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SARNews No.13

SARNews_13

構造活性相関部会・ニュースレター<1October2007>SARNewsNo.13「目次」/////Perspective/Retrospective/////たんぱく質表面を標的とする阻害剤の創製大神田淳子・・・2/////CuttingEdge/////メディシナルケミストリーに基づく化合物ライブラリーの設計木村陽一・・・8/////Activities/////<報告>構造活性フォーラム2007「分子間相互作用の基礎、解析、応用研究」開催報告仲西功・・・12SARPromotionAward平成19年度受賞者米田照代・・・13<会告>第35回構造活性相関シンポジウム・・・14/////Perspective/Retrospective/////たんぱく質表面を標的とする阻害剤の創製大阪大学産業科学研究所大神田淳子1.はじめにたんぱく質間相互作用は、信号伝達系等の多様な生体プロセスにおいて重要な役割を担っている。ポストゲノム時代に入り、たんぱく質間相互作用のネットワーク解明を目指した大規模なプロテオーム解析が、質量分析やたんぱく質マイクロアレイ等の技術を駆使して盛んに行われるようになった。ヒトの場合では250,000以上のたんぱく質間相互作用の存在が予測され、このうち現在までに明らかにされたものは5-10%程度といわれている1。このような非常に複雑なたんぱく質間相互作用の俯瞰的理解に至るまでには依然相当の時間を要することが予想されるものの、細胞増殖と分化、アポトーシス、老化等の分子機構において、中心的な役割を担うたんぱく質表面の機能は、新しい医療の標的として常に注目されている。たんぱく質表面を標的とした医薬品として抗体医薬の開発が進んでいるが、経口投与に対する制限、標的は細胞外のたんぱく質に限定されるなどの課題がある。細胞内の相互作用の制御については現在のところアンチセンス法が用いられているが、相互作用のパートナーたんぱく質の発現そのものを抑制するので毒性が懸念される。これらの課題を克服するため、有機低分子を基盤とした創薬に大きな期待が寄せられるところであるが、一般に広いたんぱく表面が関与する相互作用に対し、効果的かつ選択的に拮抗しうる低分子量阻害剤の開発は非常に困難である。その一方で、最近の生物有機化学・ケミカルバイオロジーの分野では、標的たんぱく質の3次元構造に基づいて、その相互作用表面の構造を模倣する分子を論理的設計によって構築し、たんぱく質間相互作用を制御するアプローチが一定の成果を挙げている。こうした試みは基礎研究の範疇に留まるものの、論理的設計によって得た分子でたんぱく質表面の機能制御が可能なことを示唆する成果と位置づけることができる。本稿では、このようなたんぱく質表面構造と機能を模倣する阻害剤研究の最近の動向と、私たちのモジュールアセンブリに基づく戦略について紹介させて頂く。なお紙面の都合上、本稿では議論の対象として広く浅いたんぱく質表面に主眼を置くこととし、表面上の浅いが比較的局所的な凹部位(例えばα-helixの結合溝)を標的とするアプローチと阻害剤開発については、文末に挙げた総説を参照されたい2。2.プロテオミメティクス:たんぱく質表面の構造と機能の模倣たんぱく質間相互作用はいうまでもなく、たんぱく質表面上で起こる分子認識・構造認識に基づく作用である。したがってその分子機構を理解することが、特定の相互作用に拮抗し得る有機分子の論理的設計につながる。ここで大雑把な定義であるが、たんぱく表面を、内側の表面(interiorsurfaces)と外側の表面(exteriorsurfaces)に分けて考えてみたい。前者は伝統的な創薬研究の標的として扱われてきた、例えば酵素活性ポケットのように厳密に規定された3次元空間を形成する表面を指しており、外部の水分子等のアクセスから比較的遮断されているため、drug-likeな低分子の結合に適している。これと対照的にたんぱく質の外部表面は、凹凸構造に乏しく、バルクの水に晒された環境にある。そのため相互作用に関わるインターフェースとして通常750-1500A2程の広い表面積が供されることや、作用面には複数の疎水性・静電相互作用、水素結合等の作用点が分布し、その分布の形態はたんぱく質ごとに特異的なものである。さらに天然酵素基質の構造を土台にアナローグを論理設計しうる酵素阻害剤の場合と違って、その作用面の形状は低分子阻害剤の設計に結びつくようなテンプレートを提供しにくいことも低分子阻害剤開発を難しくしている。実際にこれまでのところ、欧米の製薬系研究グループの努力にも関わらず、たんぱく質間相互作用を標的とするdrug-likeな小分子がそのライブラリーから見出された例はほとんど報告されておらず、ランダムスクリーニングによるリード探索の難しさを示唆している。90年代後半から、たんぱく質間相互作用に関わる作用表面の構造と機能を合成分子で模倣し、たんぱく質表面認識とそれに基づくたんぱく質機能制御、さらに、たんぱく質間相互作用の阻害を試みる、プロテオミメティクス(proteomimetics)3研究が欧米の研究グループを中心に始まった。Hamiltonによって提唱されたこの手法は、強固な構造を持つ環状化合物やポリペプチド等の土台上に、電荷や疎水性官能基などの相互作用点を配置し、標的たんぱく表面と相補的な相互作用を通じて結合する分子を設計するものである。こうした化合物にはnMオーダーの強い活性を示すものもあり、たんぱく質の立体構造情報に基づく薬剤設計の可能性を示している。3.ミニチュアたんぱく質と有機合成分子によるたんぱく質表面認識生化学的な手法に基づくプロテオミメティクスの代表例を幾つか挙げてみたい。2001年、Schepartzらは、安定なα-helix構造を持つ36-meravianpancreaticポリペプチド(aPP)を土台として用い、ここに標的たんぱく質表面に対するepitope情報を転写したポリペプチドライブラリーを作成し、セレクションを行って、標的たんぱく質であるBcl-2、Bcl-XL4aに特異的に強く結合するペプチド(ミニチュアたんぱく質)を得る手法を開発した。この方法はproteingraftingとも呼ばれる。彼女らはこの手法により、CBPKIX4b、MenaEVH1ドメイン4cにnMで結合するペプチドを得ている。