menu

SARNews No.20

SARNews_20

構造活性相関部会・ニュースレター<1April,2011>SARNewsNo.20「目次」/////Perspective/Retrospective/////最近のGPCRの結晶構造に基づく機能解析について石黒正路・・・2/////CuttingEdge/////インフルエンザノイラミニダーゼ−シアル酸誘導体複合体相互作用の非経験的フラグメント分子軌道法計算に基づく相関解析比多岡清司・・・8/////Activities/////<報告>第38回構造活性相関シンポジウム開催報告中馬寛・・・15<会告>構造活性フォーラム2011「ADME/Toxに基づく創薬:安全な医薬品の創製に向けて」・・・16第39回構造活性相関シンポジウム・・・17部会役員人事・・・18SARNewsNo.20(Apr.2011)/////Perspective/Retrospective/////最近のGPCRの結晶構造に基づく機能解析について新潟薬科大学応用生命科学部石黒正路1.はじめにウシロドプシンの結晶構造が報告されて以来、多くの努力の結果2007年にβ-アドレナリン受容体の結晶構造が解析され1-3)、さらに最近までにアデノシン4)、ケモカイン(CXCR4)5)、ドーパミン6)などの受容体の構造が報告されてきている。さらにいくつかのGPCRの結晶構造が明らかにされているようであり、今や医薬品の標的となるGPCRの構造解析もルーチン化する勢いにある。GPCRの結晶化にはいくつかの方法が確立され、これらの方法と結果について以下の項で概観したい。最近までに結晶化されたGPCRの構造はインバースアゴニストやアンタゴニストが結合した不活性構造である。今後、GPCRの構造研究は活性化された構造、すなわちアゴニストが結合した構造そして活性化構造に伴う情報の伝達機構の解明に研究の中心が移ってゆくものと考えられる。ごく最近にはアゴニストが結合した構造の解析についても報告されており、これらの構造についても見てみたい。GPCRの機能構造にはインバースアゴニストとアンタゴニストが結合した不活性構造とパーシャルアゴニストとフルアゴニストが結合した活性化構造がある(図―1)。インバースアゴニスト結合構造はGタンパク質が結合していない構造であると考えられ、それゆえに全くGタンパク質の活性化が生じない。一方、アンタゴニストが結合したGPCRはわずかに(5~10%)Gタンパク質を活性化する能力があり、これはすなわちGタンパク質が結合することを示している。ロドプシンにおいては活性化中間体であるメタロドプシンIbがGタンパク質(トランスデューシン)を結合するが不活性な状態であることが示されており7)、レチナールが結合していないオプシンにも酸性条件下でアンタゴニスト結合状態と同じ弱いGタンパク質活性化が見られることも知られている8)。一方、パーシャルアゴニストが結合した構造はフルアゴニストが結合した構造と異なり、Gタンパク質の活性化能が低いことが知られている。図-14種の機能性リガンド-2-SARNewsNo.20(Apr.2011)2.GPCRの結晶化と構造GPCRはリガンド結合によりその情報を細胞内に伝達する役割をもつため、構造が速やかに変化する。そのため生理的条件下ではGタンパク質との相互作用により安定化していると考えられるため、結晶化に適した構造の安定化が重要な課題である。ロドプシンはGタンパク質が結合していないインバースアゴニスト結合型の構造を最も安定な構造としてnative配列で結晶化できる唯一の例である。ロドプシンの結晶構造はウシとイカ由来の構造が報告されているが9-11)、イカロドプシンの膜貫通ヘリックス(TM3)のN末端側がTM5およびTM6から相対的に外に傾いており、その結果TM4の位置がTM5側にシフトした特徴的な構造的相違が見られる(図―2)。そしてイカロドプシンの方が後述する他のGPCRの膜貫通領域の構造により近い構造となっている。図―3に示したイカロドプシンとβ1-アドレナリン受容体(b1AR)3)との重ね合わせから、この類似性がわかる。ロドプシンとは違って受容体と共有結合を形成しないリガンドを持つGPCRではタンパク質にいくつかの安定化方法を導入することによって結晶化に成功している。以下にその例について見てみることにしたい。図―2イカとウシロドプシンの重ね合わせによる構造の相違図-3イカロドプシンとb1ARの重ね合わせによるTM3-6の類似性-3-SARNewsNo.20(Apr.2011)1)タンパク質中に構造を安定化する変異を導入するSchertlerらはトリのβ1-アドレナリン受容体(b1AR)への変異の導入を検討し、23個所への残基に変異を導入することによって安定化した構造を得て、結晶化に成功している3)。この結晶構造はアンタゴニストであるCyanopindololが結合しており、アンタゴニスト結合型構造と考えられる。後にも述べるようにこの変異体は不活性構造で安定化しているため、アンタゴニストのみならず、インバースアゴニスト類も同様の構造で結合する。2)抗体との複合体を形成することにより構造を安定化させる膜タンパク質を認識する抗体との複合体形成により、タンパク質の構造が安定化され、さらに抗体部分の水溶性表面が核となって結晶化が促されることを利用したヒトβ2-アドレナリン受容体(b2AR)の結晶化が行われ、ロドプシン以外の構造解析として初めて報告がなされた1)。この抗体は受容体の細胞内側ループに結合して複合体を形成しており、細胞外側の一部の構造は結晶内での動的な揺らぎによりリガンド結合部位を含む構造が観測されていない。最近、岩田らはアデノシン受容体(A2AR)の細胞内側表面を認識する抗体との複合体では、表面を広く認識する抗体による安定化と結晶化時の良好なパッキングによって、全体構造が明らかにできることを示している。また後述するが、通常の抗体の1/3程度の大きさのnanobodyと呼ばれる抗体と結合した複合体も得られ、使用する抗体の大きさも結晶の安定化に影響することも示されている16)。3)キメラ構造としてループ中に別のタンパク質構造を導入するGPCRの結晶化に最も成功している方法となっている。特にGPCRのTM5とTM6を結ぶ細胞内第3ループをT4リゾチーム(T4L)の配列に置き換え熱安定性に重要な変異を導入することにより、構造安定化と良好なパッキング状態が得られることが示され、最近までにb2AR2)、A2AR4)、サイトカインCXCR4受容体5)、ドーパミン受容体6)などの構造解析が報告されている。また、結晶化の方法についても、最初バクテリオロドプシンでの結晶化法として用いられたlipidiccubicphaseを用いる方法が有効であることが示されている。これまでに報告されたGPCRの結晶構造は基本的に一致した構造を持つことが明らかとなり、当初から予測されていたようにクラスAファミリーに属するGPCRは同様の構造を有することが示されている。また、これまでGPCRの代表的構造となっていたウシロドプシンよりイカロドプシンの方がより他のGPCRに似ていることは興味深い。