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SARNews No.29

SARNews_29

構造活性相関部会・ニュースレター<1October,2015>SARNewsNo.29「目次」/////Perspective/Retrospective/////機械学習による薬物分子-ターゲット相互作用予測馬見塚拓・・・2/////CuttingEdge/////データマイニングとしての多重標的相互作用解析瀧川一学・・・9新薬探索における「熱力学」というツールの使い道楠﨑佑子・・・18/////Activities/////<報告>構造活性フォーラム2015開催報告「様々なリード創製手段において創薬に貢献するインシリコ技術」大田雅照・・・26第43回構造活性相関シンポジウム第10回薬物の分子設計と開発に関する日中シンポジウム石黒正路・・・28<会告>2ndInternationalSymposiumforMedicinalSciences(第2回国際創薬シンポジウム)横山祐作・・・37構造活性相関部会・ニュースレター<1October,2015>SARNewsNo.29(Oct.2015)2/////Perspective/Retrospective/////機械学習による薬物分子-ターゲット相互作用予測京都大学化学研究所馬見塚拓1.はじめに薬物分子(以後、簡便のため薬)や薬の候補である低分子化合物と、それらのターゲットであるタンパク質の相互作用を予測することは、薬科学の中心課題である創薬はもちろん、薬の副作用やリポジショニング等、薬に関連する様々な問題の解決に寄与可能な課題である。相互作用は、実際の実験により測定可能で、また実験が最も信頼性が高いことはもちろんである。しかし現在、薬の候補となる低分子化合物は3,000万種類以上がPubChem等の低分子化合物のデータベースに格納されており、一方、ターゲットであるタンパク質の候補は、ヒトの遺伝子で1万以上に上り、非常に多い。従って、これらの組み合わせを網羅的に実験することは、時間及びコストの観点から非常に難しい。そこで、この問題を克服するために、現在まで、計算機を使った相互作用の予測が様々な角度から試みられてきた[1]。計算機による手法は、大まかに:1)シミュレーションと2)機械学習(データマイニング)に分けられる。シミュレーションは、電子状態等物理化学上の性質を深く考慮したものから、立体障害のみを考慮するものまで様々なレベルがある。いずれのレベルにおいてもシミュレーションを行うためには、薬(低分子化合物)とターゲット、両者の立体(3次元)構造が必要になる。特に、立体構造既知のターゲット、すなわちタンパク質立体構造データベースPDB(ProteinDataBank)にあるタンパク質は限られており、さらに解かれているタンパク質の分布には偏りがある。実際、代表的なターゲットであるGPCR(G-ProteinCoupledReceptor)の立体構造は、近年増加傾向にあるとはいえ、これまで数十例しか報告されていない。さらに、シミュレーションは実験より効率的とはいえ、上記のような膨大な組み合わせを考慮した場合に計算時間の効率性が十分とは言い難い。一方、近年、実験手法のハイスループット化により、薬-ターゲット相互作用データが蓄積されつつある(例えば、[2])。これら既知の相互作用データを低分子化合物とタンパク質の相互作用予測に役立てたいと考えるのは極めて自然である。機械学習(データマイニング)は、所与のデータからデータに内在する規則や仮説を推定する手法全般を指す。非常に単純な方法から最適化問題として計算時間を要する手法まで多様であるが、一般に計算時間等のコストはシミュレーションに較べるとはるかに低い。また薬-ターゲット相互作用予測において、タンパク質の立体構造が既知である必要はない。機械学習の研究開発は1980年代に開始され、その当時から信号処理、音声認識、自然言語処理、生命科学等幅広い様々な分野で応用され、多くの成功を収めてきた。例えば、現在、携帯電話やタブレット等には通常音声認識アプリが組み込まれているが、元々のモデルパラメータは機械学習で推定されている。また、近年では、材料科学や機械工学等の分野でシミュレーションを高精度で近似する代替手段として機械学習を中心としたデータ科学、MaterialsInformaticsと呼ばれる分野が生まれている等、多方面で機械学習の応用が脚光を浴びている。(機械学習の教科書として[3]。和訳もある)さて、機械学習の観点から、薬とターゲットが相互作用するか否かを推定する問題は、2値ラベル(クラス)の分類問題とみなせる。これは機械学習の標準的な問題で、典型的なデータ(後述する特徴ベクトル)に対しては多様な手法が既に提案されている。ただし、化合物とタンパク質は、いずれも特徴ベクトルのみならず非常に多様な情報を有している。まず化合物については、物理化学的性質を中心として、連続値や離散値のベクトルである記述子を各化合物に計算することが可能で、化合物からそのような記述子を計算する手法やツールが頻繁に利用され、特徴ベクトルとして利用できる。別の観点では、化合物がそもそも持つユニークな化学構造を用い、原子をノードとし、原子間の結合をエッジとしたグラフ(分子グラフ)で表現することもできる。また、薬に関しては、薬効分類や骨格分類等の分類がよくなされており、分類木を利用することがSARNewsNo.29(Oct.2015)3可能である。例えば、分類木上の距離を使って薬同士の相同性を計算することもできる。一方、タンパク質は、そもそも遺伝子の発現であるため、遺伝子の情報も同様に利用することができる。例えば、遺伝子配列のモチーフの有無や遺伝子発現情報は、それぞれ離散値と実数値として、特徴ベクトルにできる。しかし、遺伝子配列そのものは長さが不定であり、また遺伝子機能は階層性を持つことからベクトル表現は難しい。さらに、タンパク質自身の情報として、立体構造やタンパク質間相互作用等がある。これらはいずれも特徴ベクトルとして情報を表現し切れない。従って、2値ラベルの分類問題に対して、このような情報を有効に利用するためには、機械学習において新しい問題設定と解決手法を構築する必要があり、非常に刺激的な課題である。本稿では、まず、薬とターゲット間の相互作用を予測する機械学習手法全般について大まかに俯瞰する。次に、それらの中でも、薬とターゲットそれぞれに対し、化合物間、タンパク質間の相同性がデータとして与えられる場合に着目する。すなわち、相互作用データのみならず、化合物間相同性およびタンパク質間相同性が、それぞれ複数与えられた場合の機械学習による解決方法を紹介し、それらの特徴を俯瞰する。この問題設定は、機械学習の問題設定としては非常にユニークだが、機械学習の様々な応用を俯瞰すれば一般性があり、薬-ターゲット相互作用予測はこの問題設定の典型的な応用例の一つである。2.薬-ターゲット相互作用予測のための機械学習本章では、まず、機械学習により薬-ターゲット相互作用を予測するアプローチを大まかに3つに分けて取り上げる。2.1特徴ベクトルに基づくアプローチ機械学習では、データの各単位を事例と呼ぶ。一般に、事例を説明する変数は属性あるいは特徴と呼ばれる。最も典型的な機械学習のデータは、各事例が固定サイズのベクトル(特徴ベクトル)の集合となる。言い換えると、このデータは表(行列)であり、各行が事例の特徴ベクトルとなり、各列は属性(特徴)である。2値の分類問題では、属性の一つが2値ラベルとなり、この属性のラベルを分類できるよう、他の属性を使って学習を行う。すなわち、事例のクラスを特定の属性で表現する。いったん表が出来上がれば、様々な既存の分類手法がこの表に適用可能である。薬-ターゲット間相互作用予測問題も例外ではない。化合物とタンパク質のペアを事例とし、化合物とタンパク質それぞれから属性を作成し表ができる。例えば、属性として、化合物に対しては分子記述子、タンパク質に対しては遺伝子配列のモチーフや遺伝子発現が利用できる。ラベル属性を相互作用の有無として、このような表をいったん作れば、サポートベクトルマシン、決定木といった機械学習の分類手法を表に対して適用して、予測モデルを作ることができる[4]。(各分類手法の内容については本稿では詳述しないので、分類手法とは、特徴ベクトルと2値ラベル(クラス)からなる表(行列)から学習を行い、予測では特徴ベクトルを入力とし2値ラベルを出力できる手法と考えていただきたい)ただし、これは、既存の機械学習の枠組みにデータを当てはめる直接的なアプローチであり、少なくとも以下の2つの問題がある。1)使用する分類手法は一般的なものであり、薬―ターゲット相互作用に固有の性質を十分に反映した手法には必ずしもなっていない。すなわち、分類手法の基本的なアイデアはいずれもデータ空間上で2つのクラスに属するデータを判別する関数を見つけることである。一方、現実の相互作用は薬とターゲットの立体構造上起こる現象である。つまり、データ空間が立体構造上の相互作用が起こるかどうかを反映していなければ、判別関数に意味がない。2)記述子等の属性はクラスラベルに関係なく生成されるので、分類に不要な属性が多く含まれる可能性がある。例えば、2値を取るある記述子を使用した場合に、相互作用のある事例はほとんど一方の値しか取らないかもしれない。また、連続値の場合も相互作用がある事例とそうでない事例とでほとんど値が変わらない可能性もある。以上の問題は、薬-ターゲット相互作用予測に特有の性質を考慮せずにデータを構築し既存分類手法を適用するが故に起こる。言い換えると化合物やタンパク質の豊富な情報を有効活用していないことに由来する。解決手法として、例えば、次の2点が挙げられる。SARNewsNo.29(Oct.2015)41)サポートベクトルマシンで重要なカーネル関数はデータ空間上の事例の距離を表すので、カーネル関数を設計する際に、特徴ベクトルのみでは表現し切れない、化合物やタンパク質の豊富な情報を利用する。例えば、3.1節のPairwisekernelmethod[5]では、化合物間の相同性とタンパク質間の相同性を入力として、それらを利用したカーネル関数を設計することにより、実際の立体構造上の類似性をより反映したデータ空間を構成し、その上での判別を行う。2)化合物側の化学構造とタンパク質側の遺伝子配列に対し、実際にデータに頻繁に出現する部分構造(頻出部分構造)のみを属性として利用することも、構造に直接影響を与えかつデータに出現する属性のみを利用する有効な方法である[6]。(ここで、部分構造とは、例えば、化学構造を分子グラフとみなせば部分グラフを指し、また、遺伝子配列を文字列とみなせば部分文字列を指す)このように、特徴ベクトルによる方法は、機械学習を適用する手っ取り早い方法ではあるが、本来のデータに内在する特徴を十分に把握できるとは言い切れない。2.2相同性行列を用いるアプローチ化合物、タンパク質いずれに対しても、それらの属性ではなく、化合物間、タンパク質間の相同性を使用する。従って、3つの行列が入力となる。すなわち、まず、行と列が化合物とタンパク質からなり、各要素が相互作用の有無を指す行列。次に、化合物間相同性行列。この場合は、行も列も化合物で、要素は相同性を示す値となる。同様に、タンパク質間相同性行列で、行と列両方ともタンパク質で要素は相同性値。ただし、相同性は、タンパク質であれば、遺伝子配列、モチーフの有無、遺伝子発現、タンパク質相互作用等、複数の相同性が得られる。従って、入力は、3種類の行列であり、化合物相同性とタンパク質相同性に関しては、それぞれ複数の行列が入力となる[7]。相同性行列を用いる手法が近年脚光を浴びている背景には、ケモゲノミクスやケミカルバイオロジーに由来する以下のような考え方がある:相同性(その逆は距離)は、化合物とタンパク質それぞれの空間でのデータ分布を表している。すなわち、化合物はそのデータ空間であるケミカルスペース内に分布し、それは化合物の相同性によって表現される。同様にバイオロジカルスペースはタンパク質の分布を表す空間であり、この空間内のタンパク質の分布は相同性によって表現される。その2つのスペースのインタフェースに薬-ターゲット間相互作用があると考えられる。従って、2つのスペースとそのインタフェース(既存相互作用)がうまく把握されれば、薬-ターゲット相互作用の有無は、インタフェースも含めたスペース全体を使ってクリアに説明されるはずである。言い換えると、ケミカルワールドとバイオロジカルワールドが交わる全体像が見える、と考えられる[8]。なお、特徴ベクトルによるアプローチの中でも化合物側の特徴とタンパク質側の特徴を明確に区別するモデルを使用する方法があり、そのような方法は、同じ考えに基づくと言える[9]。本稿では、3章において、相同性行列を用いるアプローチの既存手法をより具体的に紹介するとともに、問題点を指摘し、それらを克服する手法を紹介する。2.3その他のアプローチその他のアプローチとして、例えば、生命科学文献データを入力とするテキストマイニングがある[10]。文献データベースの中で同一の文書(あるいは章、パラグラフ等)に、対象とする化合物とタンパク質が共に出現するという共起情報から、薬-ターゲット相互作用を予測する。このアプローチの問題は、共起が実際の相互作用を反映するとは限らないことである。むしろ探索的に未知の薬-ターゲット相互作用を検出/予測するアプローチである。3.相同性行列を用いるアプローチ本節では、2.2で述べた相同性行列を用いる手法を俯瞰する。繰り返しになるが、このアプローチでは、入力は3種類の行列である:薬―ターゲット相互作用を示す行列Y、化合物間相同性を示す行列Sd、タンパク質間相同性を示す行列St(SdとStは入力行列であることに注意)。化合SARNewsNo.29(Oct.2015)5物とタンパク質それぞれの空間を適切に利用し、相互作用を予測できるモデルを構築することを目指す。3.1Pairwisekernelmethod(PKM)2.1節で説明したように、事例を化合物とタンパク質のペアとし、サポートベクトルマシン等の分類手法を適用する[5]。サポートベクトルマシンではカーネル関数を必要とするが、既存の特徴ベクトルから相互作用予測に適切なカーネル関数が計算できるかどうかは不明である。そこで、入力である相同性行列を使いカーネルを計算する。すなわち、化合物とタンパク質のあるペアPAとあるペアPBの相同性は、PAの化合物とPBの化合物の相同性、PAのタンパク質とPBのタンパク質の相同性を単純に使うことによって得られる。考え方は合理的で簡単に計算できるが、この方法ではすべてのペアの組み合わせに対してカーネル関数を計算する必要がある。つまり、例えば、10,000個の化合物と1,000個のタンパク質に対して10,000×1,000の化合物とタンパク質のペアがあり、これらの組み合わせなので、10,000×1,000×10,000×1,000というメモリ空間が必要になり、メモリ空間のスケーラビリティに問題がある。3.2Bipartitelocalmodels(BLM)と変形手法PKMは、ペアの組み合わせを考えることによりスケーラビリティの破たんをきたした。そのためペアを避け、化合物側とタンパク質側をそれぞれ独立して考える(BLM:Bipartitelocalmodels)[11]。具体的には、ある化合物Cとあるタンパク質Pの相互作用を予測する際に、まず化合物側をCに固定し相互作用をサポートベクトルマシンにより予測する。すなわち、各タンパク質を事例として、化合物Cとタンパク質の相互作用の有無をラベルとし、タンパク質間の相同性をカーネル関数としてサポートベクトルマシンにより、化合物Cとタンパク質Pの相互作用を学習・予測する。次に同様にタンパク質側をPに固定し、今度は各化合物を事例として、化合物間の相同性をカーネル関数として相互作用をサポートベクトルマシンの学習により予測する。最終的な予測は、2つのサポートベクトルマシンの予測を組み合わせる。この手法は、特徴ベクトルの代わりに相同性をうまく利用した手法で、PKMのメモリ空間のスケーラビリティの問題を回避できる。しかし、2つの問題がある:1)各相互作用を予測する毎にサポートベクトルマシンを2回学習する必要があり、例えば、10,000個の化合物と1,000個のタンパク質に対して2×10,000×1,000回ものサポートベクトルマシンの学習と予測が必要となり計算時間(計算量)がかかる。2)クラスラベルに相互作用情報が利用されるのを除けば、データが化合物側とタンパク質側で全く独立に扱われる。BLMの変形手法は数多く提案されており、例えば、サポートベクトルマシンの代わりに線形回帰を行い、正則化項に相同性行列を利用する手法(NetLapRLS[12])や、PKMの考え方を少しでも取り入れようとする手法(GIP[13])等がある。しかしいずれにせよ、これらの手法のフレームはBLMと同じであり、そのため上記2つの問題点が残る。