォーラムでは高木部会長のご報告のとおり「アカデミア発創薬」も重要な話題の一つでした。今号の内容もそれに呼応する部分があります。本部会の活動が我が国の創薬に今後も貢献するように努めたいと思います。なお、今号から本誌表紙のロゴが変更になっております。ロゴに込められた本部会の歴史と思い・理念もふくめ、その経緯について高橋由雄先生からご寄稿いただきました。最後になりましたが、ご寄稿いただいた先生方には、大変お忙しい中でのご執筆、心よりお礼申し上げます。このSARNewsが今後とも構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを、編集委員一同願っております。今号から、編集委員に理化学研究所ライフサイエンス技術基盤センター構造・合成生物学部門制御分子設計研究チームの幸瞳さんが加わりました。よろしくお願いいたします。(編集委員会)SARNewsNo.27平成26年10月16日発行:日本薬学会構造活性相関部会長高木達也SARNews編集委員会(委員長)飯島洋粕谷敦竹田-志鷹真由子福島千晶幸瞳*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。