例えば、アデノシン受容体(A2AR)―アンタゴニスト複合体4)においては、ロドプシン類との構造の比較からTM3,5,6の間の構造的対応性をみるとイカロドプシンとの-4-SARNewsNo.20(Apr.2011)類似性が高く、A2ARのTM3の細胞内C末端側が外側に移動した構造となっていることが示される(図―4)。また、TM3とTM4を結ぶ細胞内ループ構造に特徴的な違いが見られ、イカロドプシンでは不規則なストランドとなっているが、A2ARではヘリックス構造をとることがわかり(図―5)、この構造の差異がGタンパク質の結合に特徴的なものであることが示唆される。図-4イカロドプシンとA2ARのTM3のC末端(円で囲った部分)の構造変化図-5イカロドプシンとA2ARの細胞内第2ループの構造の相違3.機能の異なるリガンドが結合したGPCRの構造これまで解析されたGPCRの結晶構造から、リガンド結合によるGPCRの構造的な情報が得られている。インバースアゴニストとアンタゴニストが結合したb2ARの構造が解析された結果、興味深いことにこれらの二つの異なる機能を持つリガンドはほとんど同じ受容体構造に結合していることが示された12)。用いたb2ARは構造安定化と結晶化のために第3細胞内ループにT4Lを導入したキメラタンパク質(b2AR-T4L)である-5-SARNewsNo.20(Apr.2011)ため、リガンドが受容体構造に適合する構造で結合したものと考えられる。同様の結果が23個所に変異を導入したb1ARにおいても示されている13)。この場合はb1ARのフルアゴニストおよびパーシャルアゴニストが結合した構造で、これらの二つの構造がほとんど変わらないばかりか、先に構造が解析されているインバースアゴニストが結合した構造とも変わらないことが示されている。この結果は、GPCRへのリガンドの結合はリガンドの機能にかかわらず初期の結合はほぼ同じ様式で生じ、そののちリガンドの機能に応じた受容体の構造へと変化することを示していると解釈されている。23個所に変異を導入して安定化した受容体は初期のリガンド結合構造を保ったまま安定化して結晶化したものと考えられる。この結果はGPCRの機能構造を解明する困難さを示しているが、また本来のGPCRでは構造変化が柔軟に生じることを示唆するもので、非常に興味深いものと言える。5.オプシンの構造とGPCRの構造変化11-シスレチナールを結合していないロドプシンはオプシンと呼ばれ、pH4ではGタンパク質(トランスデューシン)を活性化することから、Gタンパク質を結合することは明らかであるが、その活性化能は低く他のGPCRの生理的条件下でのリガンドフリーでの活性化能に似ている。pH4でのオプシンとGαサブユニットのC末端フラグメントに対応した11アミノ酸からなるペプチドが細胞内側に結合した複合体の構造が解析され14)、これはオプシン単体に似た構造15)を持っているが、ロドプシンとは異なる特徴的な構造を持つことが示されている。その特徴的な違いはTM5-7に見られ、特にTM6のN末側がTM3から相対的に外側に変化し、それに伴いTM5とTM7が構造変化して細胞内側のヘリックスが構成する窪みが大きくなっていることにある(図―6)。C末端フラグメントペプチドは生じた窪みに結合して、このオプシン構造を安定化する複合体を形成している。一方、最近になってb2AR-T4Lにフルアゴニストが結合した構造を抗体の一種であるnanobodyで安定化した複合体構造16)とb2AR-T4Lにフルアゴニストが不可逆的に結合した結晶構造が解析され17)、これらの構造が上述のオプシン―ペプチド複合体の結晶構造に類似した構造であることが示されている。また、A2AR-T4Lにアゴニストが結合し図-6ロドプシンとオプシンの膜貫通ヘリックスの構造の相違の模式図14)(TM2,3,5-7による細胞内側の窪みの変化)-6-SARNewsNo.20(Apr.2011)-7-のGPCRの多くの結晶化への努力が大きく花開く時期にきていることは間違ない。6.GPCR領域における分子認識と情報伝達機構の解明が加速されるものと期待される。.5411.1443-11445.,236-240.18)F.Xuetal.,(2011)Science332,322-327.た構造でも同様の変化が生じたタンパク質構造が示され18)、リガンド結合部位の構造はアンタゴニスト結合構造と大きく異ならないが、細胞内側の構造にはオプシンと同様の変化が見られている。このような構造変化が実際に本来のGPCRが生理的条件下で示す構造変化と同様のものであるかは、これからのさらなる研究が必要であると考えられるが、これまでいおわりに最近のGPCRの結晶構造解析の結果をもとにGPCRの構造と機能研究について概観したが、GPCRと情報伝達を担うGタンパク質との相互作用やGPCRの二量体またはオリゴマーの果たす機能的役割も重要なものとなってきており、これらの課題についても結晶構造から多くの示唆が得られることは間違いない。一方では部位特異的変異実験などからその機能についての研究も進められており、また結晶構造情報が少ないクラスBおよびクラスCのGPCRについても今後の発展が予想されることから、ますます参考文献1)S.G.F.Rasmussenetal.,(2007)Nature450,383-3872)V.Cherezovetal.,(2007)Science318,1258-1265.3)T.Warneetal.,(2008)Nature454,486-491.4)V.-P.Jaakolaetal.,(2008)Science322,1211-1217.5)B.Wuetal.,(2010)Science330,1066-1071.6)E.Y.T.Chienetal.,(2010)Science330,1091-1095.7)S.Tachibanakietal.,(1998)FEBSLett.425,126-130.8)S.AcharyaandS.S.Karnik,(1996)J.Biol.Chem.271,25406-29)K.Palczewskietal.,(2000)Science289,739-745.10)T.Shimamuraetal.,(2008)J.Biol.Chem.283,17753-17756.11)M.MurakamiandT.Kouyama,(2008)Nature453,363-367.12)D.Wackeretal.,(2010)J.Am.Chem.Soc.132,113)T.Warneetal.,(2011)Nature469,241-244.14)P.Scheereretal.,(2008)Nature455,497-502.15)J.H.Parketal.,(2008)Nature454,183-187.16)S.G.F.Rasmussenetal.,(2011)Nature469,175-180.17)D.M.Rosenbaumetal.,(2011)Nature469SARNewsNo.20(Apr.2011)/////CuttingEdge/////インフルエンザノイラミニダーゼ−シアル酸誘導体複合体相互作用の非経験的フラグメント分子軌道法計算に基づく相関解析徳島大学大学院薬科学教育部創薬理論化学分野比多岡清司1.