この手法は一般性が高く、β-sheet構造を土台としたthrombin阻害剤5a、β-amyloid凝集阻害図1抗体の構造を模倣したcalix[4]arene誘導体図2たんぱく表面認識のための非対称porphyrinアレイ剤5b、β-hairpin環状ペプチドミメティクス5cを土台として使う研究にも応用されている。一方これに先立ち、Hamiltonらは有機化学的視点からたんぱく質表面構造を模倣した人工合成分子で、たんぱく質の機能制御が可能であることを示している6。1997年に彼らは、抗体分子の相補性決定領域(CDR)を模倣するマクロ分子を報告した(図1)。Asp側鎖を酸性官能基として有する環状テトラペプチドを、calix[4]areneのリムに導入することで得られるこの化合物は、4個のペプチドループの集積によって約400A2のたんぱく質結合平面を持つ。塩基性たんぱく質のcytochromeC(pI10)6a、chymotrypsin(pI8.6)6bの活性ポケット近傍の表面と静電相互作用を通じて部位特異的に結合し、nMオーダーの阻害活性を示した。Platelet-derivedgrowthfactor(PDGF)受容体(PDGFR)は細胞増殖、血管新生を司る細胞内信号伝達系の上流に位置する膜たんぱく質で、多くの腫瘍細胞で過剰発現することが知られている。従って、成長因子PDGFと膜受容体PDGFRとのたんぱく質間相互作用は、抗がん剤の標的となる可能性がある。この相互作用は細胞膜の外側でのイベントであるので、化合物の安定性が確保できれば、分子量の制限、膜透過性等の懸念事項は一応ひとまず除外できる。点変異実験からPDGFのループ構造上のLys,Argの塩基性アミノ酸残基と、Ile,Phe等の疎水性残基がPDGFRへの結合に重要であることがわかっていた。Hamiltonらは、PDGFの表面を標的としたcalix[4]arene誘導体ライブラリーを作成し、PDGFRの自動リン酸化とその下流のMAPキナーゼ活性化レベルについてスクリーニングしたところ、酸性、疎水性残基を併せ持つGly-Asp-Gly-Tyrの環状テトラペプチドを持つGFB-111が、IC50値で250nMと高活性を示した6c。Gly-Lys-Gly-Phe型の化合物は全く活性を示さなかったことから(IC50>50μM)、この阻害活性がPDGFとの静電相互作用を鍵とする相互作用に基づくことを強く示唆している。Gelシフト実験、同位体ラベルたんぱく質を用いたアッセイのいずれの結果も、GFB-111によるPDGF-PDGFR間相互作用の阻害を支持するものであった。さらにGFB-111はヌードマウスゼノグラフトモデルの腫瘍成長を阻害し、動物レベルでも有効であることが示された。たんぱく質表面は非対称でキラルな場であるので、阻害剤の設計としては、異なる官能基を位置空間特異的に配置するのが望ましい。calix[4]areneをベースとしたこの化合物の弱点として、合成法が煩雑で、非対称な官能基導入が困難であることが挙げられた。Hamiltonらは、tetraphenylporphyrin(TPP)を土台とすることにより合成法の簡便化と非対称な官能基導入を達成し、たんぱく質検出のためのporphyrinアレイ等に応用している(図2)6d。4.モジュールアセンブリによるたんぱく質表面指向型阻害剤の設計以上に述べたプロテオミメティクス研究の成果はいずれも、標的たんぱく質の表面構造情報に基づきラショナルに設計された阻害剤が、たんぱく質間相互作用の制御に有効であることを示している。しかし前述の例からも明らかなように、たんぱく質表面を標的とする分子は、水中での強い結合をうるために広い表面積を持つ必要から、必然的に分子量が大きくなる傾向がある。結合部位選択性、分子量、細胞膜透過性、等の観点から、依然としてこれら基礎研究と実際の創薬研究との間に大きな隔たりがあることは否めない。私たちのグループではこの溝を埋めるための新しい戦略の開拓と方法論の提案を目指し、モジュールアセンブリの概念に基づいた分子設計に関する一連の研究を行っている。特徴的な構造を持つ複数の表面部位に対して、相補的な相互作用点を導入したモジュールを用意し、こうした“部品”を組み合わせることによって阻害剤を得るという発想である。その一例として我々の2座型酵素阻害剤の開発研究7について、次に概略を示したい。図3に示すように、標的とする酵素(黄)が、活性ポケット(クサビ形の凹)とその近傍表面に特徴的な部分構造を持つとする。前者を内部表面、後者を外部表面とし図3酵素の内部・外部表面を同時認識する阻害剤の設計の模式図。内部表面認識モジュール(青)は活性ポケットに選択的に結合し、リンカー(緑)を介して外部表面認識モジュて、この二つの表面構造を認識するようなール(赤)を標的とするたんぱく質表面に配置する。モジュール分子を設計する。活性ポケットすなわち内部表面認識モジュール(青)としては、既知の阻害剤もしくは基質ミメティクスの適用が妥当と考えられ、外部表面認識モジュール(赤)には、その表面サイズと官能基に対して相補的な条件を満たす化合物を考える必要がある。この二つのモジュールを適切な長さのリンカー(緑)で共有結合的に連結した化合物は、内部表面認識モジュールによって活性ポケットにアンカーされ、外部認識モジュールを狙った表面部位に配置するであろう。その結果、ふたつのモジュールのそれぞれの標的部位への結合に伴うΔGの加算性により、モジュール単独であるよりも強い親和性を示すと予想される。このことにより、たんぱく質外部表面のみを標的とする分子の潜在的な課題であった結合位置選択性と分子量の問題を改善できると考えた。5.内部・外部表面を同時認識するハイブリッド型GGTase-I阻害剤この仮説を検証するための系として、Type-Iゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase-I)に着目した。GGTase-Iとは、GTP結合たんぱく質の翻訳後修飾を行うプレニル基転移酵素のひとつで、基質たんぱく質C末端のCAAXテトラペプチド配列(C=cysteine;AA=脂肪族系ジペプチド;X=LeuかPhe)を活性ポケットで認識し、システインのチオール基に炭素数20のゲラニルゲラニル基をゲラニルゲラニル2リン酸(GGPP)から転移させる反応を担う。RhoやRac等のGGTase-I基質たんぱく質が、腫瘍形成、がん転移の分子機構に関与することが明らかにされており、近年新しい抗がん剤開発の標的として注目されている8。GGTase-Iはα/βヘテロダイマーで、サブユニットの境界に活性ポケットを持つ(図4)。