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SAR News No.50

構造活性相関部会・ニュースレター <1 April, 2026>

SAR News No.50

「目次」

///// Perspective/Retrospective /////
標的分解薬技術の風景 ―― AUTACs 研究者の視点
東北大学大学院生命科学研究科 有本博一 ・・・ 1
///// Cutting Edge /////
デコイ核酸型 PROTAC による転写因子標的分解 ― 構造活性相関と DDS 統合設計 ―
国立医薬品食品衛生研究所 出水庸介 ・・・ 6
三者複合体相互作用解析が拓く標的タンパク質分解誘導薬の分子設計
愛媛大学プロテオサイエンスセンター 山中聡士 ・・・ 14
///// SAR Presentation Award /////
SAR Presentation Award について、および受賞者コメント ・・・ 21
///// Activities /////
<報告>
第 53 回構造活性相関シンポジウム 開催報告
近畿大学理工学部 川下理日人 ・・・ 25
<会告>
構造活性フォーラム 2026 会告
近畿大学薬学部 中村真也 ・・・ 27

編集後記 ・・・ 28
///// Perspective/Retrospective /////

標的分解薬技術の風景
――AUTACs 研究者の視点
東北大学大学院生命科学研究科 有本博一

1. はじめに:PROTACs への一極集中は続くか
 ER 特異的分解を行う Vepdegestrant(ARV-471)、AR の分解を促進する BMS-986365、BTK の分解を促進する Catadegbrutinib(BGB-16673)などの PROTACs が臨床試験後期にあり、近い将来の実用化に大きな期待が集まっている。これら以外にも BRD4、CDK2、EGFR、IRAK4、MDM2、 STAT3、STAT6 などの標的に対して臨床試験が始まっており、この分野の発展は今後も継続すると考えられる。
 筆者は、プロテアソーム分解と相補的なオートファジーの活用を目指して AUTACs(2019 年)を発表した(図1)[1]。PROTACs を補完する新たなアプローチの動向に強い関心を持っている。本稿では、学術論文に限定せず、スタートアップ等が公表した企業情報をも含めて、現在の状況を概観したいと思う。

図 1. オートファジー機構にもとづく標的分解薬への期待

2.オートファジーを活用する標的分解薬
 標的分解薬の多くは、分解対象(標的)と細胞内分解系を近接させることにより標的分解を誘導する。分解系を構成する多くの因子のうちで、ひとつだけが分解薬と直接結合する。この因子が、他のすべての因子をうまく操って標的分解を実現しなくてはならない。オートファジーには 100 を超える因子が関わるため、そのひとつを選ぶことは難しく、この分野の技術開発の肝となる。ATTEC(2019 年)[2]、AUTOTAC(2022 年)[3] は、AUTACs とともに黎明期に登場した技術で、それぞれ LC3B、p62/sqstm1 に結合する「分解タグ」を用いている(表1)。
 分解基質を包み込む隔離膜上にある LC3B は、マクロオートファジーの活用を考えるとき、もっとも直裁的な選択となる。p62 は、LC3B に結合し、オートファジーで優先的に分解される基質として知られている。このため、p62 に分解タグを結合させるアイデアも直裁的で理解しやすい。
 ATTEC を活用するスタートアップは複数あり、米国の PAQ Therapeutics(2020 年創業)が、代表的存在である[4]。AUTOTAC の開発は、韓国の AUTOTAC Bio(2018 年創業)が担っている [5]。
 AUTOTAC Bio は、タンパク質凝集体の分解に焦点をあてて開発を進め、2025 年 4 月から Tau分解剤(ATB2005A)についてフェーズ I の臨床試験を開始した[6]。また、パーキンソン病に関係する α-シヌクレイン分解剤についても動物実験の結果を論文発表している[7]。
 PAQ Therapeutics は、遺伝性神経変性疾患を主な対象領域として創業し、ATTEC 技術を活用したタンパク質凝集体や脂肪滴などの分解に取り組んでいた。しかし、2025 年 5 月のシリーズ B
(39 百万米ドル)において、オートファジー活用から一転し、KRAS を標的とする抗がん剤への
方針転換を発表した [8]。これは、プロテアソームを活用する標的分解への転換を示唆している。米国のCasma therapeutics はPHYLTTM という二官能性の標的分解剤プラットフォームを開発し
た[9]。米国の著名なオートファジー研究者が設立に関与し、有力 VC の大規模な投資が大きな注目を集めてきた。学会や商談会では、in vitro 疾患モデルでの多彩な標的分解効果が示されてきたが、学術論文やプレプリントを発表しておらず具体的技術内容は伏せられている。しかし、 2024 年末から 2025 年前半にかけて、3件の特許が公開され、構造式や機序を理解する手がかりが得られた[10,11]。特許情報にもとづけば、PHYLTTM は異なる機序にもとづく複数の技術の集合体と予想される。ひとつは AUTOTAC と同様に p62 バインダーを用いるもので[10]、もう一方はオートファジー開始因子(ULK1 複合体)のバインダーを用いる[11]。ULK1 複合体は、オートファジーの最上流で働く因子群である。すなわち後者では、「標的の近傍でローカルなオートファジーを開始させる」という新たな発想が導入されたことになる。オートファジー研究の進展により、選択的分解を受ける基質の周囲に開始因子が物理的に結合する例が示されており、新たな進展を取り込んでいる点で、黎明期に登場した技術との差異が見られる[12]。しかしながら、 PHYLTTM 技術の小動物モデルにおける効果は、現時点では公表されていないようである。また、同社は、TRPML1 アゴニスト CSM-101 による Gaucher 病治療薬開発に経営資源を集中すると発表した。開発の力点が標的特異的分解(PHYLTTM)から、基質を特定しないリソソーム機能の改善にシフトしたことが伺える(2025 年 6 月)[13]。
 オートファジーを利用した標的分解技術は、その分解対象の広さゆえに、適応疾患の選択という課題を常に内包してきた。凝集体や異常タンパク質、さらにはオルガネラまで含む多様な標的に介入できる一方で、どの疾患が最初のキラーアプリケーションとなり得るのか、必ずしも明確ではない。この点は、オートファジーが持つ「万能性」の裏返しとも言える課題である。
 特に神経変性疾患は、タンパク質凝集が病態の中核に位置するという点で理論的な親和性は高いものの、臨床試験の規模や期間、成功確率の観点からみて事業的なハードルが高い領域である。そのため、末梢疾患など、より短期間で臨床的実証が可能な適応を優先すべきだという意見が、投資家の間で根強く存在してきた。
 一方で、近年の動向を見ると、こうした慎重論とは異なる選択肢も現実のものとなりつつある。すでに紹介したように、AUTOTAC Bio は Tau 凝集体を標的とした臨床試験を開始している。難易度の高い神経変性疾患を最初の適応として選択するという判断が、必ずしも非現実的ではないことを示し始めている。これは、技術の完成度というよりも、アンメットメディカルニーズを重視するという戦略的選択が評価され得る段階に入りつつあることを示唆している。
 PROTACs においては、限られた疾患領域(オンコロジー)と共通の分解タグを基盤として複数の企業が事業を行っている。この経緯を踏まえると、オートファジーを利用した分解技術においても、「最初の成功例」が分野全体の見通しを大きく変える可能性がある。疾患選択の難しさは、このモダリティが、なお発展途上にあることを反映したものである。
表 1. メカニズムにもとづくオートファジーTPD 技術の分類・企業化の現状

技術・企業
分解タグと結合する因子
開発段階
状況
AUTAC(東北大学)
Protein X (未公表)
基礎
第三者による小動物薬効報告有
ATTEC(PAQ, 米国)
LC3B
中断可能性
他の TPD 技術へ転換
AUTOTAC(韓国)
p62 (ZZ ドメイン)
Phase 1
AUTAC とは異なる機構

(2025~)
Tau 分解で臨床試験中
PHYLT(Casma, 米国)
p62 or FIP200
中断可能性
TRPML1 アゴニストに集中
p62 biodegrader
p62, TBK1 等
基礎
オートファジー因子の
(Novartis, スイス)

スクリーニングで TBK1 等を同定
3.新たに参入した関連スタートアップ企業とその技術
 2025 年に標的分解薬の領域へ参入した企業として、TRIMTECH therapeutics(Seed 投資:31 百万米ドル, 2025 年 3 月)がある[14]。同社は英国ケンブリッジを拠点としている。TRIM21 を E3リガーゼとして標的の分解を誘導する点で、PROTACs など従来の技術・企業と共通項を持つが、中枢神経系疾患や炎症疾患に関わるタンパク質凝集体の除去を中心に据えている。可溶性の単量体タンパク質を主眼としてきた従来の PROTAC 設計とは異なり、プロテアソーム分解の適用範囲を再定義しようとする点が注目される。
 TRIM21 は、基質のクラスタリングによって活性化を受けるユニークな性質を有し、凝集体分解に特に適した特徴を持つ(図2)。この分野でよく知られた TRIM-Away 技術[15,16]にも用いられており、抗体と結合した標的タンパク質を、細胞内で E3 リガーゼである TRIM21 によって認識し、プロテアソーム経路で急速に分解することが示されている。TRIMTECH には、 TRIM-Away に関わった研究者が参画しており、低分子である TRIMTACTM/TRIMGLUETM を開発している(図2)。

図2. TRIMTAC (TRIM21 の会合による活性化)