はじめに新型インフルエンザウイルス(A型,H1N1亜型)の世界的大流行(パンデミック,2009年)は,昨年春にその第一波の終息を確認しているものの,現在もなお世界的な関心事である.なぜなら,今季に検出されるインフルエンザウイルスに占める新型の割合が昨年末から急増し,当初主流であった香港型(A型,H3N2亜型)を上回るようになってきているためである.これは新型の第二波の到来を意味し,1918年のスペイン風邪(A型,H1N1亜型)の場合もこの第二波の影響の方が甚大であったことを思い起こせば,今後もまだ新型への警戒を怠るべきではない.インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に属し,脂質二重層からなるエンベロープで覆われた直径が約100nm(10−7m)のウイルスである.ウイルスは,その内部構成タンパク質である核タンパク質およびマトリックスタンパク質の抗原性の違いから,A,B,C型に分類される.これまでのパンデミック(1918年のスペイン型,1957年のアジア型,1968年の香港型,2009年の新型)を引き起こしたウイルスはすべてA型で,野生水鳥の世界で常在している.インフルエンザの治療には,エンベロープに存在するスパイク糖タンパク質の一種であり,ウイルスの増殖・遊離を担う酵素であるノイラミニダーゼ(NA,Neuraminidase,EC3.2.1.18)を阻害する目的で開発された薬剤が広く使用されている.その薬剤として,現在最も使用されているのはZanamivir(Relenza®)やOseltamivir(Tamiflu®)であるが(図1),これらNA阻害剤に対しては,既に薬剤耐性ウイルスが流行または耐性変異が進みつつあるのが現状である.このような中,第3,4のNA阻害剤としてPeramivir(Rapiacta®)およびLaninamivir(Inavir®)がそれぞれ承認され,新型のみならず高病原性トリインフルエンザ(A型,H5N1亜型)に対する効果も期待されている.したがって,これら阻害剤とNAとの間の相互作用メカニズムの詳細な理解が,野生型のみならず変異型NAに対しても高活性な新規NA阻害剤の開発につながると考える.本研究では,インフルエンザウイルスのN1ノイラミニダーゼ(N1-NA)とOseltamivirを含む一連のシアル酸誘導体複合体について,非経験的フラグメント分子軌道(abinitioFragmentMolecularOrbital(FMO))法等による分子科学計算ならびにその結果に基づく詳細解析を行った[1].また,我々が提案しているLinearExpressionbyRepresentativeEnergyterms(LERE)解析[2,3]を用いて,複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動を支配する重要な相互作用ならびにその変動に対するシアル酸誘導体の各部分構造の寄与を原子および電子レベルで定量的に明らかにすることを目的とした.Oseltamivir(Tamiflu®,1999)F.Hoffmann-LaRocheZanamivir(Relenza®,1999)GlaxoSmithKlinePeramivir(Rapiacta®,2010)BioCryst(Shionogi)OOOHNH2NNH2NHOCH3HOHOHOOOH3NOOONHOCH3HONHOCH3H2NHNNH2図1.ノイラミニダーゼ(NA)阻害剤の化学構造.-8-SARNewsNo.20(Apr.2011)2.化合物セットKimらにより報告されているOseltamivirを含む一連のシアル酸誘導体のN1-NAに対する阻害活性データ[4]に基づき,本解析ではFragmentC部位がamino基(NH3+)であるTypeI化合物およびguanidino基(NHC(=NH2+)NH2)であるTypeII化合物の二つの系列から構成される合計8化合物(mixedcongenericseries)を使用した.これらすべての化合物はFragmentB部位に共通の母格構造(4-acetamido-cyclohex-1-ene-1-carboxylicacid)を有している.また,TypeI,II化合物のそれぞれのFragmentA部位は同様の側鎖基(R1=H,C3H7,CH(Me)Et(R),CHEt2)を有しており(図2),このR1の順にCompounds1–4(TypeI)および5–8(TypeII)とした.FragmentAOR1ONHOCH3OR2FragmentCFragmentB(R1O−)(−R2)R1=H,C3H7,CH(Me)Et(R),CHEt2R2=NH3+(TypeI),NHC(=NH2+)NH2(TypeII)図2.解析に用いたシアル酸誘導体.3.複合体構造のモデリングN1-NAとOseltamivir(Compound4,R1=CHEt2,R2=NH3+)の複合体のX線結晶解析構造(PDBcode:2HU4,図3,[5])を初期構造として使用し,分子動力学(MD,AMBER)計算によりN1-NA−Oseltamivir複合体の平均構造を得た.さらに,この平均構造を鋳型として他の化合物(Compounds1−3,5−8)の複合体構造を構築した(“fullmodel”).また,複数個のNA−リガンド複合体のX線結晶解析構造(PDBcodes:1BJI,1F8C,1F8E,2QWD,2QWG,2QWH,2QWJ,2QWK,3CL0(TypeI);1L7F,1L7G,1L7H,1NNC,2CML,2HTQ,2QWE,2QWF,2QWI,3B7E,3CKZ(TypeII))において,リガンドとNAとの間の相互作用を媒介する水分子が報告されており,TypeI化合物(amino基)の場合は二つの水分子(W1,W2)が,一方でTypeII化合物(guanidino基)の場合は一つの水分子(W1)が存在する(図4).したがって,FragmentC部位(amino,guanidino基)に依存するType特異的な水分子(TypeI:W1,W2,TypeII:W1)を考慮してそれぞれの複合体構造を構築した.また,各複合体構造について,阻害剤,Type特異的な水分子,および阻害剤から8Å以内のアミノ酸残基で構成される“truncatedmodel”を構築した.N1-NA−Oseltamivir複合体における“truncatedmodel”の結合相互作用エネルギー(ΔEbind,FMO/MP2/6-31G)と“fullmodel”のΔEbindとのエネルギー差(ΔΔEbind=3.6kcal/mol)は小さく,かつOseltamivirに近接するN1-NAのアミノ酸残基との相互作用エネルギーはほぼ同じ値であることから,“truncatedmodel”をFMO計算に使用した.図3.N1-NA−Oseltamivir複合体のX線結晶解析構造(PDBcode:2HU4).