活性ポケット近傍表面にはAsp,Gluのクラスターが存在し、およそ90A2程の酸性領域を形成している。この部分は、K-Ras4BのようにCAAX近傍に塩基性領域を持つ基質たんぱく質と静電的にたんぱく質間相互作用をすると考えられており、GGTase-Iはたんぱく質の内部表面(活性ポケット)とその近傍の外部表面の双方を、基質認識に使う酵素と看做すことができる。そこでこのふたつの面に対してモジュールを設計し、ハイブリッド化に伴う加算性が実際に認められるかどうか、化合物の分子量の絞込みが可能かどうか、の2点に主眼を置き検証することにした。内部表面認識モジュールとして天然基質テトラペプチドCVILを、酸性表面に対して同等な面積を有するトリスアミノ没食子酸誘導体をモジュールとし、これらをアルキルスペーサーで連結し図4GGTase-Iの結晶構造(PDB#1N4Q)とモジュール図5GGTase-I結晶構造とハイブリッド型化合物(黄)設計。活性ポケットを正面から見たところ。赤がのsuperimposedモデル。負、青が正電価を帯びた箇所。近傍のα-subunit表面にAsp,Gluのクラスターが存在する。た種々のハイブリッド型化合物(図5)を合成し、GGTase-Iに対する阻害活性と阻害機構を、蛍光基質と同位体ラベル化[3H]GGPPを用いる2通りの方法で評価した。その結果、ハイブリッド型化合物はGGTase-Iの活性をnMオーダーで阻害し(Ki=150-210nM)、対応するモジュール類と比べて8~150倍活性が高かった(図6)。このときハイブリッド型化合物はGGTase-Iに対して競合的阻害剤として働き、類似酵素のファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)に対する選択性は150倍以上認められた。また、活性を損なわずに没食子酸誘導体の側鎖部分の簡略化にも成功した。このことから本化合物は、非特異的な結合を伴うことなくGGTase-Iの活性ポケットをその内部表面認識モジュールで識別して結合していることは明らかであり、その結果としてモジュールの加算性が観測されたことは、外部表面認識モジュールは標的の酸性領域に配置されることを強く支持している。従って、このモジュールアセンブリに基づくアンカー型阻害剤設計によって、標的たんぱく質外部表面に低分子量モジュールを位置選択的に配置させることが可能になり、たんぱく質相互作用を選択的に阻害する化合物の設計につながることが期図6ハイブリッド化合物と各モジュールのGGTase-Iの阻害活性に対するdose-response曲線の例。ハイブリッド化合物(赤)はCVIL(水色)、スペーサー付CVIL待される。(緑)、没食子酸誘導体(青)に比べて低濃度側にシフトしている。6.まとめと展望たんぱく質表面は、生物有機科学的興味からも創薬の見地からも非常に魅力的な分子標的である。しかしこれまで述べてきたように、ラショナル(セミラショナル)な分子デザインを基盤とする基礎研究と、実際のドラッグデザインとの溝はまだまだ大きく、課題は山積している。それでも、たんぱく質表面を標的とする阻害剤を考えるとき、いったん“drug-like”な化合物から離れ、創薬の観点に捕らわれずに“相手”を眺めてみるのも、ひとつの攻め方であると思う。通常の酵素阻害剤の論理的設計では、低分子で狙い易い活性ポケットを標的にして行われる。比較的限定された3次元空間に対する低分子探索ではinsilicoスクリーニングも併用でき、drug-likeなヒット化合物を得る可能性が高いが、酵素のisoform間ではその活性ポケットの構造が極めて高く保存されており、活性ポケット指向型低分子ではisoform選択的な機能制御が難しい場合もある。たんぱく質の外側の特異的あるいは共通の表面構造を標的として視野に入れることで、isoform選択的阻害剤、dual阻害剤への可能性も広がると考えている。現在私たちはこうした視点に立ち、モジュールアセンブリの応用研究を行っている。7.文献1.RuffnerH,BauerA,BouwmeesterT.DrugDiscov.Today2007,12,709-716.2.Selectedreviews:(a)ArkinMR,WellsJA.Nat.Rev.DrugDiscov.2004,3,301-317.(b)YinH,HamiltonAD.Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,4130-4163.3.OrnerBP,Ernst,JT,HamiltonAD.J.Am.Chem.Soc.2001,123,5382-5383.4.(a)ChinJW,SchepartzA.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,3806-3809.(b)RutledgeSE,VolkmanHM,SchepartzA.J.Am.Chem.Soc.2003,125,14336-14347.(c)Golemi-KotraD,MahaffyR,FooterMJ,HoltzmanJH,PollardTD,TheriotJA,SchepartzA.J.Am.Chem.Soc.2004,126,4-5.5.(a)RajagopalS,MeyerS,GoldmanA,ZhouM,GhoshI.J.Am.Chem.Soc.2006,128,14356-14363.(b)SmithTJ,StainsCI,MeyerSC,GhoshI.J.Am.Chem.Soc.2006,128,14456-14457.(c)DiasRLA,FasanR,MoehleK,RenardA,Obrecht,D,RobinsonJA.J.Am.Chem.Soc.2006,128,2726-2732.6.(a)HamuroY,CalamaCC,ParkH,HamiltonAD.Angew.Chem.Int.Ed.1997,36,2680-2683.(b)ParkH,LinQ,HamiltonAD.Proc.Nat.Acad.Sci.USA.2002,99,5105-5109.(c)BlaskovichM,LinQ,DelarueFL,SunJ,ParkH,CoppolaD,HamiltonAD,Sebti,SM.Nat.Biotech.2000,18,1065-1070.