 続いて、標的タンパク質分解技術の競合と目される新興スタートアップを紹介する。フランスパリを拠点とする Enodia Therapeutics(Seed 投資:25 百万米ドル, 2026 年 1 月)である[17]。同社の中核技術は、小胞体膜に存在するタンパク質輸送チャネルである Sec61 を標的とする低分子化合物群である。Sec61 は、分泌タンパク質や膜タンパク質が細胞質から小胞体内腔へと移行する際の必須因子であり、この過程を部分的に制御することでタンパク質の成熟や細胞表面発現を抑制できる(図3)。炎症性サイトカインや免疫関連分子の多くは、小胞体を経由して分泌または膜提示されるタンパク質であり、その必須の関門である Sec61 の阻害により制御を受ける。同社は “protein degradation at the point of synthesis” と表現しているが[17]、実際には特定タンパク質の分解を促進しているのではなく、むしろ幅広く分泌性タンパク質の抑制を目指す戦略と表現できる。
 このアプローチは、既に存在するタンパク質を分解経路へ導く方法(PROTAC や AUTAC 等)とは異なり、問題となるタンパク質が「有効な形で細胞内外に現れる前段階」を制御する。この違いは、標的タンパク質分解誘導薬という分野の今後を俯瞰する上で示唆的であろう。Enodia Therapeutics の事例は、タンパク質恒常性の制御には分解以外にも複数の有効な介入点が存在することを改めて浮き彫りにしている。分解薬が「下流での解決策」だとすれば、同社の戦略は「上流での介入」によって同様の治療効果を狙うものと位置づけられる。疾患や標的によっては分解以外の手段が合理的であることを示す好例であり、2026 年初頭の技術地図を描く上で欠かせない存在と言える。

新生タンパク質

細胞質 ER内腔
リボソーム

Sec61

トランスロコン

リボソーム

Sec61

成熟・分泌
→ → 疾患促進
図3. Sec61 を介する小胞体内腔への新生タンパク質取り込み
取り込み阻害剤を使うと分泌を抑制できる。
阻害の結果、細胞質側に滞留したタンパク質は分解系で処理される

4.PROTAC を補完する新規標的分解技術の現在地
 本稿で取り上げてきた事例は、標的タンパク質分解誘導薬という分野が、PROTAC を中心とする一極集中の段階を経て、その外縁に新たな選択肢を生み出しつつある現状を示している。 PROTACs は抗がん剤を中心に臨床開発が進展し、創薬モダリティとしての有効性を示しつつある。一方で、その成功は特定の疾患領域や分解タグへの集中を伴っており、分解技術そのものよりも、適応疾患の選択や開発戦略が重要になりつつある。
 こうした状況の中で、オートファジーを活用する標的分解技術は、プロテアソーム分解では扱いにくい凝集体や大型基質を対象とできる点で、PROTAC を補完する独自の価値を有している。しかし、その分解対象の広さは、疾患領域の選択が難しいという課題を伴う。神経変性疾患は、技術の特性と親和性が高い一方で、臨床試験の規模や期間の観点から、事業的ハードルが高い領域でもある。
 AUTOTAC Bio による Tau 凝集体分解の臨床試験開始は、難易度の高い疾患領域であっても、アンメットメディカルニーズを重視する戦略が現実的であることを示している。また、 TRIMTECH が、プロテアソーム分解の適用範囲を凝集体へと拡張しようとする試みも、神経変性疾患領域における既存の分解薬への不満を反映したものと言えるだろう。これらは、個々の技術の特性というよりも、既存技術がカバーしない疾患を特定することの重要性を示している。
 さらに Enodia Therapeutics の事例は、標的タンパク質分解という枠組みを相対化する存在として興味深い。翻訳後の輸送過程に介入することで分泌性タンパク質の発現量を制御するという戦略は、分解を下流の解決策と捉えた場合の、明確な上流介入の一例である。これは、タンパク質恒常性の制御において、分解以外にも有効な介入点が存在することを示している。
 PROTAC を中心とした発展は今後も継続すると予想されるが、それを補完する新規技術がどの疾患領域で臨床的実証を獲得するかによって、標的分解薬の風景は大きく書き換えられる可能性がある。今後数年は、その変化が具体的な形として現れ始める時期になるだろう。

参考文献
[1] Takahashi, D., et al. AUTACs: Cargo-Specific Degraders Using Selective Autophagy, Molecular Cell
76, 797-810 (2019).
[2] Li, Z., et al. Allele-selective lowering of mutant HTT protein by HTT-LC3 linker compounds, Nature
575, 203-209 (2019).
[3] Ji, C. H., et al. The AUTOTAC chemical biology platform for targeted protein degradation via the autophagy-lysosome system, Nature Communications 13, 904 (2022).
[4] https://www.paqtx.com
[5] http://autotacbio.com
[6] https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.09.10.675324v1.full.pdf
[7] Lee, J., et al. Targeted degradation of ?-synuclein aggregates in Parkinson’s disease using the AUTOTAC technology, Molecular Neurodegeneration 18, 41 (2023).
[8] https://www.paqtx.com/news/paq-therapeutics-announces-39-million-series-b-financing-and-initiates
-phase-1-trial-to-advance-novel-approach-addressing-kras-driven-cancers-with-high-unmet-need/
[9] https://www.casmatx.com
[10] WO2024249291A2
[11] WO2025117884A1 & WO2025117886A1
[12] 同様の試みはユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の Robin Ketteler らによっても報告されている Zaman, N., et al. Development of the ULK1-Recruiting Chimera (ULKRECs) to enable proximity-induced and ULK1-dependent degradation of mitochondria, Biorxiv, (2024). https://doi.org/10.1101/2024.04.15.589474
[13] https://www.casmatx.com/2025/06/05/casma-therapeutics-nominates-csm-101-as-a-development-can didate-for-the-treatment-of-rare-and-common-forms-of-parkinsons-disease/
[14] https://trimtechtherapeutics.com
[15] Clift, D., McEwan, W. A., Labzin, L. L., et al. A Method for the Acute and Rapid Degradation of Endogenous Proteins, Cell 171, 1692-1706.e18 (2017).
[16] Kiss, L., Rhinesith, T., Luptak, J., et al. Trim-Away ubiquitinates and degrades lysine-less and N-terminally acetylated substrates, Nat Commun 14, 2160 (2023).
[17] https://www.enodiatx.com
///// Cutting Edge /////

デコイ核酸型 PROTAC による転写因子標的分解
― 構造活性相関と DDS 統合設計 ―
国立医薬品食品衛生研究所 出水 庸介

1. はじめに
 様々な疾患の発症や進展に関与するタンパク質の機能解明が進むにつれ、それらを標的とした多様な創薬手法が開発されてきた。従来の創薬研究は、酵素活性部位やリガンド結合ポケットを有するタンパク質に対する低分子阻害剤の開発を中心に発展してきたが、近年ではタンパク質そのものを細胞内から除去するという新しい作用様式が注目を集めている。その代表例が、PROTAC(Proteolysis-Targeting Chimera)に代表されるケミカルプロテインノックダウン法であり、国内外において活発な研究が展開されている[1, 2]。
 PROTAC は、ユビキチンリガーゼ(E3 リガーゼ)リガンドと標的タンパク質(Protein of Interest:POI)リガンドを、適切なリンカーを介して連結したキメラ分子である。PROTACがそれぞれのリガンドを介して E3 リガーゼと標的タンパク質を近接させることで、標的タンパク質がポリユビキチン化され、生体内のタンパク質分解機構であるユビキチン?プロテアソームシステム(Ubiquitin?Proteasome System:UPS)により分解される(図 1)。このように、PROTAC は触媒的に作用して標的タンパク質量を低下させる点に特徴があり、阻害剤のように高い占有率を必要としないこと、また酵素活性ポケットを持たないタンパク質にも適用可能である点から、革新的な創薬モダリティの一つとして位置付けられている。

PROTAC

図 1. UPS を利用した PROTAC の標的タンパク質分解。UPS を利用した PROTAC は、標的タンパク質(POI)と E3 ユビキチンリガーゼ(E3)を同時に結合させるキメラ分子である。 PROTAC により POI と E3 が近接すると、E3 が POI をユビキチン化し、ポリユビキチン化された標的はプロテアソームで分解される。PROTAC は分解後も再利用され、触媒的に標的タンパク質量を低下させる点が特徴である。
 これまでに報告されている PROTAC の多くでは、E3 リガーゼとして VHL(von Hippel?Lindau)、CRBN(Cereblon)、IAP(Inhibitor of Apoptosis Protein)等が利用され、それぞれのリガンドとして VH032、pomalidomide、LCL161 等の低分子化合物が汎用されている。一方、標的タンパク質としては、がん疾患に関連するキナーゼを対象に、その低分子阻害剤を POIリガンドとして転用した例が数多く報告されている。しかしながら、このような設計戦略は、適切な低分子リガンドが既に存在する標的に限定されるという制約を内包している。
 転写因子は多くの疾患、特にがんの発症や進展に深く関与していることが知られているが、その多くは明確な低分子結合ポケットを有さず、阻害剤開発が困難な標的とされてきた。そのため、低分子リガンドのみに基づいて転写因子を標的とする PROTAC を設計することは、一般に容易ではない。現在、ヒトでは約 1,600 種類の転写因子が報告されており、そのうち約96%についてDNA 結合領域の配列が明らかにされ、データベース化されている。この事実は、転写因子が特定の DNA 配列を認識して機能を発揮するという分子認識様式が広く保存されていることを示している。
 そこで著者は、転写因子に結合する DNA 配列そのものを標的リガンドとして利用するという発想に基づき、デコイ核酸をリガンドとするデコイ核酸型 PROTAC[3]の設計に着想した。デコイ核酸は、転写因子の DNA 結合領域と配列特異的に相互作用することから、低分子リガンドに依存しない汎用的な転写因子標的化戦略を提供し得る。本稿では、エストロゲン受容体α(Estrogen Receptor α:ERα)を転写因子のモデルとして、デコイ核酸型 PROTAC の開発と構造活性相関の展開について紹介する。