図4.(a)TypeI複合体および(b)TypeII複合体の活性部位近傍における相互作用.W1およびW2は水分子を,PocketsA,B,Cは,それぞれFragmentsA,B,Cの近傍のアミノ酸残基を表す.(a)(b)OOONH3NHCH3OR1OOOONH2NH2Glu119Arg156NH2NH2Arg118OHTyr406NH2NH2Arg371Tyr347OHH2NNH2Arg292NH2OAsn294OOGlu276H2NH2NArg224H2NH2NArg152NW2W1OHSer179Ile222HOSer246Trp178OOAsp151OOOOGlu277Glu227PocketAPocketCPocketBFragmentAFragmentCFragmentBOOOHNNHCH3OR1OOOONH2NH2Glu119Arg156NH2NH2Arg118OHTyr406NH2NH2Arg371Tyr347OHNH2Arg292NH2OAsn294OOGlu276H2NH2NArg224H2NH2NH2NArg152NW1OHSer179Ile222HOSer246Trp178OOAsp151H2NNH2OOOOGlu277Glu227PocketAPocketCPocketBFragmentAFragmentBFragmentC-9-SARNewsNo.20(Apr.2011)4.複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(LERE-QSAR解析)一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成に伴う結合相互作用の全自由エネルギー変化ΔG(=−2.303RTpIC50,T=310K)は,幾つかの相互作用エネルギー項の和として下式(1a)で表すことができる(エネルギーの加成性).ΔG=ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss+ΔGothers(1a)ΔGbindは一連のシアル酸誘導体とN1-NAの結合相互作用エネルギー,ΔGsolは複合体形成に伴う水和自由エネルギー変化,ΔGdissは各シアル酸誘導体のFragmentC部位(amino,guanidino基)の解離自由エネルギー変化を表す.ΔGothersは上記の3種類の代表自由エネルギー項(representativeenergyterms)以外の相互作用自由エネルギー項の総和を表し,複合体形成前後におけるタンパク質構造の変形に伴う変形エネルギーなどを含む“penaltyenergy”項と考えられる.一般に,骨格が同一である一連の構造類似体(congenericseries)とタンパク質との複合体形成において,ΔGothersは正の定数あるいは代表自由エネルギー項の総和[ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss]に線形と仮定する(LFEP,LinearFree-EnergyPrinciple,ΔGothers=β[ΔGbind+ΔGsol+ΔGdiss]+const;β<0and/orconst>0)[2,3].本解析で用いた化合物は,FragmentAおよびC部位で識別される二種類の系列の“mixedcongenericseries”と考えられ,ΔGothers1は[ΔGbind+ΔGsol]に線形:ΔGothers1=β1[ΔGbind+ΔGsol]+const(β1<0and/orconst>0)およびΔGothers2はΔGdissに線形:ΔGothers2=β2ΔGdiss+const(β2<0and/orconst>0)と仮定した場合,ΔGothersはΔGothers1とΔGothers2の和として表すことができる(ΔGothers=ΔGothers1+ΔGothers2).以上より,次式(1b)を得る.ΔG=(1+β1)[ΔGbind+ΔGsol]+(1+β2)ΔGdiss+const(1b)阻害剤とタンパク質の複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔG)は,結合に伴うエンタルピー変化項(ΔH)のみならず,温度に依存するエントロピー変化項(TΔS)も加わった自由エネルギーが支配していると考えられるが,本解析のような大規模分子系に対するエントロピー変化項を分子科学計算・シミュレーションにより定量的に評価することは現状では困難である.一方,Glosterら[6]はグリコシダーゼ阻害剤とβ-glucosidaseの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔG)に対して,エントロピー変化項(TΔS)とエンタルピー変化項(ΔH)との間にエントロピー・エンタルピー補償則が良好に成立すること(TΔS=αΔH+const;n=18,r=0.91,α=0.90)を等温滴定熱量測定(ITC,IsothermalTitrationCalorimetry)の実験から報告している.N1-NAおよびβ-glucosidaseは,それぞれ異なるグリコシド加水分解酵素(GH,GlycosideHydrolase,EC3.2.1.-)ファミリーに属しているが(N1-NA:GH34,β-glucosidase:GH1),両者の阻害メカニズムは比較的類似していると考えられるため,本解析における一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成においてもエントロピー・エンタルピー補償則が成立することが期待される.したがって,エントロピー・エンタルピー補償則から式(1b)におけるΔGbindを変形し(ΔGbind=ΔHbind–TΔSbind=(1−α)ΔEbind+const(なお,溶液中では体積と圧力の変化が無視できるためΔHbind=ΔEbindと置き換えた)),下式(1c)を得た.ΔG=(1+β1)[(1−α)ΔEbind+ΔGsol]+(1+β2)ΔGdiss+const(1c)ここで,ΔEbindは静電相互作用エネルギー項(ΔEbindHF)および分散相互作用エネルギー項(Edisp)の和として表され(ΔEbind=ΔEbindHF+Edisp),ΔGsolは水和自由エネルギー変化の静電相互作用エネルギー項(ΔGsolpolar)および非静電相互作用エネルギー項(ΔGsolnonpolar)の和として表されることから(ΔGsol=ΔGsolpolar+ΔGsolnonpolar),最終的に式(1c)から下式(1d)を導き,これをLERE-QSAR解析における基本式とした.