(d)ZhouHC,BaldiniL,HongJ,WilsonAJ,HamiltonAD.J.Am.Chem.Soc.2006,128,2421-2425.7.MachidaS,UsubaK,BlaskovichMA,YanoA,HaradaK,SebtiSM,KatoN,OhkandaJ.submitted.8.GelbMH,BrunsveldL,HyrcynaCA,MichaelisS,TamanoiF,BoorhisCV,WaldmannH.Nat.Chem.Biol.2006,2,518-528./////CuttingEdge/////メディシナルケミストリーに基づく化合物ライブラリーの設計第一三共株式会社創薬基盤研究所木村陽一1.はじめに2001年に完了したヒトゲノム解析により、生命機能の解明と新たな創薬標的の検証が進み医薬品の開発が加速されると期待されている。解析されたゲノム情報を医薬品として結実するためのアプローチがケモゲノミックスである。ケモゲノミックスは、標的とフェノタイプの攻め方によりフォワードケモゲノミックスとリバースケモゲノミックスに大別される1。リバースケモゲノミックスは特定のタンパクを生産し、このタンパクと化合物の結合を検出するスクリーニング系を構築、HighThroughputScreening(HTS)で化合物ライブラリー(以下ライブラリーと省略)からヒット化合物を発見した後にタンパクとフェノタイプの関係を検証しつつ、ヒット化合物の構造を最適化して医薬品を創出する。いっぽう、フォワードケモゲノミックスは細胞や組織に作用してフェノタイプを発現する化合物をライブラリーから見つけた後に、関連する遺伝子やタンパクを探索し、フェノタイプとの関連が検証されたタンパクに作用する化合物の構造を最適化して医薬品を創生する。NIHがヒトゲノムプロジェクトの進展を受けて2003年に開始した「生物医薬研究推進に向けた戦略」、いわゆるNIHロードマップ2においてライブラリーの構築を取り上げたことからも分かるように、ケモゲノミックスを展開するにはライブラリーの存在が必須である。ポストゲノム研究で疾患との関連が実証される創薬標的タンパクの数は~103個と予想されている。それでは、ケモゲノミックスを展開するためにはどの程度の規模のライブラリーが必要か。必要十分なライブラリーの化合物数を見積もる方法はないか。C,N,O,Sの30原子を組み合わせた化合物の数は1060個と計算されている3。しかし、創薬研究に適した構造の化合物はその一部であろう。本稿では、メディシナルケミストリーというフィルターで化合物を絞り込み、合成が可能な数の化合物でライブラリーを構築する可能性について考察する。2.ライブラリーの構築欧米の製薬企業では、すでに1980年代に自社の探索研究で合成した化合物を中心に数十万化合物のライブラリーを整備していた。1990年代になるとHTSの技術が発達し、アッセイがミニチュア化、自動化されてスクリーニングが高速化し、それまでより飛躍的に多くの化合物を短時間でスクリーニングすることが出来るようになった。このようなスクリーニングの高速化と相まってヒット率を向上するため、より多くの化合物が求められ、主に研究機関から収集された市販の化合物とコンビナトリアルケミストリーで合成された化合物から105-6個の化合物からなる大規模なライブラリーが構築された。2.1ライブラリーの多様性1990年代のライブラリー拡充期には、ライブラリー化合物の構造の多様性が重視された。構造の多様性は、ライブラリーや医薬品データベースの化合物の部分構造および物理化学的な状態を表すディスクリプターを主成分解析することにより化合物空間(ChemicalSpace)における化合物の相対的な分布としてとらえることができる。この解析により、広いケミカルスペースに偏りなく化合物が分布するようにライブラリーの化合物を補填することができる。しかし、ケミカルスペースは開いた空間であるためにライブラリーとして必要な化合物の数を議論することはできなかった。2.2ドラッグライク、リードライクな化合物HTSが行われるいっぽうで、ライブラリーには構造最適化の研究に適さない化合物が多く含まれていたため、ヒットの選別に余計な評価が必要であった。金属を含有する化合物、反応性が高い官能基を有する化合物、タンパクと非特異的に結合するfrequenthitter、スクリーニングの検出系に影響する発色団を有する偽ヒットなど、構造の最適化研究を妨害する化合物が問題となり、部分構造のクエリーなどでライブラリーから除かれた4。しかし、このような構造に明らかな問題がある化合物を除いてもライブラリーには構造の最適化研究に適していない化合物が存在する。そこで化合物の構造がドラッグライク、リードライクであることが求められ、医薬品との構造の類似度を指標として化合物を選別する方法5-6、経口剤の分子量やlogPなどの解析からLipinskiらが提唱した”ruleof5”7など、種々の方法で不要な化合物がライブラリーから除去されてきた。その結果、Wyethでは66%、AstraZenecaでは50%、Pfizer8とLilly9でもそれぞれ40%の化合物がライブラリーから整理された。3.化合物の収集からライブラリーのデザインへ新薬開発の合成研究では、構造活性相関から化合物に薬として好ましい性質を付与することができる構造を予測、合成して検証することにより構造を最適化する。また、フォーカスライブラリーは特定のタンパクファミリーに作用する化合物群に共通する構造の特徴を有する多様な化合物としてデザインされる。両者は、化合物のデザインの方向性は最適化と多様化で逆であるが、どちらも標的のタンパクがあり、構造活性相関からデザインが出発している点でメディシナルケミストリーとしての接点がある。それでは、特定の標的タンパクを想定しないライブラリーと構造最適化研究との接点はないだろうか?以下で、メディシナルケミストリーのナレッジからライブラリーをデザインする方法について考察する。3.1PharmacophoreSpaceファーマコフォアは化合物が生理活性を示すために必要な分子の形や官能基などの構造上の特徴である。化合物から推定されるファーマコフォアを抽出し、それらを3次元空間で重ね合わせて多数のファーマコフォアが占める空間を”PharmacophoreSpace”と定義する。さらに、化合物がドラッグライク、リードライクであるための条件として分子量<500という制限を加えると、このPharmacophoreSpaceは半径10-20Åほどの球状空間になる。したがって、化合物をファーマコフォアに変換するとライブラリーの多様性を閉じた空間の中で議論することが可能になる。3.2医薬品の構造医薬品のデータベースCMCの5,120化合物の特徴を分子のフレームワークとして分類すると、2,542化合物が出現頻度の上位20のフレームワークの中に分類されると報告されている10。