2. デコイ DNA 型 PROTAC の概念実証[4]
2.1 研究背景とモデル標的としての ERα
 デコイ核酸型 PROTAC の最初の概念実証において、エストロゲン受容体α(ERα)がモデル標的として選択されたことは、構造活性相関(Structure-Activity Relationship, SAR)の観点からも極めて合理的であった。ERαは核内受容体型転写因子として、エストロゲン応答配列(estrogen response element, ERE)[5]に結合し、転写制御を行う。その DNA 結合配列、結晶構造、生物学的評価系はいずれも詳細に解析されており、PROTAC 設計における変数を整理しやすい標的である。また、ERαは乳がんをはじめとする疾患との関連性が高く、従来から選択的エストロゲン受容体分解剤(Selective Estrogen Receptor Degrader, SERD)[6]や PROTAC[7]など多様な分解戦略が検討されてきた標的でもある。このため、新しい分子様式による分解戦略を評価する上で、既存技術との比較が可能である点も重要であった。
2.2 デコイ DNA を POI リガンドとする分子設計
 本研究では、ERE 配列を基盤とする二本鎖デコイ DNA(ER(dec))を設計した。このデコイ DNA は、ERαの DNA 結合ドメインに高い親和性で結合することが知られている配列情報を基に設計されている。注目すべき点は、低分子リガンドやペプチドとは異なり、デコイ DNA では「配列情報そのものが結合能を規定する」という点である。この ER(dec)の 5’末端に、E3 リガーゼリガンドをリンカーを介して結合させることで、デコイ核酸型 PROTAC を構築した。E3 リガーゼとしては、IAP(LCL161)、VHL(VH032)、CRBN
(pomalidomide)の 3 種を検討し、それぞれ LCL-ER(dec)、VH-ER(dec)、POM-ER(dec)を合成した。リンカーには PEG 鎖を用い、デコイ DNA の高次構造や結合能を阻害しないよう配慮した(図 2A)。
2.3 結合親和性と分解活性の乖離
 SAR の観点から最も重要な知見の一つは、ERαへの結合親和性と分解活性が必ずしも一致しなかった点である。競合蛍光偏光法による評価では、いずれの E3 リガーゼリガンドを結合した PROTAC も、ER(dec)単独と同程度の ERα結合能を維持していた。すなわち、E3
リガーゼリガンドの種類や連結によって、デコイ DNA としての結合能は大きく損なわれなかった。しかしながら、細胞内での ERα分解活性には明確な差が認められ、IAP リガーゼを用いた LCL-ER(dec)が最も高い分解活性を示した(図 2B)。一方、VHL 型および CRBN型では分解活性が相対的に低かった。この結果は、デコイ核酸型 PROTAC においても、3者複合体形成の幾何学的適合性や動的安定性が分解活性を規定することを強く示唆している。さらに、これらの PROTAC は他の転写因子や転写関連因子、ならびに恒常発現遺伝子群の分解を誘導しなかったことから、本分子が ERα に対して分解選択性を有していることが明らかとなった(図 2C)。

2.4 UPS 依存性と配列特異性の検証
さらに、本研究ではプロテアソーム阻害剤 MG132 やユビキチン活性化阻害剤 MLN7243
を用いた検証により、LCL-ER(dec)による ERα分解が UPS 依存的であることが示唆された
(図 2D)。また、スクランブル配列を用いた対照実験から、ERα分解がデコイ DNA の配列特異性に依存していることも確認された。これらの結果は、デコイ DNA が単なる非特異的ポリアニオンとして作用しているのではなく、明確な分子認識を介して分解を誘導していることを示している。
2.5 概念実証としての意義
 本研究は、DNA 配列情報を基盤として転写因子を選択的に分解するという、新しい PROTAC 設計概念を実証した点で大きな意義を持つ。同時に、結合能と分解活性の乖離という PROTAC 特有の SAR 課題を、デコイ核酸という新しい分子様式においても明確に示した点は、その後の構造最適化研究への重要な布石となった。

A)

O
R

O

O
O P O 5’-GTCAGGTCACAGTGACCTGAT-3’
OH 3’-CAGTCCAGTGTCACTGGACTA-5’
S O O
H N
O H H O N

N O
R =
N
N N Me
Me
Me O
Me Me
O Me OH O
LCL-ER(dec) VH-ER(dec) POM-ER(dec)

B)
LCL-
VH-
POM-
C)

LCL-

VH-

POM-

ER(dec)
ER(dec)
ER(dec)

ER(dec)
ER(dec)
ER(dec)

0 1 3 10 1
ER?
3 10 1
3 10
(?M)
75

50

0 1 3 10 1
AR
3 10 1
3 10
(?M)

100
ER/actin 100 68
?-actin

D)
59 28
74 76 42 71
78 66

50

37 Mr (K)
AhR p65
BRD4
100

75

50
250
DMSO MG132 MLN7243
150
LCL-ER(dec) 0
ER?
3 10 0
3 10 0
3 10
(?M)
75
p300

GAPDH

250

37
ER/actin 100
?-actin
55 19
100 106 108 100 106 119
50

50
37 Mr (K)
CRABP2

?-actin

15

50

37 Mr (K)
図 2. A) デコイ核酸型 PROTAC のデザイン、B) ERα分解活性、
C) 分解選択性、D) UPS を介した ERα分解
3. 構造最適化による安定性・選択性の検証[8]
3.1 初期デコイ核酸型 PROTAC が内包していた課題の整理
 デコイ核酸型 PROTAC の概念実証が達成された一方で、創薬モダリティとして実装するためには、複数の本質的課題が残されていた。その中でも最も重要であったのが、(1)核酸部分の化学的安定性、(2)細胞内での分解活性の持続性、(3)標的選択性の担保、の三点である。天然のリン酸ジエステル結合を有する 2 本鎖 DNA は、細胞外・細胞内のヌクレアーゼに対して脆弱であり、実際に初期の LCL-ER(dec)では、ERα分解活性が時間依存的に減弱することが確認されていた。この現象は、単に分解活性が弱いというよりも、「分子が細胞内で十分な時間存在できない」という物性起因の問題として捉える必要がある。SARの観点から重要なのは、ここで問題となっているのが POI?PROTAC?E3 の相互作用以前の段階、すなわち “分子がそこに存在できるか” という前提条件である点である。低分子 PROTAC においても膜透過性や代謝安定性は重要な設計因子であるが、デコイ核酸型 PROTAC では、この問題がより顕在化する。
3.2 ホスホロチオエート(PS)修飾導入
 この課題に対する最初のアプローチとして検討したのが、ホスホロチオエート(PS)修飾の導入である。PS 修飾は、核酸医薬分野においてヌクレアーゼ耐性を付与するための標準的手法であり、アンチセンス核酸や siRNA などで広く用いられている。リン酸基の非架橋酸素を硫黄に置換することで、酵素分解耐性と疎水性が増大する。本研究では、ER(dec)全塩基に PS 修飾を施した LCL-ER(dec)-allS を設計した(図 3A)。この分子設計は、一見すると単純な「安定化戦略」に見えるが、SAR の視点からは、より複雑な影響を内包している。まず、ERαへの結合親和性評価において、PS 修飾体は天然 DNA 型 LCL-ER(dec)(約 20 nM)と比較して顕著に低い IC50 値(約 6 nM)を示した。これは、PS 修飾によりデコイ核酸の疎水性が増し、タンパク質表面との非特異的相互作用が増強された結果と解釈できる。すなわち、結合能の「向上」は、必ずしも配列特異的認識の強化を意味しない。
3.3 PS 修飾がもたらす SAR 上のトレードオフ
 実際、PS 修飾型 PROTAC は、ERα分解活性において非常に低濃度で効果を示した(図 3B)。一方、高濃度条件では分解活性の低下が観察された。これは、PROTAC において知られるフック効果によるものだと考えられる。すなわち、PROTAC 濃度が過剰になると、標的タンパク質および E3 リガーゼがそれぞれ個別に PROTAC と結合し、分解に必須な三者複合体の形成が阻害されることで、結果として分解活性が低下する現象である。一方で、スクランブル配列を用いた対照分子においても ERα分解が観察され、配列特異性の低下が明確に示された。この結果は、PS 修飾が「活性」を押し上げる一方で、「選択性」を犠牲にする典型例である。この点は、従来の低分子創薬や PROTAC 研究においても見られる現象と本質的に共通している。すなわち、疎水性の増大や非特異的相互作用の増強は、しばしば活性向上と引き換えにオフターゲット効果を招く。デコイ核酸型 PROTAC においても、この古典的な SAR の教訓がそのまま当てはまることが示された点は示唆的である。
3.4 ヘアピン構造導入という第二の最適化戦略
 PS 修飾の限界を踏まえ、次に検討されたのがヘアピン構造の導入である。本研究では、2本鎖 DNA の末端に T4 ループを導入し、1 本鎖内で安定したヘアピン構造を形成する LCL-ER(dec)-H46 を設計した(図 3A)。この設計の狙いは二重である。第一に、二本鎖 DNAの末端を閉じることで、エキソヌクレアーゼによる分解を抑制する点、第二に、二本鎖構造の熱安定性を向上させ、ERα結合に必要な立体構造をより長時間維持する点である。実際、円二色性スペクトルおよび融解温度測定から、ヘアピン型デコイは天然型と同様の B
型 DNA 構造を保持しつつ、熱安定性が向上していることが示された。これは、PS 修飾とは異なり、分子認識様式そのものを大きく変えずに安定性を改善する戦略である。

3.5 ヘアピン型 PROTAC の SAR 的評価
 ERα分解活性の評価において、LCL-ER(dec)-H46 は、天然型 LCL-ER(dec)と同等の分解活性を示しつつ、分解効果がより長時間持続することが確認された。特に注目すべき点は、 48 時間後においても ERα分解が維持されていた点であり、これは PS 修飾体とは異なる「持続性の向上」という形での最適化成果である。さらに、他の転写因子や非関連タンパク質に対する影響を評価した結果、ヘアピン型 PROTAC は高い標的選択性を維持していることが示された。すなわち、本分子は「活性」「持続性」「選択性」の三要素のバランスが最も良好な設計解として位置付けられる。