3.3行列分解による手法上記の2つのアプローチのそれぞれの問題点を踏まえて、計算量やメモリ空間は抑えつつも、化合物とタンパク質のデータを(独立ではなく)融合的に扱い予測モデルを構築するという手法である[14,15]。具体的には、化合物×タンパク質の相互作用行列Yを低次元行列A、Bに分解する。つまり、A、Bはそれぞれ化合物側、タンパク質側の低次元行列であり、この時、A、Bがそれぞれ化合物間、タンパク質間の相同性行列Sd、Stを再構築できるように分解する。言い換えて、逆の方向から説明をすれば、相同性行列Sd、Stを分解することによって得られる低次元行列A、B(つまりSd=AAT、St=BBT:Tは行列の転置を意味する)が相互作用行列Yを構成するように(Y=ABT)AとBを求めるのである。つまり、化合物およびタンパク質の相同性行列を分解することによってそれぞれ得られるA、Bは、言わばケミカルスペースとバイオロジカルスペースのエッセンス(因子)であり、これらエッセンスで相互作用が説明できるようにパラメータA、Bを推定する。エッセンスである低次元行列A、Bから、ケミカルスペースSdとバイオロジカルスペースSt、さらに相互作用行列Yという3つの入力行列すべてを構築(説明)できるようにA、Bを推定する。この方法は、2種類の相同性行列と相互作用行列を融合的に使用SARNewsNo.29(Oct.2015)6し相互作用を説明する。考え方が合理的で、大きな計算量やメモリ空間を必要としない。しかも、相互作用を説明する際の、ケミカルスペースとバイオロジカルスペースのエッセンスをも表示可能という利点を持つ。3.4性能比較薬-ターゲット相互作用予測に対し相同性行列を用いる手法の性能比較を[15]から抜粋して表1に示す。評価値はprecision-recall曲線(実数値で与えられる予測により事例をソートし、ある閾値を予測実数値に対して置いた時に、閾値以上の事例の中で正例の予測率(precision)とカバー率(recall)を、閾値をずらしながらY,X軸にプロットしたもの)の下の面積を指すAUPR(AreaUnderthePrecisionRecallcurve)であり、機械学習の分類性能評価で最も使われるAUC(AreaUndertheROCCurve)に較べて、予測上位に対する性能評価により重きがおかれる。データはベンチマークとして最も使われる4種類のデータセットを用いている。評価手順は交差検証(クロスバリデーション)である。上記3.3章で紹介した行列分解による手法がCMFとMSCMFであり(CMFは化合物側、タンパク質側、それぞれ一つの相同性行列のみ用いた場合の結果)、この表から相同性行列を用いる手法の性能面での優位性が窺える。表1.相同性行列を用いる手法のAUPRによる性能比較。方法NUCLEARRECEPTORGPCRIONCHANNELENZYMEPKM(3.1節)0.5140.4740.6630.627BLM(3.2節)0.2040.4640.5920.496NETLAPRLS(3.2節)0.5630.7080.90.874GIP(3.2節)0.6040.7270.8980.884CMF(3.3節)0.6430.7460.9370.887MSCMF(3.3節)0.6730.7730.9370.894また、MSCMFでは、複数の相同性行列に対する重みを学習可能で、重みから相同性行列の予測への寄与を測ることができる。表2に結果を示す[15]。GOはGeneOntology上の距離から計算した相同性であり、MFはGeneOntologyのMolecularFunctionのカテゴリの情報を用いた距離,同様にBPはBiologicalprocessのカテゴリ情報により相同性を計算している。また、PPIはタンパク質間相互作用ネットワーク上の距離から計算した相同性である。この結果から配列相同性の寄与はGPCRを除き意外に低いことや、GOの2つの相同性はほぼ同様に予測に寄与することが窺える。表2.ターゲットの相同性行列に対する重みの学習結果の典型例相同性行列NUCLEARRECEPTORGPCRIONCHANNELENZYME配列相同性00.529700GO(MF)0.44090.12860.52620.3827GO(BP)0.559100.47380.3652PPI00.341700.25214.おわりに薬とターゲットの相互作用予測に対する機械学習手法を俯瞰し、特に化合物とタンパク質の相同性行列を用いるアプローチに関して、代表的な手法とその比較を行った。相同性を有効に使うことにより、予測精度の向上のみならず、予測に重要な要因と予測に有効な相同性を知ることが可能になる。このアプローチでは、相同性を空間と同様に扱い、薬とターゲットの空間を相互作SARNewsNo.29(Oct.2015)7用という観点から統合的に扱う。一方で、現在既知の相互作用は非常に疎であり、相同性行列と相互作用の空間を構成するよう推定した低次元行列(因子)が、既存データにオーバーフィットしやすいという問題(所謂me-too-drugの問題)があり得る。これはデータ獲得コストが高くデータ量が十分でない場合にしばしば見られる問題だが、今後、実験面でのハイスループット技術の進展等によるデータや知見の増加と、同時に、そのような問題をより考慮した機械学習技術の革新による解決が望まれる。最後に、これは読者の興味からやや外れるかもしれないが、機械学習にとって、今回紹介した相同性の問題設定は一般性があり、様々な応用に適用可能であることを述べたい。特に、データマイニングにおける典型的な問題、レコメンデーションも対象となる。レコメンデーションでは、ユーザ集合と商品集合があり、ユーザと商品間の購買情報がある。既知購買情報を利用して、未知の購買情報を推定する。これは、化合物集合とタンパク質集合があり、化合物とタンパク質間の既知相互作用から未知相互作用を予測する問題と同じである。さらに、化合物間相同性、タンパク質間相同性と同様に、ユーザ間、商品間の類似性情報から相同性を入力可能である(特徴ベクトルも可能)。従って、薬―ターゲット相互作用予測問題は、レコメンデーションの問題と同じである。今後、薬―ターゲット相互作用予測への機械学習技術の革新がレコメンデーション技術の進歩につながる可能性があり、また、逆も真である。実際にMSCMFと同様の行列分解の技術がレコメンデーション(協調フィルタリング)でも提案・利用されている[16]。ただ、実データの観点からみると違いがある。すなわち、レコメンデーションでは、ユーザ数は数百万~数千万、商品も数十万に及ぶことさえあるビッグデータである。一方、タンパク質は1万程度の種類に留まる。従って、データサイズに違いがあり、実際、薬-ターゲット相互作用予測に非常に有効な行列分解は、レコメンデーションに対しては、よりスケーラビリティの改善が要求される。いずれにせよ、このような複数分野での応用の存在が様々な刺激となり、技術革新がより進むと予想される。謝辞紹介した研究の中で、著者が含まれる研究は、多くの共同研究者の方々による成果である。特に、中国復旦大学のShanfengZhu先生、彼の研究室の学生であったXiaodongZhengさん、HaoDingさん、また、北海道大学の瀧川一学先生、東京大学の津田宏冶先生には、多岐に渡りご教示いただいた。彼らの努力により、私を含めて関連分野の多くの方々が新しい知見を得ることが出来た。研究推進には、JSTBIRD、科研費#24300054、京都大学化学研究所若手研究者受入事業、京都大学化学研究所共同利用・共同研究課題#2014-27、2015-33のサポートを受けた。最後に、執筆の機会を与えていただいたSARNews関係者の方々に厚く御礼申し上げる。参考文献[1]Hopkins,A.Drugdiscovery:predictingpromiscuity,Nature,462(7270),167–168(2009).[2]https://www.ebi.ac.uk/chembl/[3]Hastie,T.,Tibshirani,R.andFriedman,J.TheElementsofStatisticalLearning,Springer(2009).[4]Nagamine,N.andSakakibara,Y.Statisticalpredictionofproteinchemicalinteractionsbasedonchemicalstructureandmassspectrometrydata,Bioinformatics,23(15),2004–2012(2007).[5]Jacob,L.andVert,J-P.Protein-ligandinteractionprediction:animprovedchemogenomicsapproach,Bioinformatics,24(19),2149–2156(2008).[6]Takigawa,I.,Tsuda,K.andMamitsuka,H.,Miningsignificantsubstructurepairsforinterpretingpolypharmacologyindrug-targetnetwork,PLoSOne,6(2),e16999(2011).[7]Ding,H.,Takigawa,I.,Mamitsuka,H.andZhu,S.Similarity-basedmachinelearningmethodsforpredictingdrug-targetinteractions:abriefreview,BriefingsinBioinformatics,15(5),737-747(2014).[8]Lipinski,C.andHopkins,A.Navigatingchemicalspaceforbiologyandmedicine,Nature,432(7019),855-861(2004).[9]Yabuuchi,H.,Niijima,S.,Takematsu,H.,Ida,T.,Hirokawa,T.,Hara,T.,Ogawa,T.,Minowa,Y.,Tsujimoto,G.,andOkuno,Y.Analysisofmultiplecompound–proteininteractionsrevealsnovelbioactivemolecules,MolecularSystemsBiology,7,472.doi:10.1038/msb.2011.5(2011).SARNewsNo.29(Oct.2015)8[10]Zhu,S.,Okuno,Y.,Tsujimoto,G.andMamitsuka,H.Aprobabilisticmodelforminingimplicit”chemicalcompound-gene”relationsfromliterature,Bioinformatics,21(Suppl2),ii245-ii251(2005).[11]Bleakley,K.andYamanishi,Y.Supervisedpredictionofdrug-targetinteractionsusingbipartitelocalmodels,Bioinformatics,25(18),2397–2403(2009).[12]Xia,Z.,Wu,L-Y.,Zhou,X.,andWong,S.Semi-superviseddrug-proteininteractionpredictionfromheterogeneousbiologicalspaces,BMCSystemsBiology,4(Suppl2),S6(2010).[13]vanLaarhoven,T.,Nabuurs,S.B.andMarchiori,E.Gaussianinteractionprofilekernelsforpredictingdrug–targetinteraction,Bioinformatics,27(21),3036–3043(2011).[14]Gönen,M.Predictingdrug–targetinteractionsfromchemicalandgenomickernelsusingBayesianmatrixfactorization,Bioinformatics,28(18),2304–2310(2012).[15]Zheng,X.,Ding,H.,Mamitsuka,H.andZhu,S.Collaborativematrixfactorizationwithmultiplesimilaritiesforpredictingdrug-targetinteractions.InACMSIGKDD,1025–1033.ACM(2013).[16]Gu,Q.,Zhou,J.andDing,C.H.Q.Collaborativefiltering:Weightednonnegativematrixfactorizationincorporatinguseranditemgraphs.InSDM,199–210.SIAM(2010).SARNewsNo.29(Oct.2015)9/////CuttingEdge/////データマイニングとしての多重標的相互作用解析北海道大学瀧川一学1.はじめに生物活性を発現する低分子化合物は応用的な意味でも科学的な意味でも大変興味深い。文字通り、それは毒にも薬にもなり得る。低分子とは言え、合成可能な化合物の種類は1060を超えるほど膨大でありChemicalSpaceやChemicalUniverseとも呼ばれてきた[1-3]。また、近年は新薬上市のハードルが飛躍的に高まっていることから、抗体医薬品やタンパク製剤などのバイオ医薬品へのシフトも注目されているとは言え、低分子医薬品は未だ製薬業界の売り上げの多くを担っている伝統的かつ主力的対象でもある。にも関わらず、その作用機序の理解となればまだまだ非常に奥が深そうである。細胞とは大規模な化学反応工場であるとするなら、そのような複雑な系へ放り込まれた外的な化合物がどのような作用を経るのかを理解するにはどうすれば良いのだろうか。医薬品であれば、経口投与にせよ、非経口投与にせよ、そもそも薬理効果を発揮する場所まで到達するだけでも複雑なルートを経由し多数の作用を受ける。このような薬物動態の実態は医薬品の副作用や安全性を理解する上でも重要となるが、その複雑な作用機序に至るプロセスの全容を一体どのような形で理解できるのであろうか。創薬における医薬品開発の長年の経験や幅広い情報収集に基づく職人芸的な勘やセレンディピティは、どのように醸成されるのだろうか、あるいは、果たして実体のあるものなのだろうか。その上、医薬品開発では、候補化合物は分解されずに安定に合成できるのか、実験室だけではなく工場で安定に大量生産できるのか、といった物性をも考慮しなければならないとしたら、1060の天文学的な数の可能性からの候補化合物探索は楽観的に3K(経験と勘と根性)に頼るにはあまりに遠大すぎる。我々はこうした関心に答える一つのアプローチとして、近年計測可能となってきた様々なレベルの実験データや、公的リポジトリなどを通じた大規模なデータの蓄積や共有を背景に、多種多様なデータの横断的な情報解析に基づく知識発見手法の研究を行ってきた。本稿では一つの事例として、低分子化合物の多重標的相互作用の大規模プロファイリング研究[4]の背景とその周辺を概説する。我々はデータマイニング・機械学習技術の研究者でもあり、単純な法則への還元主義が行き詰まるほど複雑な系の理解には、系が生み出す多様なレベルの情報の包括的理解が鍵になると考えている。ICTやビジネス業界における利用は既に実用的に確立しつつあるが、創薬における近年のビッグデータ利活用の需要[5]を考えても、こうした知識発見技術の高度化・多様化が今後の科学的な知見を支える技術基盤となっていくことを期待したい。2.MultitargetDrugs,DrugPromiscuity,Polypharmacology近年、医薬品化合物の臨床有効性や安全性は、個々の標的に対する作用のみではなく、生体内に存在する多数のタンパク質に対する横断的な活性プロファイルによって規定されるということが広く認識されるようになってきた[6-10]。低分子医薬品は分子が小さいために、そもそも狙っていない組織や細胞に薬物が届くのを完全に防ぐことは難しい。その上、近年までの研究で、承認医薬品ですらその多くは狙っていない様々な標的と相互作用していることが確認されている。伝統的にはこうした複数の標的との相互作用(DrugPromiscuity)は副作用を可能な限り避けるため、望ましくない性質としてむしろ嫌忌されてきたと言えるが、近年では逆に複数の標的を適切に調節すること(多重標的性、Polypharmacology)こそが医薬品の臨床有効性の面でも安全性の面でも非常に重要であると考えられるようになってきた[11-16]。特に、がんや中枢神経疾患など複雑な多因子性疾患の治療において、この多重標的性は重要であると認識されており、実際に、がんのキノーム[17]やGPCR[18]などについては特に注力して研究が行われている。