CMCの化合物から抽出した側鎖構造、延べ15,000個うち11,000個は出現頻度の上位20の側鎖構造に含まれていた11。また、タンパクと相互作用する可能性があるファーマコフォアポイント、すなわちアミノ基、水酸基、カルボニル基、スルフォン基が2つ存在する化合物をドラッグライクの指標とするだけで、ニューラルネットワークによる計算に近い精度で化合物をドラッグライクとノン-ドラッグライクに識別することができたという報告もある12。これらの報告は、ドラッグライク、リードライクな化合物がC,N,O,Sの30原子を組み合わせた化合物1060個のうちの一部にすぎないことを示している。3.3Drug/drugsimilaritiesandtarget/targetdissimilarities創薬の標的タンパクと医薬品とをそれぞれ構造の類似性でクラスタリングし、両者のマトリックスで比較すると、タンパクのサブタイプに結合する化合物には構造の類似性がある1,13。また、ファミリーのタンパクに選択性なく作用する類似した構造の化合物も多い。このように、タンパクの構造の類似性と結合する化合物の構造の類似性に相関があることは容易に理解できる。しかし、メディシナルケミストの視点で化合物を見ると、構造が類似しているが全く異なるファミリーのタンパクに作用する化合物が存在する。図1の化合物は分子のフレームワークあるいはフレームワークの一部として5員環の隣り合う位置に6員環が結合した共通の構造を有している。しかし、ファーマコフォアポイントとなる官能基あるいは側鎖構造の違いにより異なる生理活性を示す。このような例は他にも見られることから、環境が類似したタンパクのポケットと結合し易い化学構造が多く存在していると推察することができる。HOCOOHOHMeONFMeNNNHNNMeOHMeNNOOClOCOX2CB1p38MAPkinaseHMG-CoAReductase図1構造の類似性と標的の多様性3.4ライブラリーをデザインするこれまでに創薬研究の対象となった遺伝子の数は~400-500個であること14、ADMETを調節するための修飾が加えられた特許や文献の化合物のファーマコフォアは同じであると仮定すると、メディシナルケミストリーで合成された化合物のファーマコフォアタイプは、多く見積もっても~104個ではないだろうか。この数はポストゲノム研究で検証されると予想されている新規創薬標的タンパク~103個と比較して不十分ではないだろうか。著者らは、ライブラリーから新規標的タンパクに対するHTSヒットを得る確率を高めるには構造の多様性を高めるという戦術ではなく、ファーマコフォアタイプを増やす戦略が効果的であると考えた。ライブラリーは特定の標的タンパクを想定しないため、すでに研究の対象となったタンパクに対する構造活性相関やファーマコフォアをライブラリーのデザインに直接応用することはできない。しかし、ファーマコフォアはおもに1)疎水性相互作用2)静電相互作用3)水素結合から構成されていて、2)、3)の相互作用に関与する官能基の種類は限られており、前述のとおり医薬品のファーマコフォアを構成する頻度が高い環構造や側鎖構造、置換基も限られている。タンパクと3点で相互作用する化合物がHTSヒットの基準である<μMの活性を示すと仮定すると、既知のファーマコフォアの構成要素を組み換えた”疑似ファーマコフォア”の数を推定することが可能となる。言い換えると、既知のタンパクと相互作用する化合物の部分構造を組み替えてライブラリーの化合物をデザインすると、部分構造の数からライブラリーの化合物数を推定することができる。このようにしてライブラリーをデザインすることができれば、構造の最適化研究とライブラリーのデザインにはファーマコフォアというメディシナルケミストリーの接点ができる。3.5PharmaSpaceLibrary著者らは、多様なファーマコフォアタイプの化合物でPharmacophoreSpaceを充填するというコンセプトで既知の化合物から新規なライブラリーの化合物をデザイン・合成しており、このライブラリーをその由来から”PharmaSpaceLibrary”と名付けている。その合成の過程は以下の通りである:1)特許、文献の情報を解析して網羅的にファーマコフォアを抽出する2)抽出したファーマコフォアからファーマコフォアポイントを損なわぬよう骨格や部分構造、側鎖構造を抽出する3)抽出した部分構造のファーマコフォアポイントを変換して新規な部分構造をデザインする4)部分構造がタンパクと結合していた疎水性相互作用、静電相互作用、水素結合を考慮してファーマコフォアの構成要素を組み換えた疑似ファーマコフォアとなる化合物をデザインする5)デザインした化合物を合成するためのビルディングブロックを合成する6)デザインにしたがって化合物を合成して精製する。PharmaSpaceLibraryをデザインする過程で抽出してきたファーマコフォアからタンパクと相互作用する部分的なフレームワークの数を~102個、ビルディングブロックの数を~103個、化合物の総数を~105個と推定した。この化合物数は、これまでにコンビナトリアルケミストリーで合成された化合物の数より少ないもので、現実に合成することができる範囲の数である。4.おわりに収集化合物で構築したライブラリーからは予想できないケモタイプのヒットが得られる可能性があるが、すでに述べた通りライブラリーの規模の問題があり化合物の構造の質を高める工夫も必要である。フォーカスライブラリーは特定のタンパクファミリーと相互作用する既知の化合物からデザインされたライブラリーであり、対象とするターゲットに対するヒットが得られる確率は高いが、合理的にデザインされているが故に新規なケモタイプのヒットを得る可能性は収集化合物より低い。PharmaSpaceLibraryはタンパクと相互作用する確からしさという点では曖昧さを許しながら3種の相互作用をする部分構造を再構成してデザインしたライブラリーであり、新規なタンパクに対するヒットと阻害剤などが既にあるタンパクに対する新たなケモタイプの化合物を発見することを期待している(図2)。図2.2つの多様性空間とGPCRを例にしたHTSヒットの分布PharmaSpaceLibraryには基本的に不適当な構造の化合物はなく、ruleof5の各要素の分布は市販経口剤のそれとほぼ一致する。社内のHTSの結果を化合物数とヒットが得られるターゲット数の比率で比較すると、PharmaSpaceLibraryのヒット率は収集化合物を中心とするライブラリーより有意に高かった。