3.6 構造最適化研究から得られた設計原理
 本研究の一連の検討から、デコイ核酸型 PROTAC の SAR 理解に資する重要な設計指針が明らかとなった。すなわち、(1)単純な安定化修飾は活性向上と引き換えに選択性を損なう可能性があること、(2)分子認識様式を保ったまま安定性を改善する設計(ヘアピン構造)が有効であること、(3)分解活性の「持続性」も SAR の重要な評価軸であること、が明確になった。

B)
LCL-ER(dec)

LCL-ER(dec)-allS

LCL-ER(dec)-H46

0

ERa

0.1 1 10

0.1 1 10

0.1 1 10 (?M)
90

55
ERa / β-actin 100 71 51
β-actin
35 16
18 49
63 48 32
40

20
図 3. A) デコイ核酸 PROTAC の構造修飾、B) ERα分解活性

4. DDS 統合によるデコイ核酸型 PROTAC の実装[9]
4.1 なぜ DDS が不可欠であったのか
 前項の構造最適化研究によって、デコイ核酸型 PROTAC は「活性」、「選択性」、「持続性」の観点で大きく前進した。しかし、創薬モダリティとして俯瞰すると、依然として本質的な課題が残されていた。それが、細胞内送達である。従来報告されてきたデコイ核酸型 PROTAC は、いずれもトランスフェクション試薬を用いた条件下で評価されており、この点は in vivo 応用や臨床展開を考える上で実装上の大きな制約となる。SAR の視点に立てば、本研究で直面した本質的課題は、「分子設計の完成度そのものではなく、細胞内到達性が活性発現の前提条件である」という点に集約される。すなわち、分子内部の構造最
適化のみでは不十分であり、研究の焦点は必然的に「分子をいかに効率よく細胞内へ送達するか」という DDS の問題へと拡張された。

4.2 CPP/HDO-PROTAC という新しい分子設計概念
 本研究では、疎水性細胞膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptide, CPP, P4)とヘテロ 2重鎖核酸(heteroduplex oligonucleotide, HDO)技術を融合させた CPP/HDO-PROTAC という新しい分子設計を提案した(図 4A)。この設計の本質は、DDS を外付けの補助技術として扱うのではなく、「分子構造の一部として内包する」点にある。HDO は、DNA と RNA の 2 本鎖から構成され、細胞内で RNase H により RNA 鎖が選択的に切断されることが知られている[10]。本研究では、この機構を利用し、細胞内に到達した後に “活性型 PROTAC” が放出されるよう設計されている。すなわち、CPP により細胞内へ侵入し、HDO 構造を介して段階的に活性化されるという、時間軸を組み込んだ分子設計である。
 SAR の観点から特に重要なのは、HDO 化によってデコイ配列が延長された点である。ER αへの結合親和性評価において、HDO 化された PROTAC は、従来の ER(dec)型よりも低い IC50 値を示した。この結果は、単純な配列延長によって、タンパク質表面との相互作用点が増加したことを示唆している。一方で、CPP を導入した後も結合親和性が維持されていた点は重要である。すなわち、CPP は「送達要素」として機能しつつ、POI?デコイ相互作用を阻害しない位置・様式で組み込まれている。この点は、DDS と分子認識を両立させる設計上の重要な指針を与える。
 本研究のもう一つの特徴は、RNase H を “外的要因” ではなく、“分子機構の一部” として利用している点である。CPP/HDO-PROTAC は、細胞内で RNase H により RNA 鎖が切断されることで、CPP から解放された活性型 PROTAC を生成する。SAR の観点から見れば、これは「活性発現のタイミングと場所を制御する設計」と捉えることができる。すなわち、細胞外や膜表面では活性を発揮せず、細胞内環境に到達した後にのみ PROTAC 活性が発現する。このような時間的・空間的制御は、今後の PROTAC 設計において重要な概念となる可能性が高い。

4.3 トランスフェクション非依存分解の意義
 実際に、CPP/HDO-PROTAC はトランスフェクション試薬を用いない条件下においても ERα分解活性を示し、細胞増殖抑制効果を発現した(図 4B)。この結果は、デコイ核酸 PROTAC が「実装可能な創薬分子」へと一段階進んだことを意味する。ここで重要なのは、分解活性の絶対値のみならず、「分解が起こる条件」である。トランスフェクション非依存という条件は、in vivo 応用や将来的な臨床開発を見据えた際に、極めて大きな意味を持つ。

B)
CPP/HDO-PROTAC

75

50

50

37 (kDa)
図 4. A) CPP/HDO-PROTAC のデザイン、B) ERα分解活性

5. 横断的構造活性相関の整理
 本稿で取り上げた三つの研究を通じて、デコイ核酸型 PROTAC における SAR は、以下の四つの軸で整理できる。第一に、配列依存性である。デコイ配列は単なる結合モチーフではなく、分解活性と選択性を規定する最重要因子である。第二に、化学修飾依存性である。 PS 修飾やヘアピン構造は、活性・安定性・選択性のバランスを大きく左右する。第三に、立体配置依存性である。リンカー長や柔軟性、デコイの配置は、3 者複合体形成確率に直接影響する。第四に、送達依存性である。分子がどのように細胞内へ到達し、どのタイミングで活性化されるかは、SAR の外側にある問題ではない。

6. おわりに:次世代モダリティとしての展望
 デコイ核酸型 PROTAC は、転写因子という “undruggable target” に対する有力な解決策を提示しつつある。本稿で示した一連の研究は、分子設計、構造最適化、DDS 統合という段階的発展を通じて、SAR 研究の射程を拡張した。今後は、他転写因子への展開、in vivo 動態評価、組織選択的 DDS 設計、さらにはレギュラトリーサイエンス的視点からの評価が重要となるであろう。デコイ核酸型 PROTAC は、化学・生物・DDS を横断する次世代創薬モダリティとして、今後の構造活性相関研究の深化に資するものと期待される。

謝辞
 本研究成果は、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の永沼美弥子博士、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部の井上貴雄博士、大岡伸通博士、有機化学部の辻厳一郎博士、ならびに東京大学大学院薬学系研究科の内藤幹彦教授をはじめとする多くの共同研究者のご協力により得られたものである。ここに、本研究に携わっていただいたすべての皆様に深く感謝の意を表したい。
参考文献
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///// Cutting Edge /////

三者複合体相互作用解析が拓く
標的タンパク質分解誘導薬の分子設計
愛媛大学プロテオサイエンスセンター 山中 聡士

1. はじめに
 標的タンパク質分解誘導薬(分解誘導薬)は、従来の低分子医薬品とは異なる作用原理に基づく新たな創薬モダリティとして注目を集めている。低分子化合物が標的タンパク質と E3 ユビキチンリガーゼとの相互作用を誘導し、ユビチキン化された標的タンパク質をプロテアソームで選択的に分解するという概念は、サリドマイドの作用機序解明を契機として大きく進展した。
 その後、Proteolysis targeting chimera(PROTAC)技術の発展により、標的タンパク質と E3 ユビキチンリガーゼを人工的に近接させる設計が可能となったが、分解効率や選択性は、E3 ユビキチンリガーゼ、分解誘導薬、および標的タンパク質からなる三者複合体の形成に強く依存することが明らかとなってきた。すなわち、分解誘導薬の分子設計においては、分解誘導薬依存的な相互作用を的確に捉え、その質を理解することが重要となる。本稿では、著者らがこれまでに確立してきた分解誘導薬依存的相互作用解析技術とその応用例を通して、分解誘導薬設計の新たな視点について議論する。

2. タンパク質分解誘導薬の発見
 サリドマイドは 1950 年代に催眠鎮静薬として開発されたが、重篤な催奇性を引き起こすことが判明し、市場から撤退した[1]。その後、抗炎症作用や多発性骨髄腫に対する有効性が見出され、再評価が進められたものの[2, 3]、その分子作用機序は半世紀以上にわたり不明のままであった。2010 年、サリドマイドの直接標的タンパク質として、E3 ユビキチンリガーゼ複合体 CRL4CRBN の基質認識受容体である Cereblon(CRBN)が同定された[4]。この発見は、サリドマイドがユビキチン?プロテアソーム系を介して作用する可能性を示唆するものであった。さらに 2014 年には、サリドマイド誘導体であるレナリドミドやポマリドミドが CRBN の本来の基質ではない転写因子 Ikaros family zinc finger protein 1(IKZF1)および Ikaros family zinc finger protein 3
(IKZF3)を「ネオ基質」として CRBN にリクルートし、それらのユビキチン化および分解を誘導することが明らかとなった[5, 6](図 1)。
 これらの知見は、低分子化合物が E3 ユビキチンリガーゼの基質特異性を変化させ、新たな標的タンパク質の分解を選択的に誘導し得ることを示した。すなわち、サリドマイドおよびその誘導体は“タンパク質分解誘導薬”として機能することが明確となり、タンパク質分解という新たな薬理作用概念を切り拓いた。
図 1. サリドマイド依存的な CRBN によるネオ基質分解の模式図。
3. タンパク質分解誘導薬依存的相互作用解析技術の確立
 タンパク質分解誘導薬の分子設計を高度化するためには、三者複合体形成という動的相互作用を高感度かつ網羅的に捉える技術基盤が不可欠である。特にネオ基質選択性の理解や副作用発現機構の解明には、薬剤依存的に形成されるタンパク質?タンパク質間相互作用(protein?protein interaction: PPI)を直接評価する手法が求められる。
 しかし、従来の細胞ベースの網羅的プロテオミクス解析のみでは、低発現タンパク質や一過的な相互作用の検出には限界があった。そこで筆者らは、生化学的再構成系および細胞内近接標識法を組み合わせた相互作用解析基盤の構築に取り組んできた。本節では、それらの技術開発とその応用について概説する。