ΔG=(1+β1)[ΔGlocal+ΔGnonlocal]+(1+β2)ΔGdiss+const(1d)上式において,ΔGlocal(=(1−α)Edisp+ΔGsolnonpolar)は非静電相互作用エネルギー項の和として表され,分散相互作用などに対応する局所的な相互作用に基づく自由エネルギー変化を,一方で-10-SARNewsNo.20(Apr.2011)ΔGnonlocal(=(1−α)ΔEbindHF+ΔGsolpolar)は静電相互作用エネルギー項の和として表され,静電相互作用などに対応する非局所的な相互作用に基づく自由エネルギー変化をそれぞれ表し,また,αはGlosterらの報告値に基づき0.90とした.ΔEbindはFMO計算(MP2/6-31G)[7,8]により算出し,ΔGsolにおけるΔGsolpolarおよびΔGsolnonpolarは,それぞれ非経験的分子軌道法(HF/6-31+G(d,p))−連続誘電体モデル(SCRF-CPCM,Self-ConsistentReactionField-Conductor-likePolarizableContinuumModel)および溶媒接触表面積(ASA,solventAccessibleSurfaceArea)変化に基づく経験式(ΔGsolnonpolar=γΔASA+b;γ=0.0072,b=0)により算出した.ΔGdissは各シアル酸誘導体のFragmentC部位(amino,guanidino基)の解離自由エネルギー変化(−NH2(−NHC(=NH)NH2)+H+→−NH3+(−NHC(=NH2+)NH2)として,HF/6-31+G(d,p)−SCRF-CPCMにより評価した.5.FMO計算に基づくN1-NA−シアル酸誘導体複合体の結合相互作用解析FMO計算では,リガンドとタンパク質の結合相互作用エネルギー(ΔEbind)に加え,その計算過程においてタンパク質をアミノ酸残基単位にフラグメント分割するため,リガンドと各アミノ酸残基との間の相互作用エネルギー(IFIE,Inter-FragmentInteractionEnergy)を定量的に解析することができる.本研究の標的タンパク質であるN1-NAの活性部位は,多くの解離性アミノ酸残基で構成されており,また,解析に用いたシアル酸誘導体も双性イオンである.そのため,両者は強い静電相互作用により強固に結びつくことが予想され,ΔEbindに占める静電相互作用エネルギー(ΔEbindHF)の寄与は大きいと考えられる.したがって,近距離力に基づく分散相互作用エネルギーの評価が重要となるため,MP2レベルの計算によりこれを評価した.また,前節の式(1c)におけるΔEbindはシアル酸誘導体とN1-NAのアミノ酸残基間のIFIEの総和にほぼ対応し,実際に両者の間には良好な相関(r=0.966)が存在することを確認している.シアル酸誘導体(Compounds4,8,R1=CHEt2)とN1-NAとの複合体構造について,FMO-IFIE(MP2/6-31G)による相互作用解析の結果を図5に示す.両阻害剤とN1-NAとの相互作用における共通した特徴として,阻害剤分子の荷電した官能基(FragmentB:carboxyl,FragmentC:amino,guanidino)とN1-NAの解離性アミノ酸残基(PocketB:Arg152,Arg292,Arg371,PocketC:Asp151,Glu227)との間の強い静電相互作用が結合相互作用安定化の支配要因である.一方で,Arg156(PocketC)との間には,共通して大きな不安定化相互作用エネルギーが確認される.このことはArg156との安定化相互作用を得るための阻害剤修飾の試み[9,10]が実際に行われていることにも対応している.また,W1(PocketB)ならびにGlu119,Trp178,W2(PocketC)との間には,両阻害剤において相互作用の違いが確認される.これらは,両阻害剤のFragmentC部位(amino,guanidino基)とその近傍のアミノ酸残基との相互作用の違いを反映しており,Type間を区別するエネルギー差として寄与するものと考えられる.しかしながら,式(1d)における左辺のΔGに対して,上記で示した阻害剤のFragmentsB,C部位とN1-NAのPocketsB,Cとの間の強い静電相互作用エネルギーの寄与は大きいが,その変動に与える影響は比較的小さい.次節において,複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔG)の変動を支配する相互作用について示す.−120−100−80−60−40−2002040Glu276Glu277Arg118Arg152Arg292Asp324Tyr347Gly348Arg371W1Glu119Asp151Arg156Trp178Glu227W2Compound4Compound8IFIE(kcal/mol)AminoacidresiduePocketAPocketBPocketC図5.シアル酸誘導体(Compounds4,8,R1=CHEt2)とN1-NAのアミノ酸残基間のFMO-IFIE(MP2/6-31G,|IFIE|>8.0kcal/molのみを示す).-11-SARNewsNo.20(Apr.2011)6.全自由エネルギー変化に対するLERE-QSAR解析LERE-QSAR解析における基本式(1d)に基づき,一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化(ΔG)を統計的に説明可能な有意な相関式(2)を得ることができた.ΔG=(1+β1)[ΔGlocal+ΔGnonlocal]+(1+β2)ΔGdiss+0.310n=8,r=0.981,s=0.483,F=63.2,β1=−0.449,β2=−0.820(2)式(2)におけるβ1およびβ2は,それぞれ“penaltyenergy”項ΔGothers1(=β1[ΔGbind+ΔGsol]+const)およびΔGothers2(=β2ΔGdiss+const)における係数であり,β1とβ2はともに負の値をとっている.このことは,式(1b)導出において仮定したとおり,ΔGothers1およびΔGothers2が全自由エネルギー変化に対して,両者ともに“penaltyenergy”項として寄与していることを示している.全自由エネルギー変化(ΔG)の変動に対する各自由エネルギー項の寄与を図6に示す.解離自由エネルギー変化(ΔGdiss)は全自由エネルギー変化に対し二つの化合物系列(TypeI,II化合物)を区別するエネルギー差として寄与しており,相関式(2)におけるそれは古典QSAR式においてしばしば用いられるindicatorvariable(尺度変数)の役割を果たしていると考えられる.また,局所的・非局所的な相互作用に基づく自由エネルギー変化(ΔGlocalおよびΔGnonlocal)の変動は,それぞれ全自由エネルギー変化(ΔG)のそれと良好に相関していることが確認できる.さらに,相関式(2)におけるΔGlocalと[(1+β1)ΔGnonlocal+(1+β2)ΔGdiss]との間には良好な相関関係(r=0.944)が存在することから,全自由エネルギー変化はΔGlocalのみを用いても説明可能となる(図7).CompoundsTypeITypeII12345678−4−202468Energy(kcal/mol)ΔGobsΔGlocal(=(1−α)Edisp+ΔGsolnonpolar)ΔGnonlocal(=(1−α)ΔEbindHF+ΔGsolpolar)ΔGdissΔGcalc図6.