この点で、デザインの基本コンセプトの妥当性は検証できたと判断している。しかし、合成途上のライブラリーでありファーマコフォアスペースを十分に充填していない。デザインの妥当性を真に評価するためは本ライブラリーのすべての化合物がとり得る擬似ファーマコフォアを解析して比較すべきであるが、一つの化合物に複数の擬似ファーマコフォアが存在する可能性があり、すべての化合物の擬似ファーマコフォアを3次元で計算して比較することは現在の計算機の能力では極めて困難である。この点は、今後の大きな課題である。化合物の数を増やして標的タンパクに対するヒット率をより高めることができるよう、さらにライブラリーのデザインと解析法に検討を加えていきたい。5.参考文献1Bredel,M.,Jacoby,E.,Nat.Rev.Genetics,5,262-275(2004).2Zerhouni,E.,Science,302,63-72(2003).3Bohacek,R.S.etal.,Med.Res.Rev.,16,2-50(1996).4Roche,O.etal.,J.Med.Chem.,45,137-142(2002).5Wang,J.etal.,J.Comb.Chem.,1,524-533(1999).6Xu,J.etal.,J.Chem.Inf.Comput.Sci.,40,1177-1187(2000).7Lipinski,C.A.etal.,Adv.DrugDeliveryRev.,23,2-25(1997).8Lipinski,C.A.,4thSymposiuminDrugDiscovery,April7-8,2005,Antwerp,Belgium.9Blower,P.E.,DDTConference,August9-11,2005,Boston,U.S.A.10Bemis,G.W.etal.,J.Med.Chem.,39,2887-2893(1996).11Bemis,G.W.etal.,J.Med.Chem.,42,5095-5099(1999).12Muegge,I.,J.Med.Chem.,44,1841-1846(2001).13Cleves,A.E.,J.Med.Chem.,49,2921-2938(2006).14Hopkins,A.L.,NatureRev.DrugDiscov.,1,727-730(2002)./////Activities/////構造活性フォーラム2007「分子間相互作用の基礎、解析、応用研究」開催報告構造活性フォーラム2007実行委員長仲西功標記フォーラムを、平成19年6月29日(金)ぱるるプラザ京都(京都市下京区)において開催した。今年度は、分子間相互作用を主題として取り上げ、タンパク質‐薬物間あるいはタンパク質-タンパク質間に働く分子間力の本質を理解し、相互作用の精密解析や最新の応用研究について学ぶことを目的とする講演・討論の場を企画した。特にこれから構造活性相関や医農薬設計、分子間相互作用解析研究を始めようとしている大学院生や若手研究者を意識して、基礎と解析に比重をおいた構成とした。また、講師にもその点に配慮した講演となるよう事前にお願いした。当日のプログラム及び講演内容は、下記の通りである。(1)薬物設計における弱い分子間力の重要性-CH/π水素結合を中心にCHPI研究所西尾元宏(2)溶媒効果を含めた量子化学計算法による蛋白質とリガンドの相互作用解析京都大学大学院薬学研究科・産業技術総合研究所北浦和夫(3)生理活性物質との相互作用に基づく蛋白質機能探索~新規創薬ターゲット探索に志向したchemicalgenetics戦略~兵庫医療大学薬学部医療薬学科田中明人(4)タンパク質モデリングを基礎としたタンパク質とタンパク質を含むリガンドとの相互作用北里大学薬学部梅山秀明最初の講師である西尾元宏先生には、導入として大学院生にも理解できるレベルでの分子間相互作用の基礎解説をして頂いた後、分子間に働く弱い相互作用、特にCH/π相互作用の重要性について実験および計算の両面から解説して頂いた。北浦和夫先生にはフラグメント分子軌道(FMO)法によるタンパク質-リガンド間相互作用の精密解析の話をして頂いた。FMO法の基礎から解説して頂き、量子化学の専門家でなくても理解が容易であったと思われる。田中明人先生のご講演は、分子間相互作用の特異性により新たな創薬ターゲットタンパク質を探索するお話であった。かなり創薬の現場に近い内容で、企業研究者の関心が高かった。梅山秀明先生には、CASP、CAPRIといった予測コンテストへの参加のお話を中心に、タンパク質-タンパク質相互作用を分子モデリングとシミュレーションにより予測する精力的な研究のご紹介をして頂いた。いずれのセッションも予定していた時間を超過するくらい活発な質疑が交わされた。講演会のあとも、ほとんどの参加者が懇親会に参加し、意見・情報交換されていた。今回、産学を中心に104名の参加があり、そのうち3分の1が学生であった。フォーラムの狙いからするとまずまずの学生参加比率であったと思われる。最後になったが、講師の先生方には、ご多忙の中丁寧なテキスト原稿を準備して頂いたことを、この場をお借りして御礼申し上げたい。/////Activities/////SARPromotionAward平成19年度受賞者(庶務幹事新潟薬科大学米田照代)構造活性相関部会では,平成17年度より構造活性相関研究の発展を促進するための事業として当該制度を設け,部会員の国外での研究発表を奨励している.平成19年度は,6月29日の常任幹事会において,受賞者を次の1名に決定した.