3.1 組換えタンパク質を用いたタンパク質分解誘導薬依存的な相互作用解析
 ネオ基質が初めて報告された当時、その探索には培養細胞を用いた定量的質量分析が主に用いられていた[5, 6]。しかしながら、この手法では低発現タンパク質や一過的な相互作用の検出が困難であり、特にサリドマイド催奇性に関与するネオ基質は同定されていなかった。したがって、三者複合体形成をより直接的かつ高感度に評価できる生化学的解析系の構築が求められていた。
 そこで筆者らは、コムギ胚芽抽出液を基盤とする無細胞タンパク質合成系を活用し[7]、組換えタンパク質を用いた生化学的相互作用解析系の構築を試みた。コムギ無細胞系では多数のタンパク質を迅速かつハイスループットに合成することが可能であり、得られた組換えタンパク質を精製することなく AlphaScreen 法に用いることで、PPI 解析が可能である[8]。実際に、コムギ無細胞系で合成した CRBN および IKZF1 を用いた解析により、サリドマイド存在下での CRBN?IKZF1 間相互作用を検出することに成功した(図 2A)。さらに、コムギ無細胞系を基盤とした 1,118 種類の転写因子からなるプロテインアレイを用いた網羅的スクリーニングにより、 Promyelocytic leukemia zinc finger protein(PLZF)をサリドマイド依存的に CRBN に結合する候補ネオ基質として同定した[9]。これらの結果は、本評価系がネオ基質同定に有効であることを示すものであった。

3.2 近接ビオチン化酵素 AirID を用いた細胞内相互作用解析
 多くのタンパク質は細胞内で複数の構成因子からなる複合体を形成して機能しており、再構成系のみでは生理的相互作用の全体像を捉えることは困難である。そこで筆者らは、近位依存性ビオチン標識法(BioID 法)を応用した細胞内における分解誘導薬依存的 PPI 解析系の構築を試みた。
 BioID 法は、目的タンパク質にビオチンリガーゼを融合させることで、近接するタンパク質を生理的条件下で網羅的にビオチン標識し、質量分析と組み合わせて網羅的に同定可能とする手法である[10]。しかし従来型 BioID 酵素は標識活性が低く、長時間の反応が必要であったため、分解誘導薬依存的な相互作用を捉えることは困難であった。2018 年には高活性型である TurboIDが報告された[11]が、筆者らは高効率かつ低バックグラウンドでの PPI 解析を可能とする新規 BioID 酵素として AirID を開発した[12]。さらに、AirID 融合 CRBN を発現する細胞株を用いて、サリドマイド誘導体存在下での近接タンパク質を解析したところ、既知ネオ基質のビオチン化が検出された(図 2B)。さらに質量分析による網羅的解析から、ポマリドミド依存的に Zinc finger MYM-type containing 2(ZMYM2)がネオ基質として同定され、本手法の有用性が示された[13]。本解析系は、生細胞環境下における分解誘導薬依存的相互作用ネットワークを可視化する基盤技術となる。
 このように筆者らは、組換えタンパク質を用いた試験管内解析系と、BioID を基盤とする細胞内解析系の両者を構築し、分解誘導薬依存的な相互作用を多角的に評価可能な基盤を確立した。さらに重要なことに、これらの解析系はいずれもサリドマイドおよびその誘導体のネオ基質選択性を評価できることを示し、三者複合体形成の質を指標とした分子設計へとつながる技術基盤となる。

図 2. タンパク質分解誘導薬依存的な相互作用解析の模式図
A. コムギ無細胞系を基盤とした相互作用解析技術。N 末端ビオチン化CRBN とFLAG-GST融合ネオ基質を用いて、サリドマイド依存的な三者複合体が解析可能。B. 近接ビオチン化法を基盤とした相互作用解析技術。AirID 融合 CRBN を発現する細胞に、ビオチンおよびサリドマイド誘導体を処理することでネオ基質がビオチン化され、サリドマイド依存的な
三者複合体が解析可能。

4. サリドマイド作用機構の解明とネオ基質選択性
 サリドマイドおよびその誘導体は、CRBN によるネオ基質分解を通じて多様な薬理作用および副作用を発現することが明らかとなってきた。すなわち、同一の E3 ユビキチンリガーゼに結合する分子であっても、リクルートされるネオ基質の違いにより、生理作用と毒性発現が分岐する。本節では、抗腫瘍作用および催奇性発現に関与するネオ基質の同定と、その選択性の分子基盤について概説する。

4.1 サリドマイド作用機序の解明
 2014 年および 2015 年に、サリドマイド誘導体の抗多発性骨髄腫作用および 5 番染色体欠損骨髄異形成症候群(5q MDS)に対する治療効果に関与するネオ基質として、IKZF1、IKZF3、および Casein kinase I isoform α(CK1α)が報告された[5, 6, 14]。IKZF1 および IKZF3 の分解は、多発性骨髄腫細胞の増殖維持に重要な転写制御因子の発現低下をもたらし、抗腫瘍作用に寄与する[5, 6]。一方、5q MDS においては、レナリドミドによる IKZF1 分解が巨核球分化を促進し、さらに CK1α 分解が選択的細胞死を誘導することが示されている[15]。
 催奇性発現に関しては、2018 年に Duane-radial ray 症候群の原因遺伝子である転写因子 Sal-like protein 4(SALL4)がサリドマイド依存的に分解されることが報告された[16, 17]。同症候群は四 肢形成異常を含む多様な発生異常を示し、その表現型はサリドマイド催奇性と類似している[18]。上述のように筆者らは、生化学的相互作用解析により、転写因子 PLZF(別名 Zinc Finger and BTB Domain Containing 16: ZBTB16)をサリドマイド催奇性に関与するネオ基質として同定した[9]。 興味深いことに、SALL4 および PLZF の二重欠損マウスは、四肢にサリドマイド様の重篤な催 奇性表現型を示すことが報告されている[18]。これらの知見を統合し、筆者らはサリドマイドに よる CRBN 依存的な SALL4 および PLZF の分解が、強い催奇性を誘発する分子基盤である可能 性を提案した[9]。
 このように、サリドマイドやサリドマイド誘導体の抗血液がん作用と催奇性の分子メカニズムが明らかとなってきた(図 3)。

図 3. サリドマイドやサリドマイド誘導体の作用メカニズムの模式図。抗血液がん作用に関与するネオ基質(IKZF1, IKZF3, CK1α)および催奇性作用に関与するネオ基質(SALL4, PLZF)のタンパク質分解を介して薬効および副作用を発揮する。

4.2 サリドマイド誘導体のネオ基質選択性
 これまでの研究により、サリドマイド誘導体はその化学構造に依存してリクルートされるネオ基質を選択的に変化させることが明らかとなっている(図 4)。例えば、レナリドミドは CK1αを分解誘導する一方で、サリドマイドおよびポマリドミドは同基質に対して顕著な分解活性を示さない。さらに筆者らは、サリドマイドの一次代謝産物である 5 位水酸化サリドマイドが、IKZF1に対しては分解活性を示さない一方、SALL4 を強力に分解誘導することを見出した[9]。構造解析および相互作用評価の結果、この選択性は CRBN との結合様式の微細な変化に起因することが示唆された[19]。すなわち、わずかな化学構造の差異が三者複合体形成様式を変化させ、ネオ基質選択性を大きく左右することが明らかとなった。
 これらの知見は、サリドマイド誘導体におけるネオ基質選択性が偶発的な現象ではなく、分子設計により制御可能であることを示している。

図 4. サリドマイド、およびサリドマイド誘導体であるレナリドミドとポマリドミドの化学構造。レナリドミドは CK1α を分解誘導するが、サリドマイドやポマリドミドは分解誘導しない。

5. 相互作用制御に基づく低催奇性誘導体と PROTAC 設計
 前節で述べたように、サリドマイド誘導体はわずかな化学構造の違いによってネオ基質選択性を大きく変化させる。この事実は、ネオ基質分解を「制御可能な設計パラメータ」として捉えることができる可能性を示唆している。すなわち、相互作用様式を精密に制御することで、薬効に関与するネオ基質のみを選択的に分解し、副作用に関与するネオ基質分解を回避する分子設計が理論的に可能となる。
 本節では、ネオ基質選択性の理解に基づく催奇性を軽減したサリドマイド誘導体の開発および、それらを CRBN バインダーとして利用した PROTAC 設計への応用について述べる。
5.1 催奇性を軽減した血液がんに有効なサリドマイド誘導体の開発
 サリドマイドやサリドマイド誘導体は、CRBN との結合に重要なグルタルイミド環と、ネオ基質選択性に関与するフタルイミド環から構成される(図 5)。構造生物学的研究により、前者は CRBN との結合に必須である一方、後者は三者複合体界面形成に関与し、ネオ基質選択性を規定することが示されている[19, 20]。実際、近年開発が進められている CC-122 や CC-220 などの新規サリドマイド誘導体は、フタルイミド環の修飾を通じて活性および選択性の最適化が図られている(図 5)。