ΔGの変動量に対する各自由エネルギー項の寄与(各自由エネルギー項はCompound4(Oseltamivir)を基準とした場合の相対エネルギー値として示す).ΔG=1.67ΔGlocal+0.559n=8,r=0.969,s=0.560,F=91.6(3)式(3)について,ΔGlocal(=(1−α)Edisp+ΔGsolnonpolar)を構成する分散相互作用エネルギー項(Edisp)および水和自由エネルギー変化の非静電相互作用エネルギー項(ΔGsolnonpolar)もそれぞれ全自由エネルギー変化に対して良好な相関を示した(r=0.968(Edisp),0.966(ΔGsolnonpolar)).したがって,一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動に対し,両分子間において局所的に働く相互作用(ΔGlocal,分散相互作用あるいは脱水和相互作用)が支配的な役割を果たしていることが考えられる.−図7.ΔGとΔGlocalのプロット.−14−13−12−11−10−9−87ΔG(kcal/mol)−10.5−9.5−8.5−7.5−6.5−5.512345687ΔGlocal(kcal/mol)TypeI(amino)TypeII(guanidino)r=0.969-12-SARNewsNo.20(Apr.2011)7.全自由エネルギー変化に対するシアル酸誘導体の各部分構造の寄与本節では,通常のFMO法におけるタンパク質側のフラグメント分割に加えて,阻害剤であるシアル酸誘導体を図2で示す位置で3つのフラグメント(FragmentsA,B,C)に分割し,各フラグメントのΔGlocal(ΔGFragmentXlocal:X=A,B,C)が全自由エネルギー変化(ΔG)に対して与える影響を定量的に明らかにする.図8には,ΔGlocalと全自由エネルギー変化との間の相関およびその変動を各フラグメントについて示しているが,両者がともに最大なのはFragmentAであることが確認できる.したがって,FragmentAとその近傍のPocketAとの間の分散相互作用などに対応する局所的な相互作用が一連のシアル酸誘導体とN1-NAとの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動に対して最も支配的な役割を果たしていることが示唆されABC0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.00102030405060708090100FragmentXCorrelation(r2)ContributiontothetotalvarianceofΔGlocal(%)Correlation(r2)ContributiontothetotalvarianceofΔGlocal(%)図8.シアル酸誘導体の各フラグメントの寄与(FragmentX:X=A,B,C).る.Oseltamivir(Compound4)のFragmentA(pentylether)がその近傍のアミノ酸残基(PocektA:Ile222,Arg224,Ser246,Glu276,Glu277,Asn294,PocketB:Arg292)と相互作用している様子を図9に示す.FragmentAを取り囲むこれら7つのアミノ酸残基との間の分散相互作用エネルギーの和は,FragmentAが果たす全分散相互作用エネルギーの90%以上を占めており,この局所的な相互作用に基づく自由エネルギー変化が複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の大半を担うと考えられる.また,これら7つのアミノ酸残基はそのほとんどが極性アミノ酸残基であり,これらのアミノ酸残基間の緻密な相互作用ネットワークにより,上記の局所的な相互作用が生じる.このような極性アミノ酸残基の極性基との間における分散相互作用は,Hanschら[11]がpapainによるN-置換グリシンエステル等の加水分解反応に対するQSAR解析において見出している“非古典的疎水性相互作用”に対応すると考えられる.以上より,一連のシアル酸誘導体とN1-NAの複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動は,両分子間において特にFragmentAとその近傍のアミノ酸残基との間の分散相互作用などの局所的な相互作用により支配されていると結論づけられる.IIllee222222Assnn229944Seerr224466Glluu227766Arrgg222244Glluu227777Arrgg229922Oseltamivir(Compound4)PocketAinteractionnetworkPocketB図9.FragmentAとその近傍のアミノ酸残基との相互作用.8.まとめ本研究では,インフルエンザウイルスのN1-NAとOseltamivirを含む一連のシアル酸誘導体複合体について,FMO法等の分子科学計算ならびにLERE-QSAR解析を行った.その結果,シアル酸誘導体とN1-NAの複合体は,シアル酸誘導体のFragmentsB,C部位とN1-NAのPocketsB,Cとの間の強い静電相互作用により強固に結びついており,また,その複合体形成に伴う全自由エネルギー変化の変動は,FragmentAとPocketAとの間の分散相互作用などに対応する局所的な相互作用によって支配されていることを定量的に明らかにした.本研究において示した分子科学計算・シミュレーション技術に基づくLERE-QSAR解析は,従来のQSAR解析では得ることが困難である複合体形成に伴う阻害剤の作用メカニズムを原子および電子レベルにおいて理解可能であり,今後の論理的創薬における新しい体系的方法論として期待できる.-13-SARNewsNo.20(Apr.2011)-14-謝辞最後になりますが,第38回構造活性相関シンポジウムへの参加のご支援ならびに本研究をSARPresentationAwardにご選出いただきました日本薬学会構造活性相関部会,本シンポジウムの実行委員長であり研究の御指導を賜りました中馬寛教授をはじめとする諸先生方および共同研究者の皆様に心より御礼申し上げます.また,本研究内容を本誌に掲載する機会を与えてくださいました諸先生方に深く感謝申し上げます.参考文献[1]Hitaoka,S.;Harada,M.;Yoshida,T.;Chuman,H.Correlationanalysesonbindingaffinityofsialicacidanalogueswithinfluenzavirusneuraminidase-1usingabinitioMOcalculationsontheircomplexstructures.J.Chem.Inf.Model.2010,50,1796–1805.