氏名錦織理華(にしきおりりか)所属大阪大谷大学・薬学部・分子化学講座(助教)参加学会名PLS07-5thInternationalsymposium開催期日2007年9月5日-7日開催場所ノルウェー、オスロ演題TheimprovementofthenonparametricregressionmethodbasedonthePLSalgorithm(ポスター発表)受賞者の報告は,次号のSARNewsに掲載される予定である./////Activities/////<会告>第35回構造活性相関シンポジウム日時2007年11月15日(木),16日(金)会場京都大学百周年時計台記念館(京都市左京区吉田本町)主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会,日本農芸化学会,日本分析化学会,日本農薬学会講演時間特別講演60分,招待講演40分,依頼講演30分,共通セッション20分,一般講演25分(講演番号に*印)又は15分,ポスターセッション150分第1日(11月15日)共通セッション(10:30~11:50)JK01活性構造知識ベース構築とそのソフトウェア基盤○大森紀人,藤島悟志,森幸雄,堀川袷志,山川眞透,岡田孝(関西学院大・理)JK02100クラスSVMによる薬物の活性クラス分類○河合健太郎,藤島悟志,高橋由雅(豊橋技科大・工)JK03PLSアルゴリズムを用いたノンパラメトリック回帰手法の改良○錦織理華(大阪大谷大・薬),米倉聡(阪大・薬),岡本晃典(阪大院・薬),大軽貴典(阪大院・薬、田辺製薬),松浦晶子,越智雪乃(阪大院・薬),森本正太郎(大阪大谷大・薬),斉藤直(阪大・ラジオアイソトープ),川下理日人(阪大院・薬、阪大微研),安永照雄(阪大微研),川瀬雅也(大阪大谷大・薬、阪大微研),高木達也(阪大院・薬、阪大微研)JK04Generativetopographicmapping(GTM)によるドラッグライクネス評価モデルの構築○荒川正幹(東大院・工),宮尾知幸(東大・工),尾崎由隆(東大院・工),青木宏(東大・工),船津公人(東大院・工)特別講演(13:15~14:15)JSメタボロミクス最前線:FT-ICR-MSでみる悉皆的生物代謝太田大策(大阪府大院・生命環境)ポスターセッション(14:15~16:45)14:15~15:15奇数番発表15:15~16:15偶数番発表KP01分子シミュレーションによる高活性リガンド探索の試み○温品由美,小杉貴洋,黒野昌邦,村田克美,仲西功,北浦和夫(京大院・薬)KP02フラグメント分子軌道法を用いたcaseinkinase2aと阻害剤の相互作用解析○浅田直也,仲西功,北浦和夫(京大院・薬)KP03P450阻害除草剤のドッキングQSAR○石川俊夫,猛尾ひろみ,中山仁志(石原産業・中研),中馬寛(徳島大・薬)KP04FMO法を用いたVDR/2MD複合体に関する理論的研究4○大塚智世,山岸賢司(立教大・理),山本恵子(昭和薬大・薬),山田幸子(日大・医),常盤広明(立教大・理)KP05炭酸脱水酵素-ベンゼンスルホンアミド阻害剤複合体の非経験的分子軌道法を用いた相互作用解析とQSAR○福島淳治,吉田達貞,橋爪清華,中馬寛(徳島大院・薬)KP06レチノイドの構造と抗酸化活性○高橋典子,大庭紀宏(星薬大・医薬品化学研)KP07Druglikenessを有する化合物のoralbioavailability予測○石塚賀彦(阪大院・薬),大軽貴典(阪大院・薬、田辺製薬),岡本晃典(阪大院・薬),川下理日人(阪大院・薬、阪大微研),高原淳一(阪大院・薬),錦織理華(大阪大谷大・薬),安永照雄(阪大微研),川瀬雅也(大阪大谷大・薬、阪大微研),高木達也(阪大院・薬、阪大微研)KP08カテゴリーアプローチを用いた化学物質の生物濃縮性予測方法の検討○佐藤佐和子,櫻谷祐企,中島基樹,山田隼(製品評価技術基盤機構)KP09ハロゲン化フェノール類の毒性と構造活性相関に関する研究〇石原良美,齋藤寛,髙野二郎(東海大・理)KP10薬物代謝酵素CYP3A4の構造柔軟性:多種の薬剤を捕捉する要因とは何か○大倉一人,芦澤暁子,川口遊喜,林由樹,松田吉永,牟田由香利,渡邉靖子,桝渕泰宏,篠原康雄,堀均(千葉科学大・薬)KP11コンピュータを用いた非ペプチド性BACE_1阻害剤の分子設計○松下泰雄,中込泉,山乙教之,広野修一(北里大・薬)KP12PPARδアゴニストに対する3D-QSARモデルの構築○中込泉,山乙教之,合田浩明,広野修一(北里大・薬),春日淳一,宮地弘幸(東大・分子細胞生物学研)KP13セフェム系抗生物質のラット脳脊髄腔液移行性に関するQSAR解析○吉田麻衣,坂和園子,阿部覚,木原勝(徳島大院・薬),内藤真策(大塚製薬),山内あい子(徳島大院・薬)KP14アゾール系化合物のCYP2B/3Aとの結合および酵素活性阻害様式の解析(2)○糸川大祐,山内あい子,中馬寛(徳島大院・薬)KP15化学物質の28日間反復投与毒性試験データの解析○櫻谷祐企,佐藤佐和子,張慧琪,西川智,山田隼,前川昭彦(製品評価技術基盤機構)KP16計算化学的手法を用いた新規β-セクレターゼ阻害剤の探索○藤本拓,松下泰雄,合田浩明,広野修一(北里大・薬)KP17Structure-basedDrugDesignにおける仮想的水和リガンドを用いたドッキングスタディの有用性○弦間格,山乙教之,酒匂祐介,合田浩明,広野修一(北里大・薬)KP18X線構造解析及び熱力学的解析に基づくCK2a阻害剤の構造活性相関○仲庭哲津子(大阪府大院・理),深田はるみ(大阪府大院・生命),関口雄介,木下誉富(大阪府大院・理),仲西功,北浦和夫,平澤明,辻本豪三(京大院・薬),多田俊治(大阪府大院・理)KP19ProteinDataBankに蓄積された分子間相互作用のデータベース化にむけて~リガンド認識様式の整理○齊藤美保子,白井剛(長浜バイオ大)KP20VirtualscreeningによるUCH-L3の新規阻害剤同定○平山和徳(国立精神・神経、早大院・先進理工学研),青木俊介,西川香里(国立精神・神経),松本隆(早大院・先進理工学研),和田圭司(国立精神・神経)KP21FAMSmulti:複数の鋳型タンパク質を用いた全自動ホモロジーモデリング○加納和彦,岩舘満雄,寺師玄記,竹田-志鷹真由子,高谷大輔,酒井博子,梅山秀明(北里大・薬)KP22SKE-DOCK:相補性を考慮したドッキングと最適構造評価法による、タンパク質複合体立体構造予測法の開発○寺師玄記,竹田-志鷹真由子,加納和彦,岩舘満雄,高谷大輔,酒井博子,梅山秀明(北里大・薬)KP23Fams-ace:CASP7におけるタンパク質立体構造の再構築と、最適構造の評価法の開発○竹田-志鷹真由子,寺師玄記,加納和彦,岩舘満雄,高谷大輔,酒井博子,梅山秀明(北里大・薬)KP24エイコサノイドとグルタチオンの代謝に関係する一群の3量体膜タンパク質の網羅的モデリング:MAPEGsuperfamilycomplexmodeling○加納和彦,竹田-志鷹真由子,岩舘満雄,寺師玄記,高谷大輔,酒井博子,梅山秀明(北里大・薬)KP25IARC分類に基づく発癌性化合物の解析とSupportVectorMachineによるヒト発癌性予測○竹崎俊晶,小林進一,坂本久美子,木原勝,山内あい子(徳島大院・薬)KP26廃水処理施設流入水中のBOD予測に関する研究○川添智久,吉田雄,木曽祥秋,高橋由雅(豊橋技科大),坪井孝緒,日.