図 5. サリドマイド化学構造における二つの環構造と次世代サリドマイド誘導体 CC-122 と CC-220 の化学構造。フタルイミド環はネオ基質選択性に重要であり、開発中の次世代サリドマイド誘導体はフタルイミド環を変化させている。
 これらの知見を踏まえ、筆者らはフタルイミド環を標的とした構造修飾により、抗血液がん作用に関与するネオ基質分解を維持しつつ、催奇性関連ネオ基質分解を低減できると仮定した。そこで、フタルイミド環を多様に修飾した誘導体ライブラリーを構築し、ネオ基質選択性の評価を行った。その結果、レナリドミドの 6 位を小さな置換基で修飾することで、抗血液がん作用に関与するネオ基質分解活性が向上することを見出した[21] (図 6)。特に 6 位フッ素化レナリドミドは、多発性骨髄腫および 5q MDS 由来細胞において既存薬より強い抗増殖活性を示した。重要なことに、これら 6 位修飾誘導体は催奇性関連ネオ基質に対する分解活性が低減しており、細胞内プロテオーム解析からも選択性の向上が確認された[21](図 6)。これらの結果は、ネオ基質選択性を構造修飾により制御できることを実証するものである。

図 6. 開発した 6 位修飾レナリドミドの模式図。レナリドミドの 6 位をフッ素のような小さな置換基で修飾することで、抗血液がんに関与するネオ基質への選択性が向上する。

5.2 ネオ基質分解を制御可能な PROTAC への応用
 現在、サリドマイド誘導体はキメラ型のタンパク質分解誘導薬である Proteolysis targeting chimeras(PROTACs)へ応用され、その開発が精力的に行われており、いくつかの PROTACs は臨床段階にある。しかしながら、サリドマイド誘導体を用いた PROTACs は標的タンパク質に加えてネオ基質も分解誘導する[17, 21]。したがって、サリドマイド誘導体を用いた PROTACs は副
作用としてサリドマイド催奇性や血液毒性が懸念される。そこで筆者らは、標的タンパク質を選択的に分解誘導する 6 位修飾レナリドミドを用いた PROTACs の開発に取り組んだ。レナリドミドの 6 位を嵩高い置換基で修飾した際にはネオ基質の分解活性が減少することが予想された。実際に、6 位をトリフルオロメチル基で修飾したレナリドミドは IKZF1 や IKZF3 を含む解析した全てのネオ基質を分解誘導しないことを示した[21]。さらに、定量的質量分析による網羅的なプロテオーム解析の結果、既知ネオ基質を分解誘導しないことを示した[21]。そこで、6 位修飾レナリドミドと BET タンパク質阻害剤である JQ1 を用いて PROTACs を有機合成し(図 7)、BETタンパク質及びネオ基質の分解を解析した。結果として、6 位修飾レナリドミドを用いた PROTACs は BET タンパク質を強力に分解誘導し、PROTACs の CRBN バインダーとして利用可能であることを示した[21]。さらに重要なことに、6 位修飾レナリドミドを用いた PROTACs は 6位修飾レナリドミドと同様のネオ基質選択性を示し、標的タンパク質分解に対する選択性が向上していた[21]。これらの結果は、6 位修飾レナリドミドを用いることでネオ基質分解を制御し、標的タンパク質分解を選択的に分解可能であることを示唆している(図 7)。

図 7. 開発した 6 位修飾レナリドミドを用いた PROTAC の模式図。6 位をトリフルオロメチル(CF3)基のような嵩高い置換基で修飾したレナリドミド誘導体を用いた PROTAC は標的タンパク質を選択的に分解誘導する。

6. おわりに
 本稿では、サリドマイドの作用機序解明を起点としたネオ基質同定研究および、分解誘導薬依 存的相互作用解析技術の確立を通して、タンパク質分解誘導薬の分子設計戦略について概説した。サリドマイドおよびその誘導体は、CRBN を介して多様なネオ基質を分解誘導するが、その選択 性はわずかな化学構造の違いによって大きく変化する。この事実は、分解活性が単なる結合親和 性ではなく、三者複合体形成の様式や相互作用界面の質に依存していることを示している。
 組換えタンパク質を用いた再構成系および近接ビオチン化酵素を用いた細胞内解析系の確立により、分解誘導薬依存的な相互作用を多角的に評価することが可能となった。これらの技術は、ネオ基質選択性の理解を深化させるのみならず、副作用回避型誘導体や選択的 PROTAC の設計へと直結する基盤を提供している。
 今後は、細胞レベルを超えた個体内環境における相互作用動態の理解や、CRBN 以外の E3 ユビキチンリガーゼを活用した分解誘導戦略の拡張が重要な課題となるであろう。E3 ユビキチンリガーゼの多様化と相互作用制御技術の進展により、標的タンパク質分解誘導薬は、より高い選択性と安全性を備えた創薬モダリティへと発展することが期待される。
 分解誘導薬の分子設計は、もはや単一の結合事象を最適化する作業ではない。三者複合体形成という動的かつ高次の相互作用ネットワークをいかに制御するかが、その成否を決定する。本稿で紹介した相互作用解析技術が、今後の分解誘導薬設計の高度化に寄与することを期待したい。
謝辞
 本研究の遂行にあたり、共同研究者の先生方ならびに研究室メンバーの皆様から多大なるご支 援とご協力を賜りましたことを、心より感謝申し上げます。また、本研究の一部は、科学研究費 補助金ならびに各種研究助成の支援を受けて実施されたものであり、ここに深く謝意を表します。

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[10] Roux, K. J., Kim, D. I., Raida, M., et al. A promiscuous biotin ligase fusion protein identifies proximal and interacting proteins in mammalian cells, J. Cell Biol. 196, 801-810 (2012).
[11] Branon, T. C., Bosch, J. A., Sanchez, A. D., et al. Efficient proximity labeling in living cells and organisms with TurboID, Nat. Biotechnol. 36, 880-887 (2018).
[12] Kido, K., Yamanaka, S., Nakano, S., et al. AirID, a novel proximity biotinylation enzyme, for analysis of protein-protein interactions, eLife 9, e54983 (2020).
[13] Yamanaka, S., Horiuchi, Y., Matsuoka, S., et al. A proximity biotinylation-based approach to identify protein-E3 ligase interactions induced by PROTACs and molecular glues, Nat. Commun. 13, 183 (2021).
[14] Kr?nke, J., Fink, EC., Hollenbach, P. W., et al. Lenalidomide induces ubiquitination and degradation of CK1α in del(5q) MDS, Nature 523,183-188 (2015).
[15] Martinez-H?yer, S., Deng, Y., Parker, J., et al. Loss of lenalidomide-induced megakaryocytic differentiation leads to therapy resistance in del(5q) myelodysplastic syndrome, Nat. Cell Biol. 22, 526-533 (2020).
[16] Donovan, K. A., An, J., Nowak, R. P., et al. Thalidomide promotes degradation of SALL4, a transcription factor implicated in Duane Radial Ray syndrome, eLife 7, e38430 (2018).
[17] Matyskiela, M. E., Couto, S., Zheng, X., et al. SALL4 mediates teratogenicity as a thalidomide-dependent cereblon substrate, Nat. Chem. Biol. 14, 981-987 (2018).
[18] Chen, K. Q., Tahara, N., Anderson, A., et al. Development of the proximal-anterior skeletal elements in the mouse hindlimb is regulated by a transcriptional and signaling network controlled by Sall4, Genetics 215, 129-141 (2020).
[19] Furihata, H., Yamanaka, S., Honda, T., et al. Structural bases of IMiD selectivity that emerges by 5-hydroxythalidomide, Nat. Commun. 11, 4578 (2020).
[20] Petzold, G., Fischer, E. S., and Thom?, N. H. Structural basis of lenalidomide- induced CK1a degradation by the CRL4CRBN ubiquitin ligase, Nature 532, 127-130 (2016).
[21] Yamanaka, S., Furihata, H., Yanagihara, Y., et al. Lenalidomide derivatives and proteolysis-targeting chimeras for controlling neosubstrate degradation, Nat. Commun. 14, 4683 (2023).
///// SAR Presentation Award /////

SAR Presentation Award について
「SAR Presentation Award」は、構造活性相関シンポジウムにおける若手研究者の発表を奨励し、構造活性相関研究の発展を促進するため、2010 年度に創設された。2012 年度からは、正式名称を「構造活性相関シンポジウム優秀発表賞」(英語表記 SAR Presentation Award)と定めた。2016年度からは、対象をすべての若手の一般講演(口頭発表・ポスター発表)に拡大し実施している。

2025 年度 SAR Presentation Award について
 2025 年度は、第 53 回構造活性相関シンポジウムにおける 40 歳以下の発表者(日本薬学会会員または受賞後に日本薬学会に入会いただける方)による一般講演(口頭発表・ポスター発表)を選考対象とすることとした。

2025 年度 SAR Presentation Award 受賞者(演題番号順)
口頭発表: 高島 克輝(近畿大学薬学部)
ポスター発表: 仲吉 朝希(名城大学薬学部)
ポスター発表: 笠松 直人(富山大学大学院 医薬理工学環)
ポスター発表: 寺内 瞳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
ポスター発表: 大枝 弘明(横浜市立大学大学院 生命医科学研究科)

受賞者の選考について
2025 年 9 月 4~5 日に各審査員からオンラインにて提出いただいた審査票を集計し、口頭発
表 1 名、ポスター発表 4 名を受賞者として選出した。口頭発表、およびポスター発表の審査は ともに点数方式で行った。口頭発表は審査対象の発表を全て聴講した審査員のみが評価を行った。ポスター発表については、審査員 1 名あたり 2~3 演題を担当し、審査員が共同演者となってい る演題は担当から除外した。後日受賞者には、賞状と副賞を贈呈した。なお、審査にあたっての 審査項目は下記の通りである。

審査項目
a) 講演要旨: 講演要旨は発表内容を反映して適切に作成されているか。
b) 講演資料: スライドやポスターは、専門領域の異なる参加者にもわかりやすく作成されているか。
c) プレゼンテーション: 発表時に参加者にわかりやすく説明しているか。
d) 研究の目的: 研究の背景と目的、先行研究との関係、研究の新規性あるいは有用性が明確になっているか。
e) 研究成果: 価値のある成果が得られているか。
f) 質疑応答: 質問等に対し、的確な応答・議論がなされたか。活発な討論がなされたか。
g) 将来性: 研究内容について、将来の発展が期待できるか。