また、近年SARNewsNo.29(Oct.2015)10では多重標的性の情報解析による探索と評価系の自動化を組み合わせて、狙った多重標的に作用する化合物の導出の成功例も報告されるようになっている[19-21]。この多重標的性の理解は、実用的な意味でも重要である。近年では製薬会社の開発費用はただでも年々増加傾向にある上、規制面の圧力も強まっており、コストがかさむ開発後期での失敗を低減するための取り組みは重大な関心事である。可能な限り、臨床開発段階ではなく、創薬段階で、医薬品候補の確実なADME(吸収・分布・代謝・排泄)の薬物動態や毒性を予測することがますます望まれていると言える。増加する臨床試験の後期フェーズでの試験中止の主要因は不十分な臨床有効性および不十分な臨床安全性(毒性)である[22]。医薬品候補として特定の標的にのみ選択的に非常に強く作用する化合物が得られていても、後になって臨床有効性が不十分となる事例はいくつも報告されている。だからと言って、標的類似のタンパク質や同一パスウェイ上のタンパク質にも作用するようにしたために、それ以外の多数の非標的とも作用してしまってはただ副作用や毒性に繋がるだけである。したがって、望ましい標的セットに作用する医薬品開発のためには、そもそも現行の承認医薬品を始めとする化合物がどのような標的セット(設計時の非標的を含む)と作用しているのか、Polypharmacologyパターンの網羅的理解が必要となる。3.Drug-TargetNetworkとNetworkPharmacologyPolypharmacologyが重要であると分かったところで、医薬品候補化合物の一つ一つをゲノムがコードする2万超の遺伝子産物のプロテオーム全体に対してスクリーニングするのは、いくら系がハイスループット化したとは言え、まだまだ現実的ではない。前述したように合成可能な低分子化合物の総体であるChemicalUniverseは1060と言われている。例えば、PubChemには2015年9月14日現在で60,810,195個の化合物が登録されており、何らかのバイオアッセイで活性を示すものだけに限っても1,000,088個になる。一方、標的になり得るタンパク質のほうも所謂Druggable[23,24]なものだけに限っても7,700個程度は存在すると言われる[25]。医薬品化合物が作用する標的の多くが膜タンパク質であることを考えれば、高解像なX線結晶構造が必要となるドッキングシミュレーションによる置き換えもかなり限定的にならざるを得ない。酵素などでさえ、近年ではダイナミックに立体構造を変化させるコンフォメーションの変化の重要性が指摘されており、立体構造は結晶構造のように静的なものではないという認識も度々問題にされる。このような背景から、現行の医薬品や医薬品候補として開発が進んでいる低分子化合物がプロテオームとどのように相互作用を起こしているのかを調べる方法として、その相互作用ネットワーク(Drug-TargetNetwork)の多角的なデータ解析に関心が注がれてきた。医薬品と標的の相互作用ネットワークが多様な個別の情報(遺伝子の発現や制御のパスウェイ、遺伝子と疾患との関係、化合物の特性や既知機能、タンパク質間相互作用、など)とどのように結びついているのか全体像を理解できれば、Polypharmacologyのパターンと仕組みを合理的な知見として医薬品設計や医薬品候補化合物の作用機序理解へ利活用することが期待できる。こうした流れを組む研究は、いわゆるネットワーク生物学の隆盛とも相まってNetworkPharmacologyとも呼ばれている[26]。Paolinietal.[27]では、創薬化学で利用されてきた複数の構造活性相関(SAR)データの統合的解析により、医薬品や化合物が標的としてきたタンパク質が網羅的に同定された。公的なイニシアチブにより整備されているデータはあったものの、SARデータの多くは商用データベースや文献に散在しており、基本となるデータバンクが存在しなかった。したがって、複数のアノテートされているデータセットを化合物の一意的表現を介して統合した、単一の網羅的データウェアハウスをまず構築している。Pfizer社内部の60万を超えるSARのデータ(IC50値など)を商用のスクリーニングデータおよび文献等のデータと統合し、その規模は480万化合物(そのうち27.5万化合物が「活性あり」)となっている。解析の結果、836遺伝子が信頼性を持って標的として同定され、うち727遺伝子は少なくとも1つの化合物と<10μMの結合親和性を持ち、529遺伝子はRuleof5を満たす低分子化合物と<100nMの結合親和性を持っていた。このデータウェアハウス中の27.5万の「活性あり」化合物について、その65%が単一標的,35%が一つ以上の標的と相互作用することが確認されている。論文中ではタンパク質ファミリごとの統計や、特に標的にされる度合いの高いタンパク質の詳細などが多角的に解析されている。また、構築したデータは化合物と標的についてのマトリックスデータとなり(SARデータがないペアは欠損値)、活性値を予測するベイズ確率モデルの構築と評価も併せて行っている。SARNewsNo.29(Oct.2015)11Yıldırımetal.[28]では、オープンに利用できるDrugBankデータベースからDrug-TargetNetworkを構築している。1,178個のFDA承認医薬品及び3,074個の医薬品候補として開発中の化合物を含む計4,252化合物が登録されており、FDA承認医薬品の標的は394タンパク質であった。この相互作用ネットワークのうち標的が既知の部分に対して、ネットワーク生物学の流れを組むネットワーク解析を行っている。特に、遺伝子-疾患ネットワーク、遺伝子発現データ、タンパク質間相互作用データ、など他の種類の相互作用や知識データを介して、承認医薬品の間の間接的な関係性をネットワークにマッピングし詳細に解析している。もし医薬品が各々一つの標的にしか作用しないとすれば、この医薬品のネットワークは孤立したネットワーク形状になるはずであるが、実際には強く結合した連結なネットワークとなり、多重標的相互作用が裏付けられている。この研究を契機として、Mestresetal.[29]など、相補的なネットワーク解析が多数研究された。Keiseretal.[30]では、標的となるタンパク質の特徴付けのために、そのリガンド間のトポロジカル記述子による構造類似性を用いたタンパク質の分類や、タンパク質間の関連付けを行っている。先行研究[27,28]のDrug-TargetNetworkでは相互作用ネットワークを点と線として解析するため、全く同じリガンドをいくつ共有しているかがタンパク質間の関連付けとなっていた。そこで、その拡張として、タンパク質機能を配列類似性から分析するように、全く同じでないが構造的に似ているリガンドを共有しているかを考慮した解析方法SimilarityEnsembleApproach(SEA)を提案している。実際にMDLDrugDataReport(MDDR)から取得した246個の受容体のリガンドセットに対して、65,000個以上の化合物を用いて解析を行っている。興味深いことに、同じ受容体ファミリに作用するリガンド間の構造類似性は神経伝達物質受容体では高くはない。また、リガンドの構造類似性を元にした情報解析により意外な標的の可能性も検出されている。解析により、メタドン、エメチン、ロペラミドは各々、M3ムスカリン受容体、α2アドレナリン受容体、NK2ニューロキニン受容体を新たに阻害しうることが示唆され、これは実験的にも確認された。さらに、この解析法SEAを用いて、Keiseretal.[31]では3,665個のFDA承認医薬品と医薬品候補として開発中の化合物の再解析を行い、既存の医薬品・医薬品候補について新たな標的の探索を行っている。通常、タンパク質の標的の探索には配列や立体構造などを用いたバイオインフォマティクス解析が用いられるが、SEAはその標的に結合するリガンドのトポロジカルな構造類似性しか使わない(類似性はBLASTと同様のE-Valueで評価される)。まず、対象の3,665個の化合物について、上述のMDDRから得た246個の受容体に作用する65,000個のリガンドに対する構造類似性を計算し、得られた7,000個程度の非標的タンパク質-化合物ペアについて、自明なもの、既知のリガンドと類似性の高いもの、等を除外し、3,800個の非標的タンパク質-化合物ペアを得ている。このうち184個について文献探索(Retrospective解析)を行い、うち42個が既知相互作用であった。文献にも引っかからない残った構造のうち入手しやすい30個についてinvitro、invivo実験(Prospective解析)を行っている。実際に実験的に検査されたものは30とわずかな割合ではあるが、テストされた30のうち23の新しい相互作用が実験的に確認され、うち5つは<100nMの結合親和性が得られた。既知の医薬品や医薬品候補に対してこのような割合と信頼性で新たな相互作用が発見されたことにより、現在のDrug-TargetNetwork[28]の真の形はもっと密なネットワークであることが示唆されている。4.有意な共起部分構造ペア同定に基づく多重標的相互作用プロファイリングKeiseretal.[30,31]の結果は、リガンドの構造類似性をDrug-Targetネットワークと関連づけることで、実際に実験的にも新たな相互作用が発見されており、興味深い解析法である。ここで、リガンドの構造類似性の計算はトポロジカルな記述子であるDaylightFingerprint表現のTanimoto係数に基づいている。本節では、こうした従来研究の問題点を議論とするとともに、それらに対処する試みとして、化合物を分子グラフ、標的をアミノ酸配列で表現した際に、多重標的相互作用を特徴づける因子となる部分構造特徴のペアの統計的探索により、多重標的性プロファイリングを行った研究[4]を紹介する。SARNewsNo.29(Oct.2015)124.1化合物構造の分子グラフ表現とグラフマイニングKeiseretal.[30,31]でリガンドの構造類似性を測る場合には伝統的なDaylightFingerprintによるトポロジカル記述子が用いられている。近年ではPubChemの類似性検索・部分構造検索の効率化や統計的な解析のために用いられるPubChemFingerprint、創薬実務の標準的なツールであるSciTegic社(現BIOVIA社)の商用ソフトウェアPipelinePilotに搭載され広く使われるようになっているExtendedConnectivityFingerprint(ECFP)などのCircularFingerprintのように、データから自動生成されるトポロジカルな記述子セットは大規模な構造式データの解析や情報処理の基本的な道具となっている。Polypharmacologyの解析の場合、前述したように網羅的な解析のためには計測が必要な特性、立体的な特性、量子化学的な特性に依らない特徴付けが望ましいため、構造式さえ分かれば手軽に得られるこうした一次構造ベースの手法が活用できる。これらのトポロジカルな記述子はその2次元の構造式のみから計算されるため2DFingerprintとも呼ばれるが、その計算は対象分子の構造式を何種類かの点と線で抽象化した「グラフ構造」として分子グラフで表現して行われる。図1に示すのは多重標的性を持つ代表的な抗がん剤であるイマチニブ(Novartis社グリベック)及びスニチニブ(Pfizer社スーテント)の構造・骨格および3種類の分子グラフ表現の例である。分子グラフは頂点と辺からなる「グラフ構造」というネットワーク様の表現で計算機内に保持され、記述子計算が行われる。図1では頂点ラベルのみ表示しているが、頂点と辺には各々何種類かのラベルが付与される。オリジナルのECFPではDaylightatomicinvariantsという頂点ラベル形式が用いられるが、計算アルゴリズムは特定の頂点ラベル形式に依存するものではないため、例えばSYBYLMOL2形式で計算されるSCFPやファーマコフォア形式で計算されるFCFPなど用途によってバリエーションが知られている。RDkitやChemicalDevelopmentKit(CDK)などのオープンソースのケモインフォマティクスツールでもECFP相当の記述子の計算が可能である。詳細は参考文献[32]などに譲るが、トポロジカルな記述子の差はこの分子グラフからどのような部分構造を抽出するかに依存している。DaylightFingerprintのようなFingerprintはPath-based型とも呼ばれ、分子グラフに含まれる直線上のパスのバリエーションにより分子を特徴づけするのに対して、ECFPはCircular型と呼ばれ、各々の頂点の周辺の部分構造、例えば各々の頂点とその隣接頂点からなる部分構造の種類、さらに隣接頂点の隣接頂点まで拡張した部分構造の種類、として決まった範囲までの部分構造をすべて調べ上げその種類のバリエーションにより分子を特徴付けする。図1.イマチニブ及びスニチニブの構造・骨格とその分子グラフ表現SARNewsNo.29(Oct.2015)13異なる分子に含まれるパスやCircular部分構造の数は一般には異なるため、通常はHashedFingerprintという手法により固定長のビット表現に格納するが、この処理には情報の損失があり、ヒューリスティックな対処法ではある。そこで、記述子計算や類似性計算のための表現にとどまらず、分子グラフ表現そのものを解析対象としてデータマイニングや機械学習を適用するグラフマイニング手法とその化学構造の情報解析での利活用が研究されている[32,33]。例えば、あるライブラリに含まれる化合物セットがどのような特徴を持っているかを理解するには、構造類似性でグループ化するのみではなく、各々の化合物を分子表現グラフで保持して、その化合物セットに頻出する部分構造パターンを調べ上げることが考えられる。このように与えられたグラフセットに対して、決まった割合以上で生起する部分構造(部分グラフ)を効率的に全列挙する問題は、データマイニングの分野では「頻出部分グラフの列挙」として一つの研究課題を形成している。バリエーションとして、グラフセットAには頻出するが、グラフセットBには頻出しない部分構造パターンの探索・列挙や、各々のグラフに付与されたKiやIC50などのSAR活性値に対して、分子グラフ構造そのものから回帰をかけ、分子グラフ表現からSAR活性値を直接予測する機械学習モデルを構築するなど、近年のデータマイニング・機械学習研究の進展により、発展的な解析手法が開発されてきている。4.2改良医薬品(me-toodrugs)と不完全なデータによるバイアス問題Drug-TargetNetworkに内在する問題として、収集できるデータの不完全さと特定の対象に関するデータ数の偏りの問題が指摘されてきた[34]。既存の医薬品の標的には明らかな偏りがあり、当然現状のデータにも特定の標的に関するものがアンバランスに多い。同様に、製薬業界や科学が対象としてきた化合物にも、開発しやすいものや科学的に興味深いものなど特定の偏りがある。創薬においては、全く新規の骨格を持つ新薬を作るためのハードルが非常に高いため、基本骨格は既存の特許化合物から出発して、その構造を改変して薬効や副作用を改良した改良医薬品(follow-ondrugs,me-toodrugs,me-betterdrugs)が多数存在する[28]。画期的新薬が出たあと各社がこぞって改良医薬品を開発しゾロゾロと出てくる類似医薬品ということで、画期的新薬はピカ新、同様の骨格を元にした後発の改良医薬品はゾロ新などと呼ばれてきた。これらは構造が似ている上、もともと同じ標的を念頭に設計されるため、Drug-Targetの予測を単純に評価してしまうとこうした予測が自明である多数の構造により、かなり予測精度に楽観的にバイアスがかかることが指摘されている[35]。また、予測精度の評価もこのような偏りを持つ既存データのクロスバリデーションにより行われるため、予測精度の論文値にはかなり楽観的なバイアスが存在するとも言われている[39,40]。その一方で、MMP(Matchedmolecularpair)解析[36,37]によって、構造上は非常に類似しているが一部の官能基の置換で多重標的性に顕著な差異が生じるPromiscuityCliff[10,39]の例も確認されている。統計的な解析や予測モデリングは対象としているデータの質に当然依存しており、データ中に顕著に現れる特徴はそのまま予測モデルに反映されてしまう場合が多い。また、そもそもIC50値ベースのSARデータとKi値ベースのSARデータでは信頼性も結果が異なり、特にIC50値を利用する場合、異なるアッセイのSARデータの統合によって実際より多くの多重標的性が観測され得るといった指摘[10]も、Polypharmacology研究におけるデータ精査の重要性と難しさの一端を示すものである。