勉,平野新一,河村博年(神鋼電機)KP27MST部分木を利用した類似空間検索と薬物構造データベース検索への応用○熊谷正雪,藤島悟志,高橋由雅(豊橋技科大)KP28モチーフ構造適合度マップの構築○大村隆晴(関西学院大・理工学研),岡田孝(関西学院大・理),藤島悟志(豊橋技科大)KP29セロトニンアゴニストの基本的活性構造抽出大森紀人,○森幸雄,堀川袷志,山川眞透,岡田孝(関西学院大・理)KP30チトクロームP450の基質および阻害剤選択性の情報科学的方法による予測○西岡大貴,近藤崇泰,寺尾直也,中馬寛(徳島大院・薬)KP31KY法によるAmes試験データ解析と考察○湯田浩太郎(阪大・臨床医、富士通),JoseMartinCiloy,北島正人(富士通九州)KP32ドーパミンアンタゴニストの基本的活性構造抽出大森紀人,森幸雄,堀川袷志,○山川眞透,岡田孝(関西学院大・理)KP33超偏極キセノンの肺機能診断薬としての利用:肺癌モデルマウスへの適用○今井宏彦,伊藤豪,木村敦臣,藤原英明(阪大院・医学研)特別講演(16:45~17:45)KSSignaltransductiontherapywithkinaseinhibitorsfromaNestedChemicalLibraryProf.GyorgyKeri(PeptideBiochemistryRes.GroupofHung.Acad.Sci.andSemmelweisUniversity)第2日目(11月16日)一般講演(9:30~10:55)K01*環境中に存在する化学物質の人工脂質膜透過性-生態系に対する蓄積性およびヒト曝露量予測への応用-○藤川真章,赤松美紀(京大院・農),中尾和也,清水良(田辺製薬)K02チトクロームP450の基質および阻害剤選択性の情報科学的方法による予測○西岡大貴,近藤崇泰,寺尾直也,中馬寛(徳島大院・薬)K03ファージディスプレイによるペプチドの多様性とScaffold○内山文昭,千原智美,毛利彩恵子,治京玉記(中村学園大)K04キチナーゼBに対するペプチド性阻害剤Argifinの相互作用解析とその誘導体の論理的分子設計○合田浩明,広野修一(北里大・薬)K05SYBYLZapプログラムを用いたMM/PBSA結合自由エネルギー計算によるドッキングポーズ選択の有効性○山乙教之,木村敏郎,広野修一(北里大・薬)招待講演(11:00~11:40)K06創薬バリューチェインによるインシリコでの阻害剤探索と最適化に関する研究井上豪(阪大院・工)招待講演(13:30~14:10)K07多標的インシリコスクリーニングと化合物記述子としてのドッキングスコア福西快文(産総研)一般講演(14:10~15:15)K08*SWAPMODELによるタンパク質の部分脱水和エネルギーの解析○村田克美,仲西功,北浦和夫(京大院・薬)K09*Fams-ace:CASP7におけるタンパク質立体構造の再構築と、最適構造の評価法の開発○竹田-志鷹真由子,寺師玄記,加納和彦,岩舘満雄,高谷大輔,酒井博子,梅山秀明(北里大・薬)K10蛋白質サブユニット間空間体積の計算とその利用○前田美紀,昇博也(農業生物資源研)依頼講演(15:25~15:55)K11ThevalueofsmallmoleculecrystallographicdataindrugdesignJohnW.Liebeschuetz(CambridgeCrystallographicDataCentre,UK)一般講演(15:55~17:00)K12*ProtoporphylinogenIXoxidase阻害除草剤の共通特徴予測とその結果○石川俊夫,坂下信行,芳賀隆弘(石原産業・中研)K13細菌の細胞骨格形成を阻害する新規抗菌剤の開発と応用○岡田崇嗣,岩井伯隆,北爪智哉(東工大・生命理工)K14*マイクロアレイデータの多変量解析による抗癌剤感受性規定因子の選択、および未知検体の感受性予測○長谷川清,石井暢也,青木裕子,森一茂,白根正智,堺谷政弘,根東攝,大田雅照,白鳥康彦,佃拓夫,新間信夫(中外製薬)参加予約申込10月26日(金)締切,詳細はホームページをご覧下さい。参加費[一般]予約8,000円,当日9,000円[学生]予約3,000円,当日4,000円併催の第30回情報化学討論会に参加できます(要旨集含む)懇親会11月15日(木)18:30芝蘭会館山内ホール(情報化学討論会と合同)[一般]予約7,000円,当日8,000円[学生]予約3,000円,当日4,000円問合せ・申込み先〒108-0071東京都港区白金台5-2-5トランドゥ301第35回構造活性相関シンポジウム事務局担当:加用Tel(03)5420-0572Fax(03)5420-0297E-mailsar2007@event-convention.comホームページhttp://hawk.kyoto-bauc.or.jp/gakkai/sar2007/構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1994年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年一回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年二回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第13号をお届けいたします。ご多忙の中、ご執筆いただきました諸先生方に心よりお礼申し上げます。Perspective/Retrospectiveでは、大神田淳子先生(大阪大学産業科学研究所)に蛋白質表面を標的とする阻害剤の創製についてご解説いただき、通常注目する蛋白質cavity(内部表面)のみならず、それ以外の特徴的外部表面をも積極的に利用することの重要さを、CuttingEdgeでは、木下陽一先生(第一三共株式会社)に化合物library構築法をご解説いただき、その設計の際にpharmacophore多様性に着目することの有用さを示していただきました。創薬研究を進める上で、大いに参考になることと思います。このSARNewsが、今後とも構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを編集委員一同願っております。(編集委員会)SARNewsNo.13平成19年10月1日発行:日本薬学会構造活性相関部会長石黒正路SARNews編集委員会(委員長)藤原巌清水良黒木保久高橋由雅福島千晶粕谷敦久保寺英夫*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。