審査員
第 53 回構造活性相関シンポジウムに参加した 2025 年度常任幹事および幹事
<受賞者コメント>

KO03
氏名 高島 克輝(たかしま かつき)
所属 近畿大学 薬学部
演題 エビネ由来天然物 calanthoside を基盤とした構造活性相関研究
このたびは名誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。ご評価くださいました先生方、日本薬学 会構造活性相関部会の皆様、ならびにシンポジウム実行委員の皆様に、心より御礼申し上げます。本研究では新規育毛成分の開発を目的として、伝承薬物由来のアルカロイド Calanthoside の全
合成および毛乳頭細胞に対する構造活性相関研究に取り組みました。Calanthoside は毛乳頭細胞において、現行医薬品である Minoxidil を上回る強力な増殖促進活性を示しますが、その新奇なインドール S,O-配糖体構造の構築法はこれまで確立されておらず、創薬研究への応用が困難でした。
 本研究では、この独自構造を迅速に構築可能とするワンポット配糖体形成反応を開発し、この反応を鍵として Calanthoside の世界初の全合成を達成しました。さらに、本手法を応用することで、糖部位やインドールベンゼン環部位を改変した多様な誘導体の合成にも成功いたしました。
 加えて、合成した Calanthoside およびその誘導体を用いた毛乳頭細胞における構造活性相関研究により、天然物の活性を大幅に上回る誘導体を見出すことにも成功いたしました。今後は、これまでの知見を踏まえ、Calanthoside のさらなる構造活性相関研究を進めてまいります。
 本研究は、近畿大学の研究費に加え、コーセーコスメトロジー研究財団および持田記念医学薬学振興財団の助成を受けて実施されました。ここに深く感謝申し上げます。また、本構造活性相関研究の遂行にあたり、増殖促進活性の評価をして下さった富山大学 萬瀬貴昭准教授、近畿大学 森川敏生教授にこの場を借りて深く感謝申し上げます。最後に、多くのご助言を賜るとともに、充実した研究環境をご提供くださいました近畿大学 田邉元三教授に、心より御礼申し上げます。

KP1-03
氏名 仲吉 朝希(なかよし ともき)
所属 名城大学薬学部
演題 酵素 protein L-isoaspartyl/D-aspartyl O-methyltransferase による基質認識機構の解析
 この度は、第 53 回構造活性相関シンポジウム優秀発表賞(SAR Presentation Award)を賜りましたこと、大変光栄に存じます。ご審査いただいた先生方、シンポジウム実行委員会の先生方、並びに日本薬学会構造活性相関部会の先生方に、心より御礼申し上げます。
 本発表では、酵素 protein L-isoaspartyl/D-aspartyl O-methyltransferase(PIMT)の基質認識機構について報告しました。PIMT は、老化に伴いタンパク質中の Asp 残基が異性化して生じる L-isoAsp残基および D-Asp 残基を認識し修復する役割を担う酵素として知られています。PIMT は主に
L-isoAsp 残基を認識し、D-Asp 残基に対する親和性は、L-isoAsp 残基との親和性と比較して著しく低いことが報告されています。本研究では、それぞれ分子動力学(MD)シミュレーションを行いて PIMT と各基質の複合体の動的構造を取得し、PIMT への基質の結合様式、および PIMTのL-isoAsp 残基と D-Asp 残基の認識能の差異を生じる要因について推定しました。計算の結果、 L-isoAsp 含有基質と D-Asp 含有基質は類似した様式で PIMT の活性部位に結合した一方、D-Asp含有基質が結合した場合には L-isoAsp 含有基質が結合した場合ほど顕著な誘導適合が起こらな
いことが示唆され、これが認識能の差異に直結すると推定しました。今後もタンパク質の動的構造や機能の解明、ならびにリガンドとの相互作用の計算化学的な解析を進めてまいりたいと考えておりますので、御指導御鞭撻を賜れますと幸甚に存じます。
 本研究を進めるにあたり、ご協力を賜りました広島市立大学大学院情報科学研究科の鷹野優教授、ならびに湘南医療大学薬学部の加藤紘一講師に感謝申し上げます。最後に、ご助言を賜りました名城大学薬学部の小田彰史教授に御礼申し上げます。

KP1-04
氏名 笠松 直人(かさまつ なおと)
所属 富山大学大学院 医薬理工学環
演題 選択的かつ強力なラムノシダーゼ阻害活性を示す swainsonine 誘導体の合成
 この度は、SAR Presentation Award(ポスター賞)という名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。ご評価いただきました審査員の先生方をはじめ、日本薬学会構造活性相関部会の関係者の皆様、ならびに構造―活性相関シンポジウム実行委員の皆様に、心より御礼申し上げます。
 本研究では新規作用メカニズムに基づく結核治療薬への応用を目指し、L-swainsonine を基盤とした選択的かつ強力な α-L-ラムノシダーゼ阻害剤の開発に取り組みました。α-L-ラムノシダーゼ阻害活性を示す L-swainsonine は、α-L-ラムノシダーゼとの構造―活性相関(SAR)について未解明な点が多く、活性の増強や酵素阻害選択性には SAR の解明が不可欠です。そこで本研究では swainsonine の 8 位水酸基の立体化学の重要性、骨格への脂溶性置換基の導入が活性に及ぼす影響、エナンチオマー間での生物活性の差異を明らかにすることを目的とし、8-epi-L-swainsonine誘導体および swainsonine 誘導体の両対掌体の合成を行いました。合成化合物に対する各種グリコシダーゼ阻害活性評価の結果から、8 位水酸基の立体化学および L-swainsonine の絶対立体配置が、α-L-ラムノシダーゼ阻害活性の発現と選択性に極めて重要であることが示唆されました。さらに、活性部位近傍の脂溶性ポケットを狙った 6 位への炭素鎖長の異なる末端フェニル基の導入により、活性および選択性が顕著に向上し、既存の阻害剤を凌駕する極めて強力な α-L-ラムノシダーゼ阻害剤の創出に成功しました。
 本研究を遂行するにあたり、終始ご指導・ご鞭撻を賜りました富山大学の豊岡尚樹教授、岡田卓哉准教授に深く感謝申し上げます。また、化合物の活性評価にご協力いただきました富山大学付属病院薬剤部の加藤敦教授、ならびに化合物の光学分割にご協力いただきました富山県立大学の川崎正志准教授にこの場を借りて御礼申し上げます。本受賞を励みに、今後もさらなる研究の発展に向けて精進してまいります。

KP1-07
氏名 寺内 瞳(てらうち ひとみ)
所属 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科
演題 STING の構造対称性に基づく新規阻害剤の設計と構造展開
 この度は、第 53 回 SAR Presentation Award(ポスター賞)という名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。ご評価いただきました先生方をはじめ、日本薬学会構造活性相関部会の関係者の皆様、ならびに構造活性相関シンポジウム実行委員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 本研究は、STING の既知阻害剤が示す特異な結合様式に着目し、それを活かした in silico スクリーニングによって新規 STING 阻害剤の開発を目指したものです。具体的には、既知阻害剤が 2 分子で対称的に結合する特徴的な様式を模倣した in silico スクリーニングを行い、その結果、
新規 STING 阻害剤の創出に成功しました。現在、本化合物をリードとして類縁体についても合成、評価を進めており、さらなる活性向上に向けた構造最適化を継続しています。本成果は、難治性炎症性疾患に対する新たな低分子治療薬開発につながる可能性を有すると考えています。
 本研究は、多くの共同研究者の皆様のご支援のもとで遂行されました。In silico スクリーニングに関しては、横浜市立大学の寺山慧准教授、池口満徳教授、浴本亨助教、石田祥一客員講師、戸板太陽さんに多大なご尽力を賜りました。また、動物実験につきましては、旭川医科大学の原英樹教授に行っていただきました。さらに横浜市立大学生命医科学研究科の小沼剛准教授には、 STING タンパク質の発現および結合活性評価を行っていただいています。最後に、本研究の遂行にあたり、終始温かいご指導とご鞭撻を賜りました、国立医薬品食品衛生研究所の出水庸介部長と辻厳一郎主任研究官に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

KP2-01
氏名 大枝 弘明(おおえだ ひろあき)
所属 横浜市立大学大学院 生命医科学研究科 生命情報科学研究室演題 AlphaFold3 による Type-51 R-body の構造変化機構の解明
 このたびは、第 53 回日本薬学会構造活性相関シンポジウムの SAR Presentation Award(ポスター賞)という名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。ご評価くださいました審査員の先生方、日本薬学会構造活性相関部会の関係者の皆様、ならびに構造活性相関シンポジウム実行委員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 本研究では、pH 依存的な伸縮機構をもつ超巨大タンパク質重合体である Type-51 Refractile-body(R-body)の構造変化機構の解明を目的として、タンパク質立体構造予測手法
である AlphaFold3 を用い、R-body を構成するタンパク質 RebA 及びRebB の重合様式の予測と、
その予測構造を基にした R-body の構造変化モデルの提案を行いました。
 RebA 及び RebB の立体構造予測では、先行研究で得られている断片的な構造と一致する、主に αヘリックスから構成された重合体が予測されました。さらに、この予測された重合様式に基づいて、当該予測構造がR-body のシートのどの領域に相当するかを推定し、全原子レベルのR-body重合モデルを提案しました。
 加えて、常にロール状または針状を形成する変異体についても構造予測を行い、重合様式を比較した結果に基づき、RebA 及び RebB 間のαヘリックス間距離の変化が、ロール状と針状構造の変化に対応する構造変化モデルを提案しました。
 本研究は、R-body の全原子レベルの重合様式を予測・提案した初めての研究であり、pH 依存的な構造変化機構解明に向けた重要な足掛かりとなるとともに、将来的には、構造変化機構の理解に基づき、伸縮条件を設計・制御することで、任意の条件で伸縮可能な分子機械としての応用展開につながることが期待されます。
 本研究の遂行にあたりご指導・ご支援を賜りました、横浜市立大学 池口満徳教授、浴本亨助教、理化学研究所 山根努先生、東京科学大学 上野隆史教授、菊池幸祐助教、伊達弘貴様、ならびに横浜市立大学生命情報科学研究室の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。また、本研究は JST SPRING(JPMJSP2179)の支援を受けて実施しました。同助成に感謝申し上げます。
///// Activities /////