アカデミックの世界でのPolypharmacology解析の評価基盤となっているオープンなデータベースであるDrugBank[41]やPubChemの活用[42]については、特にこうした内在するバイアスの問題が避けられないため、実践的な予測モデリングのためにもデータ自体の直接的な精査と解釈およびそれを念頭にした情報解析は一つの重要な因子である。4.3共起する部分構造ペアの同定と統計的有意性判定Takigawaetal.[4]では、現在得られている医薬品-標的間相互作用データにどのような傾向や偏りがあるのかを直接的に分子特徴に関連付けて精査するため、化合物を分子グラフ、標的をアミノ酸配列で表現し、相互作用するペアに有意に現れる部分構造特徴ペアを調べ上げる新たなデータマイニング手法を構築した。先行研究により、少なくとも現状の相互作用データには歴史的な医薬品開発の経緯に起因する偏り(特定の標的や基本骨格類似の構造のデータ数が顕著に多いSARNewsNo.29(Oct.2015)14等)が指摘されていた。また、既存の医薬品に対する新たな相互作用が実験的にも確認され、現状のデータのカバレッジはまだまだ低く、相互作用ネットワークには未知の相互作用が多数存在し、真の姿は現在明らかになっているよりも密な結合をしているとも示唆されていた。そこで、以下のように構築したアルゴリズムとパブリックな相互作用データを用いて、どのような特徴パターンが現在の多重標的相互作用データを特徴づけているのか、詳細な解析を行った。まず、相互作用する化合物とタンパク質のペアと、相互作用が確認されていない化合物とタンパク質のペアを比較した時に、前者に統計的に有意に出現するような化合物の部分構造とアミノ酸の部分配列の「部分構造ペア」を効率的に全て調べ上げるアルゴリズムを構築した。この手法を用いて、その時点でのDrugBankの最新版であったver2.5から得た4,191化合物と4,632標的の間の11,219相互作用をもとに、それらの相互作用の5%以上で共有されていて多重標的相互作用に関連している可能性がある部分構造ペア41,543,488個を全て調べ上げ、相互作用が確認されていないペアと比べて相互作用するペアにのみ統計的に有意に現れる部分構造ペアのうち、p値の小さい上位10,000個の詳細な解析結果を報告している。11,219個の既知相互作用はこれら10,000個の部分構造ペアの有無によるFingerprint(GRASPFingerprint)により11,219×10,000のマトリクスで表現される。この表現に階層的クラスタリングを適用した結果、FDA承認医薬品の75%を含む8つの特徴的な多重標的相互作用群が同定でき、各々は特徴的なタンパク質ファミリに対して特に密な多重標的相互作用を起こしていることが明らかになった。これらの相互作用群は化合物の類似性のみ、タンパク質の類似性のみを用いた解析では同定できないものであった。この結果は一つには後発の改良医薬品の構造と標的の偏りに起因するものと考えられるが、近年の研究でも無関係のタンパク質ファミリをまたぐ多重標的相互作用は相対的に稀であることが示唆されており[10]、現状のデータに内在するPolypharmacologyは主にいくつかの特徴的なパターンを持つと言える。また、FDA承認医薬品以外の開発中の医薬品候補化合物についてはその一部は承認薬の明確なクラスタに包含され、me-too/me-betterの傾向が確認されたが、大半はかなりバラバラの分子特徴から構成され顕著なクラスタを形成しなかった。このような開発中候補化合物や、主要な多重標的相互作用クラスタに含まれなかった承認医薬品に関しては、特定のメジャーな標的に対して集中的に開発されてきた承認医薬品に偏っている現データでは、それらのPolypharmacology研究のための相互作用データがまだ不十分であると考えられる。この手法の最も特徴的な点として、低分子化合物とその標的タンパク質の相互作用を各々の分子特徴から特徴づける際に、局所的な部分特徴に着目した点があげられる。先行研究や予測モデリングで行われていたように化合物やタンパク質の類似性を測る際には既存の非局所的な類似性指標を用いることが多いが、その場合、単に基本骨格が同じ化合物ペアや、またタンパク質の一次構造に対してこの方針を採用すると、単に配列相同性の高い同一ファミリのタンパク質ペアを考えることになってしまい、相互作用ネットワークに化合物カテゴリやタンパク質ファミリのアノテーションを関連付ける先行研究と同様の解析に帰着してしまう可能性が高い。むしろ、相互作用を成立させるために必要な機能部位やフラグメント、結合ポケットでのコンタクトを形成するための分子特徴など、局所的な特徴が組み合わされて相互作用が特徴付けられていると捉えたほうが興味深い[43]。この手法で検出された有意な部分構造ペアの一つ一つは小さいフラグメントと長さ3ほどのアミノ酸配列のペアでありランダムな化合物-配列ペアにも出現しうるものであるが、上位10,000部分構造ペアの生起の組合せパターン(GRASPFingerprint)となると、大変興味深いことにランダムなペアや相互作用しないペアには出現しづらいものである。これら部分構造ペアとその共起パターンはDrugBankデータから我々が提案するアルゴリズムにより抽出されたものであるが、タンパク質のデータベースPDBで結合リガンドが確認されている相互作用ペアのうちDrugBankに存在しない相互作用ペアでも出現しやすいことも確認されており、多重標的性相互作用の一次構造による特徴付けの可能性を示唆するものと考えている。論文中では、実際に導出された最も有意性スコアが高かった部分構造ペアのクラスタの既知立体構造へのマッピングや、PubChemBioAssayの「活性あり」化合物140,937個とDruggableGenomeの基準を満たす6,919個のタンパク質の全975,243,103ペアについて、DrugBankの既知11,219相互作用ペアに対する上位10,000部分構造ペアの組合せ生起の類似度比較も行っている。SARNewsNo.29(Oct.2015)155.おわりに本稿では我々の研究[4]の背景にある多重標的相互作用解析の周辺について概説した。表現型ベースのスクリーニング[44]、副作用ベースのスクリーニング[45]、など相互作用予測には興味深い成功事例が報告されてきたが、近年もまだまだ進展中の話題であり、GPCRの立体構造研究の進展[46]を背景にした多重標的相互作用の結合サイト解析[47]、多重標的性を利用したキナーゼに対する相互作用の機械学習予測[48]など興味深い成果が報告されている。利用できる高精度なデータの整備や多重標的QSAR(mt-QSAR)の開発を含め、今後の情報解析技術の進展により多重標的相互作用の機序や実態についての理解が進むことを期待したい。謝辞執筆の機会を与えて頂きました日本薬学会構造活性相関部会ならび貴重なコメントを頂きました編集委員の方々に大変感謝致します。本稿で紹介した研究[4]は京都大学の馬見塚拓先生、東京大学の津田宏冶先生との共同研究として実施されたものです。また、本稿の執筆や調査は、科研費#26330242、#26120503、京都大学化学研究所共同利用・共同研究課題#2014-27、#2015-33の支援を受けたものです。参考文献[1]Kirkpatrick,P.andEllis,C.Chemicalspace,Nature.432,823(2004).[2]Fink,T.,Bruggesser,H.andReymond,J.-L.Virtualexplorationofthesmall-moleculechemicaluniversebelow160daltons,Angew.Chem.Int.Edit.44,1504-1508(2005).[3]Ruddigkeit,L.,vanDeursen,R.,Blum,L.andReymond,J.-L.Enumerationof166billionorganicsmallmoleculesinthechemicaluniversedatabaseGDB-17,J.Chem.Inf.Model.52(11),2864-2875(2012).[4]Takigawa,I.,Tsuda,K.andMamitsuka,H.Miningsignificantsubstructurepairsforinterpretingpolypharmacologyindrug-targetnetwork.PLoSOne.6(2),e16999(2011).[5]Hu,Y.andBajorath,J.Learningfrom‘bigdata’:compoundsandtargets.DrugDiscovToday.19(4),357-360(2014).[6]Roth,B.L.,Sheffler,D.J.andKroeze,W.K.Magicshotgunsversusmagicbullets:selectivelynon-selectivedrugsformooddisordersandschizophrenia.Nat.Rev.DrugDiscov.3(4),353-359(2004).[7]Mencher,S.K.andWang,L.G.Promiscuousdrugscomparedtoselectivedrugs(promiscuitycanbeavirtue).BMCClin.Pharmacol.5(3),(2005).[8]Frantz,S.Drugdiscovery:playingdirty.Nature.437(7061),942-943(2005).[9]Medina-Franco,J.L.,Giulianotti,M.A.,Welmaker,G.S.andHoughten,R.A.Shiftingfromthesingletothemultitargetparadigmindrugdiscovery.DrugDiscov.Today.18(9-10),495-501(2013).[10]Hu,Y.andBajorath,J.Compoundpromiscuity:whatcanwelearnfromcurrentdata?DrugDiscov.Today.18(13-14),644-650(2013).[11]Hopkins,A.L.,Mason,J.S.andOverington,J.P.Canwerationallydesignpromiscuousdrugs?Curr.Opin.Struct.Biol.16(1),127-136(2006).[12]Hopkins,A.L.Drugdiscovery:Predictingpromiscuity.Nature.462(7270),167-168(2009).[13]Metz,J.T.andHajduk,P.J.Rationalapproachestotargetedpolypharmacology:creatingandnavigatingprotein-ligandinteractionnetworks.Curr.Opin.Chem.Biol.14(4),498-504(2010).[14]Peters,J.U.Polypharmacology––foeorfriend?J.Med.Chem.56(22),8955-8971(2013).[15]Jalencasa,X.andMestres,J.Ontheoriginsofdrugpolypharmacology.Med.Chem.Commun.4,80-87(2013).[16]Anighoro,A.,Bajorath,J.andRastelli,G.Polypharmacology:challengesandopportunitiesindrugdiscovery.J.Med.Chem.57(19),7874-7887(2014).[17]Knight,Z.A.,Lin,H.andShokat,K.M.Targetingthecancerkinomethroughpolypharmacology.Nat.Rev.Cancer.10(2),130-137(2010).[18]Jacobson,K.A.,Costanzi,S.andPaoletta,S.ComputationalstudiestopredictorexplainGproteincoupledreceptorpolypharmacology.TrendsPharmacol.Sci.35(12),658-663(2014).[19]Besnard,J.,Ruda,G.F.,Setola,V.,Abecassis,K.,Rodriguiz,R.M.,Huang,X.P.,Norval,S.,Sassano,M.F.,Shin,A.I.,Webster,L.A.,Simeons,F.R.,Stojanovski,L.,Prat,A.,Seidah,N.G.,SARNewsNo.29(Oct.2015)16Constam,D.B.,Bickerton,G.R.,Read,K.D.,Wetsel,W.C.,Gilbert,I.H.,Roth,B.L.,Hopkins,A.L.Automateddesignofligandstopolypharmacologicalprofiles.Nature.492(7428),215-20(2012).[20]Reutlinger,M.,Rodrigues,T.,Schneider,P.andSchneiderG.Multi-objectivemoleculardenovodesignbyadaptivefragmentprioritization.Angew.Chem.Int.Edit.53(16),4244-4248(2014).[21]Rodrigues,T.,Hauser,N.,Reker,D.,Reutlinger,M.,Wunderlin,T.,Hamon,J.,Koch,G.andSchneider,G.Multidimensionaldenovodesignreveals5-HT2Breceptor-selectiveligands.Angew.Chem.Int.Edit.54(5),1551-1555(2015).[22]Khanna,I.Drugdiscoveryinpharmaceuticalindustry:productivitychallengesandtrends.DrugDiscov.Today.17(19-20),1088-1102(2012).[23]Hopkins,A.L.,Groom,C.R.Thedruggablegenome.Nat.Rev.DrugDiscov.1(9),727-730(2002)[24]Overington,J.P.,Al-Lazikani,B.andHopkins,A.L.Howmanydrugtargetsarethere?Nat.Rev.DrugDiscov.5(12),993-996(2006).[25]Griffith,M.,Griffith,O.L.,Coffman,A.C.,Weible,J.V.,McMichael,J.F.,Spies,N.C.,Koval,J.,Das,I.,Callaway,M.B.,Eldred,J.M.,Miller,C.A.,Subramanian,J.,Govindan,R.,Kumar,R.D.,Bose,R.,Ding,L.,Walker,J.R.,Larson,D.E.,Dooling,D.J.,Smith,S.M.,Ley,T.J.,Mardis,E.R.andWilson,R.K.DGIdb:miningthedruggablegenome.Nat.Methods.10(12),1209-1210(2013).[26]Hopkins,A.L.Networkpharmacology:thenextparadigmindrugdiscovery.Nat.Chem.Biol.4(11),682-690(2008).[27]Paolini,G.V.,Shapland,R.H.,vanHoorn,W.P.,Mason,J.S.,Hopkins,A.L.Globalmappingofpharmacologicalspace.Nat.Biotechnol.24(7),805-815(2006).[28]Yıldırım,M.A.,Goh,K.-I.,Cusick,M.E.,Barabási,A.-L.andVidal,M.Drug-targetnetwork.Nat.Biotechnol.25(10),1119–1126(2007).[29]Mestres,J.,Gregori-Puigjané,E.,Valverde,S.andSoléR.V.Thetopologyofdrug-targetinteractionnetworks:implicitdependenceondrugpropertiesandtargetfamilies.Mol.Biosyst.5(9),1051-1057(2009).