[2]Yoshida,T.;Munei,Y.;Hitaoka,S.;Chuman,H.CorrelationanalysesonbindingaffinityofsubstitutedbenzenesulfonamideswithcarbonicanhydraseusingabinitioMOcalculationsontheircomplexstructures.J.Chem.Inf.Model.2010,50,850–860.[3]Munei,Y.;Shimamoto,K.;Harada,M.;Yoshida,T.;Chuman,H.CorrelationanalysesonbindingaffinityofsubstitutedbenzenesulfonamideswithcarbonicanhydraseusingabinitioMOcalculationsontheircomplexstructures(II).Bioorg.Med.Chem.Lett.2011,21,141–144.[4]Kim,C.U.;Lew,W.;Williams,M.A.;Wu,H.;Zhang,L.;Chen,X.;Escarpe,P.A.;Mendel,D.B.;Laver,W.G.;Stevens,R.C.Structure−activityrelationshipstudiesofnovelcarbocyclicinfluenzaneuraminidaseinhibitors.J.Med.Chem.1998,41,2451–2460.[5]Russell,R.J.;Haire,L.F.;Stevens,D.J.;Collins,P.J.;Lin,Y.P.;Blackburn,G.M.;Hay,A.J.;Gamblin,S.J.;Skehel,J.J.ThestructureofH5N1avianinfluenzaneuraminidasesuggestsnewopportunitiesfordrugdesign.Nature2006,443,45–49.[6]Gloster,T.M.;Meloncelli,P.;Stick,R.V.;Zechel,D.;Vasella,A.;Davies,G.J.Glycosidaseinhibition:anassessmentofthebindingof18putativetransition-statemimics.J.Am.Chem.Soc.2007,129,2345–2354.[7]Kitaura,K.;Ikeo,E.;Asada,T.;Nakano,T.;Uebayasi,M.Fragmentmolecularorbitalmethod:anapproximatecomputationalmethodforlargemolecules.Chem.Phys.Lett.1999,313,701–706.[8]Fedorov,D.G.;Kitaura,K.Extendingthepowerofquantumchemistrytolargesystemswiththefragmentmolecularorbitalmethod.J.Phys.Chem.B2007,111,6904–6914.[9]Li,Y.;Zhou,B.;Wang,R.RationaldesignofTamifluderivativestargetingattheopenconformationofneuraminidasesubtype1.J.Mol.Graph.Model.2009,28,203–219.[10]Wen,W.-H.;Wang,S.-Y.;Tsai,K.-C.;Cheng,Y.-S.E.;Yang,A.-S.;Fang,J.-M.;Wong,C.-H.AnalogsofzanamivirwithmodifiedC4-substituentsastheinhibitorsagainstthegroup-1neuraminidasesofinfluenzaviruses.Bioorg.Med.Chem.2010,18,4074–4084.[11]Hansch,C.;Smith,R.N.;Rockoff,A.;Calef,D.F.;Jow,P.Y.;Fukunaga,J.Y.Structure−activityrelationshipsinpapainandbromelainligandinteractions.Arch.Biochem.Biophys.1977,183,383–392.SARNewsNo.20(Apr.2011)/////Activities/////第38回構造活性相関シンポジウム開催報告第38回構造活性相関シンポジウム実行委員長中馬寛徳島大学において、第38回構造活性相関シンポジウム(会場:工学部共通講義棟6F・創成スタジオ、期間:2010年10月30日(土)~10月31日(日)、主催:日本薬学会構造活性相関部会、共催:日本化学会・日本農芸化学会・日本分析化学会・日本農薬学会)が開催されました。本年度のシンポジウムは第33回情報化学討論会との併催でした。今回のシンポジウムでは特別講演2件、招待講演4件、口頭発表16件、ポスター発表33件となりました。主催いただきました日本薬学会構造活性相関部会はじめ、共催・協賛いただきました学協会に感謝いたしますと同時に、ご講演・ポスター発表いただきました皆様にお礼申し上げます。また、開催資金のご援助をいただきました日本薬学会ならびに徳島県観光協会・コンベンション事業部に感謝いたします。海外(米国およびフランス)から2件の特別講演、国内から4件の招待講演、また今回新たに企画した特別セッション「タンパク質ホモロジーモデリングと構造活性相関の融合」は参加者に好評のようで実行委員一同少しほっといたしました。参加者は174名(特別講演、招待講演、招待者含む)に達し、盛会のうちに終えることができました。これもひとえに、参加いただきました皆様と、実行委員の皆様、ならびに構造活性相関部会幹事の先生方、さらには、事務一般処理を引き受けていただきましたコンベンションサービスのご助力、ご支援の賜と存じます。紙面を借りますこと失礼とは存じますが、ご参加頂きました皆様、ご助力、ご支援いただきました先生方、学会の受付などを行っていただいた学生、広告展示を行っていただきました企業の皆様、日本薬学会・部会担当ならびに会計担当の皆様に深くお礼申し上げます。懇親会(10/30)次年度の構造活性相関シンポジウムは、東京理科大学・薬学部の西谷潔先生のお世話で、東京理科大学・野田キャンパスで2011年11月28日(月)~11月29日(火)に開催される予定です。皆様のご参加、ご講演、ご討論により、より活発な討論会になりますよう、宜しくお願い申し上げます。-15-SARNewsNo.20(Apr.2011)/////Activities/////〈会告〉構造活性フォーラム2011「ADME/Toxに基づく創薬:安全な医薬品の創製に向けて」医薬品の開発において,たとえ優れた薬理効果を発揮するにしても,その体内動態・毒性が不適切であるために,開発を中止,あるいは市販後であれば販売を中止せざるを得ないケースがある。