第 53 回構造活性相関シンポジウム開催報告
日時: 2025(令和 7)年 9 月 4 日(木)、5 日(金)主催: 日本薬学会構造活性相関部会
会場: 近畿大学東大阪キャンパス(大阪府東大阪市小若江 3-4-1)Blossom Caf? 多目的ホール

 構造活性相関シンポジウムはこれまで 11 月から 12 月の間に開かれることが多く、関連学会との重複との関係から、開催時期の変更が常任幹事会内でも議論となっておりました。この度、私が実行委員長を引き受けたことから、これまで本シンポジウムが開催されたことのない 9 月への
時期の大幅な変更を実施しました。春開催も考えたのですが、第 52 回シンポジウムとの間隔が
短くなりすぎることから、今回はひとまず春にも秋にも移行しやすいように 9 月開催として試行させていただきました次第です。
 今回は招待者を含めて 106 名の参加登録をいただきましたが、昨年度と比較して約 40 名減少しました。前回は関東圏だったこともありますが、時期の大幅な変更に伴い参加できなくなった先生方や学生さんもおられたのではないかと思います。また、開催期間中は台風の影響を大いに受けました。開催 1 日目の 4 日の夜に大阪を通過したことから、シンポジウムの開催に特段の影
響はありませんでしたが、開催 2 日目の 5 日は台風が東海から関東方面へと通過したことから、東海道新幹線が断続的に運転と運休を繰り返したため、関東方面へ帰られる先生方や学生さんにかなりの影響を与えました。これらの影響を踏まえて、本シンポジウムの開催時期については引き続き検討課題とさせていただければと考えております。
参加登録者数は減少した一方で、演題数につきましては、特別講演 4 件、一般講演として口頭
発表 6 件、ポスター発表 35 件となり、口頭発表とポスター発表については、時期を大幅に変更したにもかかわらず、例年と同程度の発表申込をいただきました。また、懇親会では近大マグロをはじめとした寿司屋台などを提供し、非常に好評でした。

 構造活性相関を行うにあたって蛋白質構造が重要であることから、本シンポジウムにおける特別講演では、蛋白質構造に関係する以下の 4 名の先生方に依頼しました。構造生物学ならびに計算生物学の観点から、蛋白質の構造に関する最先端の知見をお話しいただきました。
木下 誉富(大阪公立大学)
「構造生物学を基盤としたキナーゼ創薬研究」
阿部 一啓(北海道大学)
「胃プロトンポンプの構造情報と AI によって駆動された新規阻害剤の de novo デザイン」米倉 功治(理化学研究所)
「電子線三次元結晶構造解析とクライオ EM による化学特性の計測」大上 雅史(東京科学大学)
「AlphaFold がもたらす計算創薬の変革」

 SAR Presentation Award は、以下の 5 名に決定いたしました。受賞おめでとうございます。また、あわせて審査いただきました常任幹事、幹事の先生方に感謝申し上げます。

・口頭発表(1 名)
KO03:高島 克輝(近畿大薬)
「エビネ由来天然物 calanthoside を基盤とした構造活性相関研究」

・ポスター発表(4 名)
KP1-03:仲吉 朝希 (名城大薬、名大高等研、広島市大院情報)
「酵素 protein L-isoaspartyl/D-aspartyl O-methyltransferase による基質認識機構の解析」
KP1-04:笠松 直人(富山大院医薬理工)
「選択的かつ強力なラムノシダーゼ阻害活性を示す swainsonine 誘導体の合成」
KP1-07:寺内 瞳 (岡山大院医歯薬、国立医薬品食品衛生研究所)
「STING の構造対称性に基づく新規阻害剤の設計と構造展開」
KP2-01:大枝 弘明(横浜市大院生命医科学)
「AlphaFold3 による Type-51 R-body の構造変化機構の解明」

 本会が盛会のうちに終えることができましたのも、ひとえにご参加頂いた皆様と、実行委員の先生方やアルバイトならびに志鷹真由子部会長をはじめとする日本薬学会構造活性相関部会幹事の先生方のご助力、ご支援の賜物と存じます。この場をお借りして主催の日本薬学会構造活性相関部会と、ご講演、ポスター発表いただいた皆様に御礼申し上げます。また、開催資金のご援助をいただいた日本薬学会並びに協賛および広告を出展いただきました関係企業等の皆様にも御礼申し上げます。
第 54 回構造活性相関シンポジウムは、農業・食品産業技術総合研究機構の前田美紀実行委員
長のもと筑波の地で 2026 年 11 月 12 日(木)~13 日(金)に開催予定です。引続きよろしくお
願い申し上げます。

第53回構造活性相関シンポジウム実行委員長 川下 理日人
///// Activities /////

<会告>
構造活性フォーラム 2026
「構造に基づく創薬を支える基盤研究と応用研究」
主催: 日本薬学会構造活性相関部会
協賛: 情報計算化学生物学会(CBI 学会)
会期: 2026 年 6 月 19 日 (金)
会場: Zoom によるオンライン開催
フォーラムホームページ: https://www.phar.kindai.ac.jp/saf2026/
開催趣旨:構造活性相関研究は AI などの先端技術の応用が進み、様々な予測精度が格段に向上 してきている。それに伴い、予測の基盤となるデータの精度や、予測結果の実践がより重要にな ってきている。今回は構造に基づく創薬を支える最先端の構造研究やその応用研究に焦点を当て、知見を深めるためのフォーラムを開催する。
プログラム:
講演1. 木下 誉富(大阪公立大学)「中角領域を含む X 線溶液散乱データにより実現した新しい構造解析手法-電子密度トポグラフィー解析」
講演2. 中津 亨(和歌山県立医科大学)「X 線自由電子レーザー施設 SACLA を用いた時分割連続フェムト秒結晶構造解析」
講演3. 津本 浩平(東京大学)「DX/AI 時代の抗体工学と創薬」
講演4. 柳澤 渓甫(東京科学大学)「量子コンピュータやスパコンを用いた立体構造ベース計算手法の開発」
講演5. 猪山 陽輔(塩野義製薬株式会社)「MPO を志向した化合物生成 AI による分子設計と量子コンピュータ活用による可能性の拡大」
講演6. 準備中
キーワード:AI、SBDD、QM、FEP

参加登録および申込締切日: 6 月 5 日(金)までに、フォーラムホームページから事前参加登録をお願いいたします。

参加費: 一般 4000 円、日本薬学会・協賛学会会員 2000 円、学生 無料

問合先:
構造活性フォーラム 2026 実行委員会
近畿大学薬学部 中村真也(実行委員長)
〒577-8502 大阪府東大阪市小若江 3-4-1 Tel: 06-4307-4011(直通)
E-mail: nakas<@>phar.kindai.ac.jp (<@>を@に置換してください)

部会役員一覧
2026 年度 常任世話人 2026/4/1 現在
部会長 竹田?志鷹 真由子(北里大学 薬学部)
副部会長 田上 宇乃(味の素(株))
副部会長 前田 美紀(農業・食品産業技術総合研究機構)会計幹事 川下 理日人(近畿大学 理工学部)
庶務幹事 河合 健太郎(摂南大学 薬学部)
広報幹事 加藤 博明(広島商船高等専門学校)
SAR News 編集委員長 遠藤 智史(岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科)
ホームページ委員長 高木 達也(大阪大学大学院 薬学研究科)

構造活性相関部会の沿革と趣旨
 1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。
 1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれるこ ととなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSAR Newsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。
本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。
(https://sar.pharm.or.jp/)

編集後記
 日本薬学会構造活性相関部会誌 SAR News 第 50 号をお届けいたします。今号では、「標的タンパク質分解誘導薬の分子設計技術」をテーマに、第一線でご活躍の先生方にご寄稿をお願いいたしました。 Perspective/Retrospective では、東北大学大学院生命科学研究科 有本博一先生に学術論文だけでなくスタートアップ等が公表した企業情報をも含めた標的分解薬技術の現状と将来展望をご紹介いただきました。 Cutting Edge では、国立医薬品食品衛生研究所 出水庸介先生に低分子リガンドに依存せず転写因子を標的化できるデコイ核酸型 PROTAC の開発とその展開例、愛媛大学プロテオサイエンスセンター 山中聡士先生に分解誘導薬依存的相互作用解析技術の開発とその応用例について、ご紹介いただきました。ご多忙の中、快くご執筆していただいた先生方に深く感謝申し上げます。
 また、昨年 9 月に開催された第 53 回構造活性相関シンポジウムで SAR Presentation Award を受賞された先生方の受賞者コメント、第 53 回構造活性相関シンポジウムの開催報告、2026 年度に開催予定の構造活性フォーラム 2026 の会告も掲載いたしましたので、お目通しいただければ幸いです。(編集委員会)
SAR News No.50 2026 年 4 月 1 日
発行: 日本薬学会 構造活性相関部会長 竹田?志鷹 真由子
SAR News 編集委員会
(委員長)遠藤 智史、浴本 亨、合田 浩明、仲西 功、原田 俊幸、幸 瞳

*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。