[30]Keiser,M.J.,Roth,B.L.,Armbruster,B.N.,Ernsberger,P.,Irwin,J.J.andShoichet,B.K.Relatingproteinpharmacologybyligandchemistry.Nat.Biotechnol.25(2),197-206(2007).[31]Keiser,M.J.,Setola,V.,Irwin,J.J.,Laggner,C.,Abbas,A.I.,Hufeisen,S.J.,Jensen,N.H.,Kuijer,M.B.,Matos,R.C.,Tran,T.B.,Whaley,R.,Glennon,R.A.,Hert,J.,Thomas,K.L.,Edwards,D.D.,Shoichet,B.K.andRoth,B.L.Predictingnewmoleculartargetsforknowndrugs.Nature.462(7270),175-181(2009).[32]瀧川一学,多数のグラフからの統計的機械学習,システム/制御/情報,60(3),2016.(予定)[33]Takigawa,I.andMamitsuka,H.Graphmining:procedure,applicationtodrugdiscoveryandrecentadvances.DrugDiscov.Today.18(1-2),50-57(2013).[34]Mestres,J.,Gregori-Puigjané,E.,Valverde,S.andSolé,R.V.Datacompleteness––theAchillesheelofdrug-targetnetworks.Nat.Bio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ピー変化量(ΔH)、およびエントロピー変化量(-TΔS)を示す。上からHMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチン群、HIV-1プロテアーゼ阻害剤群、及びファルネシル二リン酸合成酵素(FPPS)阻害剤であるビスフォスフォネート群の結合熱力学を示す。図中右の化合物ほど新規に承認された薬剤である[2-5]。SARNewsNo.29(Oct.2015)20合に由来するものとは限らない。化合物が疎水的性質を有していた場合、その疎水基の脱溶媒和に伴い水分子はバルクに放出され、その水分子が獲得した自由度がFavorableな(すなわち負に大きい)エントロピー変化として反映される。結合ポケット内に取り残された水分子を化合物が押し出した場合も同様である。ただし、分子間相互作用自体は化合物あるいは標的タンパクの構造を安定化させるものであり、換言すれば自由度の減少に他ならない。結合に伴う化合物あるいはタンパクの構造化はしたがって、Unfavorableな(すなわち正に大きい)エントロピー変化として現れる。このように、エンタルピー及びエントロピーはそれぞれ拮抗する寄与の和として表され、Favorableなエンタルピー寄与を与えるOptimizationがUnfavorableなエントロピー寄与を生むなど、エンタルピー・エントロピー間にも補償関係が成立する。また、標的タンパクに対する親和性が同じであっても、そのエンタルピー・エントロピー寄与のバランスは無数に存在する。我々は、こうした無数の可能性の中から薬剤として優れたプロファイルを持つ化合物を選出しなければならない。薬剤の理想的な熱力学的プロファイルを考える上で、これまでに上市された化合物群が辿ってきた道のりを見返すことは良い方法かも知れない。高コレステロール血症治療薬であるスタチン、HIV-1プロテアーゼ阻害剤、骨粗しょう症の治療薬であるビスフォスフォネート剤(BP剤)の熱力学的プロファイルを図2にまとめた[2-5]。いずれも右に行くにつれて新しい承認薬となっている。これら3群の医薬品の熱力学的プロファイルを見比べてみると、それぞれ程度の差はあるものの、FirstinclassではFavorableなエントロピー寄与の多い、エントロピー駆動型の薬剤が多い。しかしながら最適化研究が進むにしたがってエンタルピー駆動型へと変化し、新規に承認されたBestinclassに近い薬剤では、その性質が強調されていることが印象的である。薬剤が標的への強い活性を示すことはもちろんであるが、標的との高い特異性、すなわちエンタルピー駆動型の性質を有していることも重要であることを、この図は示すものである。こうしたレトロスペクティブな解析結果を受けて、創薬最適化研究での熱力学値の利用を推奨する研究者も少なくない[6,7]。では実際にはこうした値をどのように利用すれば良いのか。最適化研究の具体例を特に構造と熱力学に着目し、次項より紹介する。3.化合物最適化と熱力学3.1医薬品開発におけるITCの活用Sarverらはレニン阻害剤の初期創薬におけるSARについて報告している[8]。レニンは腎臓傍糸球体細胞から分泌されるアスパラギン酸プロテアーゼで、この阻害薬は高血圧症の治療に用いられる。論文では、化合物と標的タンパクの共結晶構造解析とITCによる結合熱力学値を利用することで合理的な創薬デザインに挑戦しており、DrugOptimizationによる化合物-標的間の結合様式の変化が良く記述されている。図3に一連の化合物の結合熱力学と、代表3化合物のレニンとの結合様式を示す。Compound1はΔHが-9.5kcal/molとエントロピー駆動型の特徴を有する化合物であるものの、その親和性(Kd)は3.5μMと比較的弱い。共結晶構造に目をやると、Compound1のジアミノピリミジン基は複数の水素結合を形成しておりこれがFavorableなエントロピー寄与となっていることは明確である。一方、図手前の大きな疎水性ポケットであるS2ポケットおよび比較的小さなS3サブポケット(S3SP)は空のままであり、これらのポケットを埋めることにより親和性の向上が見込めることが考えられた。分子モデリングの結果からCompound2が合成され、親和性が向上した結果となった。-14.5kcal/molと非常にFavorableなエントロピー寄与から、新たに付加されたメトキシプロピル基がS3SPを占有することによりvanderWaals相互作用が向上したことが想像できる。しかしながら、狭いポケットに押し込められたメトキシプロピル基は自由度を失い、それが+5.9kcal/molというUnfavorableなエントロピー寄与として現れている。このエントロピーペナルティーを打破するため、Compound3ではフェニル基を導入しており、これによってCompound3はシリーズ中レニンとの親和性が最も高い化合物となった。Compound3の共結晶構造を見ると、Compound2でも導入したメトキシプロピル基はきちんとS3SPに納まっているが、おそらく新たに付加したフェニル部分がレニンとvanderWaals相互作用をすることで、結合ポSARNewsNo.29(Oct.2015)21ケットに取り残されていた安定な(自由度の低い)水分子をバルク中に放出し、これがUnfavorableなエントロピー寄与の減少につながったと考察される。この後も様々な最適化が試みられており、S3SPのみならずS2ポケットに対しても対策が講じられている。興味深いことに、大きな疎水性ポケットであるS2ポケットを占有する目的で合成されたCompound9,10では、Favorableなエンタルピー寄与が劇的に減少し、反対にFavorableなエントロピー寄与が向上している。ジアミノピリミジン基から伸びた側鎖がS2ポケット内に残された水分子を追い出したため、この脱溶媒和によってエントロピー寄与は向上したが、この側鎖の極性アミド部分は有効な相互作用に関与できず、その結果としてエンタルピー寄与の著しい減少が起こったことが推察される。これを解消するために合成されたCompound11では、側鎖の極性基をスルフォンアミド基に変換し位置を調整することで再びFavorableなエンタルピー寄与を獲得している。この極性基はアミノ酸残基との水素結合を形成しており、これがFavorableなエンタルピー寄与の獲得、ひいてはCompound3と同等の親和性を持つという結果につながっている。論文上ではここまでの情報であるが、Compound11に関しては、極性基の位置や水素結合の相手などを最適化していけば、エンタルピーが向上した状態でエントロピーのペナルティーを最小化できる、より親和性の強い化合物にたどり着けるのかもしれない。共結晶構造の取得有無は標的となるタンパク質の性質に大きく依存するものではあるが、標的と化合物の結合を視覚的に確認し、その結合に伴われる熱力学値をモニターすることが出来れば、その最適化手段のPros/Consを明確化することが可能となる。図3一連のレニン阻害剤の結合熱力学と、代表3化合物のレニンとの結合様式の比較[8]。(i)代表3化合物の共結晶構造。PDBコードはそれぞれ2IKO(Compound1)、2IKU(Compound3)、及び2IL2(Compound11)である。レニンの結合ポケットを緑で示し、化合物との水素結合を黄色の点線で示している。化合物の炭素/窒素/酸素/リン原子はそれぞれオレンジ/青/赤/黄色で示す。(ii)一連のレニン阻害剤の結合熱力学。(iii)代表的なレニン阻害剤の化学構造。(i)(ii)(iii)1234567891011-15-10-505X(kcal/mol)GH-TSS2S2S2S3SPS3SPS3SPCompound1Compound3Compound11FFHNNH2NH2NNNONH2NH2NNNONH2NH2NNNOOOONHNHNH2NNNOOOSOONHNHNH2NN1231011SARNewsNo.29(Oct.2015)223.2空間を埋めるというOptimizationレニン阻害剤の例にもあるように、ポケットを埋めるというのは有効な最適化手段の一つである。「ポケット、空洞を埋める」ことに特化した最適化の例がある。HIV/AIDS治療における代表的な標的タンパクであるHIV-1プロテアーゼは、これまでに数多くの研究がなされており、有力な薬剤も市販されている。このHIV-1プロテアーゼをモデルとして用い、ある置換基を除いて同一の構造を有する化合物群の結合熱力学と共結晶構造を比較すると、興味深い傾向が見いだされた[9]。_____一連の化合物とその構造、エンタルピー/エントロピー寄与の変動を図4にまとめた。基本的な化合物の構造は変えず、Rで示す2つの置換基をvanderWaals半径の小さな水素からフッ素、塩素、さらにメチル基へと変化させた。その結果、置換基の半径が増大するのに伴って結合親和性がわずかずつではあるが着実に向上する傾向が見られた。共結晶構造を比較すると、タンパクとの水素結合の数・質ともにほぼ同一であり、Rで示す置換基も水素結合やハロゲン結合といった強い相互作用は見られなかった。得られた共結晶構造からLawrenceandColmanによって定義されたShapecomplementarity(Sc値[9])を計算すると、置換基のvanderWaals半径の増大に伴う化合物-標的タンパク間の構造相補性の向上が確認された。エンタルピー/エントロピー寄与に目をやると、水素からフッ素への変換の際にはエントロピー寄与のロスが見られるものの、それ以降はタンパク及び化合物の脱溶媒和に起因すると考えられるFavorableなエントロピー寄与の向上が見られる。エンタルピー寄与に関しても、vanderWaals相互作用の向上により徐々にFavorableな寄与へと変化している。興味深いことに、メチル基をイソプロピル基に置き換えると、大きすぎるイソプロピル基はこのポケットに収まらないらしく、著しいエントロピーロスに起因した親和性の大きな低下が起こった。-H-F-Cl-Me-7-6-5-4H-TSH(kcal/mol)-8-7-6-5-TS(kcal/mol)NHNSNHHOOOOHOORR図4一連の置換基の異なるHIV-1プロテアーゼ阻害剤の結合熱力学と結合様式の比較[9]。(i)化合物の基本的な化学構造。4化合物はRで示す2つの置換基が水素、フッ素、塩素、及びメチルである以外は相同である。(ii)4化合物のHIV-1プロテアーゼに対する結合熱力学の詳細。Rで示す置換基に対してエンタルピー(緑、左軸)及びエントロピー(赤、右軸)寄与をプロットした。置換基はvanderWaals半径の順に左から並べている[14]。(iii)4化合物の共結晶構造の比較。PDBコードはそれぞれ、3KDD(フッ素)、3KDC(塩素)、及び3KDB(メチル)である。比較のため、置換基が水素の構造は他の置換基の共結晶構造より作成した。化合物の炭素・水素/窒素/酸素/フッ素/塩素原子はそれぞれ白/青/赤/水色/緑で示す。(iii)(ii)(i)SARNewsNo.29(Oct.2015)23このように、置換基の大きさを変化させるような、いわば消極的な最適化過程においては、劇的な親和性の改善は望めないものの、水素結合等の特別な相互作用によらず、主にvanderWaals相互作用の促進による改善のため、極端なエントロピーのロスもなく、エンタルピー・エントロピー両観点からの最適化が可能である。3.3結合能の付加と選択性ある化合物の親和性向上を目指すうえで、水素結合やその他の相互作用等、標的タンパクとの結合能の付加・強化はよく選択される手法の一つである。多くの化合物が上市されている骨粗しょう症治療薬・BP剤の共結晶構造を紐解くと、様々な組織がそれぞれに実施した約30年にわたる創薬研究において、結果的には結合能を付与する形で最適化が進んできたことが明確である[5]。標的であるファルネシル二リン酸合成酵素(FPPS)とBP剤の結合部位、さらにこれらの結合に伴うエンタルピー/エントロピー寄与を図5にまとめた。BPは側鎖の構造の違いにより3つに分類される。第一世代であるEtidronate及びClodronateは共結晶構造が解かれていないため図5には含めないが、これらの側鎖に窒素原子を含まないBP剤はのちにFPPSを主の標的とせず、ATPのアナログとなりエネルギー代謝を阻害し、破骨細胞のアポトーシスを促進することで薬効を示すことが明らかとなっている[5]。この事実、すなわちFPPSへの「非特異性」は、Unfavorableで正に向いたエンタルピー寄与として熱力学的にも現れている(図2参照)。一方、FPPSを標的とする第二、第三世代のBP剤に目をやると、BP剤に共通のP-C-P骨格部分は側鎖に係らずほぼ同質の水素結合を形成している。すなわち、新しい承認薬にみられる親和性の向上は、側鎖の相互作用能に由来する。側鎖にアルキルアミンを含む第二世代のPamidronate、Alendronate、及びIbandronateでは側鎖の水素結合数は0ないし1であるが、側鎖に窒素原子と環構造を含む第三世代のRisedronate、Zoledronateでは2つの水素結合を、さらにMinodronateでは3つの水素結合を形成している。これら第二世代、第三世代のBP剤の熱力学値に目をやると、特異的な相互作用が強化されたBP剤はFavorableなエンタルピー寄与が増大していることが明確である。しかしその一方で、結果的にはエンタルピー・エントロピー間の補償により親和性は向上した結果となったものの、複数の水素結合によって自由度が奪われたことにより新規承認薬ほどFavorableなエントロピー寄与を失っていることが解る。ではFavorableなエントロピー寄与を捨ててまで、エンタルピー寄与を獲得することに意義はあるのか。エンタルピー駆動型化合物の利点を示す良い例がある。HIV-1プロテアーゼをモデルとした阻害剤最適化研究の中で、疎水的性質を有するチオエーテル基を、水素結合能を有するスルフォニル基に置換することにより、標的タンパクとの相互作用を強化するという施策が取られた[10]。狙い通り、スルフォニル基は標的タンパクのASP30と強固な水素結合を形成し、約4kcal/molものFavorableなエンタルピー寄与を獲得した。その一方、この強固な水素結合のためにほぼ同程度のエントロピー寄与を失い、HIV-1プロテアーゼとの親和性はチオエーテル基を有する化合物と同程度、むしろ若干劣るという結果となった。親和性のみに目を向けると、このスルフォニル基の導入による強固な水素結合の付与は阻害剤最適化の失敗例のようにも見える。しかしながら、化合物の標的選択性という観点からは異なる結論が導かれる。標的であるHIV-1プロテアーゼと同じアスパラギン酸プロテアーゼに属するタンパクは体内にも存在する。ペプシン及びカテプシンDも同属の酵素であるが、これらタンパクと上記2種化合物の親和性を比較したところ、標的タンパクと強固な相互作用を形成するスルフォニル基を有する化合物のほうが、これらいわゆる「Offtarget」のタンパクへの親和性が弱いことが明らかとなった[11]。ペプシンに対して実施された熱測定の結果を紐解くと、スルフォニル基の導入による影響は標的であるHIV-1プロテアーゼの際とは異なり、Favorableなエンタルピー寄与の喪失という結果であった。