こうした問題を未然に予測し,有効かつ安全な医薬品を設計・開発することが強く望まれている。薬物の体内動態は,吸収・分布・代謝・排泄の各過程を構成する様々な薬物/生体分子間相互作用の総体であり,薬物を含む化学物質はその物性に応じて実に多様な振舞いを示す。本フォーラムでは,化学物質の体内動態,毒性に関わる各分野の専門家を一堂に集めて最新の情報を整理するとともに,安全な医薬品の創製に向けた分子設計の方向性について討論する。主催:日本薬学会構造活性相関部会後援:日本薬学会医薬化学部会,日本薬学会生物系薬学部会,日本化学会,日本分析化学会,日本農芸化学会,有機合成化学協会,日本農薬学会,近畿化学協会日時:平成23年6月17日(金)会場:コープイン京都[〒604-8113京都市中京区柳馬場蛸薬師上ル井筒屋町411,フリーダイヤル:0120-79-6600,Tel:075-256-6600,Fax:075-251-0120,E-mail:coopinn-k@univcoop.or.jp]http://hawk2.kyoto-bauc.or.jp/coop-inn/kyoto/交通:JR「京都駅」→地下鉄烏丸線→「四条」下車,(13番出口から)徒歩5分JR京都駅より市バスA-2のりば(5番系統に乗車)「四条高倉」で下車,徒歩10分JR京都駅よりタクシーで10分阪急電車「烏丸」駅(13番出口から)徒歩5分講演:1.ADME/Tox研究の創薬へのインパクト堀江透(ディ・スリー研究所)2.ADME/Toxデータマイニングの創薬現場での活用小林好真(第一三共株式会社)3.化学物質の安全性-insilico評価への挑戦林真(食品農医薬品安全性評価センター)4.エステラーゼを標的とするプロドラッグ設計今井輝子(熊本大学薬学部)5.薬物トランスポーターの基質選択性と医薬品体内動態特性楠原洋之(東京大学大学院薬学系研究科)申込方法下記のHPから申込の上,参加費および懇親会費を所定の銀行に振り込んで下さい.みずほ銀行出町支店(普)1168735構造活性フォーラム2011実行委員会申込締切定員(120名)になり次第締切.当日申込はありません.参加費一般4,000円,学生無料.懇親会費一般・学生とも3,000円.問合・申込先〒606-8501京都市左京区吉田下阿達町46-29京都大学大学院薬学研究科内構造活性フォーラム2011事務局山下富義Tel:075-753-4535Fax:075-753-9260E-mail:qsar2011@dds.pharm.kyoto-u.ac.jphttp://dds.pharm.kyoto-u.ac.jp/sarforum/-16-SARNewsNo.20(Apr.2011)/////Activities/////〈会告〉第39回構造活性相関シンポジウム実行委員長:東京理科大学薬学部西谷潔ホームページ:http://www.rs.tus.ac.jp/sar2011/index.html会期2011年11月28日(月)〜2010年11月29日(火)※引続きAIMECS11が京王プラザホテル(東京)で開催される.(11/29〜12/2)会場東京理科大学薬学部(13,14号館)(千葉県野田市山崎2641)http://www.tus.ac.jp/主催日本薬学会構造活性相関部会共催日本化学会、日本分析化学会、日本農芸化学会、日本農薬学会討論主題1)生理活性物質の活性評価・医農薬への応用2)QSARの基本パラメータ・基本手法・情報数理的アプローチ3)QSARと吸収・分布・代謝・毒性・環境毒性4)コンビナトリアルケミストリーと創薬5)バイオインフォマティクス6)分子情報処理(データベースを含む)・データ予測特別講演および招待講演決まり次第ホームページ上に掲載一般講演口頭発表およびポスター(詳細は決まり次第ホームページ上に掲載)発表申込ホームページから、または、E-mailでお申し込みください。1)演題、2)発表者氏名と所属、3)連絡先(住所、電話、Fax、E-mail)、4)200字程度の概略、5)口頭、ポスターの別、6)上記討論主題番号詳細は、ホームページ内の発表申込要領をご覧ください。発表申込6月1日(水)〜8月1日(月)締切必着講演要旨9月30日(金)締切必着詳細は、ホームページ上の講演要旨執筆要領をご参照ください。参加登録予約申込11月7日(月)締切詳細は、ホームページ上の参加登録予約申込要領をご参照ください。参加費[一般]予約8,000円、当日9,000円[学生]予約2,000円、当日3,000円※要旨集前送の場合は郵送料1,000円を別途申し受けます。※費用振込み後、参加取り消しによる返金には応じられません。懇親会11月28日(月)19:00頃【問合せ・申込み先】〒105-0014東京都港区芝3-2-11-702第39回構造活性相関シンポジウム事務局担当:加用Tel:(03)3798-5240Fax:(03)3798-5251E-mail:sar2011@event-convention.com-17-SARNewsNo.20(Apr.2011)/////Activities/////部会役員人事平成23年度から副部会長とSARNews編集委員長が交代いたします。新役員は以下の通りです。副部会長高橋由雅(豊橋技術科学大学大学院)、清水良(田辺三菱製薬)SARNews編集委員長粕谷敦(第一三共)以上構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNews第20号をお届けいたします。今回の編集作業の最中、東日本大震災という未曾有の災害が起き、そのあまりの惨状に衝撃を受けております。犠牲となられた方々のご冥福をお祈りし、また、いまだ余震の不安が続く中、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回のPerspective/Retrospectiveでは、創薬における最重要標的のひとつGPCRの最近の結晶構造に基づく機能解析について、本年初め新たにagonist結合構造が発表された機を捉えて、石黒正路先生(新潟薬科大学)にご解説いただきました。今後も目の離せない本研究領域の現況を俯瞰する視座が与えられたと思います。CuttingEdgeでは、比多岡清司先生(徳島大学)に、インフルエンザノイラミニダーゼ-シアル酸誘導体複合体相互作用の非経験的フラグメント分子軌道法計算に基づく相関解析について、精緻なご紹介をいただきました。いずれのご解説も創薬研究推進上たいへん有用であると思われます。このSARNewsが構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを、編集委員一同願っております。(編集委員会)SARNewsNo.20平成23年4月1日発行:日本薬学会構造活性相関部会長赤松美紀SARNews編集委員会(委員長)粕谷敦福島千晶飯島洋竹田-志鷹真由子久保寺英夫*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。-18-__