これはおそらく、水素結合能を持つスルフォニル基がペプシンとの間に良好な相互作用を形成出来ず、この置換基の脱溶媒和によるペナルティーだけが浮き彫りになったためだと考えられる。標的タンパクとの間に適切にデザインされた、特異的な相互作用を形成できる化合物は、Offtargetとの相互作用が弱い、選択性の高い化合物となり得ることが示されている。このほかにも、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤などにおいても、Favorableなエンタルピー寄与の大きな化合物ほど標的への選択性が高い例が示されている[12,SARNewsNo.29(Oct.2015)2413]。すなわち、エンタルピー駆動型化合物を選択していくことで、標的との良好な相互作用を実現するために構造相補性が高く、故に望まない標的との相互作用が弱い、標的選択性が高い化合物への近道であることを示唆している。4.おわりにここまで、いくつかの例を挙げて化合物の最適化とそれに伴う化合物と標的タンパクの構造、熱力学の変化について紹介した。もちろん、ここに示した例はあまたの中のごく一部の「成功例」であり、実際の運用では種々の問題に直面するであろう。熱力学値は化合物の本質のみならず、測定の環境や標的タンパクの性質などすべてのものを反映する値であるからこそ、そこから創薬に必要な情報のみを取り出すことは容易ではない。化合物-標的間の相互作用は複数存在し、一つの置換基の導入でそのすべての相互作用に影響を及ぼすことも多分に考えられ、最適化の影響を直感的に理解するのは困難であろう。しかしながら、エンタルピー、エントロピー、あるいは熱容量といった熱力学的情報PamidronateAlendronateIbandronateRisedronateZoledronateMinodronate-10-8-6-4-20H-TSH(kcal/mol)-TS(kcal/mol)-10-8-6-4-20H2NOHPOHHOOPOHOOHH2NPOHOHHOOPOHOHONPOHOHHOOPOHOHONPOHOHHOOPOHOHONNPOHOHHOOPOHOHONNPOHOHHOOPOHOHO図5一連の置換基の異なるビスフォスフォネート(BP)の結合熱力学と結合様式の比較[5]。(i)6化合物のファルネシル二リン酸合成酵素に対する結合熱力学の詳細。化合物に対してエンタルピー(緑、左軸)及びエントロピー(赤、右軸)寄与をプロットした。化合物は上市年の順に左から並べている。(ii)6化合物の共結晶構造の比較。PDBコードはそれぞれ、2F89(pamidronate)、2F92(alendronate)、2F94(ibandronate)、1YV5(risedronate)、2F8C(zoledronate)、および3B7L(minodronate)である。図は、BP剤の側鎖側の拡大図であり、FPPSの結合ポケットを青緑で、水素結合を黄線で示す。BP剤の炭素/窒素/酸素/リン原子はそれぞれ白/青/赤/オレンジで示す(iii)化合物の基本的な化学構造。これらのBP剤はP-C-P構造を基本骨格とし、赤で示す異なる側鎖を有している。(ii)(i)(iii)SARNewsNo.29(Oct.2015)25は、創薬・開発段階において頻繁に用いられる他の手法では得られない知見を含むことを忘れてはならない。熱力学的情報はより高質な薬剤を探索するうえで大きな助けとなるはずである。謝辞執筆の機会を与えてくださいました日本薬学会構造活性相関部会の方々に感謝申し上げます。参考文献[1]Velázquez-Campoy,A.,Ohtaka,H.,Nezami,A.,Muzammil,S.,Freire,E.Isothermaltitrationcalorimetry.CurrentProtocolsinCellBiology,17.8.1-17.8.24(2004).[2]Carbonell,T.,Freire,E.BindingthermodynamicsofstatinstoHMG-CoAreductase.Biochemistry,44,11741-11748(2005).[3]Muzammil,S.,Armstrong,A.A.,Kang,L.,Jakalian,A.,Bonneau,P.R.,Schmelmer,V.,Amzel,L.M.,Freire,E.Uniquethermodynamicresponseoftipranavirtohumanimmunodeficiencyvirustype1proteasedrugresistancemutations.Journalofvirology,81,5144-5154(2007).[4]Ohtaka,H.,Freire,E.AdaptiveinhibitorsoftheHIV-1protease.Progressinbiophysicsandmolecularbiology,88,193-208(2005).[5]Kawasaki,Y.,Sekiguchi,M.,Kawasaki,M.,Hirakura,Y.Thermodynamicevaluationofthebindingofbisphosphonatestohumanfarnesylpyrophosphatesynthase.ChemicalandPharmaceuticalBulletin,62,77-83(2014).[6]Hann,M.M.,Keserü,G.M.Findingthesweetspot:theroleofnatureandnurtureinmedicinalchemistry.NaturereviewsDrugdiscovery,11,355-365(2012).[7]Ladbury,J.E.,Klebe,G.,Freire,E.Addingcalorimetricdatatodecisionmakinginleaddiscovery:ahottip.NaturereviewsDrugdiscovery,9,23-27(2010).[8]Sarver,R.W.,Peevers,J.,Cody,W.L.,Ciske,F.L.,Dyer,J.,Emerson,S.D.,Hagadorn,J.C.,Holsworth,D.D.,Jalaie,M.,Kaufman,M.,Mastronardi,M.,McConnell,P.,Powell,N.A.,QuinIII,J.,VanHuis,C.A.,Zhang,E.,Mochalkin,I.Bindingthermodynamicsofsubstituteddiaminopyrimidinerenininhibitors.Analyticalbiochemistry,360,30-40(2007).[9]Kawasaki,Y.,Chufan,E.E.,Lafont,V.,Hidaka,K.,Kiso,Y.,Amzel,L.,Freire,E.Howmuchbindingaffinitycanbegainedbyfillingacavity?Chemicalbiology&drugdesign,75,143-151(2010).[10]Lafont,V.,Armstrong,A.A.,Ohtaka,H.,Kiso,Y.,Amzel,L.M.,Freire,E.Compensatingenthalpicandentropicchangeshinderbindingaffinityoptimization.Chemicalbiology&drugdesign,69,413-422(2007).[11]Kawasaki,Y.,Freire,E.Findingabetterpathtodrugselectivity.Drugdiscoverytoday,16,985-990(2011).[12]Bertini,I.,Calderone,V.,Fragai,M.,Giachetti,A.,Loconte,M.,Luchinat,C.,Maletta,M.,Nativi,C.,Yeo,K.J.Exploringthesubtletiesofdrug-receptorinteractions:thecaseofmatrixmetalloproteinases.JournaloftheAmericanChemicalSociety,129,2466-2475(2007).[13]Tarcsay,A.,Keserű,G.M.Istherealinkbetweenselectivityandbindingthermodynamicsprofiles?Drugdiscoverytoday,20,86-94(2015).[14]Bondi,A.vanderWaalsVolumesandRadii.JournalofPhysicalchemistry,68,441–451(1964).SARNewsNo.29(Oct.2015)26/////Activities/////構造活性フォーラム2015開催報告実行委員長大田雅照構造活性フォーラム2015は2015年6月12日(金)、日本薬学会長井記念館長井記念ホール(東京・渋谷)にて、「様々なリード創製手段において創薬に貢献するインシリコ技術」と題して開催されました。企業研究者が実行委員長としてフォーラムを開催できる機会は、そう多くはないであろうと考え、企業目線で、仕事として担当している「インシリコ技術を用いた創薬」に焦点をあてたフォーラムにしようと考えました。そこで、今回のフォーラムでは、最新の技術や動向の把握というよりも、様々な場面で応用・利用されているインシリコ技術を網羅的に提示し、俯瞰することによって、創薬に貢献しているインシリコ技術に共通する特性とは何かを考えることにより、さらなるインシリコ技術の開発、さらに多様な場面での応用と貢献を深化させていくことを目的としました。岡島実行委員の尽力もあり、企業で実際に創薬に関わってきた多彩な研究者を講師として招くことができました。プログラムは以下のとおりです。講演1「リード創製における社内外データの活用」服部一成(塩野義製薬(株))講演2「キナーゼ創薬の基盤技術-FBDDと複数ターゲットHTSのデータ解析-」黒野昌邦(小野薬品工業(株))講演3「Newapproachestooldtargetsthroughfragmentbaseddrugdiscovery」MarkHixon(TakedaCalifornia,Inc.)講演4「バーチャルスクリーニングによるリード探索~メディシナルケミスト視点からの化合物選択~」田中大輔(大日本住友製薬(株))講演5「Insilicotechnologiesindrugdiscovery:ExamplesatChugai」大田雅照(中外製薬(株))服部先生からは特許・文献情報に基づく創薬におけるchemoinfomatics技術の活用の事例が紹介されました。本講演では、特にアカデミアなどにおいてはあまり触れる機会のない特許情報について、その重要性と、インシリコ解析によって競争相手の狙いを明らかにしていくといった企業間競争の様相を感じていただけたのではないかと思います。黒野先生は、キナーゼ創薬における選択性の重要性を考慮し、活性と選択性の2次元軸で各キナーゼのプロファイルを可視化し、可視化というインシリコ技術が企業創薬における意思決定にいかにインパクトを持つかという事例を示されました。Hixon先生は、酵素阻害を引き起こす状態を長く保つ(longresidence-time)化合物を取得するためのFragmentScreening(FS)戦略の実例と、あまりdrug-likeでない化合物しか取得できないターゲットタンパク質に対してdrug-likeな化合物をFSで取得した実例を紹介し、FS技術の多様性と奥深さを提示してくださいました。田中先生はVirtualScreening(VS)の実例について、LigandEfficiencyという概念を軸に、メディシナルケミストの視点から話をしてくださいましたが、「プロジェクトが八方ふさがりの状況のときにインシリコ技術で進むべき道を示してほしい」との言葉が特に印象的でした。大田は、Ligand-BasedDrugDesign(LBDD),Structure-BasedDrugDesign(SBDD),FS,Chemoinformatics-BasedVSの4つのインシリコ技術の応用事例を紹介しました。そして、講師5名をパネリストとして、「創薬におけるインシリコ技術」を主題に、会場も含め活発なパネルディスカッションが行われました。SARNewsNo.29(Oct.2015)27本フォーラムが、企業のインシリコ担当者にとって「企業での実践のヒント」に、企業のメディシナルケミストにとって「利用可能なインシリコ技術の理解」に、アカデミアにとって「企業創薬の理解と技術開発のヒントの一助」になることを願って開催いたしましたが、その目的はある程度達成されたのではないかと思います。本フォーラムは、本当に多くの方々の貢献によって、充実したフォーラムとなったと感じております。ご講演いただきました先生方、座長を務めていただいた先生方、活発な議論を行っていただいた参加者の方々に感謝いたします。また、企業の社員という制約がある実行委員長のもとで、それを承知の上で実行委員を引き受け、ほとんどの実務を担当していただき、フォーラムを大成功に導いてくださった実行委員の飯島洋先生(日本大学)、竹田-志鷹真由子先生(北里大学)、清田泰臣先生(北里大学)、岡島伸之先生((株)CACエクシケア)のご助力、ご支援に深く感謝いたします。また、お忙しい中ホームページを作成していただいた高木達也部会長、ならびに、ご助言をいただいた山下富義先生、加藤博明先生、本間光貴先生、横山祐作先生をはじめとする構造活性相関部会常任幹事の先生方に感謝いたします。会場を無償で使用させていただき、また、開催資金のご援助をいただきました日本薬学会、開催資金のご援助をいただきました企業、協賛いただきました学会に感謝いたします。来年の構造活性フォーラム2016は、寛大なるご厚意により、徳島大学疾患プロテオゲノム研究センターの篠原康雄先生に実行委員長をお引き受けいただきました。篠原先生は「ゲノム創薬におけるターゲット、アッセイ、モデル系選択の勘所・目のつけどころ」といった大変興味深い観点でのフォーラムを企画されていると伺っております。時期としては来年の6月頃、場所は徳島~京阪神地区をお考えのようです。ぜひ多くの皆様が来年のフォーラムにご参加いただき、この興味深い主題について活発に議論されるようお願い申し上げます。SARNewsNo.29(Oct.2015)28/////Activities/////第43回構造活性相関シンポジウム第10回薬物の分子設計と開発に関する日中シンポジウム「薬物の分子設計と開発に関する日中シンポジウム」は日中で交互に開催しています。3年前に行なわれた桂林での第9回を引き継ぎ、第10回は新潟で開催されることになりました。そこで、この第10回日中シンポジウムの時期に合わせて、構造活性相関シンポジウムを通常の開催時期よりほぼ1か月半早める形で同時開催しました。9月27日-28日を日中シンポジウム、28日-29日を構造活性相関シンポジウムとし、前半の日中シンポジウムは英語で、29日は日本語での発表としました。また要旨集およびポスターは全て英語で作成しました。2つのシンポジウムの同時開催でしたが、混乱もなく無事に終了いたしました。シンポジウムの参加者は、中国からの研究者15名、講演招待者7名を含む合計157名でした。日中シンポジウムの冒頭では、本シンポジウムに当初から関わってこられた寺田弘新潟薬科大学長と中国薬物研究所のGuoZongru教授から、シンポジウムの歴史を振り返り日中の連携についての紹介をいただき、その深い繋がりを改めて認識しました。特別講演と招待講演では、NMRやX線結晶解析による膜タンパク質の構造と機能の解析、量子化学計算(FMO法)を用いたリガンド-タンパク質の相互作用解析の創薬への応用技術について、そしてタンパク質-タンパク質相互作用を標的としたペプチド誘導体のデザインへの取り組みなどが紹介され、今後の分子設計技術の充実と発展のひとつの方向性が示されました。次年度の構造活性相関シンポジウムは京都大学農学部の中川好秋先生のお世話により平成28年11月16日‐17日に京都にて開催される予定です。まだ開催場所の詳細は決まっていませんが、決まり次第HPにてお知らせします。また、次回の日中シンポジウムは3年後に中国にて開催される予定です。日時および開催都市などは追ってHPなどでお知らせします。皆様のご参加、ご講演、ご討論により活発なシンポジウムとなりますよう、よろしくお願い致します。以下にシンポジウム概要と講演演題と発表者(特別2題、招待5題、一般20題およびポスター26題)を掲載します。第43回構造活性相関シンポジウム第10回薬物の分子設計と開発に関する日中シンポジウム日時:平成27年9月27日(日)-29日(火)会場:新潟日報メディアシップ(〒950-0088新潟市中央区万代3-1-1)主催:日本薬学会構造活性相関部会後援:日本化学会,日本農芸化学会,日本分析化学会,日本農薬学会,有機合成化学協会SARNewsNo.29(Oct.2015)29シンポジウム講演演題BriefHistoryofJapan-ChinaJointSymposiumHiroshiTerada(NiigataUniv.ofPharm.andAppliedLifeSci.,President)GuoZongru(Instit.ofMateriaMedica,ChineseAcad.ofMedicalSci.&PekingUnionMedicalCollege)KeynoteLectureDiscoveryandSARresearchofpotentKeap1-Nrf2protein-proteininteractioninhibitors○Qi-DongYou1,2(1StateKeyLab.ofNaturalMedicines,2JiangSuKeyLab.ofDrugDesignandOptimization,ChinaPharm.University)FunctionalEquilibriumofMembraneProteinsbyNMR○IchioShimada(Grad.Sch.ofPharm.Sci.,TheUniv.ofTokyo)InvitedLectureDiscoveryandoptimizationofaseriesof4-aryl-piperazinederivativesasAktinhibitorsWen-huZhan,Xiao-wuDong,○Yong-zhouHu(CollegeofPharm.Sci.,ZhejiangUniv.)ChallengesinPPIDrugDiscoveryInSilicoapproachisakeydriverforsuccess○KeiichiMasuya(PeptiDreamInc.)StructuralModificationandBioactivityEvaluationofMulti-targetedTetrahydroprotoberberinederivatives(THPBs)○HongLiu,HaifengSun,ShenbinZhou,YuZhou,XuechuZhen,XinXie,JiaLi,HualiangJiang(CASKeyLab.ofReceptorRes.,ShanghaiInst.ofMateriaMedica,ChineseAcad.ofSci.)StructuredeterminationofGPCRfortheregulationofsignaltransduction○TakuyaKobayashi1,2,3(1KyotoUniv.,2AMED-CREST,3AMED-PlatformforDrugDiscovery,Informatics,andStructuralLifeSci.)Applicationoffragmentmolecularorbitalmethodforstructure-baseddrugdesign○KaoriFukuzawa(Sch.ofDentistryatMatsudo,NihonUniv.)OralPresentationStructuralBasisofpHDependenceofNeoculin,aSweetTaste-ModifyingProteinTakayukiOhkubo1,MinoruTamiya1,KeikoAbe2,○MasajiIshiguro1(1NiigataUniv.ofPharm.andAppliedLifeSci.,2TheUniv.ofTokyo)SARNewsNo.29(Oct.2015)30Novelfluorescentprobesbasedonturn-onstrategyforthesensitivedetectionofβ-AmyloiddepositsbothinvitroandinvivoWenmingRen,MingmingXu,XinLi,HaiyanZhang,○YouhongHu(ShanghaiInst.ofMateriaMedica)Structure-activityrelationshipofpyrrolo[2,3-d]pyrimidinederivativesaspotentHCKandFLT3-ITDdualinhibitorsforthetreatmentofacutemyeloidleukemia○YasukoKoda,KoKikuzato,JunkoMikuni,AkikoTanaka,YuriTomabechi,MikakoShirouzu,HitomiYuki,TerukiHonma,FumiyukiShiraiandHirooKoyama,(RIKENCenterforLifeSci.Tech.)Anti-neuroinflammatoryagentiseffectiveinAlzheimer’sdiseaseanimalmodelWeiZhou,GuifaZhong,XiurongRao,ShaogaoZeng,TianyanChi,LiboZou,○WenhuiHu(Drugdiscoverylab.,GuangzhouInst.ofBiomed.andHealth,ChineseAcad.ofSci.)StructuralrequirementsofcholicacidderivativesastheLXRligandsKanaSaida-Tamiya,○MinoruTamiya,GenkiSekiya,KazunoriIsobe,AyakoMatsukawa,AkihikoKomuro,MasajiIshiguro(NiigataUniv.ofPharm.andAppliedLifeSci.)DiscoveryofpharmacodynamicscharacteristicsbydrugcombinationStudyJiameiGuo,○YingGuo(Dept.ofPharm.,Inst.ofMateriaMedica,ChineseAcad.ofMedicalSci.&PekingUnionMedicalCollege)Feasibilityofweightedfingerprint-basedsimilarityasaligand-basedvirtualscreeningtool○YoshihikoNishibata(Sch.ofPharm.,KitasatoUniv.)Three-stepstrategyfordevelopingalgaltoxicitypredictionmodels○AyakoFuruhama,KazuoHasunuma,TakehikoI.Hayashi,NorihisaTatarazako(CenterforEnvironmentalRiskRes.,NationalInst.forEnvironmentalStudies)MakingaNTG-activitydictionaryofbioactivenaturalorganiccompounds○TetsuoKatsuragi1,KazusaNoto1,ShigehikoKanaya2,YoshimasaTakahashi1(1ToyohashiUniv.ofTech.,2NaraInst.ofSci.andTech.)Fragment-baseddrugdiscovery:CasestudiesonHSP90andBRD4○BingXiong,JingRen,LeleZhao,DanqiChen,○JingkangShen(StateKeyLab.ofDrugRes.,ShanghaiInst.ofMateriaMedica,ChineseAcad.ofSci.)Biophysicalcross-validationinfragmentscreeningoffluorinatedchemicallibrarytowardFBDDusingSPR,ITCand19F-NMRSARNewsNo.29(Oct.2015)31○SatoruNagatoishi1,2,SouYamaguchi1,KeitaKajita3,EtsukoKatoh4,HiroyukiAkyama5,SatoruKanai6,ToshioFuruya6,TsumotoKouhei1,2,7(1Sch.ofEng.,Univ.ofTokyo,2DDI,Univ.ofTokyo,3NardInstitute,Ltd.,4Nat.Inst.ofAgrobiol.Sci.,NIAS,5KishidaChemicalCo.,Ltd.,6PharmaDesign,Inc.,7Inst.ofMed.Sci.,Univ.ofTokyo)DiscoveryofNovelPARP-1InhibitorsasAnti-cancerAgentsHaipingYao,MingJi,ZhixiangZhu,JieZhou,FengmingChu,XiaoguangChen,ZongruGuo,○BailingXu(BeijingKeyLab.ofActiveSubstanceDiscoveryandDruggabilityEvaluation,Inst.ofMateriaMedica,ChineseAcad.ofMedicalSci.&PekingUnionMedicalCollege)Toxicitypredictionbyusinggeneexpressionprofilingdata○HidekoSone1,WataruFujibuchi2(1NationalInst.forEnvironmentalStudies,2KyotoUniv.)insilicoscreeningofbrassinolide-likecompounds○AiriSugiura,SeisukeTakimoto,YukoNakamura,YoshiakiNakagawa,HisashiMiyagawa(Grad.Sch.ofAgriculture,KyotoUniv.)Currentproblemstodevelopthree-dimensionalstructuresofnaturalmetabolites○MikiH.Maeda(NationalInst.ofAgrobiologicalSci.)InvestigationofthesubstraterecognitionforcytochromeP4501A2mediatedbywatermoleculesusingdockingandmoleculardynamicssimulations○YurieWatanabe1,ShuichiFukuyoshi1,MasahiroHiratsuka2,NoriyukiYamaotsu3,ShuichiHirono3,AkifumiOda1,4(1KanazawaUniv.,2TohokuUniv.,3KitasatoUniv.,4OsakaUniv.)NovelinsightsintoenantioselectivebindingofIMiDstocereblonusinginsilicodockingsimulations.○TakahiroMURAI1,NorihitoKAWASHITA1,2,YushiTIAN3,TatsuyaTAKAGI1,2(1GraduateSch.ofPharm.Sci.,OsakaUniv.,2Res.Inst.forMicrobialDiseases,OsakaUniv.,3Grad.Sch.ofInformationSci.andTech.OsakaUniv.)Amethodforannotatingchemicalfeaturearoundproteintowardligandbinding-siteprediction,basedon3-dimensionaldistributionfunction○YasuomiKiyota,MayukoTakeda-Shitaka(Sch.ofpharm.,KitasatoUniv.)StructuralExpansionoftheLipidLigandLysophosphatidylserineBasedontheModelofHydrophobicBindingPocketofG-protein-coupledReceptorGPR34/LPS1SARNewsNo.29(Oct.2015)32○MisaSayama1,SejinJung1,ShoNakamura1,MasayaIkubo1,YukoOtani1,AkiharuUwamizu2,TakayukiKishi2,AsukaInoue2,KumikoMakide2,JunkenAoki2,TakatsuguHirokawa3,TomohikoOhwada1(1Grad.Sch.ofPharm.Sci.,TheUniv.ofTokyo,2Grad.Sch.ofPharm.Sci.,TohokuUniv.,3NationalInst.ofAdvancedIndustrialSci.andTech.)InhibitoryeffectsofthebongkrekicacidanaloguesonthemitochondrialADP/ATPcarrierAtsushiYamamoto1,KatsuhiroOkuda2,MasatoAbe2,KenjiMatsumoto2,TakenoriYamamoto3,4,KazutoOhkura1,HiroshiTerada5,MitsuruShindo2and○YasuoShinohara3,4(1SuzukaUnivMedSci,2InstMaterChemEngineer,KyushuUniv,3InstGenomeRes,TokushimaUniv,4FacPharmSci,TokushimaUniv,5NiigataUnivPharmAppliedLifeSci.)PosterPresentationInsilicoscreeningforselectiveinhibitorsforSHIP2asanovelanti-diabeticdrug○Shin-ichiroOzawa1,HiroakiGouda2,ShuichiHirono1(1Sch.Pharm.,KitasatoUniv.,2Sch.Pharm.,ShowaUniv.)Computationalstudyoftheinteractionofα-1-C-alkylderivativesof1,4-dideoxy-1,4-imino-D-arabinitolwithβ-glucocerebrosidase○IzumiNakagome1,AtsushiKato2,NoriyukiYamaotsu1,TomokiYoshida1,IsaoAdachi2,ShuichiHirono1(1KitasatoUniv.,Sch.ofPharmacy,2Dept.ofHospitalPharmacy,Univ.ofToyama)Moleculardynamicsstudyonthemolecularmechanismofproduct-assistedcatalysisinthreoninesynthase○YuzuruUjiie1,2,WataruTanaka1,MitsuoShoji1,RyuheiHarada1,MegumiKayanuma3,YasuteruShigeta1,TakeshiMurakawa4,HideyukiHayashi5(1Grad.Sch.ofPure&Appl.Sci.,Univ.ofTsukuba,2Res.CoreUnit,MitsubishiTanabePharmaCorp.,3Grad.Sch.ofSys.&Inf.Eng.,Univ.ofTsukuba,4Dept.Biochem.,OsakaMedicalCollege,5Dept.Chem.,OsakaMedicalCollege)AdockingmodelofHLA-B*13:01boundtoDapsonexplainstheriskofdruginducedhypersensitivity○YoshioKusakabe1,HideakiWatanabe2,DaisukeKuroda1,TaiseiMushiroda3,HiroakiGouda1SARNewsNo.29(Oct.2015)33(1ShowaUniv.,Dept.ofPham.,2ShowaUniv.,Dept.ofMedicine,3Inst.ofPhysicalandChemicalRes.)FragmentQSARandMatchedMolecularPairAnalysisofGleevecAnalogsagainstBCR-ABLKinase○SeiichiKOBAYASHI,AkitoshiOKADA,RyoichiKATAOKA(ComputationalSci.Dept.,Sci.andTech.SystemsDivision,RyokaSystemsInc.)Developmentofstructuralsamplingforhydrationstructurearoundtheprotein,basedon3-dimensionaldistributionfunction○ShunsukeChiba,YasuomiKiyota,MayukoTakeda-Shitaka(Sch.ofpharm.,KitasatoUniv.)Studyofracemizationreactionrouteoftheglutamicacidassistedbywatermolecules○ShuichiFukuyoshi1,TomokiNakayoshi1,OhgiTakahashi2,AkifumiOda1(1FacultyofPharm.Sci.,Inst.ofMedical,Pharm.andHealth,Sci.,KanazawaUniv.,2FacultyofPharm.Sci.,TohokuPharm.Univ.)StudiesonthetotalsynthesisofMollanolA○ShuXu,YalingGong,ShipengZhang,XiaoleiWang(Inst.ofMateriaMedica,CAMS&PUMC,P.R.China)DevelopmentoftheDP-basedgenomesequenceanalysissystemusingthemotifcodonreducedrepresentation○TakashiKobayashi,HiroakiKato(ToyohashiUniv.ofTech.)AnapplicationofthedigitalfilteringtechniquetotheRietveldanalysiswiththenoisyXRDdatafrom‘longgu’,thedragonbonesamples○YuKurozumi1,JunjiYamakawa1,MasayaKawase2,KyokoTakahashi3(1OkayamaUniv.,2NagahamaBio-tecUniv.,3OsakaUniv.)InteractionbetweentebufenozidederivativesandhumanP-glycoproteinbasedonclassicQSAR,CoMFAanddocking○Ken-ichiMiyata1,YoshiakiNakagawa1,YasuhisaKimura1,KazumitsuUeda1,2,andMikiAkamatsu1(1Grad.Sch.ofAgriculture,KyotoUniv.,2Inst.forIntegratedCell-MaterialSci.)Structuralcomparisonbetweenwild-typeandmutantN-acetyltransferase2usingmoleculardynamicssimulationSARNewsNo.29(Oct.2015)34○ErikoMurata1,ShuichiFukuyoshi1,NoriyukiYamaotsu2,ShuichiHirono2,AkifumiOda1,3(1Sch.ofPharm.,CollegeofMed.Pharm.HealthSci.,KanazawaUniv.,2Sch.ofPharm.,KitasatoUniv.,3Inst.ProteinRes.,OsakaUniv.)Structure-activityrelationshipanalysisofshorthelicalpeptidesasVDRcoactivatorinteractioninhibitors○TakashiMisawa1,YosukeDemizu1,MasaakiKurihara1,2(1NationalInst.ofHealthSci.,2.TokyoInst.ofTech.)SubstitutedBenzothiopheneorBenzofuranDerivativesasAnti-osteoporosisAgentsActingonBMP-2UpregulationSi-tuXue,Gui-fangGuo,Zong-yingLiu,XueLi,Shu-yiSi,and○Zhuo-rongLi(Inst.ofMedicinalBiotech.,ChineseAcad.ofMedicalSci.&PekingUnionMedicalCollege)Analysingselectivitythroughmulti-dimensionalactivitycliffanalysisRaeLawrence1,○MarinaTakahashi2,SumieTajima2,TimCheeseright1,MarkMackey1,MartinSlater1(1Cresset,2HULINKSInc.)Effectsofcaffeicacidphenethylesterderivativesonlipidabsorptionandaccumulation○NorikoTakahashi1,MasayoshiTsubuki2,ChuanLi1,andMasahikoImai1(1LabofPhysiologicalChem.,2Lab.ofBioorg.Chem.,Inst.ofMedicinalChem.,HoshiUniv.)Stereospecificinhibitionofnitricoxideproductioninmacrophagecellsbyflavanonols:Synthesisandthestructure-activityrelationship○Wen-JunJiang1,Kan’ichiroIshiuchi2,MegumiFurukawa1,TomokoTakamiya1,SusumuKitanaka1,HiroshiIijima1(1Sch.ofPharm.,NihonUniv.,2Dept.ofPharmacognosy,Grad.Sch.ofPharm.Sci.,NagoyaCityUniv.)StructuralbasisforproducingCK2α1-specificinhibitors:CrystalstructuresofCK2α1andCK2α2withhematein○MasatoTsuyuguchi1,AkiraHirasawa2,TetsukoNakaniwa3,AtsushiSakurai4,TsutomuNakanishi4,TakayoshiKinoshita1(1Dept.ofBiol.Sci.,Grad.Sch.ofSci.,OsakaPref.Univ.,2Grad.Sch.ofPharm.Sci.,KyotoUniv.,3Inst.forProteinRes.,OsakaUniv.,4Sch.ofPharm.,KinkiUniv.)TheoreticalStudyonChiralRecognitionofAminoAcidsbyPeptideNanoringJoTakeuchiand○KyozaburoTakeda(WasedaUniv.)SARNewsNo.29(Oct.2015)35Computationalstudyoncomplexformationbetweenandrogenreceptorandcarboranederivativeusingmoleculardynamicssimulation○KoheiMiyamoto1,ShuichiFukuyoshi1,KiminoriOhta2,YasuyukiEndo2,AkifumiOda1,3(1Sch.ofPharmacy,CollegeofMed.Pharm.HealthSci.,KanazawaUniv.,2FacultyofPharm.Sci.,TohokuPharm.Univ.,3Inst.ProteinRes.,OsakaUniv.)Developmentofadesk-toptoolToxCalcforeco-toxicitypredictionofchemicals○InagakiYoshitaka,YamazakiTomoya,TakahashiYoshimasa(Dept.ofComputerSci.andEng.,ToyohashiUniv.ofTech.)DevelopmentofPharmCompoDatabaseandAdverseEffectAnalysisbyATCCodes○NorihitoOhmori1,HiroshiHorikwa1,TakashiOkada1,YasushiHinomura2(1Sch.ofSci.&Tech.,KwanseiGakuinUniv.,2JapanPharmaceuticalInformationCenter)EnantioselectiveSynthesisofregio-labeledgomisinN○MinoruTamiya,RyouheiMagara,andMasajiIshiguro(NiigataUniv.ofPharm.andAppliedLifeSci.)Totalsythesesofthenon-peptidebradykininB1receptorantagonistvelutinolAanditsderivatives,theseco-pregnaneswithcage-likemoiety○MinoruTamiya,NobuhisaIsaka,TakakiKitazawa,AtsushiHasegawa,KazuyaIshizawa,andMasajiIshiguro(1NiigataUniv.ofPharm.andAppliedLifeSci.)Structuralbioinformaticsstudiesoftheactivesiteresiduesinestrogenreceptoralphaandbeta○KenichiroFujii1,ShuichiFukuyoshi1,KiminoriOhta2,YasuyukiEndo2,NoriyukiYamaotsu3,ShuichiHirono3,AkifumiOda1,4(1FacultyofPharm.Sci.,Inst.Med.Pharm.HealthSci.,KanazawaUniv.,2FacultyofPharm.Sci.,TohokuPharm.Univ.,3Sch.ofPharmacy,KitasatoUniv.,4Inst.ProteinRes.,OsakaUniv.)ActivityCliffpredictionof7-substitutedpyrrolopyrimidineHCKinhibitorsbydockingandquantumcalculationofpKaSARNewsNo.29(Oct.2015)36HitomiYuki,KoKikuzato,YasukoKoda,JunkoMikuni,YuriTomabechi,MutsukoNiino,AkikoTanaka,FumiyukiShirai,MikakoShirouzu,HirooKoyama,○TerukiHonma,(RIKENCenterforLifeSci.Tech.)SARNewsNo.29(Oct.2015)37/////Activities/////<会告>2ndInternationalSymposiumforMedicinalSciences(第2回国際創薬シンポジウム)主催:日本薬学会会期:2016年3月28日(月)午前10時より17時30分まで会場:パシフィコ横浜アネックスホール(〒220-0012横浜市西区みなとみらい1-1-1http://www.pacifico.co.jp/)開催趣旨本シンポジウムは、日本薬学会第136年会(横浜)において理事会企画として開催されます。企業の若手創薬研究者に年会への積極的な参加を促すことを第一の目的としています。同時に、薬学会年会が世界、特にアジアの創薬研究者の情報交換の場として機能することも意図し、発表は英語で行われます。本年は、今大きな話題になっているC型肝炎の特効薬であるSofosbuvir(ソバルディ)をGileadSciences社で中心となって開発されたM.Sofia博士のご講演もあります。企業の若手創薬研究者にも刺激になることを期待しています。また、本シンポジウムの大きな特徴としてInvitedPosterPresentationがあります。若手の研究者の活性化を目的として、国内の製薬企業、ベンチャー企業、大学、研究所からの選りすぐりの創薬研究者および海外(特にアジア諸国)から多くの創薬研究者を発表者として招待します。プログラムPlenaryLecturer1)Dr.MichaelJ.SofiaChiefScientificOfficerofTekmiraPharmaceuticalsCorporationDevelopmentofNewAnti-HCVDrugforHepatitisC,Sofosbuvir(Tentative)2)Prof.CraigLindsleyVanderbiltUniversityMedicalCenterAllostericModulationofGPCRs:LeveragingSignalBiasInvitedPosterPresentation現在選考中(国内20件、海外20件)プログラムは決定次第、ホームページに掲載いたします。参加登録費:年会登録者は無料問合せ先:〒150-0002渋谷区渋谷2-12-15公益社団法人日本薬学会2ndInternationalSymposiumforMedicinalSciences実行委員長横山祐作E-mail:yokoyama@pharm.toho-u.ac.jphttp://nenkai.pharm.or.jp/136/web/en/SARNewsNo.29(Oct.2015)38構造活性相関部会の沿革と趣旨1970年代の前半、医農薬を含む生理活性物質の活性発現の分子機構、立体構造・電子構造の計算や活性データ処理に対するコンピュータの活用など、関連分野のめざましい発展にともなって、構造活性相関と分子設計に対する新しい方法論が世界的に台頭してきた。このような情勢に呼応するとともに、研究者の交流と情報交換、研究発表と方法論の普及の場を提供することを目的に設立されたのが本部会の前身の構造活性相関懇話会である。1975年5月京都において第1回の「懇話会」(シンポジウム)が旗揚げされ、1980年からは年1回の「構造活性相関シンポジウム」が関係諸学会の共催の下で定期的に開催されるようになった。1993年より同シンポジウムは日本薬学会医薬化学部会の主催の下、関係学会の共催を得て行なわれることとなった。構造活性相関懇話会は1995年にその名称を同研究会に改め、シンポジウム開催の実務担当グループとしての役割を果すこととなった。2002年4月からは、日本薬学会の傘下組織の構造活性相関部会として再出発し、関連諸学会と密接な連携を保ちつつ、生理活性物質の構造活性相関に関する学術・研究の振興と推進に向けて活動している。現在それぞれ年1回のシンポジウムとフォーラムを開催するとともに、部会誌のSARNewsを年2回発行し、関係領域の最新の情勢に関する啓蒙と広報活動を行っている。本部会の沿革と趣旨および最新の動向などの詳細に関してはホームページを参照頂きたい。(http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kozo/index.html)編集後記日本薬学会構造活性相関部会誌SARNewsNo.29をお届けいたします。今号のPerspective/Retrospectiveでは、京都大学化学研究所の馬見塚拓先生に薬物分子と生体の標的分子の相互作用の予測について解説いただきました。CuttingEdgeでは、北海道大学の瀧川一学先生に薬物分子の多重標的相互作用のプロファイリングに関する研究をご紹介いただきました。SARNewsNo.23では薬物や標的、活性などのデータ基盤が話題でしたが、今号の両先生にはそれらのビッグデータの解析への挑戦について解説していただきました。CuttingEdgeではアステラス製薬(株)の楠﨑佑子先生から、創薬におけるenthalpyとentropyについて解説いただきました。創薬に携わるお立場からの解説は実践性があり、熱力学が示すところの化合物の構造レベルでの意味づけは多くのmedicinalchemistに有用な基礎知識であると思います。ご寄稿いただいた先生方には、大変お忙しい中でのご執筆、心よりお礼申し上げます。このSARNewsが今後とも構造活性相関研究の先端情報と展望を会員の皆様にご提供できることを、編集委員一同願っております。本年度の構造活性相関シンポジウムは本号刊行の直前に行われました。開催報告とプログラム•演題を掲載いたしました。(編集委員会)SARNewsNo.29平成27年10月8日発行:日本薬学会構造活性相関部会長高木達也SARNews編集委員会(委員長)飯島洋小田晃司粕谷敦竹田-志鷹真由子幸瞳*本誌の全ての記事